FINAL FANTASY Ⅶ Revengers 作:オレンジⅩⅢ
side クラウド
炎と瓦礫にまみれた壱番街を駆ける。
自分達の引き起こした爆破テロにより、街は想定以上に破壊されていた。
本来は、魔晄炉のみを爆破する予定であった。それが、街にまで被害が及び、死傷者も出ている有様だ。
予定していた経路は瓦礫で塞がれ、警備兵を躱しながら迂回する。焦げた臭いと、誰かの悲鳴が、遠くから、途切れ途切れに聞こえていた。
その先で、知らないはずの、知っている人と会った。
見えない何かに怯え、振り払うようにする彼女……
見えない何かが消え、顔を見れば、やはり既視感を覚える。
『お花、買ってくれない?』
『花言葉は、再会』
ニコリと笑う彼女の表情が、突如、消える。
手に持った花は落ち、ドサリと彼女は倒れる。
その後ろに、宿敵ともいえる男が、血に濡れた刀を向けてくる。
『お前には、何も救えない』
ガバリと起き上がり、周囲を確認する。
最低限の家具が置かれた部屋、立てかけられた大剣、干してある服……。
自室であることを確認して、クラウドは重たい息を吐きながら、再びベッドに身体を預ける。
心臓が、まだ激しく脈打っている。手のひらには、じっとりと汗が滲んでいた。
何でも屋の傭兵という形で、アバランチ分流の魔晄炉爆破テロに加担して、早くも2日が経つ。
今日も、昨日も……同じ悪夢を見た。
夢の女性は、確かにテロの夜、壱番街で出会った。見えない何かに襲われていたところに遭遇し、それらが居なくなった後、花を買った。
花言葉は、再会……。確かにそう言った。
彼女から感じた既視感のせいか、どうにも、初対面のようには思えなかった。
その後、彼女とは別れた。追われる身であったことから、邂逅したのは僅かな間だけだ。
そして、夢に現れた宿敵、セフィロス。
彼の幻覚もまた、壱番街を逃げている時に見た。そして、このアパートに帰ってきた後で、隣の住人と会ったときもまた、幻覚を見た。
「人体実験を受けたせいなのか……?」
謎の既視感と、セフィロスの幻覚……。
答えのない問いに、また、頭痛がしてくるようだ。
誰にも相談できない不安は、静かに、身体の奥へと澱のように溜まっていく。ジュリアスに話すべきか、幾度となく考えては、その度に、言葉を飲み込んでいた。まだ、自分自身、この現象の正体を掴めていない。中途半端な情報を伝えて、無用な心配をかけたくはなかった。
気持ちを切り替えるために、まずはシャワーを浴びよう。
着ていた服も、シーツも、嫌な汗で濡れている。シャワーを浴び、着替えと洗濯を済ませなければ。
今日もまた、何でも屋としての仕事が待っているのだから。
仕事を終えて、ティファの店であるセブンスヘブンに入る。身体を動かし始めれば、朝の嫌な考えは薄れ、普段通りに過ごすことができる。仕事を提案してくれたティファに感謝しつつ、店の扉を開ける。
開店前の店内では、昼食の用意を終えたティファが、花売りから買った花をニコニコと眺めていた。
「気に入ってくれたみたいだな」
思わず声をかけてしまう。
「あ、やだ、帰ってきたら声かけてよ」
「ごめんごめん」
恥ずかしげにこちらを非難するティファに、苦笑しながら謝罪する。
カウンターの小瓶に活けられた花は、たった一輪だというのに、店の雰囲気を、ほんの少し柔らかくしていた。
ニブルヘイムにいた時では、考えられない生活だと、つい思ってしまう。
子供だった自分は、相当な捻くれ者だった。
彼女に近づきたいのに、つい天邪鬼になってしまう、内気で臆病な人間だった。
……いや、今でも、内気で臆病なところはある。いつ、この生活が終わってしまうのか、終わりが近づいていることが、恐ろしい。
『神羅は、お前達が思っている以上に、腹の底が読めない相手だ』
ジュリアスとの電話のやり取りを思い出す。
神羅にいたクラウドですら、その闇は計り知れないと感じている。恐らく、アバランチ分流のメンバーの誰よりも。
「クラウド、どうかした?」
カウンターに昼食が並べられているにも関わらず、その場を動かなかったクラウドは、ティファに声をかけられる。
なんでもない、とだけ答え、椅子に歩み寄る。
悩みはある。恐怖はある。
それ以上に、今を大事にしたい意志が、勇気がある。
その勇気は、きっとティファから与えられたものだと、クラウドは思う。
彼女の約束を守ることだけが、自分の生きる意味だと縋った日に、彼女と再会できた。
もう二度と、失いたくない。奪わせない。
彼女がいるだけで強くなれると、クラウドは絶対に言えない言葉を、胸に抱いた。
昼食を摘みながら、他愛のない話をする。今日の仕入れのこと、常連客の噂話、店の新メニューの案。他愛のない話題が、これほどまでに心を落ち着かせるとは、思ってもみなかった。
「そういえば、クラウド、最近よく眠れてる? なんか、目の下、隈できてない?」
ふいに向けられた指摘に、内心で、僅かに動揺する。
「……そんなに、目立つか」
「ううん、ちょっとだけ。無理してない?」
心配そうに覗き込んでくるティファに、平静を装って首を振る。
「大丈夫だ。ちょっと、寝つきが悪いだけだ」
嘘ではない。ただ、全てを話しているわけでもない。この曖昧な言い方が、今の自分にできる、精一杯の誠実さだった。
午後の仕事を終えて、夕食には早い時間にセブンスヘブンに戻れば、中にはアバランチのメンバーが集まっていた。
リーダーのバレットがこちらに気がつき、渋い顔をする。他のメンバーは、対照的にニコニコとこちらに手を振る。
「よぉ、クラウド! 今日も精が出るな!」
明るく声をかけてきたのは、ビッグスだった。落ち着いた物腰の中に、気さくさが滲む声色だった。
「クラウドさん、お疲れっす!」
体格の良いウェッジが、人懐っこい笑顔で頭を下げる。語尾に「っす」をつける、独特の話し方だった。
「クラウド~、こっち来て座りなよ」
ジェシーが、隣の椅子をポンポンと叩きながら、手招きする。
バレット以外のメンバーであるビッグス、ウェッジ、ジェシーの3人は、先の爆破テロを共にしたメンバーだ。クラウドが元ソルジャーであると認識している彼等は、クラウドの活躍振りに喜び、歓迎してくれている。
バレットは真逆で、クラウドが元ソルジャーだということが、気に入らないらしい。
クラウドから見て、バレットは激情型で、そのパッションによる感化でリーダーを務めている。そして、彼の原動力が、神羅への怒りであることは、明確だった。
怒りや恨みを隠さず、星の命を奪う彼等は悪虐非道であると主張し、テロに走ったのだろう。
ソルジャーとしての、偽りの自分を求められていると考え、作戦中は冷静な人間として振る舞っていたが、その際に言われたことを思い出す。
『人間の弱さってのに寄り添えねぇか?』
逃走中の列車内で、バレットに言われた言葉だった。
クラウドにとって、バレットの印象が変わった瞬間だった。
作戦中も、異様に高いテンションとなっていたが、それはアドレナリンのせいだったのだろう。
バレットもまた、弱さを抱えていたのだろう。
きっと、バレットはそのつもりで言ったのではない。しかし、クラウドには、あの言葉はバレットの本音だったのかもしれない。
孤独なリーダーとして、仲間に修羅の道を歩ませた、退路を絶った後悔が溢れたのだろう。
バレットが娘であるマリンを可愛がり、マリンもまたバレットを慕っている姿は、まるでテロリストとは思えないものだった。以前、店先で娘を肩車しながら、心底嬉しそうに笑うバレットの姿を見たことがある。あの顔と、神羅を憎む顔が、同じ人間のものだとは、未だに信じ難い時がある。
バレットも、癖はあるとはいえ、悪い人間ではないと思えた。
だから、彼のこの忌々しいと言わんばかりの視線も、受け止めることができる。
「悪いな、クラウドさんよ。明日の作戦は、俺たちだけでやることにした。これから仲間内だけで団結会だ」
有無を言わさぬ物言いに、他のメンバーも、気まずそうに視線を逸らす。
「バレット、そんな言い方しなくても……」
ジェシーが、小さく口を挟むが、バレットは腕を組んだまま、動じない。
「元ソルジャーに、俺達の覚悟を分かってもらう必要はねぇ。今回は、俺達だけでやる」
バレットがそう言うのであれば、仕方がない。
チラリとティファを見れば、申し訳なさそうに、顔の前で手を合わせている。
ここで自分がごねても、良いことはないだろう。
肩をすくめ、分かったとだけ答えたクラウドは、大人しく踵を返す。
今日の晩御飯はどこかで適当に済まそうと、アパートへと足を進めた。
散々な目にあったと、クラウドは先程まで滞在していた、アパートの管理人であるマーレの部屋を出る。
セブンスヘブンから出た後、片腕が銃の男(おそらくバレット)を探しているというチンピラを叩きのめした。先ほど出たばかりのセブンスヘブンに戻ることは憚られたため、アパートに戻れば管理人のマーレに捕まった。
「おや、クラウド! この時間に帰ってきたってことは、バレットあたりに追い出されたかい? 夕飯、食べていきな」
有無を言わさぬ勢いで、部屋へと引き込まれる。マーレは、アバランチの活動を応援する人間であり、ティファを大層気に入っていた。
ティファの紹介と、アバランチ活動に協力することが相まって、クラウドは家賃無料という破格の待遇を受けられることになった。
そのことに、クラウドは当然感謝している。
今日も事情を話せば、夕食をご馳走してくれた。
そのかわりなのか、家にいる間、ひたすらティファの話となった。
「それでね、ティファがこのスラムに来てから、どれだけ頑張ってきたか、知ってる? あの子、本当に強い子なのよ」
「……はい」
「それで、クラウドは、ティファのどこが好きなの? ねぇ、どこよ」
「い、いや、その……」
どれだけマーレがティファを気に入っているか、から始まり、終いには、ティファのどこに惚れているのかまで、根掘り葉掘り状態だった。
誘導尋問の如く、全てを話させられたクラウドは、天を仰いだ。反対に、マーレは満足したのか、非常にご機嫌だった。
心的疲労は残るが、腹は満たされたので、部屋に帰ろうとして、今度はジェシーに捕まった。
「クラウド、ちょうど良かった! ちょっと付き合ってよ」
「……何をだ」
「次の作戦で使う爆薬、ちょっと交換しようと思って。プレート上の伝手から融通してもらうんだけど、荷物持ちが欲しいの」
有無を言わさぬ笑顔に、抗う術もなく頷く。ビッグスとウェッジも既に待機しており、四人で七番街プレート上へと向かうことになった。
伝手がある、ということは、騒ぎを起こして強奪することだっただろうか。言葉って難しいと、クラウドは半ば現実逃避する。
七番街スラムに戻る道すがら、ウェッジが、興奮気味に話しかけてくる。
「いやぁ、やっぱクラウドさん、つえーっす! さっきの奴をあしらった時も、スカッとしたっす!」
無邪気な称賛に、素直に喜べない自分がいた。
「……あぁ」
曖昧に頷きながらも、内心では、別のことを考えていた。
(あのローチェとかいうソルジャー、協調性はなさそうに見えた。奴から、俺の情報が漏れるとは考えにくいが……)
ジェシーを除く3人で行った陽動の際に現れた、本物のソルジャー、ローチェ。
実力は2ndクラスに届きそうな相手で、大型バイクを暴れ馬に乗るが如く振り回し、こちらを翻弄してきた。警備兵を巻き添えにして。
制圧することは出来たが、名前と顔を覚えられた。クラウドのことを「マイフレーンド!」と呼ぶくらい気に入られたようだ。
不幸中の幸いは、彼の協調性が著しく低いと思われることだ。
後で問題にならなければ良いが、と、クラウドの心労は増えた。彼から情報が漏れるリスクは低いが、ゼロではない。
「にしても、クラウド、バイクも運転上手だし、本当に頼りになるじゃん! ねぇ、やっぱりアバランチに参加してよ! クラウドがいれば百人力!」
緊張が解けたのか、ジェシーが、はしゃいだ声を上げる。
「そ、そうか」
「ねぇ、今度、二人で食事でも行かない? お礼、させてよ」
グイグイと距離を詰めてくるジェシーに、思わず、後ずさる。
「い、いや、それは……」
「なんてね! 冗談だよ、冗談。……でも、半分は本気かな?」
悪戯っぽく笑うジェシーに、返す言葉が見つからない。
終いには、ジェシーにグイグイと言い寄られたことも、クラウドの心労を加速させた。
女優志望である彼女の距離の詰めかたは、人付き合いの苦手なクラウドにはキツイものがあった。
クラウドにとって、意識する女性はティファだけだ。だからこそ、演技も相まってクルクルと弄ばれるようなジェシーのアプローチは、ややもすれば拷問であった。
なんて1日だと、クラウドは内心でぼやきながら、アパートの部屋に入る。
大剣を立てかけ、ベッドに横になろうとすると、ドアがノックされる。
「クラウド、帰ってきた?」
ティファの声に、クラウドは慌てて扉を開ける。
「ずいぶんと遅くまで出掛けてたんだね」
「あ、あぁ。まぁ、散歩みたいなものだ」
ジェシー達から秘密だと言われていた手前、誤魔化す。
ティファは気にすることなく、部屋に入ってくる。
「なんか、クラウドの顔を見たら、安心しちゃった。すごい睡魔…….」
ティファが伸びをする。強調される胸元に視線がいかないよう、彼女の顔を見れば、どこか影を落としている。
「話したいことがあるなら、聞くぞ?」
クラウドが促すと、ティファは「バレてたか……」と呟き、ベッドのクラウドの隣に腰を下ろす。
しばらく、沈黙が続いた。ティファは、言葉を選ぶように、何度か口を開きかけては、閉じる。
「明日の作戦のこと、つい考えちゃって。覚悟してアバランチに入ったのに、ね。そんな自分が、嫌になっちゃったんだ……」
手を組み、視線を落とすティファは、まるで泣きそうな子供のようだった。
「たまに、迷っちゃうんだ。故郷を神羅に……セフィロスに焼かれた憎しみは、どうしても消えない。でも、これからやろうとしていることは、他の誰かに同じ思いをさせることだって……」
ティファの悩みを聞き、クラウドはどう答えるべきか、考える。
この先の道は、地獄だ。ティファには、耐えられないかもしれない。いつまでも残る、心の傷になるだろう。
「確かに…….。そうかもしれない。でも、俺が一緒に背負う」
クラウドは言いつつ、彼女の手に自分の手を置く。
「その憎しみは、ティファが今まで生きてきた原動力だ。俺は否定しない。
ティファが求めるなら、地獄にだって、一緒に堕ちる」
「クラウド……」
あまりの発言に、ティファは呆然とする。
その瞳が、みるみる潤んでいく。堪えきれなかったものが、一筋、頬を伝った。
「ずるいよ、そんなの……」
震える声で、ティファが呟く。
「そんなこと言われたら、私、もう、後戻りできなくなるじゃない」
「後戻りする必要なんて、無い。俺が、隣にいる」
「……ありがとう、クラウド」
抱きついてきたティファを抱きしめ返し、そのまま眠りにつく。
腕の中で伝わる、彼女の体温と、僅かに震える吐息。この温もりを守るためなら、どんな道でも歩いていける。そう思えるくらいには、覚悟が決まっていた。
どうか、ティファの眠りが、安らかであることを願いながら。
明日への不安を抱えたまま、クラウドもまた、静かに目を閉じた。
翌朝、まだ浅い眠りの中にいたクラウドは、荒々しく肩を揺さぶられ、目を覚ます。
「クラウド、起きて! 外、様子がおかしいの!」
只事ではない声色に、跳ね起きる。ティファの表情は、強張っていた。
大剣を掴み、部屋を飛び出す。窓の外に広がっていたのは、見慣れた七番街の光景ではなかった。
朝靄の中、輪郭の朧げな、人型とも呼べない何かが、幾つも蠢いている。ローブを被った幽霊のような、影のような姿。あの夜、壱番街で見た――花売りの女に纏わりついていた、あの気配と、同質のものだった。
「あれは……」
「分からない。でも、まともな相手じゃないのは、分かる」
ティファの声に、頷きを返す。悠長に正体を考えている暇はなかった。
「セブンスヘブンに向かう。ティファは、俺の後ろに」
「ううん、私も戦う。一人より、二人の方がいい」
有無を言わさぬ声色に、それ以上、何も言わなかった。頼もしいと思う一方で、彼女を危険に晒すことへの恐れが、胸の奥で疼く。
路地を駆け抜けるたび、影の群れが、行く手を阻んでくる。
実体があるのかも定かではない、掴みどころのない相手だった。それでも、大剣を振るえば、確かな手応えと共に、霧散するように消えていく。
ティファの拳が、的確に急所を捉える。二人がかりで対処すれば、決して押し負ける相手ではなかった。
「クラウド、前!」
「――分かってる!」
背中を預け合いながら、なんとか活路を切り開いていく。息が上がる。だが、足を止めるわけにはいかなかった。
セブンスヘブンが見えてきた頃には、二人とも、汗と土埃にまみれていた。
店の前では、既に、戦闘が繰り広げられていた。
バレットの銃腕が、影の群れを薙ぎ払う。ジェシーも、手にしたハンドガンで応戦していた。だが、数が多い。
「ジェシー! 後ろ!」
バレットの怒声が響く。
振り返る間もなく、影の一つが、ジェシーの背後から、体当たりのように突進した。
「――っ!」
短い悲鳴と共に、ジェシーの身体が、地面に崩れ落ちる。倒れたジェシーに群がるように、他の影達が、一斉に襲いかかる。
「ジェシー!」
クラウドは、地を蹴り、影の群れへと斬り込む。目に映る敵を、片端から斬り伏せていく。ティファもまた、動けなくなったジェシーを庇うように、拳を振るった。
数の減った影の群れは、まるで潮が引くように、輪郭を失い、闇の中へと溶けて消えていった。
戦いが終わったことを確認し、クラウドは、駆け寄る。
「ジェシー、大丈夫か!」
「い、たたた…… 足、やられた、みたい……」
顔を歪めながらも、気丈に笑おうとするジェシーの脚は、大きな傷はないものの、動かそうとすれば痛みが走るようであった。
「動かすな。今、手当てする」
クラウドが、手早く回復マテリアで治療を始める。バレットが、苦々しい表情で、その様子を見下ろしていた。
「クソ…… なんだったんだ、今のは……」
誰へともなく、バレットが吐き捨てる。答えられる者は、誰もいなかった。
応急処置を終え、ジェシーは、店の中のベッドへと運ばれた。
「これじゃ、今日の作戦、参加させられねぇな……」
悔しそうに呟くバレットに、返す言葉が見つからない。
伍番魔晄炉の爆破作戦。ジェシーが不可欠な役割を担っていたのだろう。
沈黙が落ちる店内で、バレットが、大きく息を吐いた。
「……クラウド」
低い声で、名前を呼ばれる。
「お前、今日の作戦、入れ」
「バレット……!」
ティファが、驚いたように声を上げる。
「元ソルジャーの力は借りねぇ、って言ったばかりだけどよ。……贅沢言ってる場合じゃねぇ。ジェシーが抜けた穴は、でかい」
苦渋の滲む声だった。プライドを曲げてでも、仲間を、そして目的を優先する。それが、リーダーとしてのバレットの覚悟なのだろう。
「……分かった」
短く、頷く。
拒否する理由は、無かった。ジェシーの容態を思えば、なおさらだ。
「頼んだぞ、クラウドさんよ」
バレットの声に、僅かながら、これまでとは違う響きが混じっていた気がした。
窓の外では、朝の光が、何事もなかったかのように、七番街を照らし始めていた。
だが、クラウドの中では、確かな予感が、静かに広がっていた。
(何かが、変わり始めている)
得体の知れない影の群れ。ジェシーの負傷。そして、自分に回ってきた、次の作戦。
明日、伍番魔晄炉で、何かが起きる。
その予感を胸に抱えたまま、クラウドは、大剣を握る手に、力を込めた
クラティなんですよクラティ
いや、エアティを否定するつもりはないんすよ、ほんとだよ