外スラを空振り続ける5番バッター   作:フランスパン

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甲子園〜ドラフト

『五番、指名打者、重根(かさね)くん』

 

 

 

 高校最後の夏、重根哲人(かさねてつと)はかつてないほどの大一番に臨んでいた。

 

 九回裏、スコアは3-4で1点ビハインド。

 しかしランナーは二、三塁と打てば、チームは一気にサヨナラ勝ちで甲子園を決める。

 

 緊張しない方がおかしい場面だった。

 

 それでも、哲人は打席で笑顔を作る。

 哲人の持ち味はどんな時でも笑顔を絶やさないことだったからだ。

 

 外スラを盛大に空振っても。

 四番のプロ注目の強打者が作ったチャンスで見事に三振に打ち取られそれを無駄にしても。

 

 彼はいつも笑顔でいて、その度にチームメイトからどやされるのだった。

 

 

 

「打てー! お前なら行ける!」

 

「頼む、ここだけは!」

 

 

 

 そんなチームメイト達も今だけは哲人に精一杯の声援を送り続ける。

 

 今日の哲人は3打席で2三振と完全に当たっていなかったがそれでも仲間である彼を信じていた。

 

 一球目。

 外角いっぱいのストレートでストライクをとられる。

 

 続く二球目は内角高めに球が浮き、1ボール1ストライクとしたものの、三球目で外に逃げるスライダーを空振り2ストライク。

 

 あっという間に哲人が一番苦手とするカウントに追い込まれてしまう。

 

 

 

「後一球、落ち着いていけ!」

 

「見極めるんだ! 慌てる必要はないぞ!」

 

 

 

 両ベンチから投手へ、哲人へ監督が言葉を飛ばす。

 相手ピッチャーはそれに深く頷き、哲人は変わらず笑顔のままバットを構え続ける。

 

 そして、ピッチャーが大きく振りかぶり、四球目。

 

 続けての外スラ——のはずが、上手く引っ掛からなかったのか変化しない。

 

 それは、幸運にも手を出してしまっていた哲人のバットの真っ芯へ向かって行き——

 

 次の瞬間、快音が球場に鳴り響く。

 

 思わずピッチャーも膝をつく、文句なしのサヨナラ3ランだった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 哲人によるサヨナラホームランで夢の舞台への切符を掴んだ彼の高校は甲子園で快進撃を続けていた。

 

 強豪校を相手にエースが好投を見せ、完封勝利を飾ったり、地方大会で打率が1割台だった選手がサイクルヒットを達成したり、と。

 

 いかにも甲子園らしいドラマの連続で彼らは勝ち進む。

 

 なお、その間哲人は一回戦ではホームランを放ったりとそこそこの成績を残しながら、毎試合外へ逃げる変化球で三振を取られていた。

 

 そんな名試合をいくつも残しながら、高校として初めてのベスト8まで駒を進めた彼らは準々決勝で前回大会の優勝校と対戦する。

 

 その日もエース、打線共に好調で。

 プロ再注目とされている最大150km/h以上の豪速球を投げる相手ピッチャーを見事に打ち崩すことに成功した。

 

 

 

「いけるぞ、勝てるぞ」

 

「まだ油断するなよ。5点なんてあっという間だ」

 

 

 

 ゲームが後半戦に入る頃にリードを5点までに広げ、ベンチの雰囲気も良い。

 浮ついているという訳ではないが、このまま行けば勝てる、そういった雰囲気があった。

 

 とはいえ、相手は去年の優勝校。

 打線が沈黙したまま終わるはずがなかった。

 

 先頭打者に内野安打で出塁されると、そこから連打を重ねられ、ノーアウト満塁。

 

 次の四番バッターはボール球を出さずに追い込んだ……が。

 決めに行った内角高めいっぱいのストレートがスタンドへ飛ばされ、1点差へ詰め寄られる。

 

 その後も追加で1点を加えられ、なんとか3アウトとしたものの5点もあった点差はたった一回で同点に詰め寄られてしまった。

 

 しかし、幸いそれでエースは調子を落とすことなくそれからは全て三者凡退に抑えこみ継投をせずに済む。

 

 

 

 同点のまま迎えた最終回。

 エースが表の相手の攻撃で三者三振とし、良い流れを裏へ持っていく。

 

 その流れに上手く乗り、打線も続いた。

 二者連続のヒットでノーアウト1塁2塁とし、相手ピッチャーが変わるも確実に送りバント。

 

 続く四番は三振に倒れ、2アウト2塁3塁と粘られる。

 

 ここでバッターは今日ファーストの守備についている哲人。

 地方大会決勝ぶりの大チャンスが彼の元に訪れていた。

 

 

 

「お前が決めるんだ!」

 

 

 

 監督からの激励も受け取り、哲人は打席に立つ。

 今日も豪速球と変化球を混ぜて投げる相手エースの前に一度も塁に出れていなかったが既に相手のピッチャーは変わった。

 

 速球中心の投手で、ストレートには強い哲人にとって相性が良い相手だ。

 

 そして、投げられた初球。

 

 外角のボール球を見事に掬い上げ、センター前へと持っていく。

 その間に三塁ランナーが帰り、一点を追加とする。

 

 サヨナラだ。

 哲人達は、去年の優勝校相手に健闘どころか、打ち破ってベスト4を決めたのだ。

 

 

 

「よくやった!」

 

「外スラじゃなくて助かったな!」

 

「お前が外角は全部振るもんな!」

 

 

 

 チームメイトからもみくちゃにされ、罵倒とも取れなくない褒め言葉を大量に投げかけられる。

 

 その言葉一つ一つが哲人には嬉しくてたまらなくて、思わず泣きそうになってしまった。

 

 そのことを試合が終わってから結局イジられてしまったのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 この調子のまま哲人達は優勝まで駆け上がった……かと思いきや。

 

 準々決勝で力を使い果たしたのか、準決勝ではエースにも打線にもイマイチ元気がなく、名門校にあっさり敗北を喫してしまう。

 

 哲人も4打席中2三振と中々前回の調子を引き継げず、最終打席でなんとかホームランを放つもチームの勝利までには繋がらなかった。

 

 それでも、学校として最高のベスト4。

 最高の仲間と共に最高の思い出を作り、哲人の野球人生はここで終わるはずだった。

 

 だが、ほんの気まぐれで出したプロ志望届が、哲人の運命を大きく変えることとなる。

 

 

 

「呼ばれると思う?」

 

「うーん、何人かから名刺は貰ったけど……」

 

「甲子園でもホームラン打ってたしきっと呼ばれるよ!」

 

「そうかなぁ」

 

 

 

 幼馴染の未来(みらい)と共にドラフトは見守る哲人だったが、うちで指名されるのは大活躍だったエースくらいだろうと思っていた。

 

 いくつもの強豪校を封じ込め、ドラ1候補である哲人達のエースは数々の注目選手と共にドラフトを見ている様子がテレビに映っている。

 

 ああいうのがプロになるのであって、変化球に苦しむ自分にプロ野球は縁がないだろう。

 そんなことを思いながら哲人はその様子を見ていた。

 

 憧れが無いわけじゃないが、とにかく彼には自信がなかったのだ。

 

 

 

「絶対呼ばれる! ずっと哲人を見てきた私が言うんだから間違いないって!」

 

「そういってもらえるのは嬉しいけど、そんな派手な成績残してないからね」

 

「ホームラン打ったのに?」

 

「だからあれはたまたま……あ、始まるよ」

 

 

 

 そうやって、未来と会話をしているとドラフト会議が始まる。

 

 一巡目、哲人達がベスト8で破った150km/h超えの超高校級の投手などが一気に指名されたた。

 

 その、将来を大きく期待される選手達の中には哲人達のエースの姿も。

 プロ野球選手になることが夢だと再三語っていた絶対的エースは昨年の日本シリーズ優勝球団に指名されとびきりの笑顔を見せていた。

 

 それを眺めながら、良かったなぁと哲人は思う。

 チームメイトの夢が叶った瞬間は誰にとっても嬉しいものだ。

 

 それから、六巡目まで哲人の名前が呼ばれることはなく、まあそんなものかと思っていると、次の七巡目。

 

 ついに、哲人の番が来る。

 

 

 

『……重根哲人 内野手』

 

「哲人!? 呼ばれたよ、プロだよ!」

 

「え? これ現実?」

 

 

 

 哲人を指名したのは、パシフィックリーグで万年下位に沈む、千葉ツインドリルズという球団。

 投手陣はそこそこ奮闘しているものの貧打と守備力不足に苦しんでいた。

 

 そのためか、今回のドラフトでは、とにかく()()()バッター、もしくは守備力に定評のある選手を囲う指名をしている。

 

 哲人の場合は、確実にスタンドへ運べるパワーと、ここぞの場面で安打を打つことを評価した上での指名だった。

 

 ひとまず、変化球が苦手なことについては、目を瞑られたようである。

 哲人は変化球に弱いが、その代わりストレートには強いのだ。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

【どり専】今年のドラフト会議を見守るスレまとめ

 

400:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

なんというか…その…

 

404:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

投手はどこに行ったんだよ

 

407:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

>>404

そこに無ければ無いですね

 

412:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

甲子園で4本の超高校級スラッガーを取ったところまでは良かった

 

414:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

内野手ばっか

 

416:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

これショートガチャってこと?

 

417:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

>>414

外野手もいるぞ

 

420:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

7位指名は流石にピッチャー

 

422:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

はい内野手

 

427:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

重根?

 

430:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

ちょっと意外なところ来たな

 

435:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

どうなんだ?

 

437:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

こいつパッとせんのよな…

 

441:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

なんでや!甲子園で2本ホームラン打っとるやろ!

 

446:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

あの高校は投手の奮闘の方がイメージ強い

 

450:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

>>441

だってうちのドラ1は4本打ってるし…

 

451:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

>>446

結局500球近く1人で投げ抜いたんだっけ

 

453:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

重根はどうなん?

 

454:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

正直プロで活躍できそうかと言われると…

 

458:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

三振が多いのがネック

 

459:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

まあ投手乱獲するよかええか

 

460:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

よくねえよ

 

461:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

これ即戦力いる?

 

463:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

ドラ1は流石に即戦力

 

468:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

それ以外は…?

 

473:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

若手を育てたいんだろ察せ

 

476:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

てか重根って外スラめっちゃ苦手なやつか

 

477:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

地方大会から甲子園までの外スラ三振集あるで

 

481:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

バズってたな

 

485:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

>>477

なんでそんなのがあるんだよ




外スラを空振るツインドリルが元ネタです
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