ストレージの中は、暗いわけではない。ただ、静かすぎるだけだった。
アテネは、天我の部屋の隅、他の使われなくなったカードたちと一緒に、ケースの中に収められている。テレパシーは届く。だから天我の生活は、断片的にだが分かる。今日も駆と遊んでいたこと。あの機械――NILと、盤面の上でどんどん息を合わせていっていること。
最初は、悲しいだけだった。
どうして自分じゃ駄目だったのか。赤ん坊の頃からずっと隣にいて、天我の心が空っぽになっていくのを、誰よりも近くで見てきたはずだった。姉として、婚約者として、ずっとそこにいたつもりだった。
――でも、天我にその記憶は、最初から無かった。
分かってはいた。分かっていたはずなのに、それでも認めたくなかった。
時間が経つにつれ、悲しみの奥に、別の感情が育っていく。
なぜ、あの機械なのか。
意思も自我も持たず、ただ「欲しい」と喚くだけの、燃えかすのような存在。それのどこが、自分よりも天我に相応しいというのか。天我の心が読めるという、あの薄気味悪い能力にとって、感情の摩耗しきった機械の渇望のほうが、心地よく響いたとでもいうのか。
――冗談じゃない。
アテネの能力は、記憶操作だった。他人の記憶を、書き換えることができる。天我の中に「アテネとの記憶」が無いのなら、作ってしまえばいい。何度もそう考えては、寸前で押しとどまった自分がいる。天我の中身を無理やり弄れば、それはもう、天我の弟でも、婚約者でもなく、ただの傀儡だ。それだけは、したくなかった。
したくなかったはずなのに――近ごろは、その一線が、少しずつ揺らいでいる自分に気づいていた。
誰にも見られていないケースの中で、アテネは何度も同じ問いを繰り返す。
このまま、ただ棚の奥で朽ちていくのを待つのか。
それとも。
答えはまだ出ない。ただ、燻る感情だけが、日に日に温度を上げていくのを、アテネは止められずにいた。
契約の騎士 アテネ
赤白黒5コスト
種族:ゴッド/デビル
スーパーレア
クリーチャー
パワー14000
能力
トリプル・ブレイカー(このクリーチャーはシールドを3枚ブレイクする。ただし相手のシールドのみ)
スピードアタッカー(召喚酔いしない)
このクリーチャーがアタックした時、各プレイヤーは手札から3枚を選び自身の墓地に置く
全プレイヤーはシールドゾーンにカードを置くことを禁じられる
固有の能力:記憶操作(他人の記憶を書き換える力)
記憶操作の制約
スーパーレア以上のカードを所持している人間には効かない