転生したらカミソリ女騎士の部下になりました   作:ダレ狐

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ノリと勢いで書いてます


邂逅編
おっさんオブザ ガール?ノー アマゾネス!!


俺の名前は只野 圭吾(ただの けいご)

 

アニメ好きの35歳のおっさん。

 

聖地巡礼中のツーリング旅をしていたら、峠道で地震に遭い、身体が投げ出され、現在真っ逆さまに落下中だった。

 

「ぎゃぁぁ! こえぇーよ!」

 

いくらフルフェイスにエアバッグ付きジャケットを着ていても、この高さから落ちたら一溜まりもない……チクショ〜! 彼女いない歴のまま人生終了かよ〜!

 

「死にたくねぇーよ!!」

 

『ユニークスキル:生還者(サバイブ)を獲得しました』

 

「サバイブ? 龍騎の強化フォームの話じゃねぇーよ! ……でも、烈火の炎のシーンはカッコよかったなぁ〜」

 

『スキル:火炎魔法烈火(れっか)を獲得しました』

 

「何だよ、さっきから……。と言うかライダーなら、色んなバイクに乗りたかったなぁ〜。平成初期ライダーのバイクデザイン好きだったんだよ。クウガ、アギトに……でも、やっぱりファイズのオートバジンが良いよな〜。バイクとしてもサポートロボとしても憧れるよな〜」

 

『ユニークスキル:召喚魔法機械騎馬(オートバジン)を獲得しました』

 

「クソ、死ぬ間際で変な声が……。今聞こえるなら、俺の今までの人生の危機回避とか、幸運とかくれよ〜!」

 

『ユニークスキル:危機回避を獲得しました』

 

『エクストラスキル:超幸運を獲得しました』

 

さっきからスキルの話ばかりで、俺は落下中のコンマ数秒の世界でそんなことを考えていた。

 

「そうだ! どうせならハー!」

 

バシャーン!!!

 

淡い妄想の願いを叶える瞬間、崖に落ちていたはずなのに、突然水辺へと落下した。

 

しかも地面に激突する寸前、水辺へ変化したようで、俺はプールへ飛び込んだ程度の勢いで水中へ突っ込んだ。

 

エアバッグ付きジャケットのお陰で身体は浮上したが、フルフェイスのヘルメットの隙間から水が入り、息が苦しくなってきたので急いで浮上する。

 

「ぶへぇ!! 死ぬわ!! ……ヘルメットのお陰で衝撃は吸収されて無事だったが、そのヘルメットのせいで危うく呼吸困難になるとは……」

 

周囲を見渡すと、そこはどこかの川辺の森だった。

 

数分前まで居た針葉樹だらけの峠とは明らかに違う景色。しかも、一緒に落下していたバイクも見当たらない。

 

「とりあえず、ここがどこか分からないと、人を探さな……」

 

川岸を目指して歩き出した瞬間、前方を見ると、黒髪のキリッとした美人が頭だけ川から出した状態でこちらを見ていた。

 

「えっと……ハロー?」

 

「……」

 

彼女は俺を睨みつけながら後方へ下がり、何かをブツブツと呟いている。

 

アニメ好きの俺は、この後の展開をなんとなく察した。

 

「まずは話を――」

 

「アイシクル・ランス」

 

彼女が突き出した手の先に魔法陣が現れ、氷の槍が俺目掛けて射出された。

 

俺は即座に川へ潜り、そのまま流れに身を任せて下流へ逃げる。

 

「待て待て! 異世界に来て早々バトルって何だよ!! 訳も分からないまま殺されかけるとか、せめてラッキースケベイベントぐらい成立しろよぉぉ!!」

 

そんな愚痴を心の中で叫びながら必死に泳いでいると、川の中へ火の玉が落下した。

 

「まさか!?」

 

直後、爆発。

 

俺は爆風で川から吹き飛ばされ、近くの木へ激突した。

 

「ぐぇ!? ……良かった〜、プロテクターに金掛けてて……」

 

さっきの爆発、多分彼女の魔法だろ。

 

異世界系はだいたい特殊能力が貰えるのが王道だが、相手は明らかにチュートリアルモンスターのレベルじゃない。

 

これがイケメン主人公なら説得してラブコメ展開もあるんだろうが……川に映った顔は、死にかけで無精髭だらけの、いつも通りのおっさん顔の俺だった。

 

「チクショ〜!! どうせならイケメン転生させろよ!!」

 

「アイシクル・ランス」

 

「うぉぉー!?」

 

彼女の呪文が聞こえた瞬間、ギャグアニメみたいな動きで飛び退く。

 

振り返ると、さっきまで俺がいた場所の大木が、氷の槍で粉砕されていた。

 

その先には、白い騎士服のような格好をした黒髪美女が、静かにこちらへ近づいて来ていた。

 

「待て待て! 信じられないだろうが、俺は別世界から突然ここに来たんだ! 決して君を覗こうとか、襲おうとかした訳じゃない!!」

 

「……別世界? 貴方、日本人?」

 

「そう! 只野圭吾、35歳の日本人だ! バイク事故で崖から落下していた時に、ここへ来たんだ!!」

 

日本人ということは、彼女も俺と同じ日本人か、あるいは知り合いにいるのか?

 

どちらにせよ、説得のチャンスだ。

 

「なるほど。こちらに攻撃の意思が無いことは理解したわ」

 

「良かった〜、助かった……」

 

「ただ――」

 

「え?」

 

「私の裸を見た罰は受けてもらうわ」

 

「はぁ!? 待てよ!! 裸って言っても、静香ちゃんの風呂シーンより見えてないだろ!!」

 

「私のプライドの問題よ」

 

ダメだ。

 

目の前の人間は静香ちゃんじゃない。ジャイアン並みに理不尽な女だった。

 

「ぎゃああああ!! 助けてドラえもん!!」

 

「今、楽にしてあげるから」

 

そう言って彼女は腰の剣に手を伸ばし、低く構えた。

距離は五メートルほど離れている。

なのに直感で理解した。

 

――マズい。

 

「くそ! 人の話を聞けって……!」

 

「さようなら」

 

『エクストラスキル:生還者(サバイブ)を使用しますか?』

 

(うるせぇ……使うぜ!!)

 

『エクストラスキル:生還者(サバイブ)を使用。以降、常時発動状態へ移行します』

 

彼女が剣を抜き切るより先に、俺は一気に間合いを詰めた。

 

「言ってんだろうが!!」

 

そのままタックルするように身体ごとぶつかり、彼女の攻撃を潰す。

 

「!?」

 

180センチの体格に加え、警察官として日頃から逮捕術で鍛えていた身体だ。

 

華奢な彼女は勢いのまま地面へ倒れ込んだ。

 

俺はそのまま犯人を制圧する時のように、彼女の腕を起点に拘束する。

 

「ごめんね。こうでもしないと話を聞いてもらえそうになかったから」

 

「……手慣れた動きね。貴方、警察官?」

 

「あぁ、そうだよ。普段は悪ガキとか、ガタイの良い外国人相手に走り回ってる、治安の悪い地域のお巡りさんだ」

 

「そう……」

 

彼女は拘束されたまま、僅かに目を細めた。

 

(手加減していたとはいえ、私が拘束されるなんて……。この動き、何かのスキル?)

 

「なるほど。元の世界では、貴方はそれなりに優秀だったのでしょうね。でも――」

 

次の瞬間。

 

拘束していたはずの彼女が、少し力を入れただけで、俺ごと持ち上げた。

 

「うぉっ!?」

 

嘘だろ!?

 

俺、90キロあるんだぞ!?

 

しかも、さっきまで川にいたせいで服が水を吸って、さらに重くなってるはずだ!!

 

「……この世界では通用しないわ」

 

マジかよ。

 

そんな華奢な身体で俺を持ち上げるとか、化け物じゃねぇか!!

 

ジャイアンかよ!!

 

「隊長!!」

 

森の奥から複数の声が響いた。

 

次の瞬間、白い騎士服を纏った男女が木々の間から飛び出してくる。

 

その全員が、地面に押し倒されている彼女が腕一本で持ち上げられてる俺を見て固まった。

 

「……は?」

 

ですよね、アラフォーのおっさんが女性の腕にしがみつく絵面だからな

 

「隊長が男に絡みつかれてる……?」

 

「敵襲か!?」

 

いや、そこだけ切り取ると誤解しかねぇ!!

 

「待て待て待て!! 誤解だ!!」

 

俺が慌てて叫ぶと同時に、数本の剣が一斉にこちらへ向けられた。

 

怖ぇよ!!

 

なんでこの世界の人間、会話前に武器向けるのがデフォなんだよ!?

 

「全員、剣を下ろしなさい」

 

彼女が静かな声でそう告げる。

 

それだけで、殺気立っていた連中が一斉に動きを止めた。

 

うわ、何この統率力。

 

怖っ。

 

「ですが隊長、その男は――」

 

「私が許可した」

 

「……ッ!」

 

いや許可してないだろ!?

 

俺の方が驚いてるんだけど!?

 

彼女はゆっくりと俺を見上げる。

 

「もう離しなさい。貴方程度なら、いつでも制圧できるわ」

 

「ぐっ……」

 

その言葉に、俺は素直に拘束を解いた。

 

いやだって怖ぇもん。

 

今なら分かる。

 

この女、本気出したら絶対ヤバい。

 

俺が離れると、黒髪の女は何事も無かったかのように立ち上がり、服についた土を払った。

 

その姿を見て、部下らしき騎士達が安堵した表情を浮かべる。

 

「隊長、ご無事で……」

 

「えぇ。それより、この男を拘束しなさい」

 

「えぇっ!?」

 

俺、やっぱ捕まるの!?

 

「待て待て! さっき敵意は無いって言ったよな!?」

 

「敵意が無いのと、安全かどうかは別問題よ」

 

ぐうの音も出ねぇ。

 

騎士達が一斉に近づいて来る。

 

しかも全員強そう。

 

俺は反射的に逃げ腰になるが、その瞬間――。

 

『警告。生存率低下』

 

「うるせぇ!! 分かってるよ!!」

 

思わず叫ぶと、騎士達が怪訝そうな顔をした。

 

「あの……この人、誰と話してるんですか?」

 

「知らないわ。最初からずっとこんな感じよ」

 

酷くない?

 

そんな俺をよそに、騎士の一人が金属製の拘束具を持って近づいて来る。

 

その光景を見た瞬間、職業柄なのか妙な敗北感が込み上げてきた。

 

「待って……これ、完全に逮捕される側の流れじゃん……」

 

「当然でしょう」

 

「俺、普段はする側なんだけど!?」

 

「今日からはされる側ね」

 

この女、絶対性格悪い。

 

騎士達に両腕を拘束されながら、俺はガックリと肩を落とした。

 

異世界転移初日。

 

まさか数十分で逮捕されるとは思わなかった。

 

……俺、本当に生き残れるのか?

 

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