『ミレニアム治安維持局局長』、空崎ヒナ   作:無名のカヤ推し

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EPISODE31:RABBIT小隊騒動編④ 『譲れぬ者同士の衝突/不自由な力』

 夜の子ウサギ公園に、重いエンジン音が響いていた。

 シャーレの車が道路脇に停まり、その少し後ろで大型バイクがゆっくりと速度を落とす。

 先に降りたのは、白い髪を夜風に揺らす少女だった。

 

 空崎ヒナ。

 

 そして、その後部座席から降りた小鳥遊ホシノが、大きく伸びをするように身体を動かした。

 

「うへぇ……夜のバイクは冷えるねぇ」

 

「……寒いなら言って。フェルに言って暖房だって強くできた」

 

「いやいや、大丈夫だよ。ヒナちゃんの運転、思ったより快適だったし」

 

「そう」

 

 ヒナは短く答えながら、公園へ視線を向けた。

 

 街灯の向こう。

 木々と遊具の陰。

 簡易バリケード。

 テント。

 

 そして、見えないところに配置された四人の気配。

 

 銃を構えている、それが分かる。

 

「……いるわね」

 

「うん」

 

 ホシノも同じ方向を見ている。

 その表情から、いつもの眠そうな雰囲気が僅かに消えていた。

 

 先生から頼まれたのは、RABBIT小隊の無力化。

 可能な限り負傷させない。

 殺傷を目的としない。

 

 それでも、相手はSRT。

 ただ近づけば降参してくれるような相手ではない。

 

「ヒナちゃん」

 

「なに?」

 

「無理はしないでね」

 

「……それはこっちの台詞」

 

 ヒナはそう言って、デストロイヤーを構えた。

 

 巨大な銃身。ミレニアムに来てからカスタムが施されたそれは、小柄なヒナではなくともかなり大きい部類に入る武器だった。

 

 その存在だけで、この場の空気が変わる。

 

 しかし。

 

 今夜のヒナは、いつものようにそれを最大限に使うことができない。

 それは、場所が公園だからだ。

 

 相手が四人というだけではない。周囲には道路があり、近隣には建物があり、遊具や樹木があり、そして何よりこの場所そのものが彼女たちの最後の居場所になっている。デストロイヤーの本来の火力を解放すれば、公園そのものを破壊しかねない。

 

 だから今回の射撃モードには制限が掛けられている。ミレニアムのエンジニア部によってその心臓部までは完全に手が伸びなかったが、バレルやグリップといった部分をよりヒナが扱いやすいように改良されているデストロイヤーは、現在2つの射撃モードを持っていた。本来のフルオートと、精度を重視したセミオートである。今回はセミオートだけを使用し、一発ずつ照準を合わせ、撃つ。

 

 連続射撃による制圧もできない。

 広範囲を薙ぎ払うこともできない。

 ましてや、破壊力を活かした面制圧など論外だった。

 

 それを踏まえれば、今回の戦闘環境は現在のヒナにとっては極めて不利だった。

 

 単騎戦闘が不得手な訳では無い。むしろ、彼女は近接能力もまたホシノに劣らないほどに高いものを持っている。だがヒナの得意とするのは、デストロイヤーの斉射やフェルのビークルモードやバトルモードによる重火力による制圧といった、機動力と制圧力をあわせた戦い方だ。その殆どを今回は運用することが難しい状況だった。

 

 目的は、RABBIT小隊全員の無力化と捕縛。公園の所有権はD.∪地区、つまり連邦生徒会であり過度な破壊行為は出来ない。むしろ、公園という場所は他の市民や生徒も利用する以上極力損害は出すわけにはいかない。

 

 よって、火力による制圧戦は不可能。今回ヒナが行使できるのは、セミオートのデストロイヤーと近接戦闘技術、そしてサポートフレームのフェルが展開する補助のみとなる。

 

 

 ヒナは銃を構えたまま、僅かに眉を寄せた。

 

 

 

 ――やりにくい。

 

 

 

 それが正直な感想だった。

 

 デストロイヤーは強い。強すぎる。だからこそ狭い場所や障害物の多い場所、市街地、人質や民間人がいる状況。そして、今回のように『相手を傷つけすぎず、周囲も壊してはいけない』状況では、持っている火力そのものが足枷になる。

 

 引き金を引くことはできる。けれど、撃っていい場所が少ない、撃てる角度が限られる、連射もできない。敵が物陰から一瞬だけ顔を出して撃ってくるような状況では、高火力なデストロイヤーよりも、小回りの利く武器の方が明らかに向いている。

 

 ヒナは公園の構造を見ながら、無意識に考えていた。

 

 やっぱり。

 

 こういう場所では別の武器が必要だ。もっと小さく。もっと速く構えられて。必要な時だけ確実に止められる武器。それこそ今まで自分が持っていなかった種類の武器。

 

 

 

 ――サブアームが必要。

 

 

 

 その考えが、戦闘を始める前から頭の片隅に浮かんでいた。

 

「ヒナちゃん?」

 

「……なんでもない」

 

 ヒナは視線を戻す。

 

「行きましょう」

 

「了解」

 

 ホシノが盾を構えた。

 

 巨大なバリスティックシールドが夜の街灯を受け、鈍く光る。

 その横でヒナがデストロイヤーを構える。

 

 そして。

 

 

「RABBIT小隊」

 

 ヒナの声が、公園へ響いた。

 

「私はミレニアム治安維持局局長、空崎ヒナ」

 

 返事はない。

 

「先生から、あなた達を無力化するよう依頼を受けている」

 

 木々の向こう。

 四人が息を潜めている。

 

「抵抗をやめるなら、こちらも必要以上の攻撃はしない」

 

 それでも返事はない。

 ヒナは小さく息を吐いた。

 

「……そう」

 

 その瞬間銃声が響いた。

 最初の一発が、ヒナの横を抜ける。

 

「始まったねぇ」

 

「ええ」

 

 ホシノが盾を前へ出す。

 次の瞬間、二発、三発と銃弾が飛んできたが、すべてホシノの盾に弾かれる。

 甲高い金属音が夜の公園へ連続して響き、ホシノの足元に火花が散った。

 

「おー、正面から撃ってきたよ」

 

「わかって言ってるでしょ、ホシノ」

 

 ヒナが即座に否定する。

 

「牽制」

 

 銃撃の間隔。

 方向。

 射線。

 

 そして。

 

「本命は右」

 

 ヒナが言った直後。

 公園右側の木陰から、別の銃声が響いた。

 

 ヒナは身体を僅かに傾ける。

 銃弾が髪を掠めるかどうかのギリギリな所を通り、後方へ飛んでいった。

 

「……狙撃」

 

「――うへ、すごいね。 ……例のミユちゃんかな」

 

「でしょうね。 ……なるほど、優秀な狙撃手ね」

 

「うーん、これ。尚更放置することはできないかな?」

 

 ヒナの目が細くなる。ホシノもまた、口元には笑みは浮かんでいても目は笑っていない。

 敵は自分たちの動きを見ている。

 しかも、二つの射線を使ってこちらの回避方向を制限している。

 

 そして今の接敵でわかったことがあり、ヒナとホシノは内心で霞沢ミユという相手に対しての評価と警戒を一段階あげた。

 

 今の狙撃はヒナやホシノといったレベルだからこそ対応できた。他の生徒なら、ほぼ頭を撃ち抜かれていただろう。

 

 2人がミユに対しての評価と警戒を変更したのは、その正確無比な狙撃だけではない。

 正確な位置が掴めなかったのだ。ヒナとホシノがである。

 

 公園の地形、周辺の地図、環境。狙撃位置として利用される場所については事前に目星をつけていた。そしてそれだけあたりをつければ、2人は現場に行った時点でそれぞれの直感やセンスで狙撃手の場所を特定できる。……だが、今回はそれが正確ではなかった。

 

 ぼやけた霧がかかっているように不明確。はっきりとした位置が特定できない。そしてそれは、狙撃手にとっては合格点だ。ましてや、この2人相手にそれができるのは合格どころではない。超一流の、キヴォトス内でもトップクラスの狙撃手と言っても過言ではない。

 

 もっとも。ミユとしてはそんな自覚もなければ自惚れもないのだが。むしろ彼女は自己評価や肯定感が低く、『自分などなにかしなければ誰にも気がついてもらえない』と思っているほどだ。この瞬間、キヴォトスでもトップクラスの戦力である二人の中では霞沢ミユという存在は絶対に忘れることはない存在に変わっていることも、当然本人は知る由もない。

 

 

「ホシノ」

 

「うん」

 

「私が狙撃位置を探す、あの子は厄介」

 

「じゃあ、おじさんは前を押さえるねぇ。ミユちゃんと後方支援、任せるよ」

 

 ホシノが一歩踏み出す。

 その瞬間公園の奥から何かが投げ込まれた。

 

 直後、爆発が起きた。

 地面が震える。

 土と木片が飛び散る。

 

 だが、ホシノは動じなかった。

 真っ先に前に出て状況を確認。

 そして盾を構えたまま前進する。

 

「モエちゃんかな」

 

「ええ」

 

「派手だねぇ」

 

「……でも、狙いは私たちを分断すること」

 

 ヒナは爆煙の向こうを見る。

 四人は最初から役割を分けている。

 

 ミヤコが指揮。

 サキが前衛。

 モエが爆発物による牽制と制圧。

 ミユが狙撃。

 

 典型的な小規模戦術だ。

 

 それだけなら対応できる。

 

 問題は。

 

「……連携が速い」

 

 ヒナが呟いた。

 

 四人は互いの位置を正確に把握している。

 一人が撃てば別の一人が動く。

 爆発で視界を遮れば狙撃が来る。

 狙撃を避ければ別方向から射撃が飛んでくる。

 こちらが前へでれば、罠が起動する。

 

 それでも。

 

「ホシノ」

 

「ん?」

 

「少し前へ」

 

「了解」

 

 ホシノは盾を構えたまま走り出した。

 銃弾が雨のように降り注ぐ。

 盾に次々と命中する。

 それでもホシノは止まらない。

 身体を低くし、盾の裏からショットガンを突き出した。

 

 轟音。

 散弾が地面を叩き、木陰のバリケードを吹き飛ばす。

 

「――っ!」

 

 サキが飛び退く。

 

「そこ」

 

 ホシノが踏み込んだ。

 しかしサキは即座に反撃する。

 至近距離からの連射。

 ホシノは盾を傾け、弾道を逸らした。

 

「へぇ」

 

 その顔に僅かな笑みが浮かぶ。

 

「ちゃんと訓練されてるねぇ」

 

 サキが歯を食いしばる。

 

「余裕を……!」

 

 再び発砲。

 ホシノは盾で受ける。

 

 だが次の瞬間。

 横からモエの爆発物が飛んできた。

 

「ホシノ!」

 

「分かってる!」

 

 ホシノは盾を地面へ叩きつけるように構えた。

 

 爆発。

 轟音。

 煙。

 

 視界が一瞬で白く染まる。

 RABBIT小隊にとっては絶好の機会だった。

 

「今!」

 

 ミヤコの声が響く。

 四方向から一斉射撃。

 煙の中へ弾丸が集中する。

 

 だが。

 煙が晴れた時そこにはホシノが立っていた。

 盾は無傷、そして本人も制服に埃が付いているくらいだった。

 

 強いて言うなら。

 まるでRABBIT小隊に対する評価を上方修正したような笑みが印象的だった。

 

「……嘘」

 

 モエが呟いた。

 

「効いてないの?」

 

「効いてるよ。うん、すごく効いたね今のは。 うへー……いやー今のは中々だったねえ」

 

「さて。じゃあ次は――」

 

 その言葉と同時に。

 ホシノが走った。

 

「速っ――」

 

「おじさんの番だね」

 

 サキが叫ぶ。

 盾を持っているとは思えない速度だった。

 

 後退する。だが、ホシノは距離を詰める。

 

 ショットガンによる発砲。早すぎるホシノの動作に対して対処しきれていない頭でサキはそれを無理矢理といっていい動きで対処する。

 

 横へ飛ぶ。その瞬間、ホシノが盾で地面を叩く。途方もない衝撃と振動、それと同時にホシノは盾を持っていた左手にハンドガンを構えた。

 

 サキの判断は咄嗟だったとしても間違いではない。咄嗟に出た教本通りの動き方。それは、本人の努力によって身体に染み付いたものなのだろう。だが、今回はそれが仇となった。ホシノのシールドによる地面の強打、それにより発生した衝撃と音、飛び散った砂などによって先ほどとは打って変わり今度はサキの動きと視界が鈍る。そして、その状況に対して展開が早すぎることもあり他のRABBIT小隊の面々は援護できない。

 

 短い発砲音。

 サキの銃が弾き飛ばされる。

 

「な――」

 

「ごめんね」

 

 ホシノが踏み込む。

 

 サキが反射的に格闘へ移行する。

 だが身体能力の差が明確だった。

 

 サキが攻撃する。

 ホシノが受ける。

 

 返す。

 サキが避ける。

 

 しかし二撃目――その腕を掴まれた。

 

「はい、終わり」

 

「まだ――!」

 

 サキが抵抗するが、ホシノが腕へと力を込める。

 次の瞬間、そのままサキは地面へと叩きつけられると同時、意識を奪われた。

 

「サキ!」

 

 ミヤコが叫ぶ。

 だがその声に反応した瞬間。ヒナの銃声が響いた。

 一発。ミヤコの足元で地面が弾ける。

 

「……!」

 

「警告よ」

 

 遠くからヒナが言った。

 

「次は当てる」

 

 ミヤコは息を呑んだ。

 ヒナはデストロイヤーを構えている。その銃口は正確にミヤコを捉えていた。

 

 だがヒナは撃たない。

 代わりに、別方向へ一発。

 

 ミユの狙撃位置近くの地面が弾ける。

 

「……やっと捕まえた。そこね」

 

 ミユの身体が固まった。

 

 どうして。自分は完全に隠れていたはずだった。

 射線も切っている。

 光も反射しないようにしている。

 

 それなのに。

 

「そんな……」

 

 ミユの狙撃は完璧だった。言うならば、相手が悪かったとしか言いようがない。射線からの狙撃位置の発覚の防止、一切の痕跡を残さずの狙撃地点の移動。まさに変幻自在でどこにいるかがまずわからない、狙撃手としての理想形。しかし、相手はただの生徒ではない。只々、相手が悪かったのだ。

 

「ミユちゃん」

 

 ホシノが倒れたサキを見ながら声を上げる。

 

「そこから動いた方がいいよ」

 

「……!」

 

 ミユが移動する。

 

 しかしその先にはヒナがいた。

 

「……っ」

 

 ミユが急停止する。

 逃げ道がない。

 

 ヒナは銃口を向けたまま言う。

 

「降参して」

 

「……できません」

 

「そう」

 

 ヒナは僅かに目を伏せる。

 

「なら」

 

 発砲。弾丸はミユの足元へ着弾した。

 ミユは反射的に後ろへ下がる。

 

 その瞬間。

 

 背後からホシノが現れた。

 

「捕まえた」

 

「――っ!」

 

 ミユが振り向く。

 

 しかし遅い。

 ホシノの盾が銃身を押さえ、サキと同じように後頭部を強打されて意識だけを奪われる。

 

 ミユの銃が落ちた。

 

「ごめんね」

 

 

「ミユ!」

 

 ミヤコの声が響く。

 残っているのはミヤコとモエ。

 

 二人。

 

 それでも。

 

 RABBIT小隊は諦めない。

 

「モエ!」

 

「分かってる!」

 

 モエが爆薬を取り出す。

 しかし。

 

「させない」

 

 ヒナの声。

 モエの手が止まった。

 

 一切の感情が感じられない鋭い視線。そして、向けられているデストロイヤーの銃口。

 

「それ以上は使わないで」

 

「……!」

 

「ここは公園よ」

 

 ヒナの目が鋭くなる。

 

「あなたがこれ以上爆発物を使えば、私も手加減できなくなる」

 

 モエは歯を食いしばった。

 

「だったら!」

 

 別の投擲武器、極力爆発を伴わず、副次効果の音や閃光といった衝撃によって相手を無力化するそれを投げる。

 

 ヒナが一歩下がる。

 

 爆発。

 土煙。

 

 モエが走る。

 

 その狙いはヒナではない。

 ホシノだった。

 

「……なるほど」

 

 ヒナが理解する。

 モエはホシノからミユを奪い返そうとしている。 

 狙いは、ミユの奪還と撤退だろう。

 

 だが。

 

「ホシノ」

 

「はいはい」

 

 ホシノが盾を構える。

 再び投げられた投擲物の爆発を真正面から受け止める。

 

 そして、防いだ直後にヒナがモエの進路を数発の射撃によって完全に塞ぎ、ホシノが加速する。

 

 ――盾。

 

 退路も塞ぐ。

 モエは完全に包囲されていた。

 

「……くそっ!」

 

 それでもモエは銃を構える。

 

「まだ終わってない!」

 

 その瞬間。

 背後から声がした。

 

「終わりよ」

 

 ヒナ。

 モエが振り返る。

 

 銃口。

 距離。

 

 ――逃げられない。

 

 だがヒナは撃たなかった。

 

「降参して」

 

「……嫌だ」

 

「そう」

 

 ヒナは一瞬だけ目を閉じる。

 そして。

 

 デストロイヤーの銃口を少し下げた。

 

「なら、止める」

 

 発砲。

 弾丸はモエの銃を弾き飛ばした。

 

 同時にホシノが踏み込む。

 モエの身体が押さえ込まれる。

 

 後は同じだった。ホシノによって意識だけを奪われて、拘束。更には残っていた爆発物までも全て回収される。

 

「モエ!」

 

 ミヤコが叫ぶ。

 

 しかしもう三人が止められた。残るのはミヤコ一人。

 公園の中央でミヤコは銃を握っていたが、その手は震えている。

 

 目の前にはヒナ。

 その横にホシノ。

 

 そして。

 少し離れたところに、倒れた三人。

 

「……」

 

 ミヤコは四人を見た。

 

 サキ。

 モエ。

 ミユ。

 

 誰も大きな怪我はしていない。けれど戦闘能力を完全に奪われている。

 

 たった二人。それも自分たちと同じ生徒。

 なのにまるで最初から勝負になっていなかった。

 

 ミヤコは歯を食いしばる。

 

「……これが」

 

 声が震えた。

 

「これが……SRTを相手にする人たち……SRTが、想定しなければならない相手……」

 

 ヒナは答えない。

 ただ銃を構えている。

 

 ミヤコは撃った。

 

 一発。

 二発。

 三発。

 

 

 SRTで習った全てを使う。だがヒナはそれを上回る。

 

 ミヤコが左へ移ればヒナは先回りする。右へ逃げればホシノが盾で塞ぐ。上へ逃げれば射線を作られる。後ろへ下がれば公園の外へ追い込まれる。

 

 完全に読まれている。

 

「……どうして」

 

 ミヤコが呟く。

 

「どうして……私たちの動きが分かるんですか……!」

 

 ヒナは静かに答えた。

 

「あなた達が優秀だからよ」

 

「……!」

 

「だから、予測できる」

 

 その言葉は決して侮辱ではなかった。

 

「訓練された人間が、どう動くか」

 

 ヒナは一歩進む。

 

「何を守ろうとするか」

 

 もう一歩。

 

「仲間を守るために、どこへ移動するか」

 

 ミヤコが後退する。

 

「そういうことを考えているだけ」

 

 そして。

 

「だから、あなた達のことを馬鹿にしているわけじゃない」

 

 ヒナは銃を下ろした。

 

「むしろ逆」

 

「……」

 

「強いと思っている」

 

 ミヤコの瞳が揺れた。

 

「だからこれ以上、無理をしないで」

 

 ミヤコは首を振る。

 

「……できません」

 

「どうして」

 

「私たちは……」

 

 ミヤコは倒れている三人を見る。

 

「RABBIT小隊です」

 

「うん」

 

「SRTです」

 

「ええ」

 

「だから……」

 

 銃を握り直す。

 

「まだ終われません」

 

 ヒナは黙った。

 その言葉を聞いて胸の奥が重くなる。

 

 この子達は本当に最後まで戦うつもりなのだ。

 

 手元のデストロイヤーを見る。巨大な銃。圧倒的な火力。でも今の状況ではそれを十分に活かせない。

 

 公園を壊すわけにはいかない。ミヤコを最大火力で撃ち抜くわけにもいかない。

 遮蔽物の向こうへ逃げ込まれれば、連射できないことが響く。

 

 狭い。

 動きにくい。

 撃てる場所が少ない。

 

 ヒナは思った。

 

 ――やっぱり。

 

 必要だ。こういう状況で使えるもっと小さくて。素早く構えられて。確実に相手を止められる必要以上に破壊しないものが。

 

 それでも相手が強ければきちんと対応できる。そんな――

 

「……サブアーム」

 

 ヒナの口から、無意識に言葉が漏れた。

 

「え?」

 

 ホシノが振り返る。

 

「……なんでもない」

 

 ヒナは再びミヤコを見る。

 

 今はこの戦いを終わらせる。

 それだけだ。

 

「月雪ミヤコ」

 

「……はい」

 

「最後に一度だけ聞く」

 

 ヒナは銃を構え直した。

 

「降参して」

 

 

 ミヤコとて、状況が見えないわけではない。既に残ったのは自分だけ、相手は明らかに格が違いすぎる相手。それも二人だ。そんな状況から全てを打開する方法など、自分は持ち合わせていないことなど冷静になればわかる。

 

 ――いや、きっと。

 

 最初からわかっていたのかもしれない。

 それでも。『守りたいもの』があるから、引きたくなどなかった。

 

 

 ミヤコは自分の頭を冷静にして、状況を冷静に見て、長い沈黙の後。

 ゆっくりと銃を下ろした。

 

「……分かりました」

 

 ヒナが息を吐く。

 だが。

 

「でも」

 

 ミヤコは顔を上げる。

 

「私たちは……SRTを諦めません」

 

 ヒナはその言葉を聞いて。

 

「……分かってる」

 

 とだけ答えた。

 

 その瞬間ミヤコの身体から力が抜ける。

 ホシノが駆け寄り、倒れないように支えた。

 

「これで終わりだね」

 

「……はい」

 

 ホシノはミヤコを支えながら、少しだけ周囲を見る。

 

 サキ。

 ミユ。

 モエ。

 そしてミヤコ。

 

 四人とも無力化されている。

 公園には大きな破壊こそない。

 

 多少の土煙と、壊れたバリケード。

 

 いくつかの傷跡。

 それだけだった。

 

 ヒナはデストロイヤーを下ろすとほんの少しだけ。

 疲れたように息を吐いた。

 




 相手を傷つけず無力化したり、対象だけを狙えたり、相手によっては出力を上げて対応できる携帯可能な『治安維持と秩序のため』のそんな強欲よくばりセットの武器が欲しいよな、お前もそう思うだろイマジナリー強欲ハム太郎!

 へけっ……そうなのだ!更に言うならミレニアムの制服やスーツタイプの制服にも似合う武器がいいのだ!ミレニアムらしい最新技術満載でなおかつ変形したりするロマンがあるととてもいいのだ!きっとエンジニア部もといウタハに言えば全才能をフル稼働して作ってくれるのだ!ぼくは強欲なのだ!……なんかそんな武器がミレニアムみたいな未来都市が舞台の作品にあった気がするのだ!システム自体はきっとウタハと優秀な協力者数名が完全監修するから変なバイオコンピューターとかは存在しないし大丈夫なのだ!

 後はお知らせですが、RABBIT小隊騒動編が終わったらちょっと投稿頻度をゆっくり気味にします。ヒナ、センナ、ルーネの立ち絵は数話以内に上げる予定。色々と多忙で時間確保が厳しくなってきた。時間をくれ。


■ヒナとホシノからのRABBIT小隊各位への評価

「……実は治安維持局って局員数はいるし予算や装備、資材はあるけれど手は足りないのよね」

「うへぇー……でもちゃんと休まなきゃだよ?ところで、そのうちおじさんが手が足りないからって呼ばれたりしない?大丈夫?」

「……あ。盲点だったわ。アビドスと協定を結んだらホシノを呼べるわね。大丈夫、ちゃんと給料は払うし消耗品もこっち持ちよ。逃さないからホシノ」

「う、うへぇ!?墓穴掘ったぁ!おじさんを社畜にする気満々だよねヒナちゃん!?」
 
 こんな会話があったとか、なかったとか。

・ミヤコ
優秀。指揮官適性があり、前衛にも出れるしドローンを戦術的運用もできる。
【評価】
ホシノ:うーん、まだ色々甘いけど将来化けるねえ絶対
ヒナ:作戦立案に指揮、犯罪対応だけじゃなく災害現場、一般警邏でも優秀ね。欲しい。

・サキ
優秀。融通がきかないのは改善点だが、規範を厳守するのはとても素晴らしい。
【評価】
ホシノ:ポイントマンに加えてレンジャー適性?うへぇー……すごいねえ
ヒナ:規則の厳守は組織として重要。加えてその才能は幅広い現場で役に立つわ。欲しい。

・モエ
優秀。爆発物取り扱いに工学知識に兵器運用に兵站管理、ミレニアムとの相性も良さそう。
【評価】
ホシノ:おじさん、一瞬アヤネちゃんとモエちゃんが組んだらって考えて怖くなったよ
ヒナ:装備課や機動課が目の色を変えそうね。それくらいには優秀よ。欲しい。

・ミユ
優秀。狙撃、諜報、観測、警護、捜索のどれをとっても文句が出ない。特に隠密能力はヒナやホシノレベルか余程の感知素質がないと見破れないため規格外。
【評価】
ホシノ:隠れるのが上手だよねえ、おじさん最初どこに居るかわからなかったよ。
ヒナ:隠密能力には目を見張るし、その素質は本当にいろいろな場所で活かせるわ。欲しい。


・総評

リオ:結果的にSRTを、あの子達をいらないと言ったのは連邦生徒会よ。優秀な人材はミレニアムとしては欲しいし歓迎よ

ユウカ:……かわいい。しかも優秀? ――欲しい。も、もちろんミレニアムとしてよ!?


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