白兎の兄が規格外なのは間違っているだろうか 作:ディーノpc35
フレイヤとの対峙を終えた後、シンとヘスティアはベル達のもとへ戻っていた。
戦争遊戯という形で決着をつけるのか。
それとも、別の方法を選ぶのか。
フレイヤの行動によって実際に襲撃されたのはベル達自身であり、シンもヘスティアからその点を指摘されたことで、自分一人で全てを決めるつもりはなくなっていた。
ベル、リリ、ヴェルフ、命、春姫。
当事者である彼らがどうしたいのか。
まずはそれを聞かなければならない。
その一方で、オラリオでは先ほどの異変がまだ大きな混乱を残していた。
突然、都市全体を覆った凄まじい殺意。
神の恩恵を持たない者達だけでなく、Lv.3以下の強さしか持たない冒険者達まで次々と意識を失い、それ以上の実力者達も、遠く離れた場所で何者かが強烈な殺意を抱いていることを感じ取っていた。
原因を知る者はほとんどいない。
ましてや、それがシン・クラネルから発せられたものだと分かる者となれば、さらに限られていた。
だが。
その可能性へ辿り着くことのできる神々がいた。
ヘファイストスとゴブニュだった。
◇ ◇ ◇
ヘファイストス・ファミリアの本拠地では、倒れた団員達の救護が続いていた。
幸い、意識を失った者達に重傷者はいない。
強烈な殺意に耐えられず気絶しただけで、時間が経てば目を覚ますだろう。
それでも、何の前触れもなく大勢の団員が一斉に倒れたのだから、工房内はしばらく騒然としていた。
ヘファイストスは救護の指示を終えると、腕を組みながら窓の外へ視線を向けた。
先ほどまで都市全体へ広がっていた殺意は、既に消えている。
だが、一度感じたあの異常な圧力を簡単に忘れることなどできなかった。
「……やっぱり、シンかしら」
独り言のように漏らした声に、近くにいた椿が反応する。
「わしも、その可能性が高いと思います」
ヘファイストスが振り返った。
「理由は?」
「他に思いつきませぬ」
椿は険しい表情のまま答える。
「わしらが知っている中で、あれほど常識外れな何かを放てそうなのはシンくらいでしょう」
「……そうなのよね」
証拠があるわけではない。
シンが実際に殺意を放つところを見たことがあるわけでもない。
だが、ヘファイストスも椿もシンの異常性については、既にある程度知っている。
太陽に匹敵する熱量を精錬へ利用する工房。
自分達の常識では理解できない鍛冶技術。
神であるヘファイストスやゴブニュですら知らない素材や加工法。
そして、本人が持つ底知れない力。
それらを考えれば、先ほどの異変をシンと結びつけること自体は不自然ではなかった。
「問題は」
ヘファイストスが表情を険しくする。
「誰がシンをあそこまで怒らせたのか、よ」
椿も無言で頷いた。
それこそが最も重要だった。
普段のシンは、必要もないのに周囲へ力を見せつけるような人間ではない。
神々に対する警戒心は強い。
それでも、相手が何もしていない段階から無闇に敵対することは避けている。
ならば。
今回の殺意には、それ相応の理由があるはずだった。
「ヘスティア様のところへ行きますか?」
椿が尋ねる。
ヘファイストスは迷わず頷いた。
「行くわ」
「やはり」
「もし本当にシンなら、何があったのか確認しておいた方がいいもの」
椿も頷く。
「同感です」
二人が出かける準備を始めた、その時だった。
工房の入口から一人の神が姿を現した。
「ヘファイストス」
聞き慣れた声に、ヘファイストスが振り返る。
「ゴブニュ?」
現れたゴブニュもまた、普段より明らかに険しい表情をしていた。
その顔を見ただけで、ヘファイストスは用件を察した。
「あなたも、さっきの件?」
「ああ」
ゴブニュが頷く。
「わしのところでも、Lv.3以下の強さしかない者達が軒並み意識を失った」
「こっちも同じよ」
「そして、あの殺意は突然消えた」
「ええ」
二柱は少し黙った。
先ほどの異変について、それぞれ考えていたことは同じだった。
ゴブニュが先に口を開く。
「シンではないかと思っておる」
ヘファイストスが小さく息を吐いた。
「私もよ」
椿が苦笑する。
「やはり皆、同じ結論になりますな」
ゴブニュは椿を見る。
「お主もか」
「他に思い当たる者がおりませぬ」
「じゃろうな」
ゴブニュは腕を組む。
彼もまたシンから直接鍛冶を教わっている。
だからこそ、シンという男が一般的な人間の尺度では測れないことを理解していた。
ただし。
ヘファイストスも。
ゴブニュも。
椿も。
シンがこの世界へ帰還した直後に黒竜を消滅させているという事実までは知らない。
そのことを知っているのは、現時点ではヘスティア・ファミリアの面々と、アイズ、アリア、そして先ほど街道でシン本人から聞かされたフレイヤとヘルメス、それからヘスティアだけだった。
ヘファイストス達にとって、黒竜は今なお世界最大級の脅威として存在している認識のままだ。
だからこそ。
彼女達がシンを警戒している理由は、黒竜討伐などではない。
あくまで。
これまで直接見聞きしてきたシンの異常な技術と、底の見えない力によるものだった。
「それで?」
ヘファイストスがゴブニュを見る。
「あなたもヘスティアのところへ行くつもり?」
「ああ」
「なら一緒に行きましょう」
「そのつもりじゃ」
椿が笑う。
「話が早くて助かりますな」
こうして。
ヘファイストス。
ゴブニュ。
そして椿。
三人は先ほどの異変の原因を確認するため、ヘスティア・ファミリアの本拠地へ向かうことになった。
◇ ◇ ◇
その頃。
ヘスティア・ファミリアの本拠地には、ベル達が既に戻っていた。
ベルをはじめ、ヴェルフ、命、春姫、リリの全員に目立った怪我はない。
シンから渡されていた首飾りの防護結界が最初の攻撃を防ぎ、その直後にはシン本人、あるいはシンの分身が到着したためだ。
本拠地に残っていたアリアとアイズも無事だった。
シンが外出前に張った空間断絶結界は既に解除されている。
だが、居間の空気は重かった。
「……戦争遊戯、ですか」
リリが険しい表情で確認する。
「ああ」
ヘスティアが頷いた。
「ヘルメスが提案したんだ」
ベルは黙って話を聞いている。
ヴェルフは腕を組み、命も真剣な表情を浮かべていた。
春姫は不安そうに皆の様子を見ている。
シンは少し離れた場所に立ち、自分から結論を押しつけようとはしていなかった。
やがて、シンが口を開く。
「先に言っておく」
全員の視線が集まる。
「俺は最初、フレイヤをその場で消滅させるつもりだった」
ベル達の表情が一斉に変わった。
ベルが恐る恐る尋ねる。
「消滅って……天界へ送還するって意味じゃないよね?」
「ああ」
シンは平然と答える。
「存在そのものを消すつもりだった」
「やっぱり……」
ベルが頭を抱える。
ヴェルフも大きく息を吐いた。
「兄貴、本当にやることが極端なんだよ……」
「今回に関しては極端とは思わない」
シンは淡々としている。
「ベル本人の意思を無視して力ずくで奪おうとした。それだけでなく、お前達まで襲わせた。原因がフレイヤ本人なら、その原因を消すのが最も確実だ」
リリが眉を寄せる。
「理屈だけなら分かりますが……」
「だから止めたんだよ!」
ヘスティアが強く言う。
「ボクが止めなかったら、本当にその場でフレイヤを消すつもりだったんだから!」
アイズが僅かにシンを見る。
アリアも困ったような表情を浮かべた。
シンは特に否定しない。
「ヘルメスは、フレイヤが消滅すればフレイヤ・ファミリアの多くが後を追う可能性があると言った」
ヴェルフが表情を険しくする。
「自殺するってことか?」
「ああ」
「……あり得そうなのが笑えねえな」
ヴェルフもフレイヤ・ファミリアの異常な忠誠心については知っている。
シンは続けた。
「さらに、フレイヤ・ファミリアが失われれば黒竜討伐の戦力が減ると言われた」
その言葉に、アイズが僅かに反応した。
だが。
ベル達は既に、シンが黒竜を消滅させていることを知っている。
アリアも同様だ。
だからこそ、ベルはすぐに続きが分かった。
「兄さん、それで断ったんだね」
「ああ」
シンが頷く。
「黒竜なら既に俺が消した。だから、その理由でフレイヤ・ファミリアを残す必要はないと伝えた」
アイズは改めてシンを見る。
何度聞いても、自分にとって黒竜という存在はあまりにも重い。
だが今は、その話へ感情を向けている場合ではなかった。
ヘスティアが続きを引き取る。
「それでもボクはシン君を止めた」
命がヘスティアを見る。
「何と説得されたのでござるか?」
「簡単だよ」
ヘスティアはベル達を見る。
「フレイヤがベル君の意思を無視したからシン君は怒った。でも、シン君がベル君達の意思を確認しないままフレイヤを消したら、結局シン君も君達の意思を無視することになるって言ったんだ」
居間が静かになる。
ベルも何も言わない。
シンも黙っていた。
「それで兄さんは止まった?」
ベルが尋ねる。
「ああ」
シンは素直に認めた。
「その点についてはヘスティアの言う通りだった」
ベルの表情が少しだけ柔らかくなる。
シンは続ける。
「だから今、聞いている」
ベル。
リリ。
ヴェルフ。
命。
春姫。
一人ずつ見る。
「お前達はどうしたい?」
誰もすぐには答えなかった。
当然だった。
実際に襲われた。
フレイヤがベルを奪おうとしたことも知った。
怒っていない者はいない。
それでも。
神そのものを完全に消滅させることと、戦争遊戯で決着をつけることでは、話の重さがまるで違う。
ベルが考え込んでいた、その時だった。
本拠地の扉が叩かれた。
「誰だろう?」
ベルが立ち上がろうとする。
だが、シンは既に外の気配を確認していた。
「ヘファイストスとゴブニュだ」
少し間を置いて付け加える。
「椿もいる」
ヘスティアが目を瞬かせた。
「三人一緒に?」
「ああ」
ヘスティアは何となく理由を察した。
ほどなくして扉が開く。
「ヘスティア!」
「邪魔するぞ」
「失礼するぞ、ベル達」
ヘファイストス、ゴブニュ、椿の三人が姿を現した。
ヘスティアは三人を見る。
「どうしたんだい?」
そう聞きながらも、用件はほぼ分かっていた。
案の定。
ヘファイストスは挨拶もそこそこに本題へ入った。
「さっきオラリオ中を覆った殺意について聞きたいの」
部屋の空気が少し止まる。
ヘファイストスはシンを見る。
「やっぱり、あなた?」
シンは隠す必要もないと判断し、即答した。
「ああ」
ヘファイストスが額へ手を当てた。
「やっぱり……」
ゴブニュも大きく息を吐く。
「お主だったか」
椿も納得したように頷いた。
「やはり他に思い当たりませぬな」
シンは三人を見る。
「何か問題があったのか?」
「問題があったのか、じゃないわよ!」
ヘファイストスが思わず声を上げた。
「オラリオ中で人が倒れたのよ!」
シンの眉が僅かに動く。
「そうなのか?」
「知らなかったの!?」
「あの時はフレイヤしか見ていなかった」
その名前を聞いた瞬間。
ヘファイストス達の表情が変わった。
「フレイヤ?」
ヘファイストスが聞き返す。
ゴブニュも険しい顔になる。
「何があった?」
椿もシンとヘスティアを交互に見る。
「何やら穏やかではなさそうですな」
ヘスティアが大きく息を吐いた。
「……最初から説明するよ」
三人が居間へ入り、話を聞く姿勢を取る。
ヘスティアは、今回の一件を順番に説明していった。
フレイヤが以前からベルへ強い執着を持っていたこと。
今回、ベルを自分のものにするため、フレイヤ・ファミリアの団長と幹部達を動かしたこと。
ベルだけでなく、ヴェルフ、命、春姫、リリまで別々の場所で同時に襲わせたこと。
シンが事前に渡していた首飾りによって襲撃を察知したこと。
ベルのところへはシン本人が向かい、他の四人へは分身を送り込んだこと。
そこまで聞いたところで。
ヘファイストスが手を上げた。
「ちょっと待って」
「何だい?」
「今、分身って言った?」
「ああ」
シンが答える。
「俺の分身だ」
椿が興味深そうに見る。
「どの程度の力を持っておる?」
「本体の百分の一程度だ」
ゴブニュが眉を上げた。
「随分落ちるのう」
「ああ」
「それでフレイヤ・ファミリアの幹部を止めたのか?」
「十分だった」
「どの程度戦った?」
椿が尋ねる。
「戦いというほど長くはない。一瞬で制圧した」
三人が一斉に黙った。
ヘファイストスが確認する。
「……全員?」
「ああ」
「オッタルは?」
「ベルを襲ったから俺が直接止めた」
ゴブニュの顔から僅かに表情が消える。
椿も目を見開いた。
「都市最強のオッタルを?」
「ああ」
「一瞬で?」
「ああ」
シンの返答には何の誇張も自慢もなかった。
だからこそ、余計に三人の理解が追いつかない。
ヘファイストスは以前からシンの異常性について多少は知っている。
ゴブニュも同じだ。
それでも、オラリオの頂点に立つオッタルを一瞬で制圧したと聞けば、驚かない方が無理だった。
「それで、その後どうなったの?」
ヘファイストスが尋ねる。
ヘスティアが続きを説明する。
シンが制圧したフレイヤ・ファミリアの団長と幹部達を、フレイヤ本人の前へ送り返したこと。
シン自身もフレイヤのもとへ向かったこと。
ベル達への襲撃がフレイヤ本人の命令だったと確認したこと。
そして。
「その後、シン君がフレイヤを完全に消滅させようとした」
ヘファイストス、ゴブニュ、椿の表情が一斉に固まった。
「完全に?」
ヘファイストスが聞く。
シンが頷く。
「天界へ帰すのではなく、存在そのものを消すつもりだった」
ゴブニュが低く息を吐く。
「それで、あの殺意か」
「ああ」
全てが繋がった。
椿も納得したように頷く。
「なるほど。フレイヤ本人へ向けた殺意の余波が、オラリオまで届いたということか」
「そうらしいな」
シン本人は、そこで初めてオラリオへまで影響が出ていたと理解した様子だった。
ヘファイストスが呆れたように言う。
「次から周りへの影響も少しは考えなさい」
「死者は出たのか?」
「今のところ聞いてないわ」
「なら問題ないだろう」
「問題はあるわよ!」
ヘファイストスの声が居間へ響く。
ゴブニュが横で苦笑する。
「相変わらず基準が違いすぎるのう」
「笑ってる場合じゃないでしょう!」
「まあ、死者が出なかったのは幸いじゃ」
ヘファイストスは納得していない顔をしたが、話を戻した。
「それで、フレイヤは?」
「生きてるよ」
ヘスティアが答える。
「ボクが止めた」
「よく止まったわね」
ヘファイストスが少し意外そうにシンを見る。
ヘスティアは首を横へ振る。
「最初は止まらなかったよ」
「では、どうした?」
ゴブニュが尋ねる。
「ヘルメスが戦争遊戯を提案したんだ」
「戦争遊戯?」
「フレイヤがいなくなったら、フレイヤ・ファミリアの連中が後を追って死ぬ可能性が高い。それで黒竜討伐の戦力が減るから、別の形で決着をつけてほしいって」
ヘファイストスとゴブニュは、その説明を聞いて納得したように頷いた。
彼女達の認識では黒竜は今なお健在である。
現在のオラリオで最大級の戦力を持つフレイヤ・ファミリアを丸ごと失うことは、確かに大きな問題だった。
「それならヘルメスがそう考えるのも分かるわ」
ヘファイストスが言う。
ゴブニュも同意する。
「ああ。黒竜を考えれば、オッタル達を失うのは避けたいじゃろうな」
その言葉に。
ベル達の間に僅かな沈黙が生まれた。
アイズもヘファイストスを見る。
アリアは何も言わない。
ヘファイストス達は気づいていない。
黒竜が既に存在しないことを。
そして。
その黒竜を消滅させたのが、目の前にいるシンだということを。
シンは口を開こうとした。
だが、その直前。
ヘスティアが視線を向けた。
「シン君」
その一言だけで、シンは僅かに動きを止めた。
黒竜について誰に話すかは、別の問題だ。
現時点でヘファイストス達に知らせる必要はない。
シンはそのまま口を閉じる。
ヘファイストスは二人の僅かなやり取りに気づいたものの、今は追及しなかった。
「それで、戦争遊戯を受けることにしたの?」
「まだ決めてない」
ヘスティアが答える。
「ヘルメスの提案そのものについては、シン君は最初断った」
ゴブニュが眉を寄せる。
「では何故、今ここで戦争遊戯の話をしている?」
ヘスティアはベル達を見る。
「ボクがシン君に言ったからだよ」
「何を?」
「フレイヤがベル君の意思を無視したことに怒っているのに、シン君までベル君達の意見を聞かずに全部終わらせたら、結局同じように本人達の意思を無視することになるって」
ヘファイストスが少し考える。
やがて。
「……それは確かにそうね」
ゴブニュも頷いた。
「筋は通っておる」
椿も腕を組む。
「ベル達自身がどうしたいかを聞くべき、ということですな」
「ああ」
シンが答える。
「だから今、本人達に決めさせている」
ヘファイストス達の視線がベル達へ向く。
ベルは少し困ったような顔をしていた。
「まだ……ちゃんとは決められてません」
ヘファイストスはすぐに頷いた。
「それでいいわよ」
ベルが顔を上げる。
「え?」
「今すぐ決めるような話じゃないでしょう」
ゴブニュも続ける。
「自分達が実際に襲われた直後じゃ。感情が落ち着いてから決めた方がいい」
椿も笑みを浮かべる。
「戦うにせよ、別の道を選ぶにせよ、自分で納得した答えを出すべきじゃろう」
ベルは三人を見て、静かに頷いた。
「……はい」
シンも何も言わなかった。
待つつもりだった。
ベル達が自分達で答えを出すまで。
フレイヤの処遇も。
戦争遊戯を行うかどうかも。
今度は当事者達の意思を無視して決めることはしない。
ヘファイストスはそんなシンを見た後、少しだけ表情を緩めた。
だが。
すぐに思い出したように指を突きつける。
「ただし」
「何だ?」
「次にあれほどの殺意を出す時は、せめてオラリオ全体を巻き込まないようにしなさい!」
シンは少し考える。
「善処する」
「絶対やらない言い方でしょう、それ!」
居間にヘファイストスの声が響いた。
先ほどまでの重苦しい空気が、ほんの僅かに和らぐ。
それでも。
フレイヤとの問題は何一つ終わっていない。
ベル達がどのような結論を出すのか。
そして。
戦争遊戯を選んだ場合。
フレイヤ・ファミリアとどう戦うのか。
その答えは、これから決められることになる。
一方で。
ヘファイストス、ゴブニュ、椿の三人は。
この時点でもまだ知らなかった。
ヘルメスが守ろうとしていた『黒竜討伐のための戦力』という前提そのものが。
既に存在しなくなっていることを。