SAO 〜少女の盾を目指した者〜   作:火星の渡鴉

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実は初期の構成では彼らもちょっと登場する予定だったのだが、実際に書いてたらその姿は跡形も無かった。
野武士面の兄さん出番は、遥か彼方に。



03:目指すもの

広場の喧騒から離れた《始まりの街》の路地。

ユウキを連れたナイトは一つ5コルのドリンクを二つ購入し、一つをユウキに手渡す。

口にしたそれは甘く冷たい。思っていた以上に喉が渇いていたのか、ナイトは一気に半分まで飲み干す。

 

「……ボク達、これからどうなるのかな?」

 

ユウキはポツリとそんな事を漏らす。

不安からか、ドリンクを持つユウキの手は未だに震えている。

「その事についてなんだが……」と、一つ前置きを置いて、ユウキと目線を合わせる。

 

「これから俺は、この街を出ようと思う」

「えっ?」

 

ユウキは驚きで目を見開く。

 

「茅場晶彦は言った。ゲームをクリアすれば解放されると。だったら俺は、それに挑む。このアインクラッドの制覇を目指す為に動こうと思う」

「で、でも、死ぬかもしれないんだよ。それに外から助けが来るかもしれないし」

 

外部からの救助を待つ。おそらくそれが一番安全で賢い選択だろう。

けれどナイトは、その選択を首を横に振って拒否する。

 

「残念だけど、俺は待てない。救助が来るまで、俺はきっと耐えられなくなると思う」

「耐えられ、ない?」

 

おそらく予想外の言葉だったのだろう。ユウキはきょとん、とした表情で首を傾げた。

 

「救助が来るのは何時になるだろう? 明日か。明後日か。それとも一週間後か。一か月か。半年後。一年後。……もしかしたら、もっと後かもしれない」

 

ナイトは空を見上げる。

釣られてユウキも空を見上げた。見えるのは夕焼けに染まった空。けれど目に映っているのは仮想の空。この空の向こう側には、こことは違う世界――現実世界があるはずなのだ。

 

「……そっか。ボク達には、今外で何をしているか分からないもんね」

「ああ。何時来るのか分からないものを待ち続けていられるほど、俺は辛抱強くないんだ」

 

いつか。またいつか。と待ち続ける日々を想像する。

出口の無い迷路を彷徨うかのような時間。光のない暗闇の中で佇むような時間を、ひたすらに耐える日々。想像するだけで気が滅入ってくる。

 

「だから、『ゲームクリア』という目標に向かって進む方が、このゲームに集中する方が何倍も気が楽だ。そうしている間は、余計な事も考えなくて済む」

 

目的があれば、それに没頭できる。

例え小さくても目指す光がある限り、それに邁進し続けれる。

前を向いて、歩き出す事が出来る。

 

「『これはゲームであって遊びではない』か。その意味が、今ハッキリと分かる気がする」

 

全百層で構成される城の攻略。それも死ねば終わる環境下で行われる究極のノーコンテニューゲーム。こんな鬼畜なものに挑むには、一生を掛ける必要があるのかもしれない。

 

「クリアするしかないというのなら、全力で挑もう。

 死ねば終わるというのなら、死ぬ瞬間まで足掻いてやろう。

 この世界から出られない今、此処が現実そのものなんだ。

 だったら、俺は生きる。最後まで、生き抜いてみせる!?」

 

言葉を重ねる毎に、ナイトは自分が興奮していくのが分かる。

それは熱となって心を、身体を動かす力となっていく。

 

「だから俺は、この街を出て戦う。そう決めたんだ」

 

 

 

ナイトの瞳が、前髪に隠れていても輝いているのが分かる。

 

――すごいな。とユウキは素直に思った。

 

あの広場の出来事で戸惑う事しか出来なかった自分に比べて、目の前にいる彼はとても強いと思った。

絶望でうずくまってしまいそうな事を告げられたはずのに、もう次の事を考えて動き出そうとしている。

その瞳は、すでに次を目指して前を見ている。

 

「”生きる”……か」

 

ユウキは自分の体の事を思い返す。

例え目覚めても、ユウキ自身が現実世界で目を覚ますことはほとんど叶わない。

仮想世界に囚われるというのなら、すでにそうなっているのも同然の状態なのだ。

なら、何に怯える必要があるというのか。

 

「なら”生きてみなきゃダメだね”、この世界で」

 

このソードアートオンラインをどうしてもやってみたくて無理を言った。

先生がすごく困った顔をしたけど、手に入れてきてくれた時は心の底から感謝した。

憧れた世界に来る事ができて、命一杯自分の体を動かす事ができて本当に楽しかった。

デスゲームと化した今でも、その思いは不思議と変わらない。

 

「ボクも行くよ、ナイト」

 

ナイトが驚いた顔をする。その表情を見たら、何だが楽しくなってきた。

 

「決めたんだ、ボクも”生きて戦う”って。だからボクはナイトと一緒に行く。ナイトだって、本当はそのつもりだったんでしょ?」

「あ~~うん……その方が心強いとは思ってた。ただ、こんな危険な我が儘に他人を付き合わせるのはどうかと思って……」

「それならボクも一緒。ナイトが何を言っても、ボクはナイトに付いていくよ」

「……」

 

ナイトは頬を掻きながらそっぽ向いてしまった。

照れたのかなって思うと、なんだか口元が緩むのが抑えられない。

 

「……何か、スゴク楽しそうだな?」

「そうだね。もう遊びじゃないけど、これもゲームじゃない。だったら、楽しまなきゃ損だよ」

「……だな。SAOがやりたくて苦労して買ったもんな。それが楽しめないのはもったいねぇな」

 

手を上げようとして、今ドリンクのグラスを持っていることを思い出した。

まだ口をつけていないドリンクを見て、ナイトの手にもまだグラスがあるのを見て、やってみたいことが思いついた。

木製のグラスを目の前に掲げてみせる。ナイトは最初キョトンとしたけど、すぐに同じようにグラスを掲げてくれた。

 

「ゲームクリア目指して頑張ろう、ナイト!」

「必ず、生きてクリアしてみせような、ユウキ」

 

コツッ、と木製のグラスから軽い音が鳴る。

初めて飲んだ仮想世界のジュースは、とてもおいしいと思った。

 




ユウキの事を、ちゃんとユウキっぽく書けているのだろうか。
それが一番の悩み所。
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