『ミレニアム治安維持局局長』、空崎ヒナ   作:無名のカヤ推し

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EPISODE12:局長、ゲーム開発部に協力する

 正直な所、ゲーム開発部の面々は驚いていた。モモイとミドリは驚きつつも困惑し対応していたし、ロッカーの中に隠れているユズもまた声こそ出さなかったものの驚いていて、だがそれぞれがその様子を嬉しくもあった。

 

「昔ってこんなモノクロのゲームが主流だったのね……」

 

「おや、これは横スクロールゲームの『ポックマン』の最初のタイトルじゃないか。え?いいのかいやってみても?」

 

 突然訪れた来訪者。その人物達にゲーム開発部はそれはもう驚いた。来訪者は、今やキヴォトスにおいては話題の人物達であり、そうしてこのミレニアムにおいては絶対的な象徴だったのだから。

 

 美甘ネル、出雲センナ、そして。空崎ヒナ。

 

 この三人の生徒はミレニアムにおいては畏怖され、尊敬され。だが、同時に多大な人気を集める存在なのだ。特に、ヒナの人気は最近の広報効果もあってか凄まじい。今までどちからといえば怖いイメージがあったモモイ達も、最近の動向でそれがなくなったほどだ。

 

「あ、あのヒナ先輩……ヒナ先輩もゲームが好きなの……なんですか?」

 

「別に畏まる必要はないわ。私、敬語とかそういうのは気にしないから。そうね、最近触り始めて面白いと思っている……と言えばいいのかしら」

 

「そうなの!?じ、じゃあ先輩はどんなゲームをやったりしてるの?」

 

「色々おすすめはされたけれど……プロム作品が好きね。布教?とかよくわからないけれど、それで色々とセンナが買ってくれて。気がついたら嵌ってしまったわ」

 

「――センナ先輩?」

 

「弁明させてくれないかな」

 

「余地ないでしょ、先輩」

 

 最近似たやり取りをやったなと思いつつも苦笑いするのはセンナ。この『プロムソフト』というゲームメーカーが出す作品は、とにかくマニアックだったりコアゲーマー向けなのだ。ユーザーを如何にして苦労させ、絶望させ、発狂させるるかというのを重きにしている節がある程で、一節ではリリースした作品の配信を見て、それで阿鼻叫喚を見せるユーザーを見ながら嬉しそうにしているのではないのかと言われているほどだ。事実なのではあるが。

 

 そんなコアなメーカーのゲームをゲーム初心者のヒナにおすすめした罪は、ゲーム開発部の面々からしても重いと思った。実はセンナとしては、阿鼻叫喚して地団駄を踏んだり涙目になったり『うーうー!』などと言うヒナを見てニコニコしたかったのだが……現実はそうはならず。楽しそうに、それはもうニコニコしながらヒナは順調にプレイを進めていた。殆どゲームをしていなかったため発覚しなかったが、ヒナにはこういったコアなゲームの素質もあったのだ。笑顔で『センナ、このメーカーのゲーム面白いわね』と言われたらもう何も言い返せなかった。

 

「まあ実際局長、本当に尋常じゃなく上手くてね……マルチプレイの『シャドウソウル:ディープナイト』で最高難易度状態でも気がついたら一人で沸いたボス処理して周りニコニコしながら探索してるくらいで」

 

「ハクスラ……と言うのだった?面白いわね、ああいうゲーム。状況に応じて立ち回りや戦い方を変えて、拾ったものやランダムイベントで選択肢が無限に広がる。最近はネルとセンナ、セミナーに顔を出した時はコユキとも一緒にこれをよくやっているわね」

 

「ひょっとして先輩って逸材なんじゃ」

 

「ひょっとしなくても逸材だよ。どうやら私はとんでもないプレイヤーを発掘してしまったらしい、ははは」

 

「そんなこと言ってもセンナ先輩の大罪は消えないよ」

 

 想定外の来訪者ではあったが、その来訪者達の予想外の趣味で話が弾む。加えて、ゲーム開発部のヒナに対する印象はうなぎ登りである。

 

 だが。ここには目的があって二人も来ている。そろそろ本題に入らないといけないし、先生としても依頼を受けて来ているのだ。

 

「色々部室のものを見るのも楽しいけれど、こちらの目的をそろそろ果たさせてもらおうかしら。それに、先生だって依頼で来ているのでしょう?」

 

「うっ……えーっと……部活の存続についてのこと、だよね……」

 

「ええ。といっても、煩く言うつもりはないの。貴女達がゲームが好きだというのは、この部室を見させてもらって。話をしてみてよくわかったわ」

 

「な、なら!」

 

「けれど。ミレニアムにはミレニアムの規律がある。部活動の存続に関する決め事だってあって、今のゲーム開発部はそれを満たしていない。ミレニアムではルールというのは重要視されることのひとつよ。結果を出すことだってそう。わかるわね」

 

「それは……うん……」

 

「……要するにちゃんとルールを守って結果を出せば文句は言われないということよ。立場上こんなことを言ったけれど、別に私もゲーム開発部を潰したいわけじゃないわ。個人的にはゲームというのは面白いものだと思うしね。 ――はぁ。業務中は立場があるから無理だけれど、業務外や緊急な出動がない時にもし私にできることがあるのなら手伝うわ。丁度、今日はもうゲーム開発部の業務が終わったら非番なの。何かできることはある?」

 

 思わずモモイ、ミドリは驚いたようにして顔を上げた。そうしてセンナもまた同じだ。ヒナがゲーム開発部に条件付きとはいえ手を貸すというのは誰もが想定していないことだったのだ。

 

 空崎ヒナとは真面目で、大抵のことはこなせてしまって、完璧超人と言われて最近は可愛いという印象も加わったが、その本質には先生と似たところがある。世話焼きで面倒見がいい、それはゲヘナの頃からも垣間見えていたもので、彼女が慕われていた理由の一つでもあった。

 

 モモイやミドリというのはヒナにとっては後輩に当たる。そして、実際にゲーム開発部を視察しててみて悪い子ではないというのはわかったし、ゲームが大好きで方向性や結果はおかしかったかもしれないが頑張ってもいる。なら、そんな相手に手を貸したいと思うのはある意味当然だった。

 

「いいんですか、局長」

 

「まあ、ほっとけないし。センナは帰ってもいいわよ。ここからは業務外、個人的な活動だし」

 

「ふふ、御冗談を。面白そうなのでご一緒しますよ。それに、ここまで話を聞いてしまっては私も彼女達を放ってはおけません」

 

「物好きね、あなたも。好きにしなさい。ところで、此方のことはこれくらいにするとして、先生も何か用事があって来たんじゃないの?」

 

 話題を投げられる先生。しかし、先生としても今のヒナの発言が目的の殆どなのだ。

 

「私も依頼、廃部を回避するために協力して欲しいというもののためにここに来ていてね。だから、ヒナと同じで私にできることがあれば協力するよ。ちなみになんだけど、廃部を何とかするための方法とかは考えていたりするの?もし、なければヒナ達も居るし話し合ってみるのもいいと思うけど」

 

「……なら。先生、そして先輩達にもお願いがあるの」

 

 真剣な表情になり、3人を見据えるモモイ。そうして、言葉を続けていく。

 

「私は、私達はゲームが面白いものだってことをもっと知ってもらいたい。知ってもらうためのそんなゲームを作りたい。みんなを笑顔に、夢中にできるできるものだって証明したい!だから、そのために『廃墟』区域に行って、見つけたいものがあるの」

 

 廃墟区域、そのワードが出てきた瞬間。一瞬だがヒナの表情が険しくなる。そして、それはセンナも同じだ。

 

「『G.Bible』……それを見つけるために協力して!」

 

 自分とも無関係ではない場所、流石にその話が出てくるのはヒナとしても想定外だった。

 だが、彼女達に協力したいのは事実。しかし少し気を引き締めなければならない、そう思った。

 

 

 

 

    ◆     ◆     ◆

 

 

 

 

「ヒナ先輩がとんでもなく強いって話だけは聞いてたけど……これは……」

 

「想像以上だったかも、お姉ちゃん……というかあのオートマタさんもなにあれ……」

 

『ご挨拶が遅れました。私はフェル、マスターの従者にして武器でもあります。以後お見知りおきを、お嬢様方に先生』

 

 大量に襲ってくる野良オートマタやドローン。それに対してヒナが突然呼び出すようにするとテレポートでもしてきたかのように現れ、エネルギーマシンガンにレーザー、マルチミサイルやロケットランチャーなどで過剰とも言える制圧を行う漆黒の体躯を持つ異形のオートマタ。そんなことをしながら男性の声で丁寧に返されるのはそんな挨拶であり、展開されるドーム状のフィールドに守られながらモモイと先生達は『う、うん。よろしく』と返した。

 

 そうして少し離れた場所、二方向でも一方的な破壊が行われていた。片方はセンナ、彼女が銃を扱えないというのはミレニアムでも有名な話だが、それが霞むような近接戦闘能力と右手に持つ合金ブレードで次々と襲撃者を斬り伏せていく。銃弾をブレードで弾き、駆け抜ける速度は最早先生たちでは目では追えず。気がつけば相手の陣地に切り込んで、まるで鎌鼬のように容赦なく全てを斬り伏せていくのだ。

 

 もう一方はヒナだ。ヒナはキヴォトスにおいても最高クラスの実力と恵まれた素質の持ち主だ。並大抵の銃弾程度ではダメージにすらならず、傷を負うこともない。加えて、現在はそんな強固な素質に加えて更なる防御能力が追加されていた。

 

 ヒナに直撃した攻撃。それが、彼女を覆うようにしている普段は透明の。攻撃を受けることでやっと視認できる赤い半透明のバリアのようなもので遮断されているのだ。そうして彼女は、それを絶対的に信頼しているかのごとく敵集団の前方で一切怯むことなく。対集団戦ということで拡張バレルを取り付けたデストロイヤーから発射される徹甲炸裂焼夷弾によって完全制圧していく。

 

「なるほど、確かに合理的ね。ネルが『この手に限る』と楽しげに話していた時は何を言ってるのかとも思ったけど、あれは私の間違いだった」

 

「ま、これだけ数が多いと逆に処理したほうが探索は楽になりますね」

 

 何故ミレニアムの廃墟区域、そこの一角でこのような殲滅戦が起こっているかと言えばそれは少し時間を遡る。モモイの話では、廃部を回避するための切り札。曰く、最高のゲームを作るための手段があるのだという。かなり胡散臭い話だが、モモイとしても多少の自己解釈は混ざっているがヴェリタスとヒマリの話からそれが存在する場所を推測したようで、それがミレニアムの封鎖区域。廃墟や廃墟区画と呼ばれる場所だった。

 

 モモイの推理は杜撰に見えるが、大凡的を射ている。その存在はともかくとして、ミレニアムにおいてセミナーでさえ完全に手が出せない場所など封鎖区域と呼ばれるに該当する場所しかないのだから。そして、とある一件でこの封鎖区画の『深淵』に関わったヒナとしては、モモイの推理を否定することもできなかった。当てずっぽうだとしても、恐らく正解だと思ったからだ。

 

 

「あら?どうやら、もう襲ってこなくなったみたいね」

 

「この一帯は完全に制圧できたと見ていいでしょう。やっと探索に入れますね」

 

「そうね。フェル、先生とモモイとミドリの近くに居てあげて」

 

 なお、フェルについてはアロナもシッテムの箱を通して見ていたが『な、なんか途方もなくヤバい気がします……味方でよかったですが一体何者なんでしょうか……?』と呟いていた。

 

 襲ってくる相手も居なくなり、周囲を探索すること暫く。あるものを発見した。それを見つけたのは先生で、全員に来て欲しいを声をかける。見つけたそれは、廃墟の中にあるにしてはまだ稼働しているようにも見える工場で。しかも、周辺の建物を使って隠すようにされているものだった。

 




ヒナ「この手に限るわ(火力殲滅)」

次回

『ケイちゃん、イジられる』
『AL-1Sか、アリスか』
『局長、業務を休む』

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