ミレニアムがメインの章であり、ネームドにも色々変化が見られます。
また、ミレニアムでのヒナの生活や日常多めでお送りします。
EPISODE10:局長、ゲームに興味を持つ
「大変そうねユウカ、手伝おうか?」
「先輩は座ってて下さい!今月何回目の残業だと思ってるんですか!」
「……ちょっとくらいの残業は認めてくれてもいいのに。みんなやってるじゃない」
「先輩の場合、それがどんどん悪化する上にそのちょっとがちょっとじゃないから駄目なんですよ……!」
むぅ、となりながら大人しくセミナールームのソファに座りながら諦めるヒナ。アビドスでの騒動から暫くしてのとある日、特に問題も起こらず平穏な日々が続く中でヒナはといえば、前日にまたとでも言うべきか。ヴェリタスのハレから貰ったエナジードリンクを飲みながら少しだけ、本人として本当にほんの少しだけ仕事に夢中になってしまった。
その結果がこれである。勿論ユウカとノアにバレて、今日は殆どがセミナールームで監視措置である。巡回業務はセンナに任せられ、いつものことだと本人も思いながら巡回へと向かった。
そうして。そんな手持ち沙汰になりかねないヒナの手には珍しいものが存在している。それは、携帯ゲーム機。それも、最近品薄で中々手に入らない最新型のゲーム機である『Swatch2』である。
「はい、コーヒーが入りましたよ。あれ?先輩、ゲーム機なんて持ってました?珍しいですね……いつもネル先輩とかに借りたり、後はお説教部屋の旧型の使ってませんでした?」
コーヒーを淹れてきたノアがヒナへと言ったのはそんな言葉だ。そうしてそれはユウカも気になっていたことであり、一区切りついたのかタイピングの手を止めて、椅子をヒナの座るソファへと向ける。
ユウカとノアとしても驚きだ。確かにヒナはゲームを嗜むことはあるが、それは大抵がネルやコユキに誘われてということが多く自分からというのはあまりない。ましてや、現在超品薄の大人気ゲーム機を持っているというのがあまりにも予想外過ぎたのだ。
「ありがとうノア。ん……いいコーヒーね。これ?この前のお休みにセンナと買い物に行ったのだけど、ちょっと家電を買う予定があって。それで、量販店で買い物をしたらできる福引であたったの」
「運がいいですねー……。ちなみにゲームは何をしてるんですか?」
「とりあえずオススメされたものをいれてみてる。ネルやコユキにおすすめされて『湾岸モモフレンズ』『頭文字
「ネル先輩とコユキちゃんが割とまともなラインナップなんだけど……センナァ!ノア!今すぐセンナ呼んでお説教!なんていうものおすすめしてるの!?ゲームをあまりやらない私でも知っている倒されて覚えるゲームよ!?初心者におすすめしていいものじゃないでしょ!?」
「巡回終わったら来るようにもう言いましたよユウカちゃん。本人から色々弁明来てますけど」
「弁明の余地なし!」
「そうなの……?結構面白いけれど……。色んな場所を探索したりギミックを解いたり、強敵を工夫して倒したりするのって面白いのね」
「……沼に引き込んだ張本人だからやっぱりセンナに弁明の余地なし!」
どうやっても
「このアヴェンジャーというキャラクターで特大剣を持つのが私は好きね。面白くて深淵度最高まで行ったわ」
「もしかして先輩ゲームの実力もとんでもないタイプですか?ちょっとプレイ見せてもらっても……えっ、上手い……フレームで避けてる……すごい……」
「あ、コユキがダウンした。今起こすわ」
反省室ではコユキが『パリィミスっちゃいました……ありがとうございます先輩ぃ……!』と言っているのだが、それは別の話である。
暫くゲームに興じていると、コユキと一度のマルチプレイが終わったあたりで呼ばれたセンナが到着。それはもうユウカから小言を言われた。
気がつけば時刻は3時頃。いい時間だということで、セミナールームのテーブルを囲んでコーヒーとクッキーで休憩することに。
そんな中、溜息とともにユウカから出たある話題があった。
「ゲームと言えば、頭の痛い問題がひとつあって……はぁ……」
「ああ、ゲーム開発部のことかな?」
「部活への対応、センナがやってくれない……?どうにも私だと、直接行って話そうとしても上手く進まないから……この前も最後通牒した時、色々揉めたりして上手く行かなかったから……」
「まあ監査というより様子見して大人しく受け入れるか、それか結果を促すくらいのことはやってもいいけれど……」
あまり聞き覚えのないワードに対して疑問符を浮かべたのはヒナだ。ミレニアムにおいて、自分は幾つかの部活動や集団と関わったことはある。エンジニア部やヴェリタスは特に交友の機会が多くよく知るが、今話題になった部活動とはあまり知らないものだった。
「そのゲーム開発部というのは何?」
「あー……ええと。先輩、ミレニアムにおける部活動の規約ってご存知ですか」
「まあ、覚えているわね。一通りは読んだから」
ミレニアムには様々な部活動が存在している。そしてキヴォトスにおいてトップクラスの大規模校というのもあってか部活動数はかなり多い。基本的に部活動は、セミナーに対して規定の所属人数を揃えて設立のための書類を準備、セミナーで監査を含む審査などが行われ、生徒会会議で承認されれば設立となる。
部活動が設立され、論文発表やコンペなど明確な成果を上げれば追加で予算がつき、申請は必要だが部の備品なども自治区の経費として落とすことも可能になる。この予算というのが熾烈な争奪戦がよく起こっており、予算が欲しい部活動などは躍起になって結果を出そうともしている。……なお、よく問題というかトラブルを起こすが大量の成果も出しているエンジニア部という例もあるのだが。
さて。ミレニアムにおいての部活動の設立と予算、これらも重要な要素なのだが他にも重要なことがある。それが、今回ユウカにとっての悩みの原因であり困っていることでもある。それが、部活動の存続についてである。
部活動とは正式な書類と審査を経て設立が認可される。そして申請をすれば、ミレニアム校区内に存在する部活棟にある部室を使用することもできる。しかし部室棟とて無限にあるわけではない。部室を欲する部活動は当然多く、新規設立された部活動だって当然欲しい。よって、これについても争奪戦になる。
足りない部室への対応。そのために部室棟を増設するなどもしているが、それでも争奪が激しいのは事実。なので、ミレニアムでは明確な結果を出せていない。もしくは定められた人数に達していない部活動に対して、廃部の通牒を行っているのだ。これは、限りある予算と部室。そして審査フローの効率化のためであり決して結果を出せない部活は部活として認められないというわけではない。部室や予算はないが無条件で設立が認められる、同好会やサークルのようなものだってあるのだ。
「活動としては、簡単に言うとゲームを作っている部活動です。ゲーム制作のほか、レトロゲームから最新ゲームまで取り扱っていて、それが好きな者同士で集まっている部活動といったところでしょうか。ただ……」
「なにか問題が?規則に違反するなら私達の仕事の時間?」
「仕事の気配嗅ぎつけて楽しそうにしてません先輩?いやないですからね、流石に治安維持局が業務として動くようなことじゃないですからね?」
「……そう」
「なんで残念そうにしてるんですか!?」
「ふふ、冗談よ。ごめんなさい、困らせるつもりはなかったの。それでユウカ、そのゲーム開発部が、部活の規約と何か関係が?」
「端的に言えば、廃部の対象なんですよ。すでにかなり前から成果として証明できるものもなく、なによりも部員数が規定数に達していないんですよ」
「それは、そうね。規則から行けば廃部の対象ね」
「ただ、本人達は廃部は嫌みたいで。だから結果を出すから待って欲しいと言われていんです。……ここだけの話にしてくださいよ。あの子達が頑張ってるのは理解できます、だから部活動として存続できればそれはそれでいいと思いますけどミレニアムとしてのルールがあって、私はセミナーの会計なので、なんというか、その。そういう気持ちもあって言い過ぎることもあって、ちょっと行きにくいと言うかなんというか」
大凡の事情は理解できた。要するに廃部を最後通牒したゲーム開発部に対して、通牒後の状況について確認しに行きたいが自分では色々あるせいで行きづらさがあるというものだろう。だから、人当たりもよく生徒からの人気も高いセンナに見てきて欲しいと言ったのだ。
ふむ、とヒナは考える。要するに、ユウカ個人としては努力は見て取れるし廃部は本意でない。だから存続するための条件をクリアして欲しいのだろう。だが、それができていない。できていないから、立場もあるから立場上の言い方にもなってしまうが喝を入れようとしてみたが上手く行っていない。そんなところだろう。
……つまり。起爆剤が必要なのだ。
「ユウカ」
「あー……これ良いコーヒーだけあって美味しい……っと、なんですか先輩?」
「なら、私も行くわ」
「行くって、何処にですか?」
「ゲーム開発部」
ごほごほ、と思わずユウカは飲もうとしていたコーヒーを咽た。なんとか呼吸を落ち着かせると、まだ少し驚いたままヒナを見た。
「要するに起爆剤が必要なのでしょう?なら、私の立場は利用できると思うけれど。それに、私も最近ゲームを触り始めて、面白いって思っていたから興味がある」
「確かに……まあ、治安維持局の局長と副局長が監査に来るっていうのはちょっとプレッシャーが凄そうだけれど……。でも、それくらいのがないとだめかも……。なら、先輩。お願いしてもいいですか?」
こうして。ヒナとセンナのゲーム開発部行きが決定した。この時はまだ、これから巻き込まれる騒動と新たな生徒、未来のゲーム好きの勇者との出会いなど考えても見なかった。
「私、才羽モモイ!ゲーム開発部でシナリオライターを務めているけど、最近は部の存亡をかけて冷酷な算術使いとの激戦を続けているの!おっと、また誰か来たね!来るなら来い、冷酷な算術使い!私達は絶対に負けないんだからッ! ――はぇ?わァ…あ…!」
次回、『劇場版冷酷な算術使いvsゲーム開発部!部活最後の日!?』
■あとがき
今まで多忙すぎてゲームというものに触れる機会が皆無だったけど、新たな環境で余裕もできてきたからゲームを触ってみたら面白くて、楽しそうにゲームしてるヒナちゃんいいよね……いい……わかる……。なお、副官に沼に引き込まれる。後日センナはリオやヒマリからも怒られた。
ユウカかと思ったらとんでもない人達が来たモモイの明日や如何に。