『ミレニアム治安維持局局長』、空崎ヒナ   作:無名のカヤ推し

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EPISODE13:信ずる心

『マスター、パイルバンカーでぶち抜きましょう』

 

「……そうね。道がないなら道を作ればいいとネルも言っていたわ」

 

『まってください、最後まで話を聞いて下さい』

 

 明らかに焦ったように聞こえる声は、目前の扉。その上に存在する、工場内にアナウンスを流すスピーカーから聞こえていた。

 

 何故こうなったのかと言えば。怪しげな工場を発見した先生達一行は、内部に突入。内部には電源が通っており稼働している状態。しかし、警備ロボなどは見当たらず、一本道の通路が続くだけだった。

 

 そうして行き止まりまで行き着いて聞こえてきたのが、突然の声だ。それは、恐らく接近を検知して先に進めるかを判別するシステムのようなもので、モモイ、ミドリ、センナ、そしてヒナと『資格がありません』と通知されたのだ。

 

「そうね、早計だったかもしれない。……検知システムと制御AIがあるということは、中枢制御システムがあるということよね。こんな時は、そう。ならヴェリタスに教えてもらったやり方で行きましょう。フェル」

 

『ハッキングですね!任せて下さい!』

 

 テンション高めに、赤色のバイザー状のデュアルアイを楽しそうに一度光らせてヒナに向けてガッツポーズまで決める。それを監視カメラを通して見た監視AIはそれはもう焦った。

 

『!?ま、待って下さい!』

 

『いいえ待ちません!ハッキング可能な端末をサーチします。マスター、少しお待ちください』

 

『た、対象の身元を確認します!シャーレの『先生』、資格を確認しました入室を許可します!』

 

『おや、随分と早口ですね。 ……残念です、少し楽しみにしていたのに』

 

 この工場のAI、やたらとAIらしくないような。いや、でもAIらしくないオートマタが味方に居るし、と先生とモモイ、ミドリは考えるのを辞めた。なお、センナは後ろの方で笑いを堪えていた。

 

『~~っ!下部の扉を解放します、どうぞお通り下さい!』

 

 何かやたらと怒っているような。そんなことを考えていると、ガチャンという音と同時に足元の床が開く。それが意味するのは、重力に従っての下部方向への落下である。

 

『失礼しますね』

 

 突然の落下に慌てる先生とモモイ、ミドリ。当然慌てているのだから落下に対しての対応もできない。しかし、そこで彼らを助けたのは自由落下する異形のオートマタ、フェルだった。

 

 武装解除した右腕にはミドリとモモイを、そして左手には先生を抱えるようにして降下を続けていく。そうして地面に着陸前、一瞬だけスラスターを吹かせるとそのままゆっくりと着して3人を降ろす。なお、センナとヒナについては問題なかったようで、そのまま問題なく着地をしていた。

 

「あ、ありがとうフェル」

 

「助かったー……本当にありがとう!」

 

「どうなることかと思った……」

 

『無事で何よりです。しかし、いきなりこのようなことをするとはやはり気に食いませんね。ハッキングでは生温いですか、少し痛い目に ――おや? ……先生、少し失礼します。暫く動かないで』

 

 突然、先生の視界を防ぐようにしたのはその大きな体躯ほどはある漆黒のタワーシールドだ。完全に視界を遮るように先生の前に立てるようにして地面に置かれ、だが彼。フェルの視線は前方を向いている。

 

「ええと……どうかしたの?」

 

『いえ、ですが先生が直視するのはあまりよろしくないので。申し訳ありませんが、暫くお待ちを』

 

 一体何が起こっているのか。気にはなる先生だったが、言われた通りにする。ちらり、と横を見てみればそこにはヒナとセンナの姿があり。特にヒナは、一瞬驚いたように目を見開いた後、見覚えのある眼で前方を見ているのが見えた。それは、治安維持局局長としての、現場での目つきだった。

 

 そうして先生からは見えなかったが。センナもまた、恐らくなにかしているのだろうモモイとミドリに対して軽い口調で言葉を返したりはしているが、左手は腰の強襲ブレードの鞘へと添えられており、警戒態勢だった。

 

「よし、先生もういいよ!……ん?うわあっ!?め、目を覚ました!?」

 

 出てきてもいい、そう言われた先生がモモイ達の居る場所に向かうと、そこに居たのは横たわり、ミレニアムの制服。ミドリが持っていた予備を着せられた一人の少女。そうしてモモイが先生を呼んだ瞬間、その少女が目を覚ます。

 

 そこから始まるのは、目を覚ました少女と先生、そしてモモイとミドリとのやり取りだ。対して、ヒナとセンナはと言えば。少し離れた場所、フェルが人型形態で居る場所に集まり、先生達の様子を見ていた。

 

 

「あれがそうなのね、フェル」

 

『はい、間違いないかと。……この施設には特定地域の限定ネットワークに遮断、加えて巧妙に妨害フィールドが貼られていたようで、私も接近するまで感知できませんでした。申し訳ありません』

 

「気にしなくていい。それよりも……はぁ。運がいいのか、悪いのか。とんでもない事態になったわね」

 

『――どうするおつもりで?』

 

「……見た目は、ただの生徒ね。例の話のようにならないのが一番だけれど」

 

 遣る瀬無い。そう思いヒナは、先生達に気が付かれないように溜息をつく。見た目はただの生徒だ。このような場所にいる時点で訳アリなのは確定だが、それでも。できれば平和に何事もないのが一番だと思う。

 

 

 ヒナは、治安維持局の局長である。そうしてその実力は、今やキヴォトスにおいてはトップクラス。それも恐らくは最高レベルと言っていい。だからこそ、本当の有事。超常の存在が現れた時に対応できる数少ない存在だった。ネル、センナ、そしてヒナ。そしてこの中でも、最も超常の存在と縁があるのはヒナだ。

 

 何せ。彼女はその超常の存在でも間違いなく途方もない相手を従えているのだから。

 

「……局長」

 

「何、センナ」

 

「――私は貴女の刃です。だから『斬れ』と命じて頂ければ、斬ります」

 

 普段の余裕を見せつつも冗談だって言う彼女の眼ではなかった。冷たく、無慈悲で、純粋な刃のようで。命じられれば迷うことなく彼女は、普段なら使うことのない腰のもう一本の刀を抜くだろう。そうして、それがどんな相手だろうと斬り伏せる。

 

「早計よ。少なくとも……判断するには早計だと思うし、それに」

 

 そう、それに。

 

 ヒナには少女が、聞かされている下手をすれば世界を滅ぼすかもしれない災厄には見えなかったのだ。自分が現場で大切にしていることのひとつである直感、その直感もその少女を聞かされている脅威だとは知らせなかった。しかし、少女は間違いなく聞かされている存在なのだろう。なら、最悪の事態を想定することも自分の仕事の一つだ。

 

「フェル、貴方は聞いている存在について詳しくは知らないよね」

 

『残念ながら。そして申し訳ありません。マスターにも話せないことはあります』

 

「いいわ、そういう約束でもあるもの。……単刀直入に聞くわ。最悪の場合、貴方の全力を使ってでも止められる?貴方の本体を使ってでも」

 

『……可能です。ですが、二次影響は途方もないことになるかと』

 

「被害想定は」

 

『アレがミレニアムで覚醒したとして、マスターとセンナ嬢、ネル嬢を初めとしてミレニアムの全力のお力をお借りして私も全力で対応したとして、キヴォトスの生存圏は推定三割まで減少する見通しです』

 

 

 途方もない被害想定だ。仮に聞かされている滅亡を回避したとしても、残るのはそれだけ。

 であれば。やはりそうなる前に対応してしまうべきか。

 

 

 

 

 取るべき、選択は――

 

 

 

 

 

 

 ――『莫迦だろお前、ゲヘナの未来がどうのより今どうしたいかってのも大事だぞ。だからこんなにボロボロになってんじゃねぇかよ』

 

 ――『誰かが、他人がどうこうじゃねえ。お前がどうしたいかだよ。お前の選択に誰も文句なんて言えない、それはお前だけの選択だろ』

 

 

 

 

 ああ、そうだ。

 そうだったな、と思う。

 

 

「……そうね。そうだったわね、ネル」

 

 取るべき選択は、決まった。

 

 

 

 

    ◆     ◆     ◆

 

 

 

 

 

 

 結局のところを言えば、ヒナは自分の心に従った。

 

 何もあの場ですぐ対応する必要もない。リオから伝えられていた内容について全てがそのとおりになるとは限らないのだし、それならば当面の間少女については監視をつけて事態が最悪の方向に動いた場合、その場で対応しても遅くはないだろう。フェル曰く、覚醒には条件があり、それが揃わない限り最悪の事態は訪れないとのことなのだし。

 

 監視については、このミレニアム全域に対してネットワークを張り巡らせている友人に頼むことにした。それにあたり、ヒナは関係者を緊急招集した。対応していた調査から丁度リオも戻ってきており、諸々の報告もしたいとのことだったので起こった出来事についても全て報告した。

 

 その会議でも一波乱あったのだが、最終的に決まったのは監視を前提としての様子見だった。リオとて、報告を聞いて可能ならば処理という選択は避けたかったのだ。だが、彼女にも考えがあり守りたいものもある。

 

 メインの監視には、ヒマリが就いた。加えて、ヒナとセンナもそれとなくゲーム開発部を直接監視するなどということを行っていた。そうして暫くの日々が流れ、特に最悪の事態に繋がるような出来事はなく。強いて言うなら、件の少女。アリスと名がついた少女が中心になって色々と騒動があったりというくらいだ。

 

 

 

 

 そうして、ある意味では大騒動が起こることになる。

 

 

 

 

 ゲーム開発部に顔を出したヒナが、その翌日。業務を休んだのだ。

 その原因は、ゲーム開発部で借りた、とあるものが原因だった。

 

 




 ケイちゃん、重装甲重武装のガチガチムキムキオートマタにいじられる。
 ヒナちゃんが業務を休むなんて……一体何があったんでしょうねぇ。

 さておき。

 気がつけば本当にたくさんのお気に入りや評価をいただき、作者としてはとても嬉しくもあり驚いています。今後とも楽しんで頂ければ作者としては嬉しい限りです。

 脳内でミレニアムヒナちゃんやセンナなどのキャラクター像はできているのですが、それを出力するための画力が作者にはないのでもしかするとその脳内のものに近づけた生成画像を貼るかもしれません。あくまで参考資料として見て頂ければと思いますし、そういった類のものが嫌いな方も居るかと思われますのでその場合は中身を見ずにそっと見なかったことにして頂ければなと。

 どんな感じなのかなと思うのもあるので軽くアンケートを設置してみますのでご意見頂けたらなと。もしアレなら作者の画像フォルダに大切に保管することにします。

 本格的にパヴァーヌ編が始まりました。恐らく、原作乖離が大きな章のひとつです。
 誰が、とは言いませんが顔と姿が早く見れるかもしれません。
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