……今目の前で起きている事象を共有しよう。
昨夜までか弱い子供のようだったゴブリンたちが、今朝になって目が覚めると、大きい者は私と同じくらいまで体が巨大化していたのだ。
なんだろう、全員がより人間らしい体になっている気がする。
昨夜まではこんな見た目ではなかったはずだが……。
イザークも目の前で起きている事象を理解しきれず、ただただ呆然と立っている。
よし大賢者、解説求ム。
大賢者『解。彼らは昨夜の貴方の名付けによって種族が進化しました。貴方が名前を与えたことにより彼らはネームドモンスターとなり、それだけ魔物としての格も上がり種族が進化したものと考えられます。』
名付け……そういえば昨日やったな。
それで、雄のゴブリンはホブ・ゴブリンに、雌のゴブリンはゴブリナになったと。
名付けによって魔物の種族が進化することがあるんだな、覚えておこう。
……あれ?前にも聞いたっけか。
ともかく、イザークにもそれを共有したところ、どこか腑に落ちたような表情をしていた。
ついでに牙狼族の様子を見に行ったら、それはもう大きくなっていた。
私たちが戦っていたときよりも一回り二回りは大きくなっている気がする。
たった一回の名付けで何故こんなにも大きくなったのかと問うと、
ランガ「我らは全にして個。本来なら一体名付けするだけで群れ全体が進化するのですが、主人様は群れ全員に名付けを行ったため、普通の名付けよりもより強力に進化したのです。」
とはいえ、種族としては一段階ですけどね。と最後に付け足した。
ちなみにランガというのはこの群れの若頭、今となっては立派なリーダーとなった個体の名前である。
進化した後の種族名はリーダーにちなんで「嵐牙狼族」となっていた。
これから頼りにしてるぞ、と言って体を撫でたら尻尾を千切れんばかりに振った。
イザークが羨ましそうな目で見ていたので「お前も撫でたいか?」と聞くと、「昨日は私も頑張りました、撫でてください!」と撫でられの催促がきた。
まあ確かに、ある地点の防衛ラインを一人で守ったのは事実だし、なんなら個体数の減少にも協力してくれた。褒美をやるのは親として当然だろう。5分くらい両方を撫でていた。
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全員が進化したからなのか、効率が想像以上に良かった。
これなら今日中に資材を集め終わり、明日から本格的な作業に入れるだろう。
師団を動かすことも検討したが、その必要もないらしい。
なんとなくボーッとしてたら、イザークが宴の開催を提案してきた。
確かに、村の危機を救った祝いと皆が進化した祝いがまだだったな。
それに、少しは楽しいことが無いと士気は簡単に下がってしまうからな。
私はその提案を了承し、今夜にでも開くことを皆に伝えてくれと言った。
その日は資材集めから、急遽宴のための食料集めになった。
その集めた食材で開いた宴はとんでもなく盛り上がり、翌朝の日の出ごろまで続いた。
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翌朝、私は全員を集め最も重要な問題、ルールについて話していた。何故かと言うと、昨日寝る前にふと思い出したからだ。
この世界の絶対のルールは弱肉強食のみ。そんなものだけではこの村は統治しきれない。
故に、私は3つのルールを決めた。多すぎても覚えきれない奴がいるからである。
「襲わない争わない見下さない。この3つを最低でも卿らには守ってもらいたい。」
イザーク「まず襲わないについてですが、これは仲間内に限らず、周りから来た者たちに対しても適応してください。相手がただの旅人や助けを求めている者だった場合、私たちが悪人になってしまうからです。なので基本、私たちから手を出さないように。向こうが先に手を出し、尚且つそれがここにいる者たちを害すような行為だった場合に限り、報復を許可します。」
イザーク「次に争わない。これはつまり、最初から手を出して暴力的に解決しようとせず、話し合いで解決しようという事です。」
イザーク「そして見下さない。貴方たちは父上の名付けによって種族が進化しました。それは、その分周囲よりも強くなったという証拠。故に、自分より弱き者を見下さず、常に対等な立場で接するよう心がけてください。」
イザークからこの3つのルールの詳しい説明を受け、皆納得したような表情をしていた。
「この3つのルールは、ここにいる間は最低限守るよう心掛けてくれ。さて、長ったらしい話はここまでにしよう。さあみんな、今日も一日頑張っていくぞ!」
ALL『はい‼︎』
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「……分からない?」
リグルド「はい、資源は集め終わったんですが……ハイドリヒ卿が書いたこれがなんなのかよく分からなくて……。」
……まじか。
図面を読めないとは予想外だった。
今思えば、彼らは縄文人のような住まいをしていたのだから、そこまで住まいにこだわってなかったのだろう。気が回ってなかった私の失態だ。
あ、ちなみにリグルドというのはここの村の村長の名前だ。
「この村に読める者はいなかったのか?」
リグルド「えぇ、残念なことに。ですが、解決策はあります。」
「……言ってみてくれ。」
リグルド「ドワーフ族です。その者たちには我らの武器などを雑用や物々交換などで工面してもらったことがあります。彼らなら器用なので、建築にも心得があるでしょう。もしかしたら、我らの服も見繕ってくれるかもしれません。」
「なるほど……ドワーフ族に頼めば、衣食住のうち2つが解決するかもしれないのか。なら、頼む価値はあるかもな。」
リグルド「!……では!」
「ああ、ひとまず私とイザークで交渉に行こう。何かあったら「思念伝達」で呼ぶ。卿には万が一の時に来れる人員の厳選を頼む。」
リグルド「ならば交渉はハイドリヒ卿に一任します。万が一の場合は私たちにお任せくだされ。」
「そこまで言うのなら、卿に任せよう。私たちがいない時の村の警護と、万が一のための人員の用意を頼んだぞ。」
リグルド「はっ!ハイドリヒ卿の仰せのままに!」
……確かに絶対の忠誠を誓うとは言っていたが、ここまでするとは…。
いつの間にかハイドリヒ卿に呼び方変わってるし。別にいいけど。
一応、この世界に来てから初めての外交みたいなものになるのだろうか?
だからと言って大して緊張はしていない。この程度軍属の時代に何度も立ち会った事がある。
私は私の出来ることをするまでだ。
「……そうだ、イザークにも伝えておかなければ。」
交渉団の一人(二人しかいないが)のイザークに声をかけるのを忘れていた。
出発は明日の昼頃、ランガに乗って移動でいいだろう。
この世界でバイクは流石に目立ちすぎるだろうしな。
……折角時間が出来たし、武器作りに挑戦してみるか。
今日のやる事が無くなった私は、武器作りのため城に籠ることにした。
ドワーフ族……血気盛んな種族じゃないと信じたいな。
書いた。