『ミレニアム治安維持局局長』、空崎ヒナ   作:無名のカヤ推し

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EPISODE23:勇者の宣言(選択)

「……だとしても。アリスは勇者です!」

 

「そうありたいとアリスが思いました、だからアリスは勇者なんです!魔王になんて絶対にジョブチェンジしません!」

 

 室内に響いたのはそんな言葉だった。

 それを聞いての反応はそれぞれだったが、自分の知ることを全て話した少女、名前がないと聞いて『なら、アリスの時と同じでモモイが決めたら?』と先生に言われたモモイが、『うーん……KEY……鍵……あっ、じゃあケイ!ケイなんてどう!?』と言い、本人も決して嫌ではなかったことからケイという名前がついた少女はポカン、としていた。

 

「ケイ!聞いて下さい!」

 

「は、はい」

 

「きっと、ケイの言う話は全部本当なんだと思います。話を聞いて、どう言えばいいのかわかりませんが……アリスの中のなにかも、それが事実で。そんな力があるのだとなんとなくだけどわかりました。でも!アリスはそれを、キヴォトスを滅ぼすためになんて絶対に使いたくありません!」

 

 自分にそのような力があり、そういった目的のために作られたということを知って尚。アリスが選んだのは、その定められた『使命』ではなく自分の『感情』だった。

 

「……アリスはずっと眠っていました。それを目覚めさせてくれたのは、先生やヒナ先輩、そしてゲーム開発部のみんなでした。沢山のゲームをプレイして、モモイ達やみんなと話をして、毎日色んな事があって。それがとても楽しいのだとアリスは思いました」

 

「これからもずっと続いてほしいと思いました。何よりも、アリスが『ア(・)リ(・)ス(・)と(・)し(・)て(・)』、歩いていきたいと思いました。アリスはゲームが大好きです、たまに変なゲームもあるけれど、それでも大好きです!そしてモモイ達や先輩達、先生やみんなも、ミレニアムも大好きです!まだ行ったことのない自治区や、会ったことのない生徒も居ます。だからきっと、もっともっと好きになるものは沢山あるし増えると思います!」

 

 力強く、宣言して見せる。

 

 魔王になんてなってやるものかと。

 むしろ、自分達のためにそれすらも使ってでも前に進んでやると。

 

「――だからアリスは、勇者としてのアリスで、『天童アリス』なんです!」

 

「大好きなみんなを、世界を滅ぼす魔王になんて絶対になりません!」

 

 

 『魔王』でも『王女』でもない。

 アリスが選んだ、感情によって選択したなりたい自分とは――『勇者(アリス)』なのだ。

 

「それに、話を聞いて魔王になりたくない理由が増えました!ケイ、あなたです!」

 

「私、ですか……?」

 

「はい!従者……とかはよくわかりませんが、つまりケイはアリスに近しい存在ということなのですよね?つまり家族です!」

 

「は、はい!?」

 

「違いましたか……?話を聞く限り、とても近しい相手ならそうなのかなと……嫌でしたか?」

 

「い、いえ。そんなことは全く……むしろ……」

 

「よかったです!それから家族はみんな同じ苗字を使うと聞きましたからケイは『天童ケイ』ですね!」

 

「天童ケイ!?……悪くは、ないですね。  へ、へへっ……」

 

 

 隠しきれないニヤけ顔を見せまいと頑張っているケイだが、周囲から見ればバレバレである。明らかに顔には『私嬉しいです』と書いてあるようであり、まんざらでもないと言いつつもとても喜んでいるのは明白だった。

 

 

「……これがアリス達の答えでは駄目ですか?リオ先輩」

 

 

 そうして、視線が向けられるのは室内の別の少女。ミレニアムの現生徒会長にして、今回の件について動いていた関係者の一人でもあるリオだ。

 

 ケイが『生徒』として目覚め、そして身体がうまく動くようになるまで数日かかった。その間、ケイも最初は戸惑っていたが多くの生徒と交流をした。ゲーム開発部の面々、ヒナや先生、そして今回の件で動こうとしていたミレニアムの上層部。事情を知らされていないユウカやノアとはまだ顔は合わせていないが、そのうち会うことにもなっている。

 

 身体も上手く動くようになってきた頃。ミレニアムの制服に身を包んでケイが足を運んだのは治安維持局の会議室だった。そこでケイは自分の知ること、そして使命としてやろうとしていたことをすべて話した。そこには当然アリスがどんな存在なのかということも含まれていたのだが、それを知っても尚のアリスの答えは固かった。

 

 会議室に居るのは、リオとネル、ヒナとセンナ、そして先生とゲーム開発部。今回の件ではミレニアム上層部としては、セミナーとC&C、治安維持局が動いており、そこに協力する形でヒマリ。特異現象捜査部も動いていた。その中から代表する形で4名がこの場に居る。

 

 先生とゲーム開発部が居るのにも理由があった。当事者であることというのも大きいが、先生としては『大人』として生徒の力になりたいという理念のもと動いている。そしてゲーム開発部からの依頼を受けていたのもある。だからこそ、アリスとケイという2人の生徒の力になるべくしてこの場所に居た。

 

 ゲーム開発部については、アリスに関わった当事者でありこの先アリスとか変わっていくにしても知っておいたほうがいいだろう、ということで呼ばれている。

 

 

「――いいえ、十分よ。合理的ではないけれど、十分に納得できたわ」

 

 そうしてリオは並ぶ二人に近づくと、ポケットから何かを取り出した。

 それは、それぞれに二人の顔写真とミレニアムの校章が存在するもので。

 

「これは学生証……ですか?あれ、でもアリスは既に――」

 

「今持っているのは、ヴェリタスとヒマリが上手く偽造したものでしょう?本物は私の承認がいるもの。そしてこれは、本物の学生証よ」

 

「……!それは、つまり」

 

「再発行には色々面倒な手続きがいるから無くさないように。 ――ケイ、こっちは貴女のものよ」

 

「あ、え……。い、いいのですか?その、つまりこれは」

 

 

 二人に学生証を渡したリオは口元に笑みを浮かべ、そして。

 

 

 

 

 

「私達が懸念していたのは、キヴォトスを滅ぼす『無もなき神々の王女』であってアリスとケイという2人の少女ではないわ」

 

「ミレニアムサイエンススクール、セミナーの生徒会長としてアリス、ケイ。貴女達二人がミレニアムの生徒であると認めるわ。……ようこそミレニアムに。歓迎するわ」

 

 

 

 

 その言葉を聞いた瞬間ケイは何も言えなくなった。

 手の中にある学生証を、ただ見つめる。

 

 

 

 そんな二人の様子を見て、先生は静かに微笑む。

 

 そして。

 

「なら、ここから先は普通の学校生活も考えないとね」

 

「学校生活……?」

 

 ケイが首を傾げる。

 

「そう。授業を受けたり、宿題をしたり、テストを受けたり、部活動に参加したり」

 

「うまくできるでしょうか……」

 

 それを見たモモイが勢いよく手を挙げる。

 

「大丈夫だよ!アリスの家族なら、それはつまり私達の仲間ってことだから全力でサポートするよ!」

 

「お姉ちゃんちょっとそれは無理があるような……。でも、うん。私達にできることなら手伝うよ」

 

 ミドリが即座に突っ込む。

 

「えー、だってケイはアリスの家族なんだよ?つまり、私達の家族でもある!ケイも家族だ!」

 

「……もしかしてこの前やってたホラーゲームに影響された?」

 

 その横で、ユズが小さく笑った。

 

「……ふふっ」

 

「ユズまで笑った!?」

 

 いつもの光景。ゲーム開発部らしい、いつもの空気と日常。

 さっきまで重苦しい空気に包まれていた会議室だったが、少しずつ普段の調子が戻っていく。

 

「……にぎやかですね」

 

 ケイがぽつりと呟いいたのを聞いて、アリスが強く頷いた。

 

「これが、アリスの日常です!」

 

「……」

 

 ケイはもう一度、学生証を見る。

 

 そして、少しだけそれを胸元に抱き寄せた。

 

「……その。私も、この日常にいていいですか?」

 

「当たり前じゃん!」

 

 モモイが即答した。

 

「ケイはもうゲーム開発部の仲間なんだから!」

 

「まってください、今何かおかしなことが聞こえたような。私まだ部活動への加入届とか出してませんよ!?」

 

「こんなこともあろうかと」

 

「なんで私の名前が書かれている加入届を持っているんですか!?」

 

「会長!受理お願いします!」

 

「……モモイ。加入届は本人記入が原則よ。それから本人に承諾のないものを受理はできないわ」

 

 がーん、となるモモイ。当然である。

 

「ならケイも一緒にゲームをしましょう!ミレニアムには部活動が沢山ありますから、それから考えればいいです!」

 

「ゲーム……ですか?」

 

「はい!そうですね……面白いゲームが沢山あって迷ってしまいます!」

 

 アリスはモモイ達とあのゲームがいい、いやこっちもいいなどと和気藹々と話しており穏やかに空気が流れる。

 

 そこに居たのは、一人の笑顔で友人と話す少女と、それをどこか嬉しそうに。期待の籠もった眼で見ている少女、2人の生徒だった。

 

 

 

 

 

 

 

「――あっ」

 

 

 

 

 

 ふと。そこで声を上げたのは、珍しく何かに気がついて驚いたようにしたリオだ。

 

 普段冷静沈着で、このような抜けたような驚きの声わあげるのはとても珍しく、一体何事かと思う。

 

 

 

「……ユウカからも話は聞いていたのだけど、その。せ、説明させてちょうだい。忘れていたわけじゃないの、本当よ」

 

「絶対忘れていたわよね……?」

 

 ヒナから鋭いツッコミが入るとあからさまに目をそらすリオ。

 

「その、……落ち着いて聞いてちょうだい。」

 

「……リオ」

 

「何かしら?」

 

「その言い方は、だいたい碌でもない話をする時のやつよ」

 

「ちゃんと説明できるわ、私はいつだって合理的よ」

 

「忘れていたのよね?」

 

「……」

 

 ヒナの追撃、そして再びの沈黙。

 

「その……一つ、非常に重要な問題が残っていたことを思い出したのよ」

 

「重要な問題?」

 

 ケイが首を傾げる。

 

「アリス達に関わる問題でしょうか?」

 

「いいえ、今回の件とは全く別問題……だけど、そうね、アリスには関係があるわね……」

 

「……?」

 

 疑問符を浮かべているのはアリスとケイだ。対して、何かを察したような表情をしているのはゲーム開発部の面々以外のミレニアム上層部組。

 

 そしてリオはゲーム開発部へ視線を向けた。

 

 

 

 

 

「ゲーム開発部の存続についてよ」

 

 

 

 

 

 その瞬間空気が凍った。ゲーム開発部の存続、そんぞく、ソンゾク―――

 その言葉はモモイとミドリ、ユズ、アリスの頭に妙に響き渡り。木霊した。

 

 

 

「――――え?」

 

 最初に声を漏らしたのはモモイだった。

 

「そっち!?」

 

 ミドリが思わず叫ぶ。

 

「えっ、ちょっと待って!? 今!? 今その話するの会長!?」

 

「今だからよ……ご、合理的なタイミングだと思うわ」

 

「いやいやいやいや!さっき忘れてたって言ったじゃん!」

 

 モモイが慌てて両手を振る。

 

「だって今めちゃくちゃ良い感じだったじゃん! アリスが勇者になりたいって言って! ケイがアリスの家族になって! ミレニアムの生徒になって! 感動的なイベントだったじゃん!」

 

「そうね、それは否定しないわ」

 

「なのに何で突然部活の廃部の話になるの!?」

 

「あなたたちの今の現実だからよ」

 

「現実のミレニアム厳しすぎるよ!」

 

 モモイが頭を抱える。

 対して、リオは至って冷静だった。……誤魔化すかのような冷静さだったが。

 

「喜ばしいことなのは事実よ」

 

「……え?」

 

「アリスとケイがミレニアムの正式な生徒になったこと。それ自体は、セミナーとしても大きな意味があるわ」

 

 リオは二人を見る。

 

「今回の件が解決し、二人が自分自身の意思で未来を選択した。それをミレニアムとして受け入れることができたのは、私達にとっても喜ばしいことよ」

 

「はい!」

 

「……ありがとうございます」

 

 アリスとケイは嬉しそうに頷く。

 その一方でゲーム開発部の3人は、何故か嫌な予感が消えない。

 

「ただし」

 

 リオは続ける。彼女はミレニアムの生徒会長である。

 そして合理性を重視する、今この場においては無慈悲な宣告者でもある。

 

「それとゲーム開発部の存続は別問題よ」

 

 『ひいーっ!』『あーっ!』『う、うう……!』『うわーん!』

 と。モモイ達四人の叫びが会議室に響き渡った。

 

 

「なんでぇ!?空気読んでよ会長!」

 

「話が繋がってないよ!」

 

「か、会長……もっとその、手心とか……」

 

「うわーん!アリス達いきなり大ピンチです!」

 

 阿鼻叫喚、そんな中ケイだけが状況を理解できず、ぽかんとしている。

 

「……ゲーム開発部が、廃部になるのですか?」

 

「まだ決定ではないわ」

 

「よかった……か、勘違いしないでください。アリスが気に入っている場所がなくなるのは忍びないだけです」

 

「ただし、条件を満たせなければ廃部よ」

 

「お慈悲ー!」

 

 モモイが叫ぶ。

 

 リオはスマホから投影ディスプレイを展開して手元の資料を確認する。

 

「ユウカから報告を受けているけれど、あなた達……随分とその、元気な部活動なのね。私も最初報告書を見た時二度見したわ。それから、部員数はアリスの加入によって解決されているけれど、ユウカにミレニアムプライスで成果を出すとも言い切っているのよね。なら、それを出してもらわないことには存続と今後の部費と活動については承認できないわ」

 

「ぐはっ!」

 

「お姉ちゃん!?」

 

 モモイが机に突っ伏しミドリも青ざめる。

 

「ミレニアムプライス、とはなんですか?」

 

 ケイが聞き返す。

 

「ミレニアムで定期的に開催される、研究・技術・創作分野の成果を評価する競技会みたいなものよ。簡単に言えば、ミレニアムの生徒達が自分達の部活動で成果を発表する場ね」

 

 リオが答え、続けていく。

 

「そしてゲーム開発部については、まあ……情状酌量の余地はあると幾つかの部活動から意見書は来ているけれど以前からセミナーでも『次のミレニアムプライスで成果を出さなければ廃部にする』という話になっていたの。それに、ユウカに対して啖呵を切ったのはモモイ、あなたでしょう?ヒナからも結果を出せば文句は言われないと言われて納得してるはずよ」

 

「…………それは、うん」

 

 リオは頷いた。そして、 

 

 

 

  ――裁判長としての判決と言わんばかりに。

 

 

 

 

 

「改めてになるけれど、次回のミレニアムプライスで結果を出せなければゲーム開発部は廃部よ」

 

「嫌だああああああああああああああ!!!」

 

「お姉ちゃん落ち着いて!」

 

「落ち着いていられるわけないでしょ!?」

 

 モモイが頭を抱えて転げ回る。

 

「せっかくアリスが加入してくれたのに!そしてケイも加入候補なのに!」

 

「だから加入するとはまだ言ってません!」

 

「……まだ?つまり、可能性はあるってことだよね!?ケイー!」

 

「な、なんですか」

 

「ゲーム開発部を救って!」

 

「はい!?」

 

 

 

 

「……なるほど」

 

 

 

 アリスは真剣な表情で頷いた。それはまさに、自分が魔王としてではなく勇者としての道を選択した時と同じくらいの真剣さだった。

 

 

「つまり、ゲーム開発部が無くなってしまうとアリス達はゲームができなくなるということですね」

 

「そこだけじゃないよ!?」

 

 ミドリが突っ込む。

 

「アリス、もっと重大な話だからね!?」

 

「ゲームができないのは重大です!まだ沢山やりたいゲームがあります!」

 

 アリスは部室に山になっているゲーム達に思いを馳せる。名作と名高いゲーム達、最近仲良くなった治安維持局機動課の生徒におすすめされた何本かのゲーム、モモイ達やネルやヒナと一緒にやりたいと思っているパーティーゲーム、それらは全て今のアリスにとっての宝物だった。

 どんなにゲームで強い武器やアイテムなんかよりも、遥かに価値があって。キラキラしていて。大切な、大切な宝物なのだ。

 

 

「優勝まで求めてはいないけれど、少なくとも『この部を存続させる価値がある』と誰もが納得するだけの結果は必要になるわ」

 

「わかりました!」

 

 アリスが拳を握る。

 

「なら改めてゲームを作りましょう!『G.Bible』はありませんでしたが、今回のことはそう、沢山のインスピレーションにも繋がったと思います!」

 

「確かに……。そう、そうだよ! それにケイもいる!」

 

「いや、だから私はまだ加入して――」

 

 決死の思いに燃えるゲーム開発部、そしてそれに巻き込まれるケイ。だが、やらねばならないのだ。やらなければ自分達の未来はない。まさに――本当の彼女達の決戦はここからなのだ。

 

「そして先生もいる!」

 

「まあ、うん。依頼を受けたし最後まで手伝うよ」

 

「さらにヒナ先輩とセンナ先輩!」

 

「確かに時間がある時協力するとは言ったからいいけど……でも、私ゲーム開発の知識なんてないのだけど……?ゲームだって最近触り始めたばかりだし……」

 

「私も時間がある時に手伝うのはいいけど、モモイ……ちょっと話があるんだけど今度お時間いいかな? 貸したゲームのことについて」

 

「ひ、ひえ……。治安維持局送りだけは勘弁してセンナ先輩!」

 

 会議室が一気に騒がしくなる。

 その様子を見ていたケイは、しばらく黙っていた。

 

 そして。

 

「……楽しそうですね」

 

 きっとそれは、無意識だったのかもしれない。

 ケイの口元には、笑みが浮かんでいた。

 

「楽しいよ!」

 

 モモイが即答し、ミドリとユズ、アリスが頷いた。

 

「ゲーム開発部は大変だけど、楽しいんだよ!」

 

 ケイは少しだけ考える。自分はつい先ほどまで世界を滅ぼす使命を背負った存在だった。アリスも、自分もそんな運命から解放されたばかりだった。

 

 それなのに今は。そんなものとは無縁な道を歩もうとしている。

 いや、違う。――解放されたのも、その道を選んだのもきっと。

 

 

 

 自分達の、『感情』による選択なのだ。

 

 

 

「ゲームを作って、賞を取って、部活を守る。……なんだか普通の学生みたいですね」

 

「そうだよ!そしてケイも私達と同じなんだよ!」

 

 モモイに言われ、自分の中に感じるものがあった。それは、暖かい何かだ。

 自分も同じだ、そう言われて悪い気はしなくて。口にはしないが、とても嬉しかった。

 

 多分最初は、アリスに見てもらいたいという思いと嫉妬だった。だが、今は少し違う。

 

 アリスだけではない。この選んだ日常で、みんなと。そしてこれから先出会い縁が繋がる人々と紡いでいきたいと思ったのだ。

 

 悩むことも、立ち止まることもあるかもしれない。それでも、沢山笑ったり感動したり、日々の騒動に呆れたりすることもあるはずだ。

 

 そういったことを自分の感情で感じて、選んで、成長していく。

 

 

 ――それこそがきっと、『青春の物語(ブルーアーカイブ)』なのだろう。

 

 

 

 

 

 ほんの少し前までこの部屋には世界の終焉すら左右しかねない重大な秘密が並んでいた。

 だが今、騒がしく話している生徒達の議題は。

 

 

 ――どうやって成果を出すか。

 

 ――どうやってゲームを完成させるか。

 

 ――そして、どうやって廃部を回避するか。

 

 

 そんな、世界の命運を左右するものとは無縁のものだった。

 

 

 

 

「……先生」

 

 ヒナが小さく声をかける。

 

「何?」

 

「今日の話、世界の命運よりゲーム開発部の存続のほうが緊張感がない?」

 

「……私もそう思う」

 

「く、くくっ……いやはや、面白いですね」

 

 センナが面白おかしそうに笑っており、リオやネルも『やれやれ』と言ったようにしていたが、その視線は優しく、今激論を繰り広げているゲーム開発部、そししてそこに巻き込まれているケイへと向けられていた。

 

 

 

 

 こうして。

 

 世界を滅ぼす運命を、自らの意思と選択によって覆した二人と、その仲間達の次なる試練。

 ゲーム開発部にとっての最大の敵、それは。

 

 

 

 

 

 ――ミレニアムプライスだった。

 

 

 

 

 




 後半書いてるときに脳内で流れてたのは『Unwelcome School』。シリアスからいきなり切り替わる感じで流れてた。ブルアカはこうじゃなくっちゃなあ!お前もそう思うだろイマジナリー強欲ハム太郎と人間讃歌タイショーくん!

 へけっ……!そうなのだ!ドタバタな青春と日常がブルーアーカイブなのだ!ぼくは強欲だからヒナもケイもアリスもゲーム開発部もみんなの原作時空では見れていない青春をもっと見たいのだ!書くのだ!人間讃歌タイショーくんは向こうでずっと『万歳!万歳!万歳ァァアアアイ!』って叫んでるのだ!タイショーくんは勇者が大好きなのだ!

 ということで、これにて時計じかけの花のパヴァーヌの本編は終わりです。ここからはゲーム開発部inケイとミレニアムプライスの話へと続いて、そこからは後日談と閑話をちょっと長めに色々挟んでその後エデン条約編の予定。多分エデン条約編はかなり長くなります、何がとは言いませんがヒナとミレニアムが関わることになる。

 掻い摘んで言うとミレニアム最高戦力全員&トップがなんやかんやあって関わることになって巻き込まれていくという話です。ゲーム開発部は日常の象徴なのでほぼ関わらない。

 嵐の前の静けさ、とでも言いましょうか。それまではミレニアムという原作以上に頭アッパーな自治区の日常や、ヒナの友人関係やゲヘナやトリニティに関わる話をお楽しみ頂ければなと。

 それはそれとしてスーツ着たヒナちゃんはいいぞ……とてもいい……。
 トリニティ編が始まるまでには立ち絵とかは公開予定。

  ここまで結構飛ばしてきたので、日常編はちょっとゆっくり投稿していこうかなと。メタな話をすれば作者の現実世界がちょっと忙しくなって確保できる時間が減ってきた。もっと時間ください……書きたい日常編は山になっているのです……。  


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