外スラを空振り続ける5番バッター   作:フランスパン

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2軍スタート〜束の間の活躍

 かくして、無事にプロ野球選手となった哲人だったが、プロ野球の世界は厳しかった。

 

 オープン戦では失投を逃さずホームランを放ったりとアピールには成功したものの、やはり三振が多い。

 

 対策されているわけでもないのに変化球中心で攻められ、最後は外スラを大きく空振り。

 高校時代から続く哲人のお家芸だ。

 

 それでもパワーだけはある哲人。

 甘い球を逃さずスタンドまで持って行く長打力で確実に存在感を見せていた。

 

 

 

「うーん……哲人ならすぐに上がれると思ったんだけどなぁ……」

 

「そんな簡単な世界じゃないよ」

 

「哲人が一軍に上がったら試合見にいくから。頑張って!」

 

 

 

 そんな中、哲人は今、未来と同棲生活を送っている。

 

 プロ野球選手になり、寮ではなく一人暮らしを始めた哲人だったが、そこに通う大学が近いからと未来がやってきたのだ。

 

 初めの方は家に幼馴染とはいえ異性がいる生活に戸惑っていた。

 しかし、そういえば昔互いの家に泊まり合っていたなと思い出してからは気にしていない。

 

 未来からのスキンシップが増えても、まあ幼馴染だからと勝手に納得し、たまに寝ぼけた未来に抱きしめられながら目を覚ましている。

 

 この距離感でも彼らの自認は付き合っていないらしいので、哲人達二人を知る人間は誰も彼もが砂糖を吐いていた。

 

 

 

「私、哲人のホームランボールとかキャッチしてみたいんだよね」

 

「ファールのボールでも良い?」

 

「ダメ、ちゃんと打って」

 

「厳しい……」

 

 

 

 とはいえ、恋愛感情というほどではなくとも未来のことを他より特別には思っているようで。

 未来に言われたことはもう少し頑張ってみようと心の中で哲人は思う。

 

 少なくとも、母親からメールで「そろそろテレビで息子の姿を見たい」と言われた時よりはやる気が出た哲人だった。

 

 男の子は皆、可愛い女の子に応援された方が嬉しくなるものである。

 それが、多少なりとも好いている女の子だった場合はなおさらだ。

 

 ただ、もう一度言うが、これでも彼らは同棲しているだけで付き合ってはいない。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 前半戦が終わり、千葉ツインドリルズは前年に続け安定の最下位に沈んでいた。

 

 同じく低迷している5位のチームだけは追いつけそうだったのが不幸中の幸いだが。

 それでも、深刻な貧打に悩まされ、投手陣の奮闘がほとんど意味を成していない。

 

 ドラ1で取った西岡や助っ人外国人で四番を打つデロスサントスが奮闘したところで、それ以外は常に沈黙しているという有様。

 

 チーム打率は驚異の1割台まで落ち込んでしまった。

 

 そんな中で、哲人は未来のことが力になったのか非常に好調だった。

 

 相変わらず三振は多いが、それ以外はほとんど長打かホームラン。

 

 打率も3割を超え、4割近くを叩き出しているとなれば、打てる人材を欲しがっている首脳陣が一軍へ上げないはずがなかった。

 

 

 

 そして、迎えた後半戦。

 哲人は5番DHというプロ初スタメンとしては強気な位置にいる。

 

 代打で途中から出るか出ないかくらいだと思っていた哲人は正直驚いていた。

 それでも、期待されていると思うと嬉しいし、何より今日は未来が球場にいるのだ。

 

 ホームランボールが欲しいとバックネット裏ではなく外野席のどこかに陣取った幼馴染にボールを届けてやりたい。

 

 そう思いながら、哲人は初めての一軍、初めてのスタメンとしての景色を噛み締める。

 この試合はきっと、哲人がこれから経験する試合の中でも一、二を争うほど集中する試合になるだろう。

 

 

 

 一打席目、相手ピッチャーは旧知の中であるかつて甲子園を沸かせた哲人達の高校のエース、安堂。

 

 確かな制球力と伸びのあるストレートでルーキーイヤーだというのに大活躍をしている。

 球団も好調で二桁勝利にも届くのではと噂されるほどの新人王候補だ。

 

 彼は、哲人が変化球を苦手としていることをこれでもかと知っている。

 

 だが、哲人も安堂の球は高校時代に何度も受けていて、安堂への経験値はプロの中でも一番高いと言っても過言ではなかった。

 

 

 

 一球目、二球目と外スラを続けられるが哲人は我慢をしそれに手を出さない。

 

 いつもの哲人なら絶対に手を出してしまうようなボール。

 不思議と今日だけは見極められる。

 

 続けて、外角いっぱいに決まった外スラを見逃し、2ボール1ストライク。

 

 次に、内角高めのストライクゾーンを外れるストレートを投げられる——が。

 

 哲人は、明らかなその見せ球を捉え。

 打球が伸びて、伸びて、伸びていって。

 

 下がっていたセンターが足を止め、スタンドを見上げる。

 そのまま、見事にスタンドイン。

 

 哲人のプロ初打席は、ホームランというこれ以上ない最高の形で終わるのだった。

 

 

 

「よくやった……ってどうした?」

 

「いや、ホームランボール誰が取ったかなって思いまして」

 

「ん? お前、そういうの気にするのか」

 

「色々あるんですよ」

 

 

 

 しかし、大きな先制点となるホームランを打った本人は何故か浮かない顔をしていて。

 監督やチームメイトから不思議がられたが、それ理由を話すことはなかった。

 

 流石の哲人も幼馴染がいるから、とは恥ずかしくて言えなかったようである。

 

 まだ球団の誰にも同棲している異性がいることすら言っていないのだ。

 今言うと後々詰められてめんどくさいことになるとも思ったらしい。

 

 そして、そんな哲人の先制ホームランで勢いづいたツインドリルズは。

 今季調子の良い四番助っ人外国人からの一発も飛び出し、首位の球団から何とか勝ちを拾うのだった。

 

 試合が終わって、哲人は4打席中3安打2打点の猛打賞。

 完全に今日の勝利の立役者であり、プロ初試合にして見事ヒーローインタビューに呼ばれた。

 

 哲人は何とか面白いことを言おうとしたものの、緊張もあって無難な受け答えしかすることが出来ない。

 新人が活躍したと言うこともあり、現地のファンは大盛り上がりだったが。

 

 

 

 

 

 

「外スラを空振らなくて良かったです、みたいな感じで言えばもっと盛り上がったと思うよ」

 

「ええ……そんなので喜んでくれるの?」

 

「ほら、哲人、これ見てよ」

 

 

 

 インタビューも無事に終わり、幼馴染の待つ家に帰った哲人。

 しかし、帰宅早々、未来に苦言を言われてしまう。

 

 あまり面白い受け答えではなかったと反省している哲人だったが、未来に言われた外スラ云々には首を傾げる。

 

 そんな、分かっていない様子の哲人に、無事哲人の初ホームランボールをキャッチして上機嫌の未来は、笑いながら三振集を彼に見せた。

 

 そこには、高校時代の外スラを大振りして三振に打ち取られた哲人の姿が、いくつも映っていた。

 

 コメント欄を見れば、今日の活躍もあって大盛り上がりの様子だったものの、これも見てもなお、哲人はまだピンときていない。

 

 確かに頭を抱えたくなるような三振の数々だが、人の三振の何が面白いのだろう。

 そう考えながら自身の三振を見続ける。

 

 SNSに明るくない哲人は、ネットのツボの浅さをまだ良く理解していなかったのだ。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

【速報】重根哲人、初1軍でいきなりスタメン

 

 

505:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

2軍で馬鹿みたいに打ってるらしい

 

511:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

三振か長打の二択

 

517:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

ロマン砲やんけ

 

519:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

実は打率4割近く

 

522:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

>>519

ファッ!?

 

524:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

三振集がまたバズってたから見た

 

526:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

あれいつ見ても綺麗すぎて笑う

 

528:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

流石にテロスサントスの次は役不足だろ

 

530:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

>>528

使い方間違えてるで

 

532:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

>>530

黙れ指摘厨

 

538:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

喧嘩は他所でやれ

 

539:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

三割打ってくれれば何でも良いよ

 

544:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

三割は十分定期

 

549:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

なおチーム打率は1割台の模様

 

552:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

本当にチーム打率1割台はどういうことなの…

 

557:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

ところがどっこい…!夢じゃありません…!

 

563:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

嘘だと言ってよバーニィ!

 

566:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

相手の先発安堂かよ

 

569:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

てことは重根との同校対決見れんのか

 

575:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

流石に安堂に分がある

 

576:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

ネットに重根の三振が出回るだけ

 

580:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

それはそれで面白いからセーフ

 

585:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

贔屓が負けてんのに面白いわけないだろ

 

592:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

まあ信じようや

 

 

702:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

重根、お前はこの球団の救世主だ

 

704:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

お前は千葉の柱になれ!

 

707:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

マジで見くびってた

 

710:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

【朗報】重根、大当たり

 

714:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

ええの獲ったわ!

 

718:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

(*^▽^*)千葉にもこんな選手がいるんだ!

 

723:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

安堂からのホームランは痺れたわ

 

728:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

これは来シーズンへの期待が高まる

 

733:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

今シーズンは?(曇りなき眼差し)

 

739:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

>>733

(順位表を見ながら)ダメそうですね……

 

742:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

まあ最下位さえ避けてくれれば

 

743:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

今年のうちに抜け出せたら万々歳よ

 

749:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

重根のホームランボール取った子可愛かったな

 

750:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

>>749

キモ

 

751:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

でも可愛くはあっただろ

 

752:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

ツインテがよう似合っとった

 

756:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

なんでお前らちゃんと見てんだよ

 

757:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

モデルかと思うくらい可愛かったわ

 

758:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

ああいう子と付き合いたいよな

 

761:(*^▽^*)やっと話せるんだ!

>>758

鏡見てみ無理やって

 

 

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