「へえ、ならルーネって結構コアなゲーマーなんだ。結構いろんな大会出てるんだね……」
「なら、私もルーネにゲームについて教えてもらおうかしら。まだ私は最近触り始めたビギナーだから」
「いやいやミドリ、最近はもう大会には出てないんすよ。ちょっと前くらいまでっすかね、色々やってたのは。それから局長、超鬼畜倒されて覚えるゲーで開始1時間でフレーム回避する人をビギナーとはもう言わないっす。聞いて驚いたっすよ……」
「無敵が発生するタイミングを覚えればいいとセンナに言われたからそうしただけなのだけど……」
「やっぱりセンナ先輩重罪っすわ、とんでもない逸材というか獣をゲーマー界隈に解き放ったっすよ。まあ、私も今は治安維持局の業務とか別の趣味があって結構本気でゲームすることは減ったっすけど、心残りはあるっすねぇ……」
懐かしそうに、だが悔しそうに心残りがあると言うルーネに対してミドリとアリス、そしてヒナは興味を持った。かつては余程のゲーマーだったのは間違いないらしく、ゲームが大好きになっているアリスも興味津々である。
なお、少し離れたところではモモイがユウカに絞られている。部の存続については、アリスへの色々と質問はあったがユウカは敢えて色々と見逃して正規の部員であると認定。部員数についてはクリアされたが、実績がまだである。
モモイとしても、ここまで来て引く気はなく。アリスという新しい部員を迎えた今、部の存続。そして自分達のゲーム開発部としての目標を達成するために、結果を出す。つまり、『自分達の手でゲームが面白いものであることを証明する』という目的を達成することが次の目指すべきものなのは理解している。
元々、ユウカに対して結果を出すと大口を叩いていたのだ。だからこそユウカは条件を出した。近く開催されるミレニアムプライズ、そこで結果を残せば部の存続を認めると言ったのだ。
最早他に選択はない。モモイ達としてもその条件は納得するしかなく、ユウカに対して結果を出すと約束までした。そして現在はといえば、これまでに起こした問題や他の部活動に対してかけた迷惑についてユウカに絞られている。主にモモイがであるが。そうしてミドリとアリスはといえば、ユウカに同伴してきたヒナ、そしてルーネへの対応。もとい、雑談をしている。
ルーネが元結構なゲーマーだったということ、有名な大会で以前は結果も残していたということに対してミドリとアリスは興味津々である。そして、ロッカーの中にいるユズも同じだった。
「まあ、若気の至りの話なんすけどね。KCSの格ゲー部門で優勝して浮かれてたら、あることを大会の生配信で言われたんすよ。『rurune』と『UZQueen』どっちが強いんだろうって」
「KCSって、あのキヴォトス最大規模のゲーマーの祭典で、色んなジャンルの大会が開かれてるあの!?ん……?『rurune』って何処かで聞いたような……?」
「大会にオンラインでの匿名参加ながら驚異的な実力で無敗で優勝、でもその後すぐ姿を消しちゃった伝説の格闘ゲーマーだけど、まさか……え、ルーネがそうなの!? あっまってユウカ向こうの話がきにな――」
そのままフェードアウトして、部屋の隅で再び絞られるモモイ。不憫である。
「あー、まあ。そうっすね。『rurune』は私っす。すぐ消えたんで、あれ以降特に話題になることもないしがないゲーマーっすよ。それでまあ、当時の私も気になって、必死になって『UZQueen』と戦えるゲームを探し出して対戦したんすよ。……ただまあ、それがちょっと不完全燃焼だったというか」
口にはしないが、ミドリとモモイは『UZQueen』の正体がユズであると知っている。そして本人、ユズもまた自分の話。しかも、心当たりのある。自分にとっても思うことのある記憶の話であり、ロッカーの中で音を立てないようにさらに小さくなってしまった。
「どうなったの……?」
「私の負けっすよ、流石伝説と言われるだけあったっす。ただ……どうにも『UZQueen』の動き方が本調子じゃなかったように感じて。試合は3先で2-3で私の負け。でも私の目的は勝敗じゃなくて、『UZQueen』がどんなものなのか。今の自分がどれだけ戦えるかを知りたかったんすよね。……だから、なんというか本調子じゃない『UZQueen』を見て、ちょっと残念だったんすよ。願わくば、全力の状態と戦いたかったなと思って。それだけが心残りっすかねえ」
それを聞いていたユズはと言えば、ロッカーの中でしゃがみ込んで、膝を抱えて。そこに顔を埋めるようにして呟いていた。『ごめんなさい』と。
ユズとしても彼女。『rurune』というプレイヤーは覚えていた。今まで自分が戦ってきた中で間違いなくトップレベルに手強く、油断できないプレイヤーだった。本調子でなかったとはいえ、2本取られているのだから。
当時のユズは、精神状態があまりよくなかった。自分の作った『テイルズ・サガ・クロニクル』、それが色々と炎上してしまった時期であり、そんな中で少し息抜きにと起動した格闘ゲーム。そこで戦ったのが、『rurune』。ルーネだった。
心の何処かで『UZQueen』としてのユズは飢えていた。常に常勝、ただ勝利を積み重ね続けて周囲からは伝説のプレイヤーなどと畏怖されたりするようになった。『最強』『伝説』『頂点』。ゲームにおいてそれらの称号とは退屈なものなのだ。自分と対等に、近しい存在が居ない。特に対戦ゲームにおいては、その存在が居ないというのはただ退屈で、つまらなくて、孤独なのだ。
常に勝ち続けてきたユズ。そんな前に現れたのがルーネだった。白熱した激闘、心の底から対戦を楽しいと思った。もっともっとこの相手と対戦したいと思った。しかし当時のユズには、生まれたばかりの大きな傷があった。それが、対戦中も脳裏に焼き付いている。頭の中を過ぎり、心が竦む。それは、意図しなかったとしてもプレイにも影響を及ぼしコンディションを低下させる。その結果が、彼女の話していたことなのだ。
『rurune』が、ルーネがゲーム好きな生徒で、しかもミレニアムの生徒で、自分との再戦を望んでくれている。それがどれだけ嬉しいことか。今すぐにでも自分が『UZQueen』だと名乗り、あの時のやり直しをしたいと言いたかった。
……だが。それができなかった。
怖いのだ。ずっと、あのことがあってから。
対人恐怖症。それが今の花岡ユズという少女を蝕んでいるものだった。自分の心血を注いで作ったゲームの全面的な否定、酷評の嵐。炎上騒動に便乗しての沢山の心無い言葉。仮に、彼女の作った作品が客観的に見て評価されるものではなかったとしても、他者からのそれは一人の少女の心を壊すには十分だった。
もし、彼女にも否定されたら?あの時どんな理由があったとしても、手抜きだと言われるようなプレイをしてしまった自分に対してどんな言葉を投げられるのか?全てが怖い、全て悪い方向に考えてしまう。今は、モモイとミドリ。そしてアリスと話すので精一杯だった。
ごめんなさい、と。再びユズは自分だけの場所で呟くのだった。
「っと、私のことはまあそれくらいで!向こうはもう暫くかかりそうっすし……あー……ならお仕事っすね。ね?局長?」
「今思い出したというように言わないでルーネ……。といっても、私達もそんなしっかりとした監査とかに来た訳では無いの」
そうね、とヒナは呟いて。
「じゃあ私からもアリスに幾つか質問してもいいかしら?」
「ラスボス……裏ボスからの質問ですね!世界の半分はいりません!アリスは勇者ですので!」
「私裏ボスなの……?コホン、まあいいわ。聞いてもいいかしら?」
「会話イベントですね、アリスに答えられることでしたら!」
思わず苦笑いしてしまうヒナ。どうやら、アリスが目覚めてからの環境。ゲーム開発部は暫く監視も含めて見ていたが、それはアリスの人格形成に大きな影響を与えているのは間違いない。
「ゲーム開発部は、ゲームは楽しい?」
「はい!楽しいし大好きです!色んなゲームも、そしてゲーム開発部のみんなもアリスは大好きです!」
「……そう。そうね、ゲームは楽しいわね。特に、友人とやるゲームはとても」
「裏ボス局長先輩……じゃなかった、ヒナ先輩もゲームが好きなのですか?」
「裏ボス局長……ルーネ、笑い堪えてるのもわかってるわよ。そうね、アリス。私もゲームが最近楽しいと思えるの。折角だし、ゲームでもしましょうか。モモイはまだ時間がかかりそうだし」
その後、モモイが絞られ終わるまでは暫くの時間がかかり。その間、ヒナ達は様々なゲームをプレイして楽しんでいた。その中でヒナの中で変化したのは、アリスという少女に対しての印象だった。
世界を滅ぼすかもしれない存在。そんな存在には決して見えず、明るく元気な生徒。それにしか見えなかった。
ならば、今のアリスの状態を維持して世界を滅ぼすのに必要な事象を対処してしまえばいいのではないのか。なにもアリスという少女に対して対処する必要はないのではないのか。そう考え、一考の余地もあると判断していた。
クックックッ……曇ったユズは美しい、そう思いませんかイマジナリー強欲ハム太郎?
へけっ、そうなのだ!でもぼくは曇ったり絶望に沈んだり苦難に負けそうになりながらも『それでも』と言い続けて立ち上がり、足掻き、歩こうとする生徒の輝きがみたいのだ!万歳ァイなのだ!曇ったままにするのはよくないのだ!ちゃんとそれが晴れていく光景もすごく美しいのだ!
■KCS(Kivotos Championship Series)
キヴォトスにおける様々なジャンルのゲームの祭典にして、最大規模の大会もイベントとして行われる。大会への参加はレギュレーションはあるが、オンラインで匿名での参加も可能。様々なジャンルでの大会が行われることから、例えばシューティングゲームならPMCなどが、レースゲームなら車両メーカーが見に来ており優勝者や才能のある相手に対してスカウトやオファーをすることもある。協賛もかなり幅広いメーカーが参加している。
作中の登場人物、ミレニアム版ヒナやセンナなどの参考イメージとして画像生成したものを使うのは
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あり
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なし