ロックマンゼクス&はぴねす!〜バディ・コネクション!!〜   作:騎士誠一郎

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第2話 打ち上げと新たな力

「——というわけで! 雄真の無事と、瑞穂坂を救った『謎の青いヒーロー』の誕生(?)を祝して……乾杯ーーーっ!!」

八輔の威勢の良い音頭とともに、ジョッキやグラスが一斉にぶつかり合い、カチャンと涼やかな音を奏でた。

宴の舞台となったのは、瑞穂坂商店街の端に位置する居酒屋風のファミレス「割烹あきは」。

放課後や休日に学園の仲間たちが集う憩いの場であり、卒業してそれぞれの道を歩み始めた今でも、集まるとなれば真っ先に名前が挙がる場所だった。

店内には、懐かしい顔ぶれが揃っていた。

「ちょっと八輔、声が大きいわよ! まだ昼過ぎなんだから、周りの迷惑も考えなさい!」

そう言って八輔の頭をメニュー表でスパンッと叩いたのは、柊杏里(ひいらぎあんり)だ。

相変わらずの勝気で凛とした表情。瑞穂坂学園時代と変わらず、ツインテールを揺らしながら八輔を睨みつけているが、その瞳には仲間たちと集まれたことへの嬉しさが隠しきれていない。

「たたっ、痛でぇ! 相変わらず容赦ねえな、杏里は! 俺はただ、親友が生きてた喜びを爆発させてるだけだろーが!」

「本当、八輔くんは昔から変わらないねぇ。でも、雄真くんが無事で本当に良かったよ」

おっとりと微笑みながら、急須からお茶を注いでくれたのは、高峰小雪(たかみねこゆき)だ。

和服を優雅に着こなし、醸し出される大和撫子の空気感は相変わらず周囲を和ませる。小雪の淹れたお茶の香りがテーブルに漂うと、一瞬で場がなごやかな空気に包まれた。

「うふふ、兄さん、本当によかったね! すもも、ニュースを見たとき、すっごく心配したんだから!」

雄真の隣にぴったりと寄り添い、袖をぎゅっと掴んでいるのは、妹の小日向すももだった。

クリクリとした大きな瞳を潤ませながら、雄真の顔をじっと見つめている。その表情には、昨日の事件の恐ろしさと、無事に戻ってきた兄への深い愛着が溢れていた。

「心配かけてごめんな、すもも。でも、俺は見ての通り、怪我一つないから大丈夫だよ」

雄真はすももの頭を優しく撫でた。

その手つきに安堵したのか、すももは「えへへ」と可愛らしく頬を緩ませる。

「でも、本当に間一髪だったんだろ? 春姫から連絡をもらった時は、私も血の気が引いたわよ」

少し大人びた私服に身を包んだ渡良瀬準(わたらせじゅん)が、アイスティーのグラスを傾けながら雄真と春姫に視線を向けた。

見た目は誰もが見惚れる美少女、しかしその実体は雄真の「男友達」である準。その鋭い観察眼は相変わらずで、心配そうに二人の顔を見比べる。

「うん……本当に凄まじい嵐と雷だったの。あたしの結界魔法も一瞬で破られちゃって……雄真くんが庇ってくれなかったら、わたし……」

春姫は膝の上で固く拳を握りしめ、言葉を詰まらせた。

その隣で、雄真はそっと春姫の手の上に自分の手を重ねた。昨日の恐怖が、まだ彼女の心に爪痕を残している。それを解きほぐすように、力強く温かい温もりを伝える。

「でもさ! そこに現れたんだろ!? 例の『青いヒーロー』がさぁ!」

八輔が再び身を乗り出し、スマートフォンをみんなに見せるように掲げた。

「見てくれよこれ! ネットに上がってる目撃映像の解析画像! 魔法の詠唱も陣もなしに、巨大な光の砲撃であの化け物を一瞬で消し去ったんだぞ!? 魔法省の特務部隊でもあんな芸当できるわけねえ! 噂じゃ、隣国が開発した秘密兵器だとか、古代魔法文明の遺物だとか言われてるけど……」

「へえ……これが、噂の……」

杏里が画像を覗き込み、眉をひそめた。

「確かに、魔力の波形が一切検知されなかったって魔法警察の発表に出てたわね。魔力以外のエネルギーで動く存在……そんなものが本当に存在するのかしら?」

「小雪も、お父様から少しお話を聞きましたけれど……あの機械の怪物も、これまでの魔獣や暴走した魔法具とは根本的に構造が異なっていたそうです。世界の外側から来たような……そんな不気味さがあったと」

小雪が真面目な面持ちで語る。

さすがは良家のお嬢様、情報の伝達速度と精度が高い。

「魔法を超えた存在……ね。雄真、春姫ちゃん、本当にそのヒーローの正体については何も知らないの? 目の前で戦ってたんでしょ?」

準が、ふとした仕草で雄真の顔を覗き込んできた。

その瞳は、何かを見透かそうとするかのように澄んでいる。

「っ!?」

雄真と春姫の身体が一瞬、硬直した。

(やばい……準の勘は八輔以上に鋭い……!)

雄真は冷や汗が背中を伝うのを感じた。

実は、ポケットの中では今も「モデルX」が静かに呼吸をするようにほのかな温もりを放っているのだ。もしここで自分が「ロックマン・モデルX」であるとバレたらどうなるか。

八輔は間違いなく「マジかよお前ぇぇぇっ! パワーレンジャーかよ!?」と店中で大騒ぎし、世界中にSNSで拡散しかねない。

すももは過保護さ故に「そんな危険なもの捨てて兄さん!」と泣きつくだろうし、杏里や小雪、準は魔法省や大学の研究機関との板挟みになって余計な苦労を背負い込むことになる。

そして何より——あの「イザナミ」や「セルパン」という未知の敵の標的が、この大切な仲間たちに向いてしまう可能性が高まるのだ。

雄真と春姫は、瞬時に視線を交わした。

言葉はなくとも、瑞穂坂で数々のトラブルを共に乗り越えてきたパートナー同士の呼吸が結びつく。

(……春姫、隠し通そう)

(……ええ、雄真くん。わたしたちだけの秘密よ)

二人の覚悟が、静かに決まった。

「いやあ……本当に覚えてないんだよ」

雄真はあえて大雑把に頭を掻きながら、困ったような苦笑いを浮かべた。

「あの時は春姫を庇うので必死だったし、強烈な光と爆風で目が眩んじゃってさ。気がついたら化け物は爆発してて、青い光も消えてたんだ。助かったのは確かだけど、正体なんて全然……ね、春姫?」

「うん! あたしも必死で治癒魔法を使おうとしてたから、全然見えなかったの。ただ……すごく綺麗で、温かい光だったような気はするけど……」

春姫も完璧な演技で話を合わせた。照れくさそうに微笑むその表情には、一点の曇りもないように見えた。

「そっかぁ……まあ、二人とも無事だったんだから、今はそれで十分だよね!」

すももが雄真の腕にギュッと抱きつき、ほっとしたように胸を撫で下ろした。

「だな! 正体なんざ、そのうちまた化け物が現れたらヒーローが教えてくれるさ! 今日は飲むぞーっ! すももちゃんにはジュース追加で!」

「ちょっと八輔、勝手に注文増やさないでよ!」

賑やかな笑い声が再びテーブルに弾けた。

杏里と八輔の言い争い、それを宥める小雪、楽しそうに笑う準やすもも。

いつも通りの、愛おしく、平和な瑞穂坂の日常。

その喧騒の中で、雄真はそっとジャケットのポケットに手を差し入れた。

指先に触れる、冷たくも力強い金属の質感——モデルX。

(……聴こえますか、雄真)

脳内に直接、モデルXの静かで透明な声が届く。

(言葉を偽らせてしまい、申し訳ありません)

(ううん、これでいいんだ、モデルX。……俺のせいで、この笑顔を壊したくないから)

雄真は仲間たちの弾けるような笑顔を一人一人見つめた。

昨日までの自分は、ただの「魔法研究者を目指す学生」だった。

だが今、自分の手には世界を揺るがす未知の力「ライブメタル」がある。そして、その力を狙う悪意の影——セルパンカンパニーとイザナミが、この街の平和を裏から侵食しようとしている。

巻き込むわけにはいかない。

この温かな日常を守るためなら、自分と春姫だけでその重荷を背負う覚悟があった。

「雄真くん……」

隣で、春姫がそっと雄真の裾を引っ張った。

雄真が振り向くと、春姫は誰にも聞こえないほどの小さな声で、しかしたしかな強さを持った瞳で囁いた。

「あたしも、一緒に背負うからね。雄真くん一人にカッコつけさせないんだから」

「……ありがとう、春姫」

二人は密かに固く手を握り合った。

乾杯のグラスの音が響き、仲間たちの笑い声が交錯する中で。

迫り来る脅威と、自分たちの手で街を護るという「青き誓い」を胸に秘め、小日向雄真の壮絶なる戦いの物語は、静かに、しかし確実に次なるステージへと動き出していた。

 

賑やかな打ち上げの翌日。

昨日までの騒ぎが嘘のように、瑞穂坂の街は穏やかな日曜日の朝を迎えていた。

抜けるような青空と、温かな日差し。街行く人々は買い物や散歩を楽しみ、昨日の事件の恐怖を少しずつ塗り替えるように、いつも通りの日常を謳歌していた。

しかし、その平穏は「計画された静寂」に過ぎなかった。

私立瑞穂坂学園の旧校舎裏、緑が鬱蒼と茂る敷地の境界線上において。

空間が突如として歪み、歪んだ光の渦から、ひとつの巨大な「黒」が吐き出された。

——ギガアスピス(市街地用対人掃討仕様)。

セルパンカンパニーが裏社会および極秘の実験用に開発した、超重量級の自動戦闘兵器(イレギュラー)である。

蛇を思わせる流線型の漆黒のボディは、全長十メートルを超える巨大さ。だが、その本質はただの怪物ではない。無数の対人銃座、指向性高エネルギーレーザー、そして何より——周囲のあらゆる電子機器および魔力回路を強制停止させる「電磁パルス(EMP)&魔力干渉コーティング」を全身に施された、移動する絶対殺戮兵器だった。

『……ターゲット領域「瑞穂坂」ヘ侵入。ミッション:適合者「小日向雄真」の誘出、およびモデルXの戦闘データの完全採取……開始』

赤く蠢くメインカメラが光を放ち、ギガアスピスは静かに、しかし地鳴りを上げて市街地へと滑り出した。

 

ドォォォォォォォンッ!!!!!

平和な街に、再び絶望の炸裂音が響き渡った。

「キャーッ!?」

「何だ、また化け物か!?」

昨日復旧したばかりのメインストリートが、ギガアスピスの放った拡散レーザーによって一瞬で火の海と化した。悲鳴と怒号、砕け散るガラスの音が街を包み込む。

「全員退避! 魔法警察の指示に従ってください!」

駆けつけた魔法警察の部隊が、即座に詠唱を開始した。

「『集え、鋼鉄を穿つ炎の槍!』放てぇっ!」

十数名の警察官が一斉に極大の攻撃魔法を放つ。燃え盛る巨大な炎の槍が、ギガアスピスの巨体へと襲いかかった。

しかし。

ジジジジジッ……!

炎の槍は、ギガアスピスの装甲に触れた瞬間、魔法陣そのものが霧散するように消失した。

「な……魔法が……解呪(ディスペル)された……!?」

「ダメです! 相手の装甲から特殊な干渉波が出ていて、魔力の構文が維持できません!」

『——雑魚ガ』

ギガアスピスの無数の銃座が一斉に火を噴いた。

重機関銃の弾幕と電磁波が警察部隊を襲う。魔法障壁すら展開できない警察官たちは、一溜まりもなく吹き飛ばされ、路上に崩れ落ちていった。圧倒的な力の差。セルパンカンパニーの威信をかけた「魔法殺し」の性能が、猛威を振るっていた。

「くそっ……! また現れたのか!」

休日の買い出しに出ていた雄真は、崩壊する街の惨状を目にして歯かみした。

隣には、青ざめた表情の春姫がいる。

「雄真、あれ……昨日のやつと雰囲気が違う! 魔力だけじゃなくて、周囲の空気そのものが重く歪んでる……!」

「ああ……でも、僕たちがやるしかない!」

雄真は周りに人がいない路地裏へ駆け込むと、ポケットから青く輝く結晶を取り出した。

「モデルX! いくぞ!」

「了解です、雄真! !」

「——ロックオンッッ!!」

眩い青い光が雄真を包み込む。

瞬時に再構築される青き装甲——「ロックマン・モデルX」。

「春姫はここで待ってて! 街の人たちを避難させてくれ!」

「雄真くん、気をつけて!」

雄真は爆風を突き抜け、広場の中央で暴れ回るギガアスピスの前へと躍り出た。

「そこまでだ、化け物! 街をこれ以上傷つけさせない!」

ギガアスピスの赤いカメラが、カチカチと音を立てて雄真を捉えた。

『適合者「小日向雄真」……モデルXの反応を確認。フェーズ2ヘ移行』

「はぁぁぁぁっ!」

雄真は踏み込み、右腕のバスターを構えてチャージを開始した。

昨日のハイボルトを一撃で粉砕した、あのフルチャージショットを叩き込むために。

「キュイィィィィン……」

しかし。

バスターのチャージ音が、不気味に歪み、急激に衰退していった。

「な……なに……!?」

『無駄ダ』

ギガアスピスの全身の装甲が展開し、無彩色の波動が全方位へと放射された。

電磁パルスと強烈な魔力干渉波の二重展開——「EMP・アンチマジックコーティング」。

「うあぁぁぁぁっ!?」

バスターに集まっていた光が弾け飛び、装甲の各部から激しいスパークが散る。

モデルXのシステム全体に極度の負荷がかかり、関節が鉛のように重くなった。

「くっ……体が……動かない……!? モデルX、どうなってるんだ!?」

「く……雄真、申し訳……ありません……! 相手の表面装甲から放たれている特殊な干渉波が、私のエネルギー巡航回路を強制的にショートさせています……! これでは……出力を維持できません……!」

「そんな……!?」

驚愕する雄真。

モデルXの完璧なテクノロジーすらも無力化する、徹底的な「モデルX対策」が施された兵器。それがこのギガアスピスだったのだ。

『モデルXノ捕獲、および適合者ノ排除ヲ開始』

ギガアスピスの巨大な尾が、鞭のようにしなり、動けない雄真へと叩きつけられた!

ズドォォォォンッ!!

「ぐあぁぁぁぁっ!?」

衝撃波とともに吹き飛ばされ、雄真は建物の壁に激しく激突した。

装甲のあちこちから光が漏れ出し、変身が解除されかける。血の味が口の中に広がった。

「雄真ぁぁぁっ!」

路地から飛び出してきた春姫が、悲鳴を上げる。

『終わりダ、適合者』

ギガアスピスが巨体を揺らし、雄真の頭上へと迫る。巨大な鋼鉄の足が、雄真を押し潰そうと振り上げられた。

(くそっ……動け……動いてくれ……! このままじゃ……また……!)

絶対の絶望。モデルXのシステムは完全に沈黙し、雄真の身体は指一本動かない。

死の脚が、振り下ろされた——その時。

 

——閃光。

紅蓮の炎を思わせる、鮮烈な赤い光が空を裂いた。

キンッ!!!!!

甲高い金属打撃音が響き渡り、ギガアスピスの巨大な脚が強引にはじき返された。

「……情けない声を出すな、適合者」

静かな、しかし凛とした男の声が上空から降ってきた。

「な……っ!?」

雄真が目を見開く。

崩れた瓦礫の上に立っていたのは、赤と白を基調とした鋭角的な装甲を纏い、背中に黄金の髪のようなエネルギーをたなびかせた、もう一人の「ロックマン」の幻影(メモリー)だった。

その右手には、緑色に輝くエネルギーの剣——『ゼットセイバー』が握られている。

『チッ……モデルZだと……!?』

ギガアスピスが警戒の唸りを上げた。

「モデル……Z……!?」

雄真の手の中で、衰弱していたモデルXがかすかな声を上げた。

「……Z……! 君もも……目覚めていたんだね……!」

赤いロックマン——モデルZは、一瞬だけ雄真へ視線を向けると、鼻で笑うように吐き捨てた。

「モデルX、このような不完全な兵器の罠にハマるとはな。……だが、あの若者の目……悪くはない」

「なに……?」

「立て! 絶望している暇があるなら、その心にある『護るための力』を叫べ!」

モデルZがセイバーを一閃させると、真紅のエネルギー波が放たれ、ギガアスピスのEMP放射ユニットの一部を切り裂いた!

バリバリバリッ!

干渉波が僅かに弱まり、モデルXのコアが再び輝きを取り戻す。

「雄真……! 聴こえるか!」

モデルXの声が脳内に響き渡る。

「モデルZの力と、僕の力を融合させるんだ! 単体のシステムでは打破できないこの状況も、ふたつのライブメタルが重なり合えば……未知の領域『ダブル・ロックオン』が可能となるはず!」

「ふたつの……ライブメタル……! ダブル・ロックオン!?」

「ええ! あなたの熱い思い……誰かを護りたいというその強い魂があれば、ふたつの力を束ねることができる!」

雄真は血を吐き捨て、猛然と立ち上がった。

視線の先には、恐怖に怯えながらも自分を信じて見つめている春姫がいる。

街の人々の悲鳴がある。

そして、自分に未来を託してくれた二つの命——モデルXと、モデルZの存在がある。

(負けられるか……! どんな罠があろうと、どんな悪意が立ちふさがろうと……絶対に折れない!)

雄真の胸の奥で、魂の炉が爆発的な熱を帯びて燃え上がった。

雄真は両手を胸の前で交差させ、生命の全てを込めて叫んだ。

「モデルX! モデルZ!! みんなを護る力をぉぉぉぉっ!!!」

「「適合者、確認。R.O.C.K・システム、起動開始!!!」」

ふたつの光——青と赤の光の柱が、天を衝いた!

世界が震える。

モデルXの「射撃性能・バスター」と、モデルZの「近接格闘・セイバー」。本来ならば相反する二つの絶対的なシステムが、雄真の熱い思いの触媒によって奇跡の融合を果たしていく!

光の中から現れたのは——

深みのある赤が完璧なバランスで配置された装甲。

右手にゼクスセイバーを握り締め、強い眼光を放つ存在。

「究極の変身——ロックマン・モデルZX!!」

 

『バカナ……! ふたつのライブメタルを同時に同調させただと!? 適合者の精神が耐えられるはずがない!』

ギガアスピスが狼狽し、全身の全火器をロックマンZXへと向けた。

残された全エネルギーを注ぎ込んだ、極大の電磁レーザーと誘導ミサイルの嵐が襲いかかる!

しかし。

シュンッ!

ロックマンZXとなった雄真の姿が、かき消えた。

『消えた……!?』

「遅い!」

ギガアスピスの頭上に、雄真はすでに跳躍していた。モデルZの機動力が、モデルXの出力を極限まで加速させている。

「はぁぁぁぁっ!」

空中から振り下ろされるゼクスセイバー!

一閃。

極大の光刃が、ギガアスピスの「アンチマジック装甲」ごと、巨大な右腕を易々と切断した!

ドカンッ! と爆発とともに破片が吹き飛ぶ。

『グガァァァァッ!? 我が装甲が……切断されただとぉぉぉっ!?』

「これで……終わりだ!」

着地した雄真は、間髪入れずにゼクスセイバーに力を込めた。

チャージエネルギーが、ゼクスセイバーの光刃へと注入されていく。

ふたつのライブメタルが織りなす、極限の必殺技——!

「モデルX! モデルZ! いくぞっ!」

「「応ッ!!」」

雄真は踏み込み、ギガアスピスの懐へと滑り込んだ。

「切り裂け……! チャージ・セイバーッッ!!!」

閃光が走った。

巨大な炎の十字架が、ギガアスピスの巨体を貫いた。

時間すら停止したかのような静寂。

次の瞬間——

チュドォォォォォォォォンッ!!!!!

ギガアスピスは内側から凄まじい爆発を起こし、跡形もなく黒煙の中に消滅したのだった。

 

戦いは終わった。

ダブル・ロックオンが解除され、元の姿に戻った雄真は、その場に膝をついた。

「はぁ……はぁ……勝った……のか……」

「見事だ。雄真と言ったな」

脳内で、モデルZの不敵で力強い声が響く。

「君の魂の熱さ、確かに見届けさせてもらった。これからは俺も、君の力となろう」

「ありがとう……モデルZ」

雄真は手の中に並ぶ、ふたつの結晶——モデルXとモデルZを見つめ、ほっと息をついた。

「雄真くん!」

駆け寄ってきた春姫が、泣きそうな顔で雄真を抱きしめる。

「よかった……本当によかった……! 急に赤くなって、すごい剣で戦うから、生きた心地がしなかったんだから!」

「はは……ごめんごめん。でも、これで街は守れたよ」

夕暮れ時。

二人は互いに支え合いながら、静かに家路についた。

仲間たちには見せられない、二人の血と涙が滲む戦い。だが、その絆は昨日よりも遥かに深く、強いものになっていた。

その夜。

雄真を自宅まで送り届けた後、神坂春姫は一人、月明かりが照らす夜道を歩いていた。

「雄真くん……かっこよかったな……」

昼間の雄真の勇姿を思い出し、春姫は頬をほてらせた。

どんな恐ろしい化け物が相手でも、自分を庇い、街を護るために立ち上がる姿。

でも、同時に胸を締め付けるのは「切なさ」だった。

(わたしは……また庇われてばかり。治癒魔法も、攻撃魔法も全然効かなくて……雄真くんの隣に立つって言ったのに、わたし、何もできなかった……)

自分の無力さに、ぽろりと涙がこぼれ落ちる。

雄真が遠くへ行ってしまうような、そんな錯覚。自分も、雄真と同じ場所で彼を支えたい。護られるだけの存在になりたくない。

そんな思いを抱えながら、自宅の玄関前に辿り着いた、その時だった。

カツン……。

爪先に、何かが当たった。

「キャッ……なに……?」

春姫は涙を拭い、足元を見下ろした。

月光に照らされて、そこに転がっていたのは——

緑色と白を基調とした、精巧な菱形の金属結晶だった。

風のそよぎとともに、ほのかな、しかし心地よいエメラルドグリーンの光を放っている。

「これ……雄真くんが持ってた『ライブメタル』……!?」

春姫が息を呑み、吸い寄せられるようにその緑の結晶へ手を伸ばした。

拾い上げた瞬間。

爽やかな一陣の風が、春姫の亜麻色の髪をふわりと持ち上げた。

「——はじめまして、愛しき少女」

脳内に直接届く、上品で、どこか優美な男性の声。

「オレの名は『モデルH』。風を司るライブメタル。……あなたの心に秘められた、大切な者を追う熱い想い……確かに届いたぞ」

「モデル……H……?」

緑の結晶——モデルHが、春姫の掌の上で温かく輝いた。

「あなたには、風の翼を纏う資格があります。……オレと戦えるか? あのモデルZたちの『翼』となるために」

春姫は手の中のモデルHを固く抱きしめた。

涙はもう消えていた。その瞳には、雄真と同じ、決して折れない強い意志の光が宿っていた。

「ええ……! 私に力を貸して、モデルH! 私……雄真くんの隣で、一緒に戦いたい!」

夜空を駆け抜ける風が、新たな英雄の覚醒を祝福するように、優しく瑞穂坂の街を包み込んでいった——。

 

 

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