ひとつの机に向かい合う二人の男。
テーブルの上には十二マスの地形の描かれたプレイマットと二つのデックが置かれている。
これから勝負を始める二人を取り囲むように、野次馬の輪が丸くできていた。誰もがもっといい位置でこの試合を見ようと、水面下で静かにポジション争いにしのぎを削っている。なるほど。モンコレは相当流行っているらしい。
六道は片方の椅子に座ったまま、すぐ隣に立っている宮村に声をかけた。
「なあ、宮村さん」
「六道くん。ごめん! なんかこんなになっちゃって」
両手を合わせて謝る女子に、六道は苦りきった表情を浮かべた。
今さら謝られたところでこの勝負は降りられない。それに宮村に非があったかと聞かれると答えに困る。好きなものをバカにされれば怒って当たり前だ。話を大きくしてしまったのは六道の余計な口出しのおかげである。
身から出たサビ。
こうなったら最後まで戦い抜いて、堂藤をギャフンと言わせてやる!
「それより宮村さんよ。モンコレのルールを手短に教えてくれ」
「えっ?」
「いちいち驚くなって。オレがいつ経験者だって言ったんだよ。これは兄貴が捨てたカードたち。オレはズブの素人。モンコレなんてやったことない。ルールくらい知らなきゃ試合が始められないだろ」
テーブルの向こうで六道の言葉を聞きつけた堂藤は声を上げて笑った。
「ぐっはっはァ! 今から言いわけの準備かァ?」
「うるせぇ肉ダルマ」
六道は罵声を吐き出しながら、デックをシャッフルした。
たしか、昔見たカードゲームのアニメではこうやって試合開始前にカードを切っていたはずだ。問題はそのアニメに出てきたカードゲームがモンコレでなかったことと、そのアニメではルールの解説がほとんど行われていなかったことだ。
乏しいTCG知識をかき集めてとりあえず六道はデックを「山札」と書かれた場所に置いた。
「おいおいィ。カットもなしかよォ?」
「今デックをシャッフルした。それはお前も見ただろ」
「積み込みかァ? まあ、いいけどよォ」
ぶつぶつ言いながら、堂藤もデック置き場にデックを収めた。
よし! なんとか第一関門は突破できた!
六道が机の下で小さくガッツポーズを取っていると、宮村が心配そうにささやいた。
「あのね。六道くん。カットっていうのはね」
「カットはもういい。で、どうすりゃ試合が始まるんだ?」
「えー……」
宮村はどこか不満げに肩を落とした。
この女は、そんなにカットの説明がしたかったのか……? 六道は無言でゲームの開始方法について説明するように促した。すると、宮村はしぶしぶ口を開いた。
「まず、デッキトップを本陣に置いてね」
「ここか」
「それから六枚カードを引いて」
「おう」
「その中にユニットがいるか確認してね」
「モンスターだらけだな」
「じゃあOK、相手のユニット確認が終わったらデックの上に手を置いて、モンコレファイト・デックオン」
「それが試合開始の合図なんだな」
六道が顔を上げて向かい側を見ると、堂藤が腕を組んで待ちくたびれていた。
きっとこいつにとってはやり慣れたことで、とっくに準備を終えてこちらのやり取りを眺めていたのだろう。さぞかし退屈な時間だったはずだ。堂藤は手元のカードをパチパチ音立てさせながら回していた。
「堂藤くん。シャカパチはマナー違反だよ!」
「うんン? 外野は黙ってろよォ」
「…………」
宮村は悔しそうに唇を噛んだ。
モンコレに疎い六道にはなんのことやらよく分からなかったが、とりあえず宮村の肩を叩いてやった。このやけに明るい女に塩らしくされるとこっちの調子が狂う。
「おい。そろそろ始めようぜ」
「それはおれのセリフだぞォ!」
二人はデックトップに手を置いて叫んだ。
「「モンコレファイト、デックオン!」」
前書きのネタ以上に、後書きのネタがない!!
つらい!!
次回は1ターン目まで終わらせます。