『ミレニアム治安維持局局長』、空崎ヒナ   作:無名のカヤ推し

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EPISODE21:心は覚えている

「こっちです、こっちになにかがあるとこの身体が反応しています!」

 

「ま、まってアリス……とんでもない体力だよ本当……!」

 

 再びミレニアムの『廃墟』を訪れた先生達。今回は、モモイから頼まれたということもあってヒナも同行している。道中、自動稼働しているオートマタ無人兵器にまた襲われることはあったが前回ほどのものではなく。しかも、ヒナが居るということもあって順調に道中は進んでいた。

 

 そうして。工場へと再び突入したあたりで、突然走り出したのはアリスだった。まるで、何かを感じ取ったように。焦り、慌てるようにして時折周囲をキョロキョロとなにかを探すようにして見渡しながら足早に進んでいく。

 

「……どこですか。どこに居るんですか。 ――大丈夫、きっと。きっとこっちです」

 

 アリスの体力は言ってしまえば常軌を逸している。それは、耐久性と体力が求められる"そのような目的"のために造られたというのもあり、今の少し慌てたようにしている彼女に息を乱さずついていけるのはヒナくらいのもので。先生達はといえば、かなり息も絶え絶えになっていた。

 

 

「待ちなさい、アリス。……少し落ち着いて。何に慌てているかはわからないけど、先生やモモイ達がついてこれてない。ユズなんてもうダウンして先生におぶってもらってるのよ」

 

 突然、慌てるようにしていたアリスの肩を背後から掴んで止まるように言った存在が現れる。ヒナだ。そう言われ、アリスはハッとなった後、しゅんとなって『ご、ごめんなさい……』と言った。

 

「ここは……工場の休憩スペースかしら?廃棄区画にしては割と綺麗ね……。先生、少しここで休憩しましょう。ほらユズ、ここに座って」

 

 アリスが立ち止まったのは、偶然にも工場の休憩区画の一つだった。廃棄されている工場にしては多少埃などはあるものの比較的綺麗で、自販機なども設置されている。しかも、少し前の世代だが釣り銭の計算や案内アナウンスなどのAIが搭載されているタイプの自販機だ。電源は入っているが、商品は入っていないようで全て売り切れの表示ではあるが。

 

 全員の呼吸が少し落ち着いてきたところで、アリスは改めて全員に落ち込んだようにしながらも謝罪した。先生やモモイ達も、ヒナも突然のことで驚いただけで怒ってはいないのだが突然どうして慌てだしたというのが気になった。

 

「その、アリスに記憶はありません。ですが……セーブデータを持っているような感覚はあるんです。それが、ここにはなにか大切な。――アリスにとってとても大切な何かがあると告げている気がするんです」

 

 初めて見せるアリスの真剣な表情にゲーム開発部の面々は驚いた。そして、真っ先に反応したのはモモイだった。

 

「だったら、それを探そう。私達はアリスについていくよ!」

 

「え……。で、でもモモイ。『G.Bible』は……」

 

「それよりもアリスの大切なもののほうが大事だよ!なにかはわからないけど、きっとそれがアリスにとっては大切なものかもしれないんでしょ?だったら、最優先は友達の大事なことだよ。私達はゲーム開発部だよ、アリス。仲間でしょ!」

 

「そうだね、お姉ちゃんの言う通り。どうせ『G.Bible』も何処にあるかわからないし、実在するかもぶっちゃけ怪しいんだし」

 

「う、うん……。私もできることがあるならアリスちゃんに協力したいよ」

 

「モモイ、ミドリ、ユズ……。ありがとうございます」

 

 

 全員の息も回復して、再び工場の内を探索する。だが、工場は広大な広さだ。アリスが居た場所のことも含めれば地下もある可能性が高いだろう。

 

 探索してわかったのは、比較的工場は廃棄された割に綺麗だということだ。電気は通っており、荒廃したような感じもない。まるで――清掃用のロボットか何かが手入れをしていたような。

 

 

『すみません、想像以上に広くて手間取ってしまいました』

 

 無人の制御室とハンガーをあわせたような部屋。そこを探索していると、突然聞こえてきたのはそんな声だった。見れば、ヒナの隣に今まで不在だった存在が浮遊していた。黒い外殻に紫色のレンズアイ。フェルである。

 

「あれ、フェル?今まで一体何処に……?いつもヒナの近くにいるのに」

 

『少しマスターに頼まれまして、廃墟区画の周辺を調べていました。言うならば、マッピングですね』

 

 その言葉に反応したのはアリスで、『マッピング……フェルはシーフだったのですか?』と言っていた。

 

『工場周辺の地図データ、それから少し手間取りましたが工場のマップデータも確保できました。先生、あなたの端末に転送します』

 

「それは助かるよ。……ん?ちょっと待って」

 

 送られたマップデータ、それを確認した先生はそれを確認してそんなことを言った。

 

「この赤い場所は何?」

 

『ああ、そこですか。地下の保管区画の一室なのですが、その部屋にだけはどうしてもアクセスができなくて。ハッキングや色々と試してみたのですが、駄目でした。申し訳ありません』

 

「フェルでも駄目だなんて……。でも、気になるね。ああ、けど間取り的にこの場所に繋がる通路がないのか……。何か特殊な入口でもあるのかな?」

 

 会話が気になったのか、先生の持つシッテムの箱。そこに表示されるマップデータを見るために各々が集まってくる。それぞれが言葉を作る中、アリスはじっとそのマップデータを見ていた。

「アリス?どうかしたの?」

 

「……この赤い色の部屋。今アリス達が居る部屋のずっと真下です」

 

「そうなんだよね、でもここから下に繋がる道はないみたいだし……」

 

「……そこに居るんですか?」

 

「アリス……?」

 

 呟くように言うと、再び焦ったようになるアリス。

 そして、部屋の中を見渡して。メインコンソールを見つけると、早足に歩み寄った。

 

「認証プロセス読み込み、Divi:Sion System起動。管理者権限設定、Admin。コードQUEENにより閉鎖区画へのロック解除。ブート開始――」

 

 突然焦ったようにしながらも何やら複雑な言葉を呟き、同時にものすごい勢いでコンソールを操作していくアリス。それを唖然としてみているゲーム開発部と先生だったが、ヒナとフェルはといえば冷静にその様子を見ていた。

 

 

 

「……結果は?」

 

『最良の結末かと。私としても、大いに満足しています』

 

「そう。よくやったわ、フェル。 それから、無理を通してくれてありがとう」

 

『――感謝の極み』

 

 

 

 その直後、ガゴン!という音と同時。身体が浮遊感を感じ取る。聞こえてくるのは駆動音で、部屋そのものが移動しているとわかるのにそう時間はかからなかった。

 

「あ、あれ……。アリスは今、何を……?」

 

 ハッ、と我に返るアリス。どうやら、今自分がやったことを自分でもわかっていないようだった。何が起こったのかわからず、驚いたように自分の手を見つめていたアリスだったが、

 

 

「うわっ!?み、見て!」

 

「部屋が移動して……下に見えてる隔壁がどんどん開いて、道ができてる?」

 

 先生とモモイが見ていた窓へとミドリとユズも集まっていけば、そこから見えるのはまるで映画やアニメでしか見たことのないような光景だった。部屋自体がエレベーターのようになって下へと降下しており、巨大な隔壁が駆動すると、それが開いて道を作っていく。まるで工場そのもが生き物かのように目まぐるしく変化を見せる。

 部屋が最下層へと到着する。すると、隔壁が降りていた入口側の壁が解放され、目の前に認証装置のついた扉が現れた。

 

 そうして、アリスは。まるで何かを感じ取ったかのようにして、その装置の前まで歩みを進めた。

 

 

 ――認証システム起動。端末に手をかざして、名前をお教え下さい。

 

 

 聞こえてきたのは無機質な声だ。システム染みた、女性タイプのシステム音声。

 それに対してアリスは、手を端末の液晶へとかざして。

 

「アリスは……アリスです。ミレニアムサイエンススクール1年、ゲーム開発部所属の天童アリスです!」

 

 

 

 ――音声認識に成功しました。おかえりなさいませ。

 

 

 

 巨大な自動扉。そのロックが解除される。先生達は驚いてはいたが、この先に何かがあるのは間違いはないだろう。

 

 

 覚悟を決めて、全員で部屋へと入る。

 

 

 

 

 そこは、真っ白な部屋だった。存在するのは中央の、見た覚えのある医療用の椅子だけ。かなり広い部屋だが天井の明かりがあるくらいで周囲には他に何も存在していない。

 

 無機質な医療用の椅子、その隣にある端末。

 そうして。その椅子に存在したのは――

 

 

 

 

 

「――見つけました」

 

 

 

 

 きっとそれは、無意識だったのだろう。

 

 モモイも、ミドリも、ユズも。そして先生も動揺する中でアリスはどこか安心したような、嬉しそうな声で呟いた。

 

 

 アリスに記憶はない。

 だが、彼女の中に『在る』想いは確かに覚えている。

 

 大切な。大切な存在のことを。

 創造主から、共に未来を歩いて欲しいと願われたもう一人のことを。

 

 

 

 

 『ST-KEY』というプレートが存在する無機質な玉座に眠るように座っていたのは――白い医療服を着たアリスによく似た、白い髪の少女だった。

 

 




 ということで、登場です。
 お前も生徒だ。この世界線のミレニアムの生徒にしてやる。

 頭のおかしい奴がいっぱい居てドタバタで騒がしい日常の仲間にしてやるからな。
 いっぱい青春させてやるからな……。
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