「はなっ……離せェッ!私はセンナだぞ!」
「落ち着くっすよセンナ先輩!機動課のみんな手伝ってっす!副局長がご乱心っす!」
「通してくれルーネ!私はゲーム開発部に鉄槌を下さないと気が済まないんだ!ええいお前達も離せ!私は!センナだぞ!」
「よくわからないこと言ってないで冷静になって欲しいっすよ!」
センナが休んだヒナの元を訪れた翌日。それは起こった。その日いつも通りに、しかも一日ゆっくり休んだからかいつもより元気そうなヒナは治安維持局へと出動した。元気そうなヒナの姿を見て局員達はホッと胸を撫で下ろした。日課の朝礼が終わり、それぞれが業務へと向かっていく時、事態は起こる。
いつもよりやけにニコニコとしているセンナが、足早に機動課の格納庫へと歩いていくのだ。確かにセンナの今日の予定は朝から外回りであるが、それにしても何かおかしいと思ったある生徒がセンナへと声をかけた。
ミレニアムサイエンススクール1年『
腰のツールベルトの背中側には、銃身の長い、『ブリューナク』という名を与えられた明らかに異形のダブルバレルショットガンと、多数の種類の弾頭を使用可能な大口径の特注改造ショットガン、『アンサラー』が専用ホルスターに収められているほか、側部には弾薬やアタッチメント収納用のグレーのツールバックをつけている。
ヒナには現在、信頼しており。そして仲の良い部下が二人いる。一人は副局長のセンナ、そしてもう一人が治安維持局機動課所属にして、わずか1年生にして機動部隊の隊長を務めている彼女である。
治安維持局の切り込み隊長にして『
前線での制圧能力もさながら、そこに機動兵器を用いた展開戦術を組み合わせることでその能力は圧倒的の一言であり、一人で部隊単位の動きが可能なとんでもない生徒である。加えて、本人には指揮官適性もあり、この本人と展開した機動兵器に加えて現場に出ている局員や生徒による戦術指揮はそれだけで戦況を変えるほどの能力を持つ。彼女の存在についてはシャーレの先生も知っており、連邦生徒会に存在する動画データで現場での指揮や動きを見ていて『個人だけじゃなく、指揮能力も凄まじい』と評価していた。
そんな彼女が何やら様子のおかしいセンナへと声をかければ、とてもいい笑顔で『ちょっとゲーム開発部に』と言うのだ。明らかに嫌な予感がしたので止めに入り、現在に至る。
「ああもうっ!ごめんっす先輩!」
センナの身体能力は極めて高い。それはヒナやネルに迫るほどであり、流石のミレニアム内部で見てもトップクラスの3人に次いでくらいの素質を持つ彼女でも一人で抑え込むのは至難の業である。周囲の局員と自分でなんとか取り押さえているがそれもいつまで保つのかわからない、だからやむ無しと判断して彼女は腰の側部にあるポーチから一発の弾丸を取り出し、それを大口径ショットガンのほうへと素早く装填。そのまま瞬時にそれを抜くと、センナの腹部へと撃ち込んだ。
「うっ……ぐふっ」
「後でちゃんと謝るから勘弁して欲しいっすよ……」
気を失ってぐったりとなるセンナ。そして周囲の局員に対して、『とりあえず鍵かけて機動課の仮眠室にでも放り込んでおくっすよ』と伝える。そのまま仮眠室の方へと連れて行かれるセンナを見送り、溜息を一つ。
「ルーネちゃん、さっきの弾って……」
「あー、兵装課で暴徒鎮圧用に開発されてるスラグタイプのスタンボルトっすよ。テストタイプのちょっと刺激強めの奴なんすけど、流石にあの距離と防御できない状況なら効くかなと思って……」
「まあ状況が状況だからアレだったけど、ちゃんと謝ろうね。センナ先輩の予定だった外回りは……しょうがないから私が行こうかな」
「わかってるっすよ……。外回りは申し訳ないけどお願いするっす……。でもなんであんなことになってたんすかね?珍しいどころの騒ぎじゃないっすよ?」
一体何があったのかと思いつつ、同期の機動課の生徒へと言葉を返す。只事ではない。事件や緊急出動ではないが、これはある意味では緊急事態である。センナがここまでになるのは恐らくヒナ関係だろう。とすれば、昨日なにかあったのは間違いないと推測する。
「ちょっと気になるっすから、局長に話聞いてくるっすよ。もし先輩が目覚めたら頭冷やすように言っといて欲しいっす」
「わかったよ。でもゲーム開発部とか言ってたね。一体なんなんだろう?」
一体ゲーム開発部は何をやったのか、それを気にしつつもルーネは今日はデスクワーク予定のヒナの元へと向かうことにした。
◆ ◆ ◆
「テ、テイルズ・サガ・クロニクル!?なんというものを……局長、まさか昨日休んだのって……」
「……?ええ、ちょっと夢中になってしまって。クリアする頃には深夜過ぎで、ちょっと体調も良くなかったから……。ごめんなさい、体調管理が出来てなかったのは失態だったわね」
「いや、休んだのは別にいいんすよ。むしろもっと休んでほしいと言うか……。そ、それよりテイルズ・サガ・クロニクルっす!あー……そういうことっすか。それでセンナ先輩があんなことに……」
「センナがどうかした?そういえば、姿が見えないわね。ああ、外回りだから戻らないのかしら」
「あー、そ、そうっすね。多分外回りからまだ戻ってないっすね」
言えない。そのセンナが言ってしまえば暴れに暴れてゲーム開発部に殴り込もうとしていたなど。彼女の名誉を守るのも後輩としての役目だろう。そう思うことにしてルーネは誤魔化した。
「ちなみになんすけど。どうでした?プレイしてみて」
「……色々勉強になったゲームだったわね。ええ、とても」
「目が!目が虚ろっすよ局長!」
しかし、先程ヒナはテイルズ・サガ・クロニクルをクリアしたと言った。それはそれで凄いことなのだ。よく雑誌を読んでいるルーネとしても、そのゲームがどんなものでどんな評価を受けたのかというのは知っている。言葉を選ばずに言ってしまえば、クソゲーである。
世間での評価は、設定が絶望的。正気を疑うゲームシステム。精神をすり減らすゲーム。新手の拷問。などなど……と散々であり。仮に評価されてる所を探しても、プロのプログラマー界隈や企業から『ゲーム内容はともかくとして、バグが一切出ていないのは驚嘆に値する』というくらいなのだ。実際、これは途方もなく凄いことなのだが、ゲームがゲームのせいで霞んでしまっている。
「でも、ああいうゲームは嫌いではないわ。プロム作品は結構好きだし。中々にやり応えがあったもの」
「い、逸材……逸材っすよ局長は……。本当にゲーム初心者っすか……?」
最近色々と新たな属性が発見されるヒナを見て思う。可愛さ、ゲーマーとしての素質ときて一体次は何が発見されるのだろうかと。
「そうだ。ルーネ、今日はこれから外に出る予定はあるのかしら?」
「んん?いや、今日はないっすけど」
「……例の件にちょっと関わることで同行してほしいのだけど」
スッ、と。ルーネの目が細められて雰囲気も緊張したものになる。彼女はセンナに次いでの、実質上治安維持局のNo.3だ。そうして、ミレニアムにおいてはセンナ同様、少々特殊な武装を持つ存在でもある。
現在の警戒対象。世界を滅ぼす可能性がある存在、アリスと名のついた少女についての、ミレニアムとしての対応。ルーネもまた、それについて伝えられ、知っていた。
「――必要っすか?」
右手で軽くルーネは、背中側のホルスター。その片方に収められている、異形の銃身が長いダブルバレルのショットガン。『ブリューナク』を叩いて見せる。
「落ち着いて。荒事ではないわ」
「……いやーならよかったっす!何事も平和が一番っすからね!それで、どうしたんすか?」
実は、とヒナは前置いて。
「ユウカがゲーム開発部に監査に入ることになったのよ、それで、例のこともあるからってリオから立ち会いを頼まれてね。一緒に同行してくれないかしら?あなた、結構ゲーム関係詳しいわよね?」
へけっ……強欲ハム太郎なのだ……沢山のお気に入りや感想に評価、ありがとうなのだ、すごくうれしいのだ、もっと欲しいのだ……!強欲なのだ……へけっ……!
センナは某ぬ○たしの先輩みたいによく仮面ライダー語録もどきを口走ったりヒナ関係で奇行に走る。そのうちヒナに「あなたにィ!忠誠をォ!誓おォォオオ!!」とか言ったり「セイヤー!」とか叫んだり百鬼夜行に豆腐を買いに行くかもしれない。俺は名護だぞとかわかる人居るのか。
本作での最後のオリキャラ、ルーネちゃんです。モチーフはケルト神話の某太陽神。『っす』という語尾が特徴的の陽キャ。よくヒナの私服コーデをしている。実力的にはキヴォトストップクラスの面子には届かないが、SRTの上澄みくらいの実力はある。
作中の登場人物、ミレニアム版ヒナやセンナなどの参考イメージとして画像生成したものを使うのは
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あり
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なし