「それじゃ、時間になったのでレイドの編成を始めたいと思う! いちおう自己紹介をしておくと、オレは今回のリーダーに選ばれたリンドだ。みんな、よろしく!」
ボス部屋を閉ざす大扉手前に進み出た二人のプレイヤーの内の一人、銀色の金属鎧に青いマントを翻すシミター使いがそう切り出した。
「選ばれたゆうてもコイントスやけどな」
同様に大扉手前に出たもう一人のプレイヤー、モスグリーンのジャケットに黒ずんだアーマーを着込んだサボテン頭のキバオウが茶々を入れた。
それを聞いた半分のプレイヤーが笑い、もう半分は不快そうに顔を歪めた。リンドもジロッと隣のキバオウを睨んだが、挑発には乗らずに話を続ける。
「……こうして、無事にボス部屋に到達できたのも、トッププレイヤーであるみんなの頑張りのおかげだ! その力をオレに預けてくれれば、絶対にボスを倒せる! みんな、今日中に第三層に行こうぜ!」
リンドが右拳を突き上げると、先ほどのキバオウのツッコミに笑わなかった者達が一斉に「オー!」と叫んだ。
以前は茶色だった髪を鮮やかな青に染めた事といい、その恰好や演説といい、リンドが精一杯ディアベルの真似をしようとしているのが分かる。
リンドがレイドの役割分担を告げる。途中、集団の最後方に居たナイト達を見た時、爽やかな笑顔が一瞬消えた気がしたが、特に口を挟まず指示を聞く。
八パーティーの内、リンドが率いる《ドラゴンナイツ》のA、B隊。キバオウが率いる《アインクラッド解放隊》のC、D隊の他、エギルのパーティーを含むフリーのパーティーが混成して出来たE、F隊の六パーティーがボス攻撃を担当。《レジェンド・ブレイブス》のG隊とキリト達余りものの5人のH隊の残る二パーティーに取り巻きMobの担当が告げられた。
フルに満たない人数のパーティーに弱い敵を任せる。任せられる側としては釈然としないものがあるが、戦力配分は理に適ってはいる。
だがそこに異論の声が上がった。壁際に固まっていたもう一つの五人パーティー《レジェンド・ブレイブス》のリーダー、オルランドだ。
「我々は、ボスと戦うためにここにいるんだ。ローテーションならともかく、最後まで取り巻きの相手をしていろという指示には納得できない」
太い声が、迷宮の壁に反響しながら消えていく。
オルランドの主張に多くのプレイヤー達がざわつく中、「アイツら何様だ」「新参のくせに」とという囁きが混じる。
オルランドの主張は解らないでもない。モンスターが落とす金は均等分配されるように設定しているが、経験値やスキル熟練度は早い話が活躍した度合いに比例して与えられる。ボスが持つ膨大な経験値を得る為に、ボスとの直接戦闘を望むのは当然の主張と言える。
特に《レジェンド・ブレイブス》は強化詐欺で得た金によって全身の装備を徹底的に強化したのだろう。おそらくこの場にいる誰よりも充実した装備の集団だ。だがそれに反して、彼らのレベルはこの中で最下方にあたる。そんな彼らがボスと戦う事で膨大な経験値を得る事ができたら、装備もレベルもトップのパーティーになる事も夢じゃない。
とは言え、レイドリーダーの指示に異を唱えるのは横紙破りもいい所だ。人によっては怒声が飛ぶ事もあるだろうが、他のプレイヤーは歪む表情と囁き声以上の反応を見せない。まるで、ブレイブスの五人――その装備から業物と解らせる輝きが、ある種の迫力を放って他のプレイヤーを黙らせているようだ。
「……解った。なら、オルランドさんたちのG隊もボス攻撃に加わってもらおう」
リンドが――レイドリーダーが提案を受け入れた。だが、それだと取り巻きの相手はどうなるのだろうと思ったら、今度はナイト達の方を見て言った。
「事前情報では取り巻きは一匹だけで再湧出しない。H隊だけに任せても問題ないか?」
リンドの発言にナイトは息を呑み、ユウキは「えっ?」と声を漏らし、ネズハは何を言われたのか理解できずに呆けた。同様に驚いていたキリトとアスナが同時に息を吸って何か言おうとしたが、エギルが左手を動かしてそれを制した。どこまでも落ち着いた声と態度で、リンドに確認する。
「一匹と言うが、雑魚ではなく中ボスクラスのモンスターだとも事前情報には書いてあったはずだ。その上、今回も一匹だけという確証もない。ワンパーティでは荷が重いと思わないか?」
「もちろん、第一層の過ちを繰り返すつもりはない。初回の挑戦で、事前情報と異なるパターンができたらその時点で一度退却。戦略を練り直すつもりだ。取り巻きがワンパーティーでは対処し切れないようなら、もう一隊回そう」
「それなら、ウチのパーティーがオルランドさんのとこと代わって取り巻きの相手に回る。担当を換わるだけだから大きな見直しは必要ないだろう。それから取り巻きが再湧出する様子が見られなかったら、こちらもボスの戦闘に加わらせてもらう。それでいいか?」
エギルの提案にリンドはしばし悩み、「分かった。それで良い」と答えた。
「すまないな。おかげで助かったよ」
「いいって事よ。オレもその方が良いと思って提案したんだ。こっちもお前達の力を当てにさせてもらうぞ」
エギルの言葉に、傍にいたパーティーの面子も頷きを見せる。
エギルのおかげで、却って安心して戦う事ができそうだ。信頼できる者と組むのと不審を抱いている者と組むのでは、気持ちの持ち様が大分変わってくる。なまじ爆弾になるものを抱えているだけに、エギルのパーティーの好意的な返事は本当に嬉しかった。同時に胸の奥に心苦しさも生んだ。
事前確認が終わり、後は挑むだけとなった。突入する予定の時刻を取り決めてはいたが、多少前後した所で何か問題がある訳でもない。
リンドが右手を上げて号令を掛けようとした。その時だった。
「ちょお待ってんか!」
「……何か、キバオウさん?」
「さっきからリンドはんは例の《攻略本》に頼りっきりや。他に確認せにゃならん事があるやろ?」
「今オレたちの元にある情報は《攻略本》だけだ。それとも何かい、事前にボスを偵察してきた人がいるっていうのかい?」
リンドの不機嫌そうな物言いに、キバオウは不敵に笑って答えた。
「いるやろ。この場所に少なくとも一人、自分の眼ェでボスを見た奴が。なら、そいつに話を聞かん手はないわ、そうやろ?」
キバオウはそう言って、ビシッと右手である一点を指差した。集まった数十人分の視線から逃れようと影が動いたが、ナイトはその影の背をトンと前に押し出した。
「どうや、黒ベーターはん! ボス攻略にあたって、なんぞ一言喋ってくれへんか!」
指されたキリトは困惑するが、そう言ったキバオウの表情は至って真剣だ。
ナイトに押し出された事を目で抗議する視線を送るキリトだが、ナイトは意に介さず「大事な事なんだから話してこいよ」と小声で追撃する。
キリトは腹をくくり、レイド全員の顔が見える場所まで行く。
「最初に言っておくけど、俺だってベータテストの時のボスしか知らない。だから、今回のボスは何かが……下手すりゃ何もかもが変わっている可能性だってありうる。でも、迷宮区に湧く雑魚はベータと一緒だった。だから、ボスが使う技も奴らの延長線上のものだと考えて間違いないと思う」
キリトの言葉を皆黙って聞く。リンドも口を挟んだり止めたりする様子はない。
「――――デバフを二重に掛けられるのは絶対に避けてくれ。落ち着いてハンマーをよく見れば、二発目は絶対に避けられる。それさえ気を付ければ、この陣容なら死者ゼロで倒せるボスだ」
そう締め括ると、プレイヤー達はグッと深く頷いた。
キリトが元の位置に帰ると、リンドはぱん、と手を強く叩き、号令を掛けた。
「……第二層ボス、倒すぞ!!」
シミターを高く掲げたリンドの言葉に、この場にいるプレイヤーは呼応して喊声を上げた。
喊声で通路を震わせながら、第二層ボスへの扉は開かれた。
「来るぞ、下がれ!」
キリトが短く、巨大な両手用ハンマーが振り被られるその軌道を見た時点で叫んだ。
おう、了解、という応答と共にエギルのE隊六人が大きくバックジャンプし、振り下ろされるハンマーから大きく距離を取る。
鮮やかな黄色いスパークを幾重にも帯びたハンマーは、青黒い敷石を激しく叩き、放射状に細いスパークが拡散した。トーラス族固有のソードスキル《ナミング・インパクト》が、中ボスらしく通常個体よりも広範囲にスタンを起こすスパークを撒き散らす。
キリトの指示によって逸早く退避している為、ダメージはもちろん、スタンに掛かる者もいない。
「全力攻撃一本!」
再度の指示でキリト、アスナ、ユウキがE隊と入れ替わる形で斬り込む。加えて、距離を詰める間での僅かな間にナイトは両手に一本ずつナイフを持って大きく振り被り、ネズハがキリトから受け取った《円月輪》を構え、頭部を――弱点の角の間の額目掛けて武器を投げつけた。
分散してポジションを取る二人が中ボスのターゲットを散らしつつダメージを与える。そこに色取り取りのライトエフェクトを引きながら三人のソードスキルが叩き込まれた。
「……行けそうね!」
攻略を開始して五分と少し。すでに二段目のHPゲージも半減させる順調さに、半ば定位置となったキリトの左隣でアスナが低く叫んだ。
「ああ。けど油断するなよ! 一層の事を考えると、ゲージの三本目で未知の攻撃をしてくる可能性もある! 十分に注意してくれ!」
『オウ!!』
キリトの叫ぶような言葉に全員が答える。
全身真っ青の牛男、《ナト・ザ・カーネルトーラス》。通称ナト大佐の攻略は順調だ。《投剣》を扱う二人が常にターゲットを散らしつつコンスタントにダメージを与え続けている為、味方に大きな被害もなく、そう遠くない時間で倒せる見込みだ。しかし、それはあくまでボスモンスターのオマケ、取り巻きのMobでしかない。
「回避! 回避―――――――ッ!」
広大なボス部屋の反対側から、やや裏返り気味の絶叫が響く。
ナト大佐の倍はある体躯の第二層ボスモンスター、《バラン・ザ・ジェネラルトーラス》。通称バラン将軍と本隊の方は難航しているようだ。
頭高五メートルを超える巨躯が振り下ろす黄金のハンマーは、部下のそれを上回る迫力とスパークを撒き散らす。部下のスキルより倍は広い効果範囲を持つバラン将軍固有の《ナミング・デトネーション》に逃げ損ねたプレイヤー二人がスパークに呑み込まれ、スタン状態に陥る。スタン中に一人が得物のショートスピアを手から滑り落とした。直後にスタンが解けかけ、そのプレイヤーはしゃがんで槍を拾おうとした。そこに二度目の《デトネーション》が炸裂し、ようやく槍を拾ったプレイヤーを呑み込み、硬直させる。
だが、さっきは立ったまま固まっていた彼が、今度はどうっと床に倒れる。彼にはスタンの黄色いエフェクトではなく薄い緑色の麻痺が包み込んでいた。
突入前にキリトが二発目を必ず避けろと言った理由がこれだ。麻痺は数秒で回復したりはしない。自然回復はするが、長時間まともに身体を動かす事は出来ない。戦闘中に麻痺になったら、助けが入らない限り死は避けられそうにない。
麻痺になった彼は、運良く味方の救助が間に合い、バラン将軍に踏み潰される事態は回避された。
「――――まずいな」
遠隔攻撃を担当しててモンスターとの距離があるナイトには本隊を見る余裕があった。その中で、バラン将軍に麻痺にされた七、八人のプレイヤーが壁際で麻痺からの回復を待つ様子が見えた。
救援か、一時撤退か。何か手を講じないと本隊が壊滅する可能性が考えられた。丁度ローテーションで下がってきたキリトに相談を持ちかける。
「もう少し戦えばタイミングにも慣れるはずだ。今んとこはベータと違いはないし、何とかなるだろ」
「だが、機会を逃すと一時撤退は難しくなるぞ。いざ退くとなった時、麻痺した奴は見捨てる事態になりかねない」
「――そうか。動けないプレイヤーを抱えての撤退となると危険過ぎるか。……早い内にナミング対策を徹底した方がいいかもな」
少し早口になって現状取るべき方針を話し合うキリトとナイト。それが定まると、急いで行動に移すべく指示を出す。
「アスナ、エギル、話があるから来てくれ! ユウキはE隊と連携してナト大佐の相手を! ネズ……他のみんなはそのまま戦闘を継続! 俺も前に出て指示を出す!」
各員の返事を聞きながらキリトはナイトに話を任せて、自身は混成E隊に指示を出しながら戦線に参加すべく前に出た。
呼んだ当人が前に出た事に首を傾げながら、アスナとエギルはナイトの元まで来る。ナイトは急いでキリトと話し合った事を伝える。
「――――という訳で、エギルはE隊を率いて本隊の援護に向かって欲しい。アスナは今話した事をリンドに伝えてくれ」
「俺は構わないが、こっちの人数を減らして大丈夫なのか?」
「そうよ。それにどうして私が伝えに行くの? 二人のどっちかが行った方が向こうで話し合いも出来て良いじゃない」
「こっちは俺も前に出て支える。それにHPもラスト一段だ。俺達だけで押し切れない事もない。アスナに任せるのはお前の方が足も速いし、俺達が話に行くより素直に聞き入れてくれそうだからだ」
それを聞いてエギルはフッと軽く噴き出した。
「確かに。男が行くより、女が行った方が男は素直になるだろうな」
「もう、何言ってんのよ! ――さっさと言って済ませてくるわっ!」
そう言ってアスナは高速で本隊の方へ駆け出していく。
それを見送ったナイトは左手にラージシールドを持ち、右手に左盾より二回りほど小さいカイトシールドを嵌める。エギルと視線を交わし、ナイトはナト大佐へ向かい、エギルはE隊へ呼び掛ける。
その言葉に面々は頷き、タイミングを計る。ナト大佐の攻撃を見切ったキリトが後退の指示を出し、そのままエギルを含むE隊は本隊の救援に向かい、ナイトはナト大佐の前に躍り出た。
「ハアッ!」
全速力でナト大佐の懐に飛び込んで右の掌――盾を腕に嵌める事で手を空けた――による変則の《閃打》を叩き込む。それに合わせて左右からそれぞれキリトとユウキが斬り込み、ネズハの円月輪が追い打ちをかける。
一斉攻撃の効果で行動遅延を起こしながらも、ナト大佐はハンマーを振り上げ、《ナミング》を叩き込む。ハンマーから放たれたスパークがナイトを襲うが、強化された各種防具に翳された二枚の盾はそれを弾き返した。ナイトは不敵に笑い、懐に潜り込んで今度は膝に《水月》を繰り出す。ダメージは微々たるものでも、身体を支える足の関節に衝撃をくらい、ほんの僅かに体勢が揺らぐ。
再び残る三人の一斉攻撃が決まり、ナト大佐のHPが残り三割を下回る。そこで牛男は雄叫びを上げ、真っ青だった肌の色が紫色に変色していく。死に際の変化に警戒して、フルアタック後に後退したユウキ達の元までナイトも後退した。
ナイトが後退した事でネズハも円月輪を投げつけながら合流し、そこに伝令に向かったアスナも戻ってきた。
「あと一人麻痺になったら撤退するそうよ」
簡潔に伝達内容を言葉にするアスナ。
一度全員で本隊の方の戦場を見やり、暴れ回るナト大佐の方を向き直る。
「こっちはもう一息ってとこだな」
「なら、早く倒して向こうに合流しよう」
ユウキの言葉に四人が頷く。
暴れ回る牛男がバケツのような蹄で床を踏み鳴らし、角の生えた頭を屈め、ぐうっと力を溜めた。
「突進来るぞ! 散開ッ!!」
キリトの合図で四人はバラバラにその場から離れ、ナイト一人だけが向かってくるナト大佐を待った。突進を迎え撃つ。のではなく、空いている右手でナイフを全力の下手投げで投擲する。ナイフは額に刺さるが、それで突進してくる牛男の勢いは止まらない。だがナイトは股割りの様に足を大きく広げ、屈められた頭の下に潜り込む。そこから左膝を曲げて身体を伸び上がらせながら、右掌の変則《閃打》でナイフの柄を叩き、ナイフを深々と突き刺す。ナイフを額へ抉り込まれて、ナト大佐は悲鳴のような雄叫びを上げて突進を止めた。
頭を上げたナト大佐の弱点の角の間の額をネズハの円月輪が斬り裂き、続けてキリト、アスナ、ユウキの三方向からの同時攻撃がナト大佐を襲い、それでHPバーは消え去った。
一際甲高い雄叫びを放ちつつ上体を仰け反らせて、牛男は膨大なポリゴン片を振り撒いて爆散した。
「危ないよナイト! 失敗してたら大ケガするかもしれないんだよっ」
「やっ、出来ると思ったから試したんだけど。それに即死はしないって、やり合った感触で判ってたし」
「だからって、無茶していい理由にはならないでしょ!」
「まぁ、危ないことは極力控えた方がいいってことだろ」
「……分かったよ。すまなかった、心配かけて」
ナイトの行動を窘めながらも、五人が集まってささやかに喜びを分かち合う。それもほどほどにして本隊の方を振り向くと、プレイヤー達の叫び声が上がった。何事かと思ったが、それが意気軒昂な鬨の声だと気付き、胸を撫で下ろしながらバラン将軍のHPバーの最後の一本が黄色くなった事を確認する。
「加勢しなくても何とかなりそうですね」
ネズハの言葉に皆一様に頷く。ベータの時と目立った変化が見られないなら、落ち着いて対処すれば問題ないというキリトの見方は間違っていなかった。コボルド王の時も注意深く観察していれば、装備が変わっていた事に気づけたかもしれない。
「……どうした?」
キリトがアスナの表情に翳りが出た事に気付いて声をかける。
「ううん、なんでもないの。ただ……一層のボスが王だったのに、二層のボスが将軍なのが、ちょっと引っ掛かって……」
「よせよ。ようやく倒したボスが、実は一尖兵に過ぎなかった。なんて笑えないぞ」
「何それ?」
訪ねてきたユウキに、古い格闘ゲームで史上最強のラスボスの一人に名が挙がるボスキャラが、ストーリ上では黒幕の組織の尖兵に過ぎなかった。という話を語る。ボスキャラ達の称号が軍隊を連想させる事から思い出して語ったナイトだが、そこにごごぉん、という感じの轟音が響いた。
音の響いた方――牛のレリーフが施された青黒い石造りのコロシアムが可動していた。床面がゆっくりせり上がり、三段のステージを作り出す。
「どうやら、その笑えない事態みたいだぞ」
ステージの上で揺らぎ始めた背景から漆黒の影が滲み出す。
大木の幹ほどもある二本の脚。黒光りする腰のチェーンメイル。分厚い筋肉に覆われた上半身。ねじくれた髭は腹近くまで垂れ下がる。頭部はもちろん牛のそれだが、角は六本なり、その真ん中に白金と思しき円形の装身具――すなわち王冠が輝いている。
雄叫びを迸らせながら、牛男の周囲に次々と雷が落ち、コロシアム中を白くフラッシュさせた。
《アステリオス・ザ・トーラスキング》。トーラス族の王が、六段に及ぶHPバーを連れてその姿を現した。
思いのほか文量が多くなったので、適度な所で一旦切ります。
後編次第では結合する可能性も。
感想、誤字脱字等ありましたらよろしくお願いします。
では、また次回。