なので、本来はこういうものを書くはお行儀が悪いのだが、以前友人とのじゃれあいで執筆した文があり、放っておくのもどうかと思うため投稿する。
物凄く短い掌編なので致命的な齟齬はないといいなぁ、とかなんとか。
宇宙世紀0079年9月18日。
サイド7、第3工廠ブロック。
火の落ちたそれは戦場を駆けている時との落差が激しい。
まるで墓標の様な静けさだった。
一通りの整備は終了し、最終チェックの項目を一つずつ潰していく。
私の視線は端末と機体を行き来し、私自身がまるで機械であるかのようにチェックをし続けていく。
しばらくの間そうしていると、背後から声がかけられた。
「相変わらず、でかいな」
振り返るとパイロットスーツの上着を肩に引っかけたレイズナーが立っていた。
眼前に佇むガンダムのテストパイロットであり、そして士官学校時代からの腐れ縁―――親友だ。
「お前が乗るんだ。今さら怖気づくなよ」
「怖いさ。こんな化け物で戦争を終わらせろ、なんて言われてみろ」
軽口を叩きながらも、彼の視線は真剣だった。私も同じ気持ちだった。この機体が戦局を変える。そう信じなければ、ここまでの開発と犠牲は説明がつかない。
警報が鳴り響いたのは、その直後だった。
耳をつんざく爆音。床が跳ね、体が宙に浮く。次の瞬間、私は工具ラックに叩きつけられていた。腹部に焼けるような痛みが走る。手を当てると、ぬるい感触が広がった。
「ジオンだ! 偵察部隊が侵入!」
怒号と悲鳴が交錯する。ハンガーのシャッターが半壊し、煙が流れ込んできた。固定フレームの中で、ガンダムは微動だにしない。
――このままでは、破壊される。
私は歯を食いしばって立ち上がった。視界が揺れる。だが手は勝手に動いていた。非常梯子をよじ登り、胸部ハッチからコックピットへ滑り込む。
戦闘起動はできない。操縦権限もない。それでも整備モードなら――。
震える指でコンソールを叩く。補助電源が立ち上がり、計器に光が戻った。メインカメラのセンサーが淡く輝く。最低限の起動確認。これでいい。レイナーが生きていれば、すぐに出せる。
「急げよ……」
返事はない。無線はノイズだけだった。
私はコックピットを離れ、ガンダムトレーナーの運転席に滑り込んだ。大型輸送車両のエンジンを始動させる。固定具を確認し、ゆっくりとアクセルを踏み込む。巨体を載せた車両が軋みながら動き出した。
腹の感覚が遠のいていく。出血量で分かる。長くは持たない。それでもハンドルを握る手に力を込めた。安全区画まで運べばいい。それが私の任務だ。
外壁が爆発で崩れ、煙と破片が視界を横切る。その向こうを、一人の少年が必死に走っていった。恐怖に顔を歪め、振り返ることもなく。
――戦争は、ここまで来ている。
訓練では数字と戦略しか教わらなかった。だが現実は、あの背中だった。だからこそ、この機体を残さなければならない。次は、ああいう光景を減らすために。
トレーナーを所定位置に停止させる。固定ロック。起動状態、維持。計器は正常を示している。
任務完了だ。
安堵とともに、体の力が抜けた。レイナーが来るかどうかは、もう分からない。それでも後悔はなかった。使うべき機体は、ここにある。
視界の端が暗く閉じていく。最後に見えたのは、静かに待機する白い巨人の光だった。
それを確認して、私は目を閉じた。
何故か冒頭に1話表記が出ますが、続きません。
これはこれで終わりです。