FINAL FANTASY Ⅶ Revengers   作:オレンジⅩⅢ

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chapter.2 再会 と 工作

作戦は、比較的シンプルだ。

ザックスへ回復薬とリフレクバンドーー自動的にリフレクを発動する防具ーー2つを渡し、距離をとって隠れさせる。その際、死体偽装のために、今の衣服を脱ぎ捨てさせて。

その上で、ここ一帯を、爆破系の魔法で無差別爆破する。

 

事切れている神羅兵の遺体ごと吹き飛ばすことになるため、生存している警備兵からは、良い顔をされないだろう。

そのため、『こうとでもしないと、ターゲットの抹殺はできなかった』と思わせるだけの負傷も負っている。

 

わざと腹部を切られ、裂かれた衣服には自分の血がしっかりとついている。

回復済みで止血はできているとはいえ、未だ痛みがあるように感じるのは、仕方がない。

 

自分の魔法の使い方から、自らも危険が及ぶことを前提として、リフレクバンドを複数携行していたことが、功を奏した。

今、自分が装備しているものも、問題なく機能している。

回復や補助のための魔法を使用するために、いちいちつけ外す手間はあるが、もう慣れたものだ。

 

「さて……」

 

周辺では、まだ神羅兵の観測要員がいる気配は無い。

ザックスも、警備兵の服装に着替えて、同じような服装のクラウドを担いで移動している。

 

「やるか」

 

グリモアに、ありったけの魔力を込める。

大規模な工作活動だが、経験がないわけではない。

 

雑に行った演算結果をそのまま使用する。

自分を中心として、複数の光球が現出する。

 

「爆破、開始」

 

いつもの一言とともに、光球が爆ぜ、新たな光球が生まれ、また爆ぜる。

爆撃機で行う絨毯爆撃の如く、爆発が続く。

 

(生き残ってみせろ……2人とも)

 

 

 

 

 

魔力が空になるまで、爆破を続けた後、信号弾を上げる。

エーテルターボを飲み干して魔力を回復させている間に、信号弾を確認した部隊の生き残りが、こちらに移動してくる。

10名程度の人間が来るあたり、現場での再編成を終えて、本隊は後方に待機しているのだろう。

 

「ひでぇ……」

 

若い隊員がポツリと呟くのが聞こえる。

 

地形は変わり、もはや隠れるところが無いほど、荒野は更地と化していた。

一見すれば、もはや隠れる場所など、ない。

とはいえ、ザックス達が隠れる予定の場所までは、爆破していないため、影響はないはずだ。

 

……まぁ、ザックスからしたら、リフレク状態とはいえ、荒れ狂う爆風の中の逃走となったはずだ。生きた心地はしなかっただろう。

 

「ジュリアス殿、ここまでやる必要は……」

「致し方なかった。ソルジャーが敵に回れば、これだけやらねば倒せない」

「仰ることは、承知しますが……」

 

指揮官の顔色が曇る。

それはそうだろう。もはや、ターゲットを含め、神羅兵の遺体すら残らぬ擬似爆撃により、仲間の遺体を回収することすら困難な光景だ。

 

「これでは、ターゲットの確認すら…….」

「あの爆破を生き残ることが可能だと思うか?」

「……いえ。どんな相手でも無理でしょう」

 

指揮官の同意に、一つ条件をクリアしたことを確信する。

 

「本社へは、タークス経由で報告を上げる。部隊をまとめ、撤収せよ」

「はっ!!」

 

敬礼をした指揮官が後退するのを確認し、支給品端末を操作して、ツォンを呼び出す。

 

『終わったか?』

「はい。かなりの抵抗にあい、私が処分しました。広域を爆破したので、念のため、痕跡がないかだけ確認します」

『了解した』

 

声色から、納得させることが出来たかは定かでは無い。

しかし、こればかりは仕方がない。裏工作の猶予は無かったのだ。

どのみち、スパイ活動も、長くは続けられない可能性はあった。それが早まっただけだと整理しよう。

 

 

 

 

 

 

「おい、生きた心地がしなかったぞ」

 

神羅兵の撤退を確認して、ザックス達と合流する。

ジト目でザックスから睨まれるが、仕方がなかったとばかりに肩をすくめる。

 

「命が今あるだけ、良かったと思え」

「まぁそうか……。それより、なんで俺たちを見逃した?」

 

ザックスの発言に、視線をクラウドへと移す。

その瞳は光をもたず、虚空を見つめている。

 

「同期を見捨てるのは、俺の中で納得がいかなかった。それだけだ」

「タークスの指示じゃないんだな?」

「ああ。タークスのではない。俺の意思だ」

「……信用していいのか?」

「お前次第だな。それよりも……」

 

腰を下ろし、視線をザックスに合わせる。

 

「まずは情報交換だ。起きたこと、知っていること、全て話せ」

 

有無を言わさず全て吐け、という雰囲気を一切隠さずに、ザックスへと圧をかける。

 

「……本当のこと話したら、俺たちのこと、本気で守ってくれるか? 」

「良いだろう。ミッドガルに着いてからの偽装は請け負おう」

 

取引成立だな! とザックスがニヤリと笑う。

 

 

 

 

 

ニブルヘイム事件ーー神羅の中でも最強と名高い“英雄セフィロス”が死亡したとされる、前代未聞の事件。

表向きの情報はあれど、これが真相ではないことは確信していた。

 

それでも、ザックスが語った真相は、予想のはるか上をいくものであった。

 

セフィロスの暴走により、街一つが滅ぼされたこと。

ザックスもまた、セフィロスに倒されたこと。

クラウドがセフィロスに一矢報いたこと。

そして、その後、約4年間、人体実験を受けていたこと。

 

信じられるかは別として、辻褄は大きく外れてはいない。

MIAとして、実質死んだことになっていた2人が、今現れた。

その処理を、科学部門が依頼してきたこと。

すなわち、証拠隠滅だ。

 

同期の間で、クラウドがソルジャーになれなかったことは、有名だ。

あれだけソルジャーになるんだと言い続けていたのに、精神的適性が無いとの評価を受け、挫折したのだ。

それでも、折れることなく、努力し続けていた。いつか、ソルジャーになる夢を叶えるんだと……。

 

その結果が、人体実験の被験者として、脱走兵として処分されようとしていたとは、なんと報われないのだろう。

ただ、その人体実験がどのようなものかは、不明である。

ザックスも知らないのか、知っていて話さないのか……判断はつかない。

 

「さて、こっちのことは話した。あんたの話を聞かせて貰おうか」

 

ザックスが、真っ直ぐにこちらを見る。

嘘偽りは許さない、という強い意志をもって。

 

「確認するが、この後、神羅に帰ろうとは思っていないな?」

「あったりまえだ! せっかく拾った命を、わざわざ捨てるわけないだろ」

「だろうな……」

 

ザックスから情報が漏れるとは考えにくい。

ただ、同志となるかは、分からない。

可能性としては、低いだろう。

 

ならば、全てではなく、ある程度の情報を握らせて、協力者となってもらうのが妥当か。

 

「俺はジュリアス・キングスレイ。クラウドの訓練兵時代の同期だ。タークスであると同時に、アバランチ等の反神羅活動に繋がっているスパイのようなものだ」

「アバランチ……!? タークスにまで入り込んでいたのか」

「正確には、アバランチに今は所属していない。協力者という形で、情報を流したり工作をしている程度だ。名前も出身も、全て偽装している」

「まじか……。神羅も敵は多いけど、まさかタークスにまで潜り込んでいたとは……」

 

ソルジャーであり、セフィロスに次ぐ英雄と称されたザックスには、ショックな話なのだろう。

空を見上げて「まじかー」とぼやいている。

 

「なら、俺たちを生かしたのも、ただの善意ではないわけだ?」

「話が早くて助かる。まぁ、クラウドとは仲が良かったから、ここでむざむざ殺すのもどうかとは思ったがな」

「ふーん……」

 

ザックスは、こちらの意図を察すると同時に、ニヤニヤとこちらを見てくる。

 

「悪い奴じゃ、なさそうだな」

「アバランチに繋がっている時点で、神羅にとっては悪人だがな」

「ハハっ、ちがいない!」

「……話を戻すぞ。こちらは、反神羅活動に必要な力が欲しい。そっちに提供出来るものは、ミッドガル到着後のセーフハウスだ。偽装IDは……調達の可能性はある」

「俺としてはありがたい限りだが、過激な活動には参加しない、という条件付きならOKだ」

「交渉成立だな」

 

とりあえず、ザックスとの交渉はうまく行った。

最悪、ソルジャークラスの人間と敵対しないという契約があれば、問題ない。

それに、彼の身元を洗い、協力せざるを得ない状況を作る選択肢も捨てない。その際は、敵対しないよう慎重を期すことが必要であるが。

 

「俺は良いとして、あとはクラウドだな……」

 

ザックスがクラウドを見る。

未だに意識は戻らず、焦点の定まらない目をしている。

個人的には、クラウドは意識さえ戻れば、ザックス以上に使いやすい駒として扱えるだろう。友人を、そのように扱いたくはないが。

ベストなのは、彼の賛同を得ることであろう。恐らく、それは可能だ。自らの復讐の同志や駒ではなく、クラウド自身の思いによる協力者としてともに戦えることが、こちらとしても最適解である。

 

「魔晄中毒状態か……。少し、解析してみるか」

「そんなこと出来るのか?」

「ああ。そのために、義手とグリモアがある」

 

自分の義手は、神羅性の小型演算装置を内蔵している。グリモアも、演算装置としての機能を有する。

これらは、システムのクラッキングだけでなく、大気中の魔晄濃度を含む環境要因を数値として演算し、解析することが可能だ。

この能力を魔力運用に応用することで、演算魔法を使用することが可能となるのだ。

 

一通りのことをザックスに説明すると、非常に驚いた顔をする。

無理もないだろう。前例のないシステム運用なのだ。

これも、自分自身の高い演算能力があってこそであり、他人に真似出来るような技術ではない。

この能力を買われ、タークスに所属することが出来たのだ。また、タークスに所属しつつ、アバランチ等の反神羅勢力への情報・作戦提供を可能としているのだが。

 

「さて……」

 

グリモアに魔力を流し、クラウドの真上に浮遊させる。蒼く発光するグリモアによって、クラウドの身体情報がスキャンされる。

左腕の義手から、ホログラムのキーボードと仮想モニターが現出する。それを操作しつつ、スキャンされた数値を確認する。

 

「確かに、体内の魔晄濃度が著しく高い。それにこれは……」

「どうした?」

「いや……」

 

解析結果として、『ジェノバ細胞』の文字が出たことを確認する。

苦労して機密に潜り込んだ過去を、今は褒めるべきか呪うべきか、悩むところだ。

そう、わざわざあの雌狐に自らの身体を売り、得意げに機密を漏らすまでの関係を作った過去を。

 

そして、この真実をわざわざザックスに伝える必要があるかどうか……。

いや、ないだろう。今は、あくまで一般的な話に収めた方が良いと判断する。

 

「ソルジャーであるザックスなら分かると思うが、ソルジャーは高濃度の魔晄を浴びて、身体の細胞を活性化させることで身体能力が飛躍的に向上する。その処置を、クラウドは受けていることになる。そして、クラウドはソルジャーへの適性がないと評価されている。

つまり、おまえ達が受けた実験は、適性のない人間をソルジャー化させる実験ということだ」

「……何のために?」

 

ザックスの疑問は、もっともだ。

適性がない場合、ソルジャーとなる処置を受けたらどうなるかについて、この場に知っているものはいない。科学部門か、ソルジャーを管理する治安維持部門上層部にしか、その情報は明かされていない。

タークスである自分にも、この情報は開示されてはいない。本社または拠点でクラッキングをすれば、情報を得ることはできるかもしれないが、今この場では不可能だ。

 

「今、この場でその疑問を解決することは無理だ。まずは、クラウドの意識を取り戻せるかどうか、だな」

「できそうか?」

「やれるだけやってみよう」

 

現状、できる手を考える。

現地での簡易的な解析結果しかない今、魔晄か魔力によるショックを与えることくらいしか、できることはない。

グリモアを通じ、魔力をクラウドへと流す。

クラウドの中に停滞している魔晄を循環させ、可能な限り排出できるようにする。

 

徐々にだが、クラウドの表情が動く。

目に光りが戻り、こちらと焦点が合う。

 

「……ザックス、ジュリアス?」

「お、目覚めたか?」

 

ザックスが声をかけるが、クラウドは返事をしない。

ザックスと自分を交互に見て、目を見開く。

 

「あ、ああ? あ、ああ、あああああああああああ!?」

 

突然、クラウドが叫びだし、頭を抱える。

仮想ビジョンが赤く発光し、アラートを発する。

 

「なんだ、これは……! 魔晄、いや、ジェノバ細胞が暴走している?」

「おいおい、クラウド! しっかりしろ!」

 

こちらの呟きに気がつかなかったのか、ザックスはクラウドに寄り添う。

しかし、クラウドはザックスを突き飛ばし、暴れようとする。

 

「ジュリアス、どうなってる!?」

「不明だ! とにかくこちらで、クラウドの魔晄を安定させる! 少し乱暴でも、こいつを落ち着けろ!」

「分かった!」

 

ザックスが頷き、クラウドを抑えようとする。

が、クラウドは、どこからその力が出てくるのか分からないくらいの、強い抵抗をみせる。

 

「俺は、誰だ? 俺は、ソルジャー? 俺は、俺はぁぁ!」

 

なんとか彼の体内の魔晄を落ち着かせようとするも、錯乱したクラウドは魔晄と魔力を暴走させている。効き目が薄い。

そもそも、何故このタイミングで錯乱したのか?

自分の知らない、知らされていない要因が、間違いなくある。

 

「ザックス! ソルジャーでこうなる要因はあるか!?」

「わっかんねぇ! ……いや、劣化じゃなければ、もしかしたら」

「何でもいい、教えろ! 今はクラウドを正気に戻すことが重要だろう!」

 

殴りかかるクラウドの拳を躱しつつ、ザックスは舌打ちをする。

 

「ソルジャーには、ジェノバだかなんだかの細胞が埋め込まれている! そいつが多分悪さをしてる! ジェネシスやアンジールが裏切ったのも、そのせいだ!」

 

やけになったかのように、ザックスが叫ぶ。

ジェネシスとアンジール……過去に神羅から離反したクラス1stのソルジャーである。

自分には、彼らと面識はなく、彼らが離反した理由は知らされていない。

 

しかし、その原因として、ジェノバ細胞があることは、確定した。

ジェノバ細胞について、知っていることは少ない。だが、雌狐が共有されていた機密情報を思い返せば、何らかのヒントがあるはずだ。

 

思考を分割して、記憶を巡らせる……。

ジェノバ細胞の特性……コピー……

 

「恐らく、俺とザックスの何かをジェノバ細胞が読み取り、上手く変質・順応出来なくなっているのか?

……ともかく、このままでは埒があかない。ザックス、こいつを気絶させろ!」

「この、無茶言うなって! 正直、お互いに怪我しないよう、にするだけで、精一杯だ!」

 

確かに、ザックスは疲労も相まって、動きが悪い。戦い続けるにも、限界があるだろう。

 

……仕方がない。

 

グリモアの解析を途中でやめ、左腕に雷に変換した魔力をまとわせる。

 

「俺がスタンさせる! ザックスはそのまま、クラウドを引きつけろ!」

 

ザックスがうなずくのを確認し、隙をうかがう。

 

クラウドが大ぶりに拳を振るうのを、あえてザックスは受け止める。

後ろに跳躍して、その勢いを殺すことで、クラウドは前のめりに体勢を崩す。

 

一挙に接近して、帯電した左腕をクラウドに押しつける。

 

「ぐあぁ!」

 

電流により、身動きのとれなくなったクラウドに対し、当て身をする。

もろに喰らったクラウドは、そのまま地面に倒れ込む。

 

「ぁ……、リ、ユ……」

 

……取り合えず、気絶させることには成功したようだ。

 

「……成功したか」

 

大きな怪我を負わせず、クラウドを無力化することができたことに、安堵する。

 

「引き続き、解析と応急処置をする。ザックスは、周囲を警戒してくれ」

「へいへい、人使いが荒いぜまったく……」

 

ぼやきながら、ザックスは座り込み、四周を警戒する。

 

さて、今度こそ、クラウドを元に戻すことが出来るようにしなければ。

 




ザックスの口調が、違和感がないかだけ不安です……
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