「うわーん!やることが多い……多いです!」
「ね、ねぇケイ……?その、もっと慈悲とか、手心とか……」
「あると思ってるんですかモモイ!?アリス、疲れたなら休んでも……と言いたいですが今回は心を鬼にします!頑張って下さいアリス!」
再び『うわーん!』『ひええ……』と言いつつもそれぞれの作業を続けるアリスとモモイ。見れば、ミドリとユズもグロッキーになりながら、それぞれがタブレットで絵を書いていたり、疲れたようにプログラミングをしている姿がある。
「なあ……ヒナ、大丈夫なのかこれ?」
「……大丈夫よ、まだデスマーチ一歩手前だから」
「いや、駄目なやつだろそれ」
現在、ゲーム開発部は戦うべき最大の敵。ミレニアムプライスに対しての対抗策としてあるゲームを作成している。それが、ドット絵アクションRPG『テイルズ・サガ・クロニクル2』である。
レトロな作風をメインとしながら、王道的かつ常識に囚われない展開も盛り込み、コンセプトテーマは様々な仲間と出会い魔王を打ち倒すことから『絆、おぼえていますか』。
部の存続がかかっているということもあり、全員が必死の形相である。そしてそこには、新しい一人の生徒の姿がある。白いミレニアムの制服に身を包んであれやこれやとアリス達に叫んだり、忙しそうに書類を書いたりパソコンで何やら作業をしたりしているのは先日ミレニアムの生徒となった少女。ケイである。
彼女はゲーム開発部に加入した。理由としては、アリスが所属しているため一緒に居たいという気持ちからというのがひとつ。モモイ達と一緒に居て騒がしくも楽しい、と感じたのも一つだろう。色々理由はあるが、ケイは自分で加入届を書いてそれをセミナーへと出しに来た。
……実はその時もちょっとした騒動と言うか。学籍上は既に正式な生徒として扱われているものの、公開データベースにまだ名前が乗っていなかったケイがセミナーを訪れた後、その話を聞いた後プロフィールを見て『私の知らないこんなかわいい子が居る』と驚きつつも嬉しそうにするある生徒が居たのだ。後日、その少女と会うことをケイはまだ知らない。
さておき。
紆余曲折ありゲーム開発部の部員となったケイは、それからちょっとしたドタバタ劇と、歓迎会と称されるそれでアリスに勧められるまま"
要するに。テイルズ・サガ・クロニクル2を作るなら、前作と同じ轍を踏むわけにはいかない。そうならないために、徹底的にマネジメントを行いなんとしても結果を残す。そう心に決めたのだ。
「今のケイ、この前読んだゲーム雑誌に出てたプロデューサー兼ディレクターで他にも色々肩書がついてるあのすごい別の自治区の生徒みたいです!」
「ゲーム開発部に管理する担当が居ないのは予想外でしたよ……!アリス、あの雑誌の人くらいやらないと回らないんですよ……。 ん?ネルにヒナ?来ていたんですか」
なんとも言えなさそうな顔で入口に立っていた二人に気が居たケイは、そのまま2人へ歩いて来る。
現在、ゲーム開発部は部室には居ない。ミレニアムプライスの終わりまでかなり広い、開発用スタジオに私物などを持ち込んで活動している。
発端は、ゲーム開発部が廃部の危機にあると知った幾つかの部活動だった。モモイはよくトラブルの中心となり、トラブルメーカーに見られることもあるが交友関係は実はかなり広い。ヒナが局長を務めている治安維持局にも知り合いはいるし、結構な功績を残している部活動にも少なくない友人は居る。
ゲーム開発部が廃部ということについてリオから正式な通達されたのはつい最近であり、廃部対象の部活動についてリスト化されて公開されるわけでもない。だから、他の部活動はゲーム開発部が廃部対象だとは知らなかったのだ。しかし、つい。本当に愚痴のような感覚でモモイがとある部活動の友人に対して『今廃部の危機でねー……色々大変なんだよー……今度、ミレニアムプライスで新作を出す予定なんだけどね……』と零したのだ。
その波紋はすぐに広がった。ゲーム開発部の廃部危機、それを聞きつけて、廃部をなんとかすることはできないが協力させて欲しいと言ってくる部活動があったのだ。
『フルダイブVR研究会』、『模型部』、『古物研究会』、『近代料理研究部』、『モータースポーツ部』。他にも幾つかの部活動から協力や支援の申し出があった。流石のアリス達もこれには驚いており、当のモモイはといえば『えっ、みんなどうしたの!?』と言っていた。これだけの部活が協力を申し出てくれたのは大体モモイが元である。人望はとてもあるのだ。
そうしてVR研究会からは部長の『茅場』という少女が保有する開発スタジオのひとつを貸してくれると言われ、現在はそこを使ってテイルズ・サガ・クロニクル2の制作をしている。他の部活動からも色々と支援をしてもらったりしている。
……スタジオの一角には、『古物研究会』が古い遺跡から発掘したという、何処かの合理主義者が見たら大喜びしそうな、不可思議な。そう、例えるならアバンギャルドな像が設置されているが。曰く、古い地方で見つかったその土地の守り神の像なのだとか。
「大変そうね。はいこれ、差し入れ」
「ありがとうございます、ヒナ。これは、アソートクッキーですか?随分と凝ったものですが……何処かのお店で買ってきたんですか?気を遣ってもらわなくとも……」
「……手作りなのだけど。その、センナは料理が上手いから教えてもらっていて。上手く出来たから差し入れにと思って」
「これ手作りなんですか!?えっ……クオリティ高くないですか……」
それはキヴォトスで生徒としてまだ不慣れなことも多いケイから見てもとてもできの良いものだった。最近は雑誌なども読むようになったが、そこで掲載されている飲食店のメニューの写真と謙遜ないほどだ。
「味見したけどよ、滅茶苦茶美味かったぜ。今まで料理は……あー……そんな余裕なかったもんな」
「ええ、忙しくてそんな余裕もなくて。でも最近は時間が取れるから、やったことないことにも挑戦しているのだけど、料理って楽しいのね」
「もしかして最近モモックスに上がってた弁当の写真って」
「ああ、あれは私の手作りね。ユウカがどうしても上げようって言うから……」
「嘘だろあれ料理習い始めたばかりの奴の弁当かよ」
最近ミレニアム公式SNSに写真だけあげられている弁当の写真。リオにそんな自炊能力はないし、コユキにもない。となるとそれを作っているのはきっとユウカやノアだとネルは思っていたが今の話を聞いてもしかして、と思ったのだ。
もしや、実は今までゲヘナという環境で業務以外に時間を割くことがほぼ出来ず発覚しなかっただけで、この友人とんでもなく多才なのではと思う。自分なんて弁当を作るにしても好きなものを詰め込んだ、欲望に忠実な弁当しか作れないというのに、とネルは思いながら『これが女子力ってやつかぁ……』と呟いた。
「それからこれはエクレアとシュークリーム」
「嘘だろお前、というかそれ私試食してないぞ」
二回目である。
「よかったら食べて。……それで、私とネルを呼んだのはどうして?なにか問題発生?」
ヒナがスタジオ内を見渡せば、壁には『ミレニアムプライスまで後7日』などという手作りのカウントダウンカレンダーが貼られていたり、設置してある冷蔵庫の前にはヒナも見覚えのある。よくお世話になっているエナジードリンクが箱で山になっていたり、ホワイトボードには様々な意見やプロットのようなものが書かれており、そこに赤文字で注釈が入れられていたりしている。
開発は順調なのだろう。見る限り、たしかに忙しそうだが自分とネルを呼ぶような緊急事態でもないようだ。つまり、そういった自体とは別のことで呼ばれたと見るべきだろう。
「あ、ううん。実は……先輩達に頼みたいことがあって」
此方に歩いてきたのはモモイだ。今回の廃部騒動では何かと本人の知らぬところで大活躍している彼女。そしてどうやら、ケイが頭の上に疑問符を浮かべてどうして2人が突然来たのかを飲み込めていないところを見ると、呼んだのはモモイのようだった。
「モモイ?どういうことですか?」
「いやほら、真面目にやるのはいいんだけど……外からの意見とかも貰えたらなーって」
そうケイは言われて少し考えたようにしたが、すぐになにかに気がしたようだ。
ハッとなり、『もしかして……』と呟いた。
「モモイ、私やネルが出るような何かトラブルがあったわけではないのよね?」
「あ、全然!そんなことはないよ!倒れそうなくらい忙しいけど開発は順調で、もうマスターアップ手前までいってるよ!今はクオリティ向上とブラッシュアップしてるところなんだ」
「なんだよすごいじゃんか、なら尚の事私やヒナ呼んだ理由が謎だな……まあいいけどさ。私もヒナも今日は暇だったしな」
「……私、昨日暇だったから機動課の整備手伝おうと思ったらルーネにセンナ呼ばれて連行されたんだけど」
「だから今日非番なのかお前。休むのも仕事の内だぞ?」
「耳が痛いほど言われてるからわかってる。……一応は。 だから今日は朝から差し入れのお菓子作ってた」
「朝からいい思いさせてくれて感謝してるぜ?ははは」
ひとまず作業中のゲーム開発部の面々を呼んでヒナの差し入れとスタジオにあった飲み物などで休憩することとなった。ヒナとネルがアリス達から話を聞く限り、開発はやはり順調のようだ。失礼な言い方だが、やる気を出してモチベーションを保てばちゃんとやれるんじゃないかと関心したほどだ。
「ああー……甘いものが身体に染みます……ファイナルエリクサーですこれは!」
「ああもうアリス、口にクリームが付いてますよ。ちょっとじっとしていてください」
「あう……ついおいしくて気が付きませんでした、ありがとうございますケイ!」
こうして見ると完全に姉妹である。例えるなら、手のかかる姉を手助けしている妹といった感じだろうか。
一息ついたところで。モモイが改めてというようにして、ヒナとネルへとあるお願いを告げた。
「実は2人に来てもらったのはあるお願いがあって……」
「今作っているテイルズ・サガ・クロニクル2、そのテスト版をプレイしてみてほしいんだ!」
■ケイ
ケイ「えー、テイルズ・サガ・クロニクル2プロデューサー兼デュレクターのケイです」
近い未来TSC2プロデューサーレターライブというものをやることになる。
■ネル
自炊もできるし生活能力も高い。ただ、作る料理が先生やこの世界には居ないが男子生徒受けしそうなものが多い。弁当も手作りだが自分の食べたいものを作って詰め込んでいるような弁当。先生が見るとまず目を輝かせる。
メンタルも強くてオンオフ切り替えできてワンマンプレーじゃなくて協調性を大事にして実力的にもヒナと同格で生活能力も高い上にカリスマもあるとか無敵か?
■ヒナ
最近色々なことに挑戦しようとしている。ゲヘナ時代は食事はコンビニかカップ麺、インスタント、最悪エナドリで乗り切るという生活をしていたがミレニアムに来てからは朝以外の食事は自分でなんとかしている。朝と寝起きだけはどうしても駄目らしい。
料理を頑張ってみたいと思っていつもヒナから見てとてもおいしいそうな弁当を作ってきているセンナに料理を教えて欲しいと言った所テンション高めに了承された。気がついたら食事だけじゃなくお菓子なども作れるようになっていた。実はゲヘナ時代に交友のあったフウカとは今でも連絡を取り合っており、映像通話越しに料理も教えてもらっていた。
■あとがき
ところでぇ……ここに連邦生徒会のリンからある依頼を受けて小兎達と邂逅するヒナ局長の話があるんですけどぉ……。