ハイスクールD×D ハートのA《セイブ・ザ・クイーン》   作:天神神楽

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前話の初めでガブリエルがAやQのことを言っていますが、元々そういう概念があって、技術が提供されたときにそれを流用したと言うことにして下さい。



お別れ

「彼女が例のシスターなのですか?」

ヴィーラもアーシアも眠りについている夜の教会。そこではグリゼルダとガブリエルが話していた。

「はい。彼女自身には何の問題もありません。信仰心という面でも、それに彼女の人柄も好ましいものです。ですが……」

「《システム》に不調をきたす存在となってしまったのですね」

「はい。悪魔を癒やす神器は、システムに影響を及ぼしてしまいます。ゆえに、あの神父様が言ったように教会から遠ざける必要があります」

そういうグリゼルダの表情は辛そうであった。少ない時間だが、アーシアの人柄に触れ、グリゼルダ自身非常に好感を覚えていたのである。そんなアーシアを追放しなければならない現状を、グリゼルダは悔いているのであった。

「たしかに、今の状況で彼女を傍に置いておくことは難しいでしょう。ミカエル様に尋ねても同じ答えが返ってくることは確か」

「そうですか……」

「でも、彼女を異端者とすることは、私たちが決めることではありません。それは主がお決めになること。そして、悪魔を癒やせる神器が存在することもまた、主がお決めになられたこと。教会からは遠ざけなければなりませんが、天界が見放すことはないと私が保証いたしましょう」

「ガブリエル様……」

熾天使であるガブリエルがアーシアのことを保障してくれたことに驚くグリゼルダ。

「本来ならば、救い導かなければならない敬虔なシスターをこのような扱いをしなければならないことを謝らなければなりません。現にミカエル様からなるべく早く事態を収束するよう連絡が来ています。長くて三日です」

残酷な宣告に、グリゼルダは頭を垂れる。

「分かりました。そのことは私から告げましょう」

「その際は私の名を出して下さい。天界の意志であることをしっかりとアーシアさんに伝えて下さい。それと、これを彼女のお守りとして」

そういうと、ガブリエルは自信の翼から一枚大きな羽を抜く。その羽は翼から離れてもなお金色に輝いていた。

「私の聖気をできる限り込めておきました。これからの苦難を少しでも和らげることができるならば良いのですが」

「そうなってくれることを私も祈っています」

その答えに満足したのか、笑みを浮べてガブリエルはこの場を離れていった。

一人残されたグリゼルダは、敬虔なシスターのせめてもの幸せを願い、月明かりに照らされる聖堂で祈りを捧げるのであった。

 

 

 

今後の方針を告げられたアーシアは、その言葉をかみしめていた。しかしその表情は悲観したものではない、

「本来ならば救わなければならない存在であるあなたにこのような宣告をしなければならないこと、本当に申しわけありません」

「いえ。そこまでのご配慮、ありがとうございます。ガブリエル様のお言葉には驚きましたけど……。でも、それもまた主の試練ということでしょうから、頑張ります」

そういうアーシアの姿はまさしく聖女であった。

「そうですか……。アーシアさんにガブリエル様から贈り物があります。せめてもの助けになるのようにと」

そう言って渡されたガブリエルの羽は、首から下げられるように、ネックレスのようにされていた。グリゼルダのお手製である。

「ガブリエル様の羽です。どうぞ」

「えぇぇ!? ガブリエル様の!? そんなに凄いもの受け取れません!」

「これは天界からのせめてものお詫びです。あなたの人生を狂わせてしまい、苦難の道に送り出すことしか出来ない私たちを許してくれ、とは言いません。せめてあなたに少しでも安寧が訪れてくれることを願います」

それを聞いたアーシアは落ち着きを取り戻し、その羽を大切に抱きしめた。

「ありがとうございます。大切にします」

その姿を見たグリゼルダは、この日初めて笑顔を浮べた。

「せめて、ここを起つ日まではゆっくりしていって下さい。ヴィーラと一緒に遊んであげてくれるかしら? あの子、あなたのことを気にしているから」

「はい。私もヴィーラさんとはもっとお話したかったんです」

グリゼルダと別れ教会の外に出ると、そこではヴィーラが大量の動物や鳥たちに囲まれていた。というか多すぎてぷるぷるしていた。

慌ててアーシアが駆け寄る。

「だ、大丈夫ですか!?」

アーシアが来たからか、ヴィーラの肩や頭に乗っていた動物たちがヴィーラから離れた。

「ふぅ……ありがと、アーシア」

「い、いえ。でも、ヴィーラさんって、本当に動物さんに好かれているんですね」

「うん。撫でてあげると一杯近寄ってきてくれるの」

そう言いつつ、足下を独占していた犬の頭を撫でると、その犬はゴロゴロと喉を鳴らしながらヴィーラに甘えた。それを羨ましそうに他の動物たちが見ていた。

「私も触っていいですか?」

「うん。この子達は大人しいから。撫でてあげると喜ぶよ」

アーシアがおそるおそる近くにいた子犬の背中を撫でると、その子犬はアーシアの膝の上に乗った。

「か、可愛いですー! はわわ~」

動物たちに囲まれ、目をハートにして幸せそうにしていた。

やがて、日も暮れかけ、鳥たちはその場を離れていき、他の動物たちも離れていく。

「みんな行っちゃいましたね」

「みんな野良か、他の家の子だから。じゃあ、ご飯用意しよっか。姉さんたちが先にやってると思うけど、一緒に手伝お」

「はい!」

アーシアの手を繫いで二人一緒に台所に向かう。そこにはヴィーラの言うとおりシスター達が夕食の用意をしていた。

「あら、ヴィーラとアーシア。手伝いに来てくれたの?」

「うん。今日のご飯は?」

「今日はアーシアが来たからご馳走よ。本人に手伝ってもらうのもなんだけどね。じゃあ、アーシアはあっちの方で妹たちの手伝いをお願い。ヴィーラはメインの方をお願い」

「は、はい!」

「ん。これだね」

シスター総動員で作り上げた料理は、素晴らしいものだった。普段は慎ましやかなメニューなのだが、今日は特別と言うことでグリゼルダも許していたのである。

「さぁ、主に祈りましょう」

食前のお祈りを済ませ、ジュースで乾杯をする。今日の主役であるアーシアは少し困惑しつつも嬉しそうに夕食を食べていた。教会のシスター達は、アーシアの境遇を知りつつも、そのことを気にすることなく、自然な様子でアーシアに話しかけていた。

やがて豪華な夕食も終わり、入浴も済ませたあと、ヴィーラが自室で本を読んでいると、控えめなノックがされる。入ってきたのはアーシアである。

「その夜遅くにすみません」

「大丈夫。どうしたの、アーシア」

読んでいた本を閉じ、アーシアを椅子に座らせる。

「あの、今までのことのお礼を言いたくて」

「そんなこと、気にしなくていい」

「いいえ! ヴィーラさんの、グリゼルダ様達のお陰で、私はこんなに安らかな心でいられるんです。あのままでしたら、私は絶望のまま堕天使の元へ行ってしまうかもしれませんでした。でも、天の方々から頂いた大きなご恩があれば、それを糧に試練へと赴けます」

「そっか。これから一緒にいられないのは申し訳ないけど、頑張って」

「はい。この先苦難もあるでしょうけど、一生懸命頑張りたいと思います」

その後も色々話をしていたのだが、日を跨ぐ頃になりアーシアが小さくあくびをする。

「ん、もう遅いし今日は終わりにしよっか」

「は、はい。…………」

話を終わりにしてそろそろ寝ようとすると、なにやらアーシアがもじもじしていた。

「そ、その……」

「ん?」

「そのっ、今日は一緒に寝てもらえませんか?」

顔を真っ赤にしながら驚愕のお願いをするアーシア。しかし、ヴィーラは慌てず頷くとアーシアをベッドに誘う。

「うん。今日はいろいろあったしね。一緒に寝よ」

一切動じないヴィーラに、アーシアの方が慌ててしまった。しかし、誘ったのはアーシアなので、顔を真っ赤にしながらヴィーラの隣に入る。

「そ、その、狭くありませんか?」

「大丈夫。アーシア、あったか」

真っ赤になっているアーシアの体温は高いので温かいのは確かなのだが、そういう問題ではない。ヌイグルミ感覚でいるヴィーラは、アーシアを抱きしめており、さらにアーシアの体温が上がるばかりである。

「はわっ、はわわ!?」

「アーシア、これからは傍にはいられないけど、もしものときは必ず助けるから」

抱きしめながら言うヴィーラの言葉は、真剣なものであった。アーシアも緊張しつつも、ヴィーラに身体を預ける。

「はい……、それだけで、本当に助けられます」

「うん。ごめんね、一緒に行けなくて」

「いいえ。心にいてくれるのですよね? それだけで十分です」

そういって、アーシアもヴィーラの胸に顔を埋める。

「あったかいです……」

そう呟くと、アーシアは小さく寝息を立て始める。ヴィーラはアーシアを抱きしめると自分も根を閉じたのであった。

 

 

 

そして約束の日。アーシアは小さなキャリーバックを手に、教会の前にいた。元々いた教会を出るときとは違い、教会にいるシスターや神父全員がアーシアの見送りにきていた。

「アーシア、忘れ物はありませんか?」

「はい。色々なものをいただいてしまって……。本当にありがとうございます」

「何かがあったら、こちらに連絡をして下さい。遠慮してはいけませんよ?」

「はい。そのときにはよろしくお願いします」

グリゼルダと挨拶したのを皮切りに、他のシスター達とも話を始める。そして最後はヴィーラ。

「ヴィーラさん、本当にありがとうございました。あなたのお陰でこの三日間、とても楽しかったです」

「それならよかった。ギリギリになっちゃったけど、これ」

ヴィーラが渡したものは小さな剣の柄とイヤリング。

「これは?」

「柄のほうは僕の聖気をこめたもの。力を込めれば剣になるから、護身用にして。思いっきり振れば、ビームみたくなるから使いやすいと思う。イヤリングの方はお守り。強く願ってくれたら、すぐに助けにいく。いま付けてあげる」

そういうとアーシアの耳にイヤリングを付けてあげる。アーシアの金髪と対照的な銀色のイヤリングは、アーシアにとても似合っていた。

「うん、似合ってる。綺麗だよ」

「あ、ありがとうございますぅ……」

「それと、これも」

最後に渡したのは、写真。小さな額には、教会のシスター達とこの場所で撮った写真が収められていた。

「家族の証。いつでも帰ってきて」

「ヴィ、ヴィーラさん、皆さんっ!!」

泣かないようにしていたアーシアも、これには我慢が出来ず涙を流した。そんな様子をシスターたちは優しく見守る。

「はい、はいっ! 皆さん、本当にありがとうございました。いってきます!」

そう笑顔で言うと、アーシアは旅立っていった。

アーシアの姿が見えなくなると、グリゼルダは何も言わずにヴィーラのことを抱きしめる。

「泣いて良いのですよ。よく我慢しましたね」

「うにゅ……ぐすっ。ありがと、グリゼルダ」

そう言うと、ヴィーラはグリゼルダの胸の中で静かに涙を流す。

シスター達はヴィーラのことをグリゼルダに任せ、ソッと教会の中に戻る。

「……もう大丈夫。ありがと」

「ふふっ、どういたしまして。さ、私たちも戻りましょう」

グリゼルダはヴィーラの手を握って教会に戻ろうとする。

「グリゼルダ、僕、頑張る」

「え?」

「アーシアを、ううん、グリゼルダ達もみんな守れるようになるから」

そう言うヴィーラの表情は何かを決心した表情であった。

「そうね、私もお手伝いするわ。一緒に頑張りましょう」

「うん」

 




いったんアーシアとはお別れ。
すぐに再開しますが。一巻はすぐに終わると思います
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