FINAL FANTASY Ⅶ Revengers   作:オレンジⅩⅢ

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本話も、クラウド視点のみです。


Chapter.8 たとえ 地獄に 堕ちようとも

side クラウド

 

 

 

 

炎と瓦礫にまみれた壱番街を駆ける。

自分達の引き起こした爆破テロにより、街は想定以上に破壊されていた。

本来は、魔晄炉のみを爆破する予定であった。それが、街にまで被害が及び、死傷者も出ている有様だ。

予定していた経路は瓦礫で塞がれ、警備兵を躱しながら迂回する。焦げた臭いと、誰かの悲鳴が、遠くから、途切れ途切れに聞こえていた。

 

その先で、知らないはずの、知っている人と会った。

見えない何かに怯え、振り払うようにする彼女……

見えない何かが消え、顔を見れば、やはり既視感を覚える。

 

『お花、買ってくれない?』

『花言葉は、再会』

 

ニコリと笑う彼女の表情が、突如、消える。

手に持った花は落ち、ドサリと彼女は倒れる。

その後ろに、宿敵ともいえる男が、血に濡れた刀を向けてくる。

 

『お前には、何も救えない』

 

 

 

 

 

 

 

 

ガバリと起き上がり、周囲を確認する。

最低限の家具が置かれた部屋、立てかけられた大剣、干してある服……。

 

自室であることを確認して、クラウドは重たい息を吐きながら、再びベッドに身体を預ける。

心臓が、まだ激しく脈打っている。手のひらには、じっとりと汗が滲んでいた。

何でも屋の傭兵という形で、アバランチ分流の魔晄炉爆破テロに加担して、早くも2日が経つ。

 

今日も、昨日も……同じ悪夢を見た。

夢の女性は、確かにテロの夜、壱番街で出会った。見えない何かに襲われていたところに遭遇し、それらが居なくなった後、花を買った。

 

花言葉は、再会……。確かにそう言った。

 

彼女から感じた既視感のせいか、どうにも、初対面のようには思えなかった。

その後、彼女とは別れた。追われる身であったことから、邂逅したのは僅かな間だけだ。

 

そして、夢に現れた宿敵、セフィロス。

彼の幻覚もまた、壱番街を逃げている時に見た。そして、このアパートに帰ってきた後で、隣の住人と会ったときもまた、幻覚を見た。

 

「人体実験を受けたせいなのか……?」

 

謎の既視感と、セフィロスの幻覚……。

答えのない問いに、また、頭痛がしてくるようだ。

誰にも相談できない不安は、静かに、身体の奥へと澱のように溜まっていく。ジュリアスに話すべきか、幾度となく考えては、その度に、言葉を飲み込んでいた。まだ、自分自身、この現象の正体を掴めていない。中途半端な情報を伝えて、無用な心配をかけたくはなかった。

 

気持ちを切り替えるために、まずはシャワーを浴びよう。

着ていた服も、シーツも、嫌な汗で濡れている。シャワーを浴び、着替えと洗濯を済ませなければ。

今日もまた、何でも屋としての仕事が待っているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

仕事を終えて、ティファの店であるセブンスヘブンに入る。身体を動かし始めれば、朝の嫌な考えは薄れ、普段通りに過ごすことができる。仕事を提案してくれたティファに感謝しつつ、店の扉を開ける。

開店前の店内では、昼食の用意を終えたティファが、花売りから買った花をニコニコと眺めていた。

 

「気に入ってくれたみたいだな」

 

思わず声をかけてしまう。

 

「あ、やだ、帰ってきたら声かけてよ」

「ごめんごめん」

 

恥ずかしげにこちらを非難するティファに、苦笑しながら謝罪する。

カウンターの小瓶に活けられた花は、たった一輪だというのに、店の雰囲気を、ほんの少し柔らかくしていた。

 

ニブルヘイムにいた時では、考えられない生活だと、つい思ってしまう。

子供だった自分は、相当な捻くれ者だった。

彼女に近づきたいのに、つい天邪鬼になってしまう、内気で臆病な人間だった。

……いや、今でも、内気で臆病なところはある。いつ、この生活が終わってしまうのか、終わりが近づいていることが、恐ろしい。

 

『神羅は、お前達が思っている以上に、腹の底が読めない相手だ』

 

ジュリアスとの電話のやり取りを思い出す。

神羅にいたクラウドですら、その闇は計り知れないと感じている。恐らく、アバランチ分流のメンバーの誰よりも。

 

「クラウド、どうかした?」

 

カウンターに昼食が並べられているにも関わらず、その場を動かなかったクラウドは、ティファに声をかけられる。

なんでもない、とだけ答え、椅子に歩み寄る。

悩みはある。恐怖はある。

それ以上に、今を大事にしたい意志が、勇気がある。

その勇気は、きっとティファから与えられたものだと、クラウドは思う。

 

彼女の約束を守ることだけが、自分の生きる意味だと縋った日に、彼女と再会できた。

もう二度と、失いたくない。奪わせない。

彼女がいるだけで強くなれると、クラウドは絶対に言えない言葉を、胸に抱いた。

昼食を摘みながら、他愛のない話をする。今日の仕入れのこと、常連客の噂話、店の新メニューの案。他愛のない話題が、これほどまでに心を落ち着かせるとは、思ってもみなかった。

 

「そういえば、クラウド、最近よく眠れてる? なんか、目の下、隈できてない?」

 

ふいに向けられた指摘に、内心で、僅かに動揺する。

 

「……そんなに、目立つか」

「ううん、ちょっとだけ。無理してない?」

 

心配そうに覗き込んでくるティファに、平静を装って首を振る。

 

「大丈夫だ。ちょっと、寝つきが悪いだけだ」

 

嘘ではない。ただ、全てを話しているわけでもない。この曖昧な言い方が、今の自分にできる、精一杯の誠実さだった。

 

 

 

 

 

 

 

午後の仕事を終えて、夕食には早い時間にセブンスヘブンに戻れば、中にはアバランチのメンバーが集まっていた。

リーダーのバレットがこちらに気がつき、渋い顔をする。他のメンバーは、対照的にニコニコとこちらに手を振る。

 

「よぉ、クラウド! 今日も精が出るな!」

 

明るく声をかけてきたのは、ビッグスだった。落ち着いた物腰の中に、気さくさが滲む声色だった。

 

「クラウドさん、お疲れっす!」

 

体格の良いウェッジが、人懐っこい笑顔で頭を下げる。語尾に「っす」をつける、独特の話し方だった。

 

「クラウド~、こっち来て座りなよ」

 

ジェシーが、隣の椅子をポンポンと叩きながら、手招きする。

バレット以外のメンバーであるビッグス、ウェッジ、ジェシーの3人は、先の爆破テロを共にしたメンバーだ。クラウドが元ソルジャーであると認識している彼等は、クラウドの活躍振りに喜び、歓迎してくれている。

バレットは真逆で、クラウドが元ソルジャーだということが、気に入らないらしい。

クラウドから見て、バレットは激情型で、そのパッションによる感化でリーダーを務めている。そして、彼の原動力が、神羅への怒りであることは、明確だった。

怒りや恨みを隠さず、星の命を奪う彼等は悪虐非道であると主張し、テロに走ったのだろう。

 

ソルジャーとしての、偽りの自分を求められていると考え、作戦中は冷静な人間として振る舞っていたが、その際に言われたことを思い出す。

 

『人間の弱さってのに寄り添えねぇか?』

 

逃走中の列車内で、バレットに言われた言葉だった。

クラウドにとって、バレットの印象が変わった瞬間だった。

作戦中も、異様に高いテンションとなっていたが、それはアドレナリンのせいだったのだろう。

バレットもまた、弱さを抱えていたのだろう。

きっと、バレットはそのつもりで言ったのではない。しかし、クラウドには、あの言葉はバレットの本音だったのかもしれない。

孤独なリーダーとして、仲間に修羅の道を歩ませた、退路を絶った後悔が溢れたのだろう。

 

バレットが娘であるマリンを可愛がり、マリンもまたバレットを慕っている姿は、まるでテロリストとは思えないものだった。以前、店先で娘を肩車しながら、心底嬉しそうに笑うバレットの姿を見たことがある。あの顔と、神羅を憎む顔が、同じ人間のものだとは、未だに信じ難い時がある。

バレットも、癖はあるとはいえ、悪い人間ではないと思えた。

だから、彼のこの忌々しいと言わんばかりの視線も、受け止めることができる。

 

「悪いな、クラウドさんよ。明日の作戦は、俺たちだけでやることにした。これから仲間内だけで団結会だ」

 

有無を言わさぬ物言いに、他のメンバーも、気まずそうに視線を逸らす。

 

「バレット、そんな言い方しなくても……」

 

ジェシーが、小さく口を挟むが、バレットは腕を組んだまま、動じない。

 

「元ソルジャーに、俺達の覚悟を分かってもらう必要はねぇ。今回は、俺達だけでやる」

 

バレットがそう言うのであれば、仕方がない。

チラリとティファを見れば、申し訳なさそうに、顔の前で手を合わせている。

ここで自分がごねても、良いことはないだろう。

肩をすくめ、分かったとだけ答えたクラウドは、大人しく踵を返す。

今日の晩御飯はどこかで適当に済まそうと、アパートへと足を進めた。

 

 

 

 

 

散々な目にあったと、クラウドは先程まで滞在していた、アパートの管理人であるマーレの部屋を出る。

セブンスヘブンから出た後、片腕が銃の男(おそらくバレット)を探しているというチンピラを叩きのめした。先ほど出たばかりのセブンスヘブンに戻ることは憚られたため、アパートに戻れば管理人のマーレに捕まった。

 

「おや、クラウド! この時間に帰ってきたってことは、バレットあたりに追い出されたかい? 夕飯、食べていきな」

 

有無を言わさぬ勢いで、部屋へと引き込まれる。マーレは、アバランチの活動を応援する人間であり、ティファを大層気に入っていた。

ティファの紹介と、アバランチ活動に協力することが相まって、クラウドは家賃無料という破格の待遇を受けられることになった。

そのことに、クラウドは当然感謝している。

今日も事情を話せば、夕食をご馳走してくれた。

そのかわりなのか、家にいる間、ひたすらティファの話となった。

 

「それでね、ティファがこのスラムに来てから、どれだけ頑張ってきたか、知ってる? あの子、本当に強い子なのよ」

「……はい」

「それで、クラウドは、ティファのどこが好きなの? ねぇ、どこよ」

「い、いや、その……」

 

どれだけマーレがティファを気に入っているか、から始まり、終いには、ティファのどこに惚れているのかまで、根掘り葉掘り状態だった。

誘導尋問の如く、全てを話させられたクラウドは、天を仰いだ。反対に、マーレは満足したのか、非常にご機嫌だった。

 

心的疲労は残るが、腹は満たされたので、部屋に帰ろうとして、今度はジェシーに捕まった。

 

「クラウド、ちょうど良かった! ちょっと付き合ってよ」

「……何をだ」

「次の作戦で使う爆薬、ちょっと交換しようと思って。プレート上の伝手から融通してもらうんだけど、荷物持ちが欲しいの」

有無を言わさぬ笑顔に、抗う術もなく頷く。ビッグスとウェッジも既に待機しており、四人で七番街プレート上へと向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

伝手がある、ということは、騒ぎを起こして強奪することだっただろうか。言葉って難しいと、クラウドは半ば現実逃避する。

七番街スラムに戻る道すがら、ウェッジが、興奮気味に話しかけてくる。

「いやぁ、やっぱクラウドさん、つえーっす! さっきの奴をあしらった時も、スカッとしたっす!」

無邪気な称賛に、素直に喜べない自分がいた。

「……あぁ」

曖昧に頷きながらも、内心では、別のことを考えていた。

 

(あのローチェとかいうソルジャー、協調性はなさそうに見えた。奴から、俺の情報が漏れるとは考えにくいが……)

 

ジェシーを除く3人で行った陽動の際に現れた、本物のソルジャー、ローチェ。

実力は2ndクラスに届きそうな相手で、大型バイクを暴れ馬に乗るが如く振り回し、こちらを翻弄してきた。警備兵を巻き添えにして。

制圧することは出来たが、名前と顔を覚えられた。クラウドのことを「マイフレーンド!」と呼ぶくらい気に入られたようだ。

不幸中の幸いは、彼の協調性が著しく低いと思われることだ。

後で問題にならなければ良いが、と、クラウドの心労は増えた。彼から情報が漏れるリスクは低いが、ゼロではない。

 

「にしても、クラウド、バイクも運転上手だし、本当に頼りになるじゃん! ねぇ、やっぱりアバランチに参加してよ! クラウドがいれば百人力!」

 

緊張が解けたのか、ジェシーが、はしゃいだ声を上げる。

 

「そ、そうか」

「ねぇ、今度、二人で食事でも行かない? お礼、させてよ」

 

グイグイと距離を詰めてくるジェシーに、思わず、後ずさる。

 

「い、いや、それは……」

「なんてね! 冗談だよ、冗談。……でも、半分は本気かな?」

 

悪戯っぽく笑うジェシーに、返す言葉が見つからない。

終いには、ジェシーにグイグイと言い寄られたことも、クラウドの心労を加速させた。

女優志望である彼女の距離の詰めかたは、人付き合いの苦手なクラウドにはキツイものがあった。

クラウドにとって、意識する女性はティファだけだ。だからこそ、演技も相まってクルクルと弄ばれるようなジェシーのアプローチは、ややもすれば拷問であった。

なんて1日だと、クラウドは内心でぼやきながら、アパートの部屋に入る。

大剣を立てかけ、ベッドに横になろうとすると、ドアがノックされる。

 

「クラウド、帰ってきた?」

 

ティファの声に、クラウドは慌てて扉を開ける。

 

「ずいぶんと遅くまで出掛けてたんだね」

「あ、あぁ。まぁ、散歩みたいなものだ」

 

ジェシー達から秘密だと言われていた手前、誤魔化す。

ティファは気にすることなく、部屋に入ってくる。

 

「なんか、クラウドの顔を見たら、安心しちゃった。すごい睡魔…….」

 

ティファが伸びをする。強調される胸元に視線がいかないよう、彼女の顔を見れば、どこか影を落としている。

 

「話したいことがあるなら、聞くぞ?」

 

クラウドが促すと、ティファは「バレてたか……」と呟き、ベッドのクラウドの隣に腰を下ろす。

しばらく、沈黙が続いた。ティファは、言葉を選ぶように、何度か口を開きかけては、閉じる。

 

「明日の作戦のこと、つい考えちゃって。覚悟してアバランチに入ったのに、ね。そんな自分が、嫌になっちゃったんだ……」

 

手を組み、視線を落とすティファは、まるで泣きそうな子供のようだった。

 

「たまに、迷っちゃうんだ。故郷を神羅に……セフィロスに焼かれた憎しみは、どうしても消えない。でも、これからやろうとしていることは、他の誰かに同じ思いをさせることだって……」

 

ティファの悩みを聞き、クラウドはどう答えるべきか、考える。

この先の道は、地獄だ。ティファには、耐えられないかもしれない。いつまでも残る、心の傷になるだろう。

 

「確かに…….。そうかもしれない。でも、俺が一緒に背負う」

 

クラウドは言いつつ、彼女の手に自分の手を置く。

 

「その憎しみは、ティファが今まで生きてきた原動力だ。俺は否定しない。

ティファが求めるなら、地獄にだって、一緒に堕ちる」

「クラウド……」

 

あまりの発言に、ティファは呆然とする。

その瞳が、みるみる潤んでいく。堪えきれなかったものが、一筋、頬を伝った。

 

「ずるいよ、そんなの……」

 

震える声で、ティファが呟く。

 

「そんなこと言われたら、私、もう、後戻りできなくなるじゃない」

「後戻りする必要なんて、無い。俺が、隣にいる」

「……ありがとう、クラウド」

 

抱きついてきたティファを抱きしめ返し、そのまま眠りにつく。

腕の中で伝わる、彼女の体温と、僅かに震える吐息。この温もりを守るためなら、どんな道でも歩いていける。そう思えるくらいには、覚悟が決まっていた。

どうか、ティファの眠りが、安らかであることを願いながら。

明日への不安を抱えたまま、クラウドもまた、静かに目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、まだ浅い眠りの中にいたクラウドは、荒々しく肩を揺さぶられ、目を覚ます。

 

「クラウド、起きて! 外、様子がおかしいの!」

 

只事ではない声色に、跳ね起きる。ティファの表情は、強張っていた。

大剣を掴み、部屋を飛び出す。窓の外に広がっていたのは、見慣れた七番街の光景ではなかった。

朝靄の中、輪郭の朧げな、人型とも呼べない何かが、幾つも蠢いている。ローブを被った幽霊のような、影のような姿。あの夜、壱番街で見た――花売りの女に纏わりついていた、あの気配と、同質のものだった。

 

「あれは……」

「分からない。でも、まともな相手じゃないのは、分かる」

 

ティファの声に、頷きを返す。悠長に正体を考えている暇はなかった。

 

「セブンスヘブンに向かう。ティファは、俺の後ろに」

「ううん、私も戦う。一人より、二人の方がいい」

 

有無を言わさぬ声色に、それ以上、何も言わなかった。頼もしいと思う一方で、彼女を危険に晒すことへの恐れが、胸の奥で疼く。

 

 

 

 

 

 

 

 

路地を駆け抜けるたび、影の群れが、行く手を阻んでくる。

実体があるのかも定かではない、掴みどころのない相手だった。それでも、大剣を振るえば、確かな手応えと共に、霧散するように消えていく。

ティファの拳が、的確に急所を捉える。二人がかりで対処すれば、決して押し負ける相手ではなかった。

 

「クラウド、前!」

「――分かってる!」

 

背中を預け合いながら、なんとか活路を切り開いていく。息が上がる。だが、足を止めるわけにはいかなかった。

セブンスヘブンが見えてきた頃には、二人とも、汗と土埃にまみれていた。

 

 

 

 

 

店の前では、既に、戦闘が繰り広げられていた。

バレットの銃腕が、影の群れを薙ぎ払う。ジェシーも、手にしたハンドガンで応戦していた。だが、数が多い。

 

「ジェシー! 後ろ!」

 

バレットの怒声が響く。

振り返る間もなく、影の一つが、ジェシーの背後から、体当たりのように突進した。

 

「――っ!」

 

短い悲鳴と共に、ジェシーの身体が、地面に崩れ落ちる。倒れたジェシーに群がるように、他の影達が、一斉に襲いかかる。

 

「ジェシー!」

 

クラウドは、地を蹴り、影の群れへと斬り込む。目に映る敵を、片端から斬り伏せていく。ティファもまた、動けなくなったジェシーを庇うように、拳を振るった。

数の減った影の群れは、まるで潮が引くように、輪郭を失い、闇の中へと溶けて消えていった。

戦いが終わったことを確認し、クラウドは、駆け寄る。

 

「ジェシー、大丈夫か!」

「い、たたた…… 足、やられた、みたい……」

 

顔を歪めながらも、気丈に笑おうとするジェシーの脚は、大きな傷はないものの、動かそうとすれば痛みが走るようであった。

 

「動かすな。今、手当てする」

 

クラウドが、手早く回復マテリアで治療を始める。バレットが、苦々しい表情で、その様子を見下ろしていた。

 

「クソ…… なんだったんだ、今のは……」

 

誰へともなく、バレットが吐き捨てる。答えられる者は、誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

応急処置を終え、ジェシーは、店の中のベッドへと運ばれた。

 

「これじゃ、今日の作戦、参加させられねぇな……」

 

悔しそうに呟くバレットに、返す言葉が見つからない。

伍番魔晄炉の爆破作戦。ジェシーが不可欠な役割を担っていたのだろう。

沈黙が落ちる店内で、バレットが、大きく息を吐いた。

 

「……クラウド」

 

低い声で、名前を呼ばれる。

 

「お前、今日の作戦、入れ」

「バレット……!」

 

ティファが、驚いたように声を上げる。

 

「元ソルジャーの力は借りねぇ、って言ったばかりだけどよ。……贅沢言ってる場合じゃねぇ。ジェシーが抜けた穴は、でかい」

 

苦渋の滲む声だった。プライドを曲げてでも、仲間を、そして目的を優先する。それが、リーダーとしてのバレットの覚悟なのだろう。

 

「……分かった」

 

短く、頷く。

拒否する理由は、無かった。ジェシーの容態を思えば、なおさらだ。

 

「頼んだぞ、クラウドさんよ」

 

バレットの声に、僅かながら、これまでとは違う響きが混じっていた気がした。

窓の外では、朝の光が、何事もなかったかのように、七番街を照らし始めていた。

だが、クラウドの中では、確かな予感が、静かに広がっていた。

 

(何かが、変わり始めている)

 

得体の知れない影の群れ。ジェシーの負傷。そして、自分に回ってきた、次の作戦。

明日、伍番魔晄炉で、何かが起きる。

その予感を胸に抱えたまま、クラウドは、大剣を握る手に、力を込めた

 




クラティなんですよクラティ
いや、エアティを否定するつもりはないんすよ、ほんとだよ
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