FINAL FANTASY Ⅶ Revengers 作:オレンジⅩⅢ
Side クラウド
食堂のランプが、ぱちり、と小さく爆ぜた。
窓の外には既に、夜の帳が完全に降りている。テーブルを囲む五人の視線が、静かにこちらへと集まっていた。
「――五年前のことだ。俺達の故郷、ニブルヘイムで、何が起きたのか」
ランプの炎を見つめながら、クラウドはゆっくりと記憶の糸を手繰り寄せていく。
あの日、ニブルヘイムの魔晄炉に異常が発生したという報告を受け、調査部隊が派遣された。指揮を執るのは英雄と称えられたソルジャー、セフィロス。同行するのはクラス1stのザックスと、護衛の警備兵が数名だった。クラウドは、その警備兵の一人だった。
道中、ザックスはいつも通り明るく振る舞っていた。故郷が近づくにつれ車酔いと緊張を隠しきれないクラウドを気遣ってか、他愛のない軽口を絶えず投げかけてきた。セフィロスもまた、終始静かだったものの、ザックスやクラウド達と談笑し、穏やかな英雄の姿を見せてくれた。
故郷への帰還は、クラウドにとって複雑な感情を伴うものだった。ソルジャーになれなかった自分が、憧れの英雄と肩を並べて村へ戻る。それは誇らしさと後ろめたさの、両方を連れてきた。
村は記憶にある通りの、静かな山間の集落だった。ティファも変わらずそこにいた。だが、当時の自分は正体を隠し、旧知の顔ぶれに気づかれないよう努めて距離を置いていた。ソルジャーの護衛として村を歩けば、遠くから、幼馴染達の視線を感じることもあった。声をかけたい気持ちを、何度も、飲み込んだ。
異変は魔晄炉の調査から始まった。
外壁の一部が変色し、内部からはこれまでに聞いたことのない低い唸り声のような駆動音が響いていた。護衛の兵士達を外に残し、セフィロス、ザックス、クラウドの三人で内部に踏み込み、慎重に原因を探っていく。
炉の内部で発見された奇妙な培養槽。中に横たわっていたのは人ならざる何か――後に知る、ジェノバの一部だった。銘板には判読しづらい文字で、何かの記号が刻まれていた。あの時はまだ、それが何を意味するのか誰も知らなかった。
セフィロスは、その発見を境に様子がおかしくなっていった。屋敷の書庫に籠り、古い資料を読み漁る日々が、数日にわたって続いた。ザックスも、クラウドも、何度か声をかけたが、まともな返事は返ってこなかった。あの頃から既に、何かが、彼の中で狂い始めていたのだろう。
そして、ある夜。
屋敷の書庫から出てきたセフィロスは、それまでとは明らかに違う目をしていた。
「――私は、化け物の子だったのか」
低くそう呟いた声を、クラウドは今も覚えている。
その夜のうちに、村は火の海と化した。
悲鳴と炎の唸る音。逃げ惑う村人達の影。あの光景は、今も瞼の裏に焼き付いている。
セフィロスの手にかかり、次々と人が斃れていく。ティファの父もまた、村を守ろうとしてその刃に斃れた一人だった。
父の死を知ったティファは単身、セフィロスを追ってニブル山を駆け上がった。護衛の兵士達が止めようとしたが、誰も彼女を止められなかった。
追いついた先、魔晄炉の一角で、ティファはセフィロスの刃に貫かれた。深い傷を負って倒れ伏す彼女に、この時、クラウドはまだ、駆けつけることすらできていなかった。
異変を聞きつけたザックスが単身、魔晄炉へと駆け込んだのは、その直後のことだった。クラウドは遅れて後を追った。
炉の最深部、青白い光に照らされた空間で、ザックスは、変わり果てたセフィロスと対峙した。
真っ先に斬りかかったザックスだったが、ソルジャーとしての実力をもってしても、セフィロスとの間には埋めがたい差があった。猛攻の末、ザックスは深手を負って倒れた。
遅れて駆けつけたクラウドが見たのは、倒れ伏すティファと、ザックスの姿だった。
「――ティファ! ザックス!」
叫んだ声に、応える者はいなかった。
視界が、赤く染まっていた。恐れも痛みも、その時は感じなかった。ただ、目の前の男を止めなければという一心だけが、身体を突き動かしていた。
何が起きたのか、自分でも正確には覚えていない。ただ、火事場の底力としか言いようのない力で、セフィロスに対し、深々とその身体を貫いた。
セフィロスもまた、最後にクラウドへ一太刀を浴びせていた。相打ちに近い、そんな結末だった。
意識を失う寸前、セフィロスの身体を魔晄の奔流の中へと突き落としたことだけは覚えている。
そこから先の記憶は、ひどく曖昧だった。
朦朧とする意識の中、クラウドは見知らぬ研究施設の中にいた。科学部門の実験材料として拘束され、ソルジャーになるための処置を繰り返し施される日々。傍らには、同じく囚われたザックスの姿があった。時折、意識が浮上する瞬間はあっても、まともに言葉を交わせるほどの余裕は、互いに無かった。
ニブルヘイムは事件の詳細を伏せられたまま、公には魔晄炉の事故として処理された。生存者の記憶も、神羅の手により都合よく書き換えられているという。クラウドとザックスはMIA――作戦中行方不明として、戦死者名簿に静かに刻まれることとなった。
約四年もの間、意識が朦朧とする中で処置は続いた。適性の無い身体に、無理やりソルジャーとしての性質を植え付けようとする、非道な実験だった。
その果てに待っていたのが抹殺指令であり、そしてジュリアスとの再会だった。
抹殺指令を受けて現れた元同期が、まさか、自分達を救い出すために動いてくれるとは、想像もしていなかった。今にして思えば、あの再会が無ければ、自分もザックスも、とうに、この世にはいなかっただろう。
「――というのが、五年前から俺達に起きたことの、全てだ」
長い沈黙の後、クラウドはそう締めくくった。
ランプの炎だけが静かに揺れる食堂に、重い沈黙が落ちる。
「……そんなことが」
ティファが絞り出すように呟く。彼女もまた、五年間、欠けたピースを抱えて生きてきた一人だった。改めて語られる真実に堪えきれない様子で、目元を拭う。
「知ってたはずなのに…… こうして、みんなの前で聞くと、また、違う重さがあるね」
小さく、そう零す。クラウドが隣で、僅かに視線を落とした。
「セフィロスの野郎……そんな理由で村一つ焼き払いやがったのか」
バレットが拳を強く握りしめる。
「一つ、聞いてもいいか」
バレットが腕を組みながら口を挟む。
「ザックスの奴は、その時、どうなったんだ。深手を負ったって話だったが」
「意識を失う直前、まだ息はあった。だが、その後、どう回収されたのかまでは、俺にも分からない。気づいた時には、隣の処置台に、あいつがいた」
クラウドが静かに答える。
「あいつも、俺と同じだけの時間を、あの施設で、過ごしたことになる」
その言葉に、バレットはそれ以上何も聞かなかった。ただ小さく頷いただけだった。
「クラウド、よく話してくれたね」
エアリスが優しくそう声をかける。その表情には、労わりの色が浮かんでいた。
一同の視線が、自然とクラウドへと向いた。
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クラウドの話が終わった後、しばらくの間、誰も口を開かなかった。
「――さて」
短く切り出す。感傷に浸っている時間は、そう長くは残されていない。
「セフィロスは生きている。それだけは確かだろう。だが、あいつの目的が何なのかは、まだ見えていない。手がかりと呼べるものすら、今は無い」
「――運命が迎えに来る、ってやつか」
バレットが腕を組みながら低く問う。
「ああ。あの言葉の意味も、まだ分からない」
重い沈黙が、落ちる。
「――一つ、あるかもしれない」
沈黙を破ったのは、クラウドだった。その声には、僅かな躊躇いが滲んでいた。
「なんだ」
「黒いマントを着た男を、何度か見たことがある」
クラウドが、静かに切り出す。
「最初は、壱番街だった。爆破テロの夜、逃げてる最中に見た。それと……今日、この町でも、同じ男を見た」
「――今日も、か」
思わず、問い返す。
「ああ。目が合った瞬間、頭が割れるように痛んで、セフィロスの姿が視えた。壱番街の時と、同じ感覚だった」
その言葉に、テーブルを囲む面々の間に緊張が走る。
「なぜ、それをすぐに言わなかった」
思わず、そう問う。詰るつもりは無かったが、声に僅かな鋭さが滲んだ。
「……分からなかったんだ。またいつもの幻覚かと思って、深く考えないようにしてた。実験の影響だと、受け入れるのも怖かった……」
クラウドが、俯きがちに、そう答える。
「――俺も、今日、似たような話を耳にした」
一度言葉を切る。
「町で情報を集めていた時、情報屋から、妙な噂を聞いた。ここ最近、黒いマントを纏った男を、町の外れで見かけたという話が幾つか出ている。人相はおろか、声すらまともに聞いた者がいないらしい」
その言葉に、クラウドが僅かに目を見開いた。
(――繋がったか)
内心で、素早く思考を巡らせる。
「その男が、お前に幻覚を見せているのか、それとも単に、お前の体質が何かに反応しているだけなのか。今の段階では判断がつかない。だが、少なくともセフィロスと無関係とは思えない。今のところ、これが唯一の手がかりだ」
短くそう告げる。
「見かけたら、遠慮なく締め上げてやるまでだ」
バレットが拳を鳴らしながら、そう告げる。
「締め上げるのは無理かも……。同じような人がマーレさんのアパートにいたけど、その人は意識も虚ろで、会話は成り立たなかったもの。」
ティファ短く補足すると、バレットは渋々といった様子で頷いた。
「――クラウド。今後、あの男を見かけたら真っ先に俺に伝えろ。頭痛が起きた時も、我慢せずにな」
「……分かった」
素直な返事に、小さく頷きを返す。
「それと、もう一つ」
視線をクラウドへと向ける。
「お前とザックスが受けた実験について、詳しいことは、まだ何も分かっていない。あの科学部門のフロアで見た、ジェノバの本体らしきもの。あれと、お前達の身体に何が起きているのか。それを知るには――」
「ニブルヘイム、か」
クラウドが先を引き取る。
「あの村なら、当時の記録や痕跡が、まだ残っているかもしれない。加えて――」
一度言葉を切る。
「ザックスの気配は、ミッドガルを出た方角に近いと、エアリスは言っていた。あいつを探す上でも、あの周辺を洗う価値はある」
「――そうだな」
クラウドが小さく頷く。クラウドとティファにとっては、辛い記憶を呼び覚ます場所だろう。しかし、クラウドの瞳に迷いは無かった。
「必ず見つける。セフィロスのことも、ニブルヘイムのことも」
「ああ。だが、それは少し先の話になる。まずは、ジュノンを目指す」
短く方針を告げる。
「ジュノンには、神羅の情報網に繋がる、いくつかの伝手がある。ザックスの手がかりも、セフィロスの動きも、そこから探れるはずだ」
「分かった。あんたの判断に従うぜ」
バレットがそう応じる。
「ジュノンまでは、それなりの距離がある。歩き通すのは、さすがに、骨が折れるな」
呟くように、そう付け加える。
「チョコボでも、調達するか。途中にファームがあったはずだ」
バレットの提案に、頷きを返す。
「悪くない。明日、詳しいルートを詰めよう」
「移動しながらでも、身体を休められる。悪くない案だな」
レッドⅩⅢが静かに、そう同意する。
誰の表情にも、既に迷いは無かった。
「よし、方針は決まりだな」
バレットが、そう締めくくり、席を立とうとした、その時だった。
「――待ってくれ、ジュリアス」
クラウドが静かに、しかしはっきりと呼び止める。
「なんだ」
「昨日、言ったよな。全部聞かせてもらうって話。……方針も決まった。もう逃げる理由は無いはずだ」
真っ直ぐな視線に、思わず、言葉に詰まる。
「――今、この場でか」
「ああ。俺だけじゃない。ここにいる全員が、聞く権利はあると思う」
クラウドの言葉に、他の面々も静かに頷く。逃げ場は、どこにも無かった。
(――仕方ないか)
内心で、小さく息を吐く。
「……分かった。長い話になるが、構わないか」
渋々、そう切り出せば、誰も異論を挟まなかった。
「俺は、二十二年前に生まれた。母の名はマリア。当時のプレジデントの秘書であり、護衛でもあった女性だ」
淡々と事実だけを並べていく。感情を込めれば、余計に言葉が詰まる。
「奴の覚えは殊更良かったらしい。俺は、その一度きりの過ちの産物だ。表向きは存在しない子供だった。名前も、今とは違う」
母の記憶は、多くは残っていない。それでも、優しい手のひらの感触と、夜な夜な歌ってくれた子守唄の断片だけは、今も、色褪せずに、胸の奥に残っている。
「俺が三歳の頃、母は姪を引き取った。事故で両親を亡くした、当時二歳の子だ。俺にとっては妹ができたことになる」
母の記憶と共に、幼い妹の面影も、僅かに、胸の奥に残っている。多くを語れるほどの時間は、共に過ごせなかったが。
「六歳の頃、ウータイとの関係が悪化する中で、母子共々ウータイへ派遣されることになった。母の秘書としての手腕を買われてのことだった」
淡々と続ける。
「本来は、神羅とウータイの橋渡し役になるはずだった。だが、母は優秀すぎた。ウータイの内政に、下手な派閥争いを生む結果になった」
「――優秀すぎたのが、仇になったのか」
レッドⅩⅢが静かに、そう零す。
「そういうことだ。結果、俺達はウータイの外れにある小さな集落へと追いやられることになった。厄介払い、というやつだな。
……七歳の時、ウータイと神羅の戦争が始まった」
一度言葉を切る。
「あの集落は、前線の近くにあった。戦争の引き金になったあの夜、空爆を受けた。母と妹は、その時に死んだ」
「――ッ」
息を呑む音が、幾つか重なった。
「幼い自分に、復讐という言葉の意味は、まだ分からなかった。それでも、あの夜の炎だけは忘れようがなかった」
義手の付け根に鈍い痛みが走る。喪失の記憶は、いつもこの痛みと共に蘇る。
「生き残ったのは俺だけだった。最初に保護してくれたのは、皮肉にもウータイの兵だった」
淡々と、そう続ける。
「その後、アバランチの本流に引き取られた。名前も戸籍も、全て偽装してもらってな。物心つく前から工作員としての教育を受けて育った」
「――アバランチが、あんたを育てたのか」
バレットが驚いたように、そう零す。
「似たようなものだ。だから、俺はお前達とは、根本のところで繋がりがある。今更だがな」
孤児として、あらゆることを叩き込まれた年月のことは多くを語らなかった。生き延びることだけは諦めなかった。復讐という一つの目的が、自分を辛うじて繋ぎ止めていたのだろう。
(――この先は、まだ、話す必要は無いか)
内心で、そう判断する。神羅に潜り込んでからのこと、タークスとしての日々、この左腕を失った経緯――そこから先は、今、明かす段階ではない。まだ、自分の中でも、整理しきれていない部分がある。
「それから色々あって、今の俺がいる。目的は――神羅も、ウータイも、この世界全てを壊すことだ」
静かに、しかしはっきりと告げる。
(――ここまで開示すれば、十分か)
それ以上、多くを語る気にはなれなかった。
「――ジュリアス」
クラウドが静かに名を呼ぶ。
「お前の目的の、その……この世界全てを壊すって、具体的には何を言うんだ?」
「ああ、お前の危惧はわかる。当然、大量殺戮や民族浄化ではない」
クラウド達が、少しホッとしたような表情をしたのを見つつ、言葉を続ける。
「俺が憎むのは、この世界の支配構造やシステムといったものだ。欺瞞と憎悪に染まりすぎた世界は、どこかで一度リセットをしなければならない。それが俺の目的だ。
……その先の再編や復興までは、まだ考えきれていないがな」
……嘘だ。
今の自分には、破壊の先なんて考えはない。
俺は怨讐の鬼であり、破壊者だ。その先の世界に、破壊者は必要ない。
「話してくれて、ありがとう。……お前がそこまで背負ってきたとは、思わなかった」
クラウドは、とりあえず納得をしたようだ。ただ、こちらがまだ隠していること、嘘をついていることを薄々感じ取っている気配がある。だが、彼はそのことに触れてこなかった。
その上での、彼の真っ直ぐな言葉に、思わず視線を逸らす。
「同情は要らん」
「同情じゃない。ただ、知りたかっただけだ」
その言葉に、それ以上返す言葉が見つからなかった。
「――俺も似たようなもんだぜ」
バレットが、ぽつりと零す。
「俺も、地元のコレルを出たとき色々あった。その上でここにいる。コレルのこと、いずれ話す。だが今、分かったことがある。あんたも俺も、根っこにあるもんはそう変わらねぇ」
その言葉に、小さく頷きを返す。それ以上、多くを語る必要は無かった。
「私は、二人ほど重いものは背負っていないと思う」
エアリスが静かに、そう続ける。
「でも…… 誰かを憎む気持ちも、誰かを守りたい気持ちも、私にも分かるつもり」
「私も、まだ、話せないことがある」
レッドⅩⅢが金色の瞳を伏せながら、そう零す。
「いずれ、話す時が来るだろう。それまでは、待ってくれ」
「――誰も急かしはしないさ」
短くそう応じる。互いに抱えているものがある。それでいい。今は、それで十分だった。
窓の外、カームの町に更に夜が更けていく。
「今日は、もう休め。長い夜だった」
短くそう告げれば、それぞれが静かに席を立つ。ティファが、クラウドの肩に、そっと手を添えてから、共に、部屋の方へと歩いていった。その横顔には、まだ、拭いきれない疲れが残っていたが、隣を歩くクラウドを見上げる眼差しは、確かに穏やかだった。バレットもレッドⅩⅢを伴い、大きく伸びをしながら席を離れる。エアリスだけが、少し名残惜しそうに、こちらを一瞥してから、静かに、階段を上っていった。
「――クラウド」
部屋へと向かうクラウドの背に、声をかける。
「よく話してくれたな」
「お前もな」
短いやり取りの後、クラウドは小さく笑って部屋へと戻っていった。
その背中を見送りながら、内心で静かに息を吐く。
(――重い夜だった。だが、悪くない夜だ)
互いの傷を晒し合った。それでも、誰も離れていかなかった。
一人では抱えきれなかったものが、今は、この面子の間に確かに分かち合われている。
その事実が、僅かに胸の奥を温めていた。
(――俺は、まだ、生きている)
内心で、静かに、そう呟く。復讐という一本の道しか、見えていなかったはずだった。それが、今は、隣を歩く誰かの存在によって、僅かに、色を変えつつある。
そう、きっと……。自分という破壊者が燃え尽きた先で、彼らは新たな世界を担ってくれるだろう。
(この感傷も、いずれ、邪魔になる時が来るかもしれないがな)
自嘲気味に、そう思う。それでも、今この瞬間だけは、悪くないと思えた。
窓の外、カームの夜空に星が瞬いていた。
明日から、また長い旅が続く。割り当てられた部屋へと戻り、義手のカバーを外しながら、今夜語った言葉の数々を頭の中でもう一度なぞる。
後悔は無い。それでも、これまでとは違う何かが、確かに自分の中に芽生えているのを感じた。
ベッドに身体を沈め、静かに目を閉じる。
明日もまた、長い一日になるだろう。