紫陽花はもう手放さない   作:死滅回遊魚のソテー

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新体制リコリコ、始動!

 

 

 

 波乱の1日から一夜明けた喫茶リコリコ。

 朝のリコリコには、いつものようにコーヒーの香りが漂っていた。昨日の戦いがまるでなかったかのように。

 でもそうはいかない。店内では例の写真を見ながら銃取引について話し合っていた。僕はみんなが食べた朝食の皿を片付けながらカウンターに耳を傾ける。ちなみに今日はたきなさんの希望でサンドイッチだった。

 

 「いちゃついた写真をひけらかすからこんなことになるのよ〜」

 

 スマホを顔に近づけながらミズキさんは愚痴を漏らす。

 何気なく撮った写真にまさか銃取引が映ってるなんて思わないだろうし、仕方ないよ…

 

 「僻まない」

 

 「僻みじゃねぇよ!SNSへの無自覚な投稿がトラブルを招くって言ってんのよ!」

 

 「この写真はいつ撮られたのかわかるか?」

 

 「うん、あの時間から3時間前だってさ」

 

 「楠木さんが見事に出し抜かれたってわけか…珍しいね」

 

 皿洗いが終わり、ハンカチで手を拭きながら僕はカウンターの方に向かう。

 

 「その女を襲ったやつはどうしたのよ」

 

 「源平さんにお願いしました」

 

 源平さん。うちのお得意様でもあるクリーナーだ。

 若くして現場を任されており、うちの無茶なお願いにも快く応えてくれる。

 リコリコにもよく顔を出してくれる常連さんでもある。最近は、少し忙しいみたいで1か月ぐらい来てないけど。

 

 「あんた、またあいつ使ったの!?高いのよ!」

 

 「DAに渡したら殺されちゃうでしょ」

 

 「いいじゃないですか、うちにもよく来てくれるんですし」

 

 源平さんはリコリコの「命大事に」をしっかり守ってくれる人だ。今頃、沙織さんを襲った奴らは五体満足で三食寝床付きの刑務所よりよっぽどマシな生活を送っていると思う。監禁されてはいるけどね。

 

 「一応情報吐いたら連絡するって言ってましたけど、気長に待つしかないですね」

 

 「そりゃあんなにいい生活してたら吐く意味もないもんね〜」

 

 外に出れないだけで風呂トイレだけでなくテレビやエアコンなどのある程度の生活インフラも整っている。

 ただ、この事件が終わるまではずっとこの生活だろう。

 

 「DAもこいつら追ってるんでしょ?私たちが先に見つければたきなの復帰が叶うんじゃない?そう思わない?たきな!」

 

 「やります!」

 

 千束の合図(?)と共にたきなさんが更衣室から飛び出してくる。しかし、いつもと雰囲気が違う。

 髪型はツインテール、服装はいつものリコリスの制服ではなく青いリコリコの和服。

 ちなみに僕は黒いのを着ている。

 

 「おっほ〜!かわいい〜!」

 

 その姿を見た千束はすぐにたきなに抱きつきにいく。

 たきなさんの体を前後に揺すりながら早口で感想を述べ、手を引いてこっちに連れてくる。

 その時のたきなさんの顔はどこか呆れたような顔をしていた。

 

 「ほら!先生もミズキももっと寄って!陽華!顔が見切れてる!もう少ししゃがんで!」

 

 パシャリ

 

 新体制リコリコの初めての集合写真。あとで千束から送ってもらおう。

 そう伝えようとしたら千束はすでにお店のSNSに写真をアップロードしていた。

 

 「君はさっきの私の話を聞いていたのかね?無自覚な投稿がトラブルを…」

 

 「だ〜いじょうぶだって、ここには向かいにビルはないよ」

 

 この2人がプロレスし始めると謎の安心感があるんだよな〜と思っていたらドアベルが鳴る。こんな早い時間にお客さんなんて珍しいな。

 

 「ほらお客さん!練習どおり!」

 

 「「いらっしゃいませ!」」

 

 ドアの前に立つのは高そうなスーツを着た上品な細身の男性。髪はきちっと整えられており、穏やかな顔立ちをしている。

 

 「やあ、ミカ」

 

 ミカさんの知り合い?

 いままで働いてきたけどこんな人がこの店に来るのは初めてだ。

 

 名前は、吉松シンジというらしい。

 話を聞くと、ミカさんと少しの間関わりがあった人みたいだ。いつも落ち着いているミカさんがどことなく嬉しそうに見える。

 昔からの付き合いならそういうものなのかな。

 

 

 

▽▲▽▲△

 

 

 

 吉松さんが帰った後、リコリコの店内や厨房について軽く説明したところで千束にバトンタッチする。

 

 「よし!次はこの錦木千束さんがホールスタッフとやらを教えてしんぜよう!」

 

 「はい、よろしくお願いします」

 

 僕は厨房専用だから接客の説明は専門の千束にバトンタッチする。千束が待っていましたと言わんばかりに張り切っている。

 その時、ドアベルが鳴りお客さんがくる。

 

 「「いらっしゃいませ!」」

 

 「ってあれ〜?久しぶりじゃないですか〜?」

 

 息のあったリコリスコンビの挨拶が店内に響き渡る。それを受けた相手はよく見る顔だった。

 

 「お久しぶりです!みなさんお元気そうで何より……?」

 

 すらっとした長身にパーマのかかった髪、白いTシャツに黒いジャージととてもラフな格好をしている。どこか人懐っこい笑みを浮かべた絵に描いたようなチャラ男。

 先ほど話していたクリーナーの源平さんだった。

 最近はあまり顔を出さなかったがどうやら昨日の件で頼んでいたこともあり、今日は様子を見に来てくれたみたいだ。

 

 「あれ?1人増えてません?」

 

 「昨日からリコリスが1人こっちに転属になってな」

 

 「初めまして、井上たきなです」

 

 「初めまして!たきなちゃん。俺は源平ってんだ。クリーナーやらせてもらってるよ!よろしくね!」

 

 源平さんが勢いよく伸ばした手を差し出した。たきなさんは一瞬その手を見つめ、ゆっくり手を伸ばし握手を交わす。

 

 「相変わらずここのメンツは強いね〜。超可愛い千束ちゃんに男が憧れるダンディなマスター、男女問わずモテるイケメンの陽華くん。そこにクールビューティーなたきなちゃんまで入るなんて…」

 

 「おい、私を抜かすな」

 

 「年中酒飲み三十路オバは戦力外だろ」

 

 「んだとクソガキゴラァ‼︎」

 

 ミズキさんが勢いよく立ち上がる。

 

 「もう22です〜立派な成人です〜…やんのか‼︎婚活モンスター‼︎」

 

 「はいはい、喧嘩はやめましょうね〜」

 

 一方の源平も負けじと身を乗り出すので僕はその肩を抑えた。

 

 「ミズキ、どうどう」

 

 千束も慣れた手つきでミズキさんの肩を押さえ込む。

 これもいつもの流れだね。

 

 「…あの!さっきリコリスって…」

 

 「あぁ、彼はDAの下請けのクリーナーもやっているからな。問題ない」

 

 何も知らないたきなさんはミカさんの発言に流石に焦っただろう。こんな国家機密事項は流石にペラペラ喋らないよ。

 僕と千束は落ち着いた2人をカウンターの席に座せる。

 2人は席に座った瞬間、落ち着きを取り戻す。なんだかんだで仲良いんだよなぁ。

 

 「怪我してた彼、大丈夫でした?」

 

 「おうよ、陽華くんがバッチリ手当してくれてたからね」

 

 良かった。

 昨日は僕たちに銃を向けていた相手だ。

 でも、生きていると聞くと肩の力が抜ける。

 

 「情報の方は…」

 

 「いんや、どいつもしゃべらんね」

 

 「拷問とかはしないんですか?」

 

 「DAの時だったらするけどリコリコの仕事の時はやらないね、うちは元請けの希望順守でやってるから。できればしたくないけどね…」

 

 「…なるほど」

 

 たきなさんさらっと怖い発言やめてもらってもいい?

 そんなことを考えていると千束が何かを思いついたようだ。

 

 「そうだ!源平さんにたきなの練習台になってもらおう!」

 

 千束がいきなり手を叩いて、そう提案する。

 確かにそれはいい考えだと思う。

 他のお客さんもいないし、常連の源平さんならうってつけの相手だ。

 

 「練習台?」

 

 「たきなさんは今日初めてのリコリコで働くんですよ、いいですか?」

 

 「おうよ!任されよう!」

 

 ここからたきなさんの接客練習が始まる。

 

…………

 

 

 「まずは笑顔の練習!」

 

 「こうですか?」

 

 「たきな怖い、怖いって!」

 

 「…難しいですね…こう?ですか?」

 

 「急にめっちゃ可愛い!」

 

 「たきな!もう一回!もう一回やってみて!」

 

 「………」

 

 

……………

 

 

 「ご注文はいかがされますか?」

 

 「うーん…もっと柔らかく、さっきの笑顔で行こう!」

 

 「笑顔ですか?」

 

 「そう!お客さんにゆっくりしていってね〜っていう感じで!」

 

 「………ご注文はいかがですか」

 

 「なんか殺気でてない?」

 

 

…………

 

 

 

 「こちら、ブレンドコーヒーと団子三兄弟になります」

 

 「なんか…軍の報告みたい…」

 

 「たきな!お・も・て・な・しの心だよ!」

 

 「はい……」

 

 

 

…………

 

 

 

 「源平さん、今日はありがとうございました」

 

 「いやぁ、たきなちゃん手強かったね〜」

 

 結局、小一時間ほど付き合わせてしまったがたきなさんの接客対応はすごく良くなった。ただでさえいつもお世話になってるのに。本当に感謝しきれない。

 

 「おかげさまでたきなさんの接客がすごく良くなりました。本当にありがとうございます」

 

 「そんなに気使わなくていいって!こっちもいつも世話んなってるしさ」

 

 「これ、つまらないものですけど…」

 

 そう言って紙袋を源平さんに渡す。

 中は来月の期間限定の試作和菓子の詰め合わせになっている。

 

 「みなさんで食べてください」

 

 「ったく、いいのに〜。でも嬉しい!ありがとう!」

 

 源平さんは紙袋を嬉しそうに持ちながら歩いて帰る。ふと何かを思い出したようにこちらを振り返る。

 

 「あいつらが何か喋ったらまた連絡するわ!期待はしないでね〜!」

 

 彼らを傷つけずに情報を吐かせる。そんな都合のいいことが簡単にできるはずがない。ましては傷つけないでと頼んでいるのは僕たちだ。

 

 それでいい。

 

 彼らが生きていればそれだけでいい。

 

 源平さんが帰ったあと、店内には再び静かな時間が戻った。

 たきなさんは教わったばかりの接客を先ほどの練習でアドバイスされたことが書かれたメモを見ながら練習していた。千束は横から「あいさつはもっと元気に!」なんて口を出している。

 

 あれなら大丈夫そうかな。

 

 

 

▽▲▽▲△

 

 

 

 今日もリコリコの営業は無事に終わりみんな手分けして締め作業を行う。ミカさんはカウンター裏のコーヒー器具の整理、千束は店内の清掃。たきなさんは座布団などを押し入れにしまい、ミズキさんは外の清掃をする。

 そんな中、僕はみんなの夜ご飯である春野菜のパスタを作っていた。朝ごはんに比べると頻度は少ないが夜ご飯もリコリコで食べることが多い。

 

 「うわ〜いい匂い〜!」

 

 パスタの匂いに釣られて千束が厨房にやってくる。晩御飯どきだから余程お腹がすいたのだろう。

 

 「もうすぐできるから食器用意してくれる?」

 

 「はーい!なんでもござれ〜」

 

 「それじゃあ、煮込んでる間に昨日の反省会始めようか」

 

 さっきまでウキウキだった千束の動きが急にカクつく。それもそのはず。僕が来てから始まった反省会に千束のいい思い出はない。

 

 「ハンセイカイ?」

 

 千束がカタコトでそう返す。

 

 「そう、昨日のね」

 

 

 …………

 

 

 座敷に置かれているちゃぶ台の周りをリコリコメンバーが囲む。そこにはお世辞にもいい雰囲気は流れていない。みんな険しい顔で僕の方を見つめる。、

 さて、と………始めますか。

 

 「まずは、たきなさん」

 

 「はい」

 

 「昨日の保護対象の扱いはいただけないかな」

 

 「なぜ、ですか?」

 

 「保護の対象だからだよ」

 

 保護対象、つまりは守らなくてはいけない存在だ。それを囮にするなんて前代未聞だからね。どんな理由があろうがそれは許されない。

 

 「ですが結果的には……」

 

 僕はあえてたきなさんの言葉を切る。

 

 「たきなさんは敵に沙織さんを殺す意志はなかったと判断した。結果的に生きていたけど、人質を平気で殺すような相手だったらどうなってたと思う?」

 

 「………」

 

 世の中には色々な人がいて、それぞれ考え方も異なる。だからそこ気を付けなくちゃならない。

 

 「たきなさんが殺さないと思っていても、相手はそうじゃないかもしれない。だから、あんな判断は2度としないで欲しい」

 

 「…わかりました」

 

 責めるのはここで終わり。

 僕は先ほどまでの険しい顔から一転して、たきなさんに笑いかける。

 

 「でも、それ以外ははなまる。僕と千束だけだったらあの距離のドローンは落とせなかったし、今回は判断の仕方が悪かっただけで合理的に考えること自体は悪いことじゃないよ」

 

 「ありがとう、ございます」

 

 本当にそう思う。僕は銃に関しては戦力外。千束も今使っている弾だったらあの距離まで精度を保って打ち込むのはほぼ不可能だ。

 心強い仲間が来てくれて嬉しいよ。

 

 「DAとここじゃルールが全然違うから慣れるまで時間がかかると思うけどそれまでは僕と千束でサポートするから大船に乗ったつもりで頼ってね」

 

 「わかりました」

 

 いきなり常識を変えろと言われても無理だと思う。ゆっくりでいいからここの雰囲気に慣れていって欲しい。

 

 「命大事に。これはたきなさんも保護対象も敵もみんなに当てはまる言葉なんだからそれも覚えておいて」

 

 「……はい」

 

 「とりあえず無事で良かった。これからもよろしくね」

 

 「…はい!」

 

 たきなさんへの番が終わり、次に千束の方に顔を向ける。

 言いたいことは山ほどある、覚悟してね。

 

 「次、千束」

 

 「……っはい」

 

 諦めたような力の抜けた返事が聞こえる。自分でも自覚しているところがあるんだろう。

 

 「いつも言ってるけど任務は常に2人行動でしようって約束してたよね?」

 

 「……はい」

 

 「なんでたきなさんを1人にして帰ってきたの?帰ってくるにしてもまず僕に連絡を入れて交代してからにするとかもう少しなんとかできなかったわけ?」

 

 「……でもLIMEにちゃんと」

 

 「そこは僕の確認不足でもあったそれはごめん。まさか1人で帰ってくるとは思わなかったからさ」

 

 「……スミマセン」

 

 「相手も銃取引の連中だって分かってるなら尚更だよ。たきなさんが無事だったからいいけど相手によってはやられる可能性も全然あったんだからね」

 

 「……ごもっともです」

 

 「僕が間に合ったから良かったけどさ。あと、できるだけワイヤーは使いたくないって前から言ってるよね?今も手が痛いんだけど」

 

 「……重々承知しております」

 

 「大体、たきなさんはリコリコに来て初日で初任務。今までは普通に敵を殺してたんだよ?それを今日からダメですなんて言われても難しいでしょ、価値観が違うんだから」

 

 「……仰る通りです」

 

 「そうさせないためにも千束か僕が居なきゃダメでしょ。自分の価値観を相手に共有したいならまずは寄り添うことが大事なんじゃないの?」

 

 どんどん千束が小さくなっていく、見てて可哀想になる。…僕だって本当はこんなこと言いたくない。けど「命大事に」を掲げるにあたって必要なことだから我慢してね。

 

 それからも反省点と改善点を次々と言っていくうちに「………もう許して〜!!!!!!」と千束の悲痛な叫びがリコリコに反響する。

 

 

…………

 

 

 反省会が終わり、煮込み終わったパスタを食べながらちゃぶ台を囲む。千束の目には少し涙が溜まっていた。

 

 「そういえばたきなさん、色々聞きたいことあるんじゃない?」

 

 まだ2日目だし、僕たちのこともちゃんと知らないだろう。ここでの質問タイムはこれから馴染んでいくためには有益な時間だ。

 

 「…色々ありすぎて何から聞けばいいか」

 

 「ひとつずつでいいよ、なんでも聞いて」

 

 「まず、陽華について色々聞いてもいいですか?」

 

 「もちろん」

 

 僕がたきなさんだったとしてもまずそうすると思う。リコリコのメンバーの中で一番謎の存在だからね。

 

 「陽華さんは何者なんですか?リコリスは高校生年代の女の人を集めた組織です。陽華さんは女性ではないですよね?」

 

 「まずそこは気になるわよね〜」

 

 ミズキさんが酒を飲みながら相槌をうつ。

 この人の肝臓は一体どうなっているのだろうか。

 それはさておき、早速痛いところ突いてくるな…さてどう説明しようかな。

 うーん、とわざとらしい声を出しながら少し考えを巡らす。

 

 「僕はDAにスカウトされた特殊戦力、ぐらいの立場かな?」

 

 「ではなぜ本部ではなくここに?」

 

 「初めからそういう契約だったからな」

 

 色々事情は省きまくってるけど嘘は言ってない。ほかのリコリコメンバーにも大まかな所しか知らないしね。

 

 「次に、陽華さんは銃は使わないんですか?」

 

 また痛いところを突かれたな…

 

 「たきな。使わないんじゃなくて、使えないんだよ。止まった的にすらまともに当てられないんだから」

 

 さっきの仕返しをするように千束がたきなさんにそう教える。事実だから怒らないよ……怒ってないよ。

 

 「よくみんな器用に使うよね、使えたらいいのはわかるんだけどさ」

 

 そう、僕は銃のセンスが全くない。前の組織の時も訓練で使わされたけど諦められたことを思い出す。どうしてそこまで才能がないのか僕でもわからない。

 こういう人を支援してもいいんですよ、アラン・アダムズさん。

 

 「あと陽華さんが使っていたワイヤー、私たちが持ってるものとは違いますよね」

 

 「ああ、これ?」

 

 そう言ってブレザーを脱ぐ。前腕にはコンパクトにまとめられているが重厚感のある鋼色のユニットが顕になる。見た目だけなら小型の盾のようにも見える。その内部にはワイヤーを射出するための構造、巻き取るための駆動装置が凝縮されて詰め込まれている。

 

 「相変わらずゴツいわよね〜、それ」

 

 ミズキさんのドン引きするような視線を尻目に手慣れた動きで固定具を外す。

 

 「これは僕専用の装備。銃が使えないからって楠木さんがくれたんだ。まぁ試作品だけどね。反動が強いからあんまり使いたくないんだけど移動とかに使えて超便利なんだよね」

 

 「どんな反動が?」

 

 「次の日腕がめっちゃ痛くなる。ただそれだけだよ」

 

 「どれくらいですか?」

 

 「昨日は全然使ってないからちょっと手に痛みが残るぐらいかな?30分とかぶっ通しで使ってると次の日は料理はおろかペットボトルの蓋も開けられなくなるよ」

 

 「そんなものを使わせてしまって申し訳ありません…」

 

 「大丈夫、慣れてるし」

 

 「慣れるもの、なんですか?」

 

 少し心配させてしまったみたい。

 なんか申し訳なくなるね…でも、そういうのを背負うのは僕だけでいい。

 

 「それ私も使ってみたーい!」

 

 そんなたきなさんとは裏腹に好奇心満載な目で装備を見つめる。僕は銃使わないからいいけど千束達みたいに銃メインで戦う人たちには不向きだ。だからなるべく触らせないようにしている。

 

 「千束が使ったら数日は動けないんじゃない?」

 

 「いいじゃんちょっと貸してみてよ〜!」

 

 仕方なく千束にワイヤーが入っている装置を渡す。その瞬間、ガクンと千束の腕が地面に引っ張られる。

 

 「おっも!こんなの付けて戦ってるの?」

 

 「いうほど重いかな?」

 

 「………変態じゃん」

 

 「なんで!?」

 

 確かに少し重いが、ある程度鍛えられていれば大丈夫なものじゃないのかな?

 

 それからしばらく、ワイヤー装備の重さについてみんなであれこれ言い合っていた。気がつけば時計の針は、すっかり夜も遅い時間を指している。

 

 「じゃあ、今日はここまで〜」

 

 千束が大きく伸びをしながら立ち上がる。それに釣られてみんなもそれぞれ腰を上げていく。

 

 「皆の者!明日も寝坊しないように!」

 

 「一番寝坊するのはあんただろ」

 

 「そうだよ。映画見るのはいいけど12時までには寝るんだよ」

 

 「陽華さんって寮母さんみたいですね」

 

 「ははっ!確かに言えてるかも!」

 

 確かに僕は千束を起こしたり、ご飯作ったり、説教したりするけども…いや、否定できないな。

 

 「たきなさん、明日はもう少し早く来てね。開店前の準備について教えるから」

 

 「わかりました」

 

 「あと、笑顔の練習も忘れないでね!」

 

 「…はい」

 

 たきなさんが少しだけ困ったように眉を下げる。まだまだ慣れないことも多いだろうけど、少しずつでいいよ。

 

 「明日の朝ご飯何?」

 

 「まだ決めてないよ」

 

 「じゃあパン!」

 

 「あんた、パン好きね〜大和魂が足りてないわよ」

 

 「今日もサンドイッチだっただろう。私はご飯がいい」

 

 「えぇ〜パンいいじゃん!パン〜!」

 

 「パンだと栄養も偏るので私もご飯の方がいいと思います」

 

 「えぇ〜たきなまで〜」

 

 そんなやり取りをしながら、みんなそれぞれ帰り支度を始める。今日もなんだかんだで騒がしい一日だった。

 たきなさんが来て、まだ二日目。これからもっと騒がしくなるんだろうな。

 

 ……料理を作る身としては、食べてくれる人が増えるのは悪いことじゃないけど。

 

 

 







紫雲寺陽華プロフィール②
戦闘スタイル:専用のワイヤーを用いた高機動・古武術を基礎とした体術。相手の思考や癖などから次の行動を予測して弱点を見抜く。

得意なこと:推理・料理
苦手なこと:射撃、スマホの操作(LIME、電話、マップ以外)


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オリ主と千束の恋愛は許す?

  • 一向に構わん‼︎
  • いやちょっと…
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