ミレニアムサイエンススクール所属、治安維持局局長空崎ヒナ。彼女の名声は、転校した後今まで以上に大きくなっていた。それは、ゲヘナに居た頃のようなすり減って限界が近かったコンディションではなく、万全の状態かつミレニアムの技術力によって強化された彼女の武装なども関係しているが、抑止力としての存在。それだけではなく別の方面でも大きく騒がれていた。
ミレニアムには、謂わばクロノスの自治区版とでも言うべきか。自治区のことを発信する広報部や新聞部というものが存在している。そして、これらの部活はセミナーの紐付き。つまり公認でもあるのだ。
自治区として行うべきことの一つに、生徒の確保がある。そうして、生徒を確保するためにはミレニアムへの移住やミレニアムサイエンススクールへの入学希望者を増やさなければならない。このキヴォトスにおいては、単純な自治区としての力だけではなく生徒数イコールその自治区の力や大きさ、とも言われることもあって生徒数というのは重要な要素の一つである。
だからこそセミナー、といっても発案者はユウカとノアなのだが。自治区のことやセミナーの日常のこと、そうして。セミナー直下の各機関の風景について発信していくべきだという提案をし、話し合いをして詰めに詰めた上でリオがそれを承認した。
さて。ミレニアムという自治区はこのキヴォトスにおいて、最も技術力が発達した自治区である。だからというべきか、新聞部や広報部の情報発信には情報媒体も使用される。つまるところ、モモッターやモモトークなどである。モモッターは最近改名してモモックスになったが。
このモモックスで発信される情報は、キヴォトス全土の住民が目にするものである。そうして、それを利用して発信されるのはミレニアムという日常風景である。また、こういった情報発信とはなにも部活動だけが行うわけではない。ミレニアムに所属している各生徒も行うのだ。
そんなモモックスで最近、現在話題の人となっているヒナがある話題で盛り上がったことがあった。
それが、『#局長の日常』とハッシュタグが打たれたものである。
投稿されていたのは、様々な写真である。
それらは、それを見た多くのものを魅了し。かつて交友のあった、今は別の学区の生徒には興奮のあまり鼻血を出してよくわからない動作をしていたり。かつて立場上では政敵だったお嬢様校のトップの生徒はまるで背景が宇宙の猫のようになっていたりした。
ミレニアムのエンジニア部のとある生徒が作った衣装で着せ替え人形にされ、本人は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしている写真。『私はまた過度な残業をしました』というプラカードを首に下げながら、セミナーの一員であるユウカの膝の上に座り、髪をブラッシングされている写真。セミナールームでジャイアントウェーブキャットぬいぐるみを抱き枕代わりにして気持ちよさそうに寝ている写真。私服姿で同じように私服のセンナと共にカフェでケーキを食べながらカメラに向かって笑顔とピースサインを送る写真。ヒナと同じく名高い美甘ネルと共に、対戦ゲームに興じたり、セミナーのユウカとノア、そしてそこにネルやセンナを加えてボードゲームに興じる写真などなどである。
結論から言えば、この情報発信は大成功だったと言える。
SNS上での反応は様々だったが、特に多かったのがヒナに対しての印象が変わったというものだ。ゲヘナでの風紀委員長の頃より、空崎ヒナとは完璧超人にして常に真面目の堅物で怖いというイメージがあった。そうして、現場においては絶対的な力の象徴として畏怖される傾向が強かった。
それが今回の取組で変わった。発信された『生徒として』の日常風景の空崎ヒナ。そこに居たのは、どこにでも居るような。付け加えるなら、可愛いと思うようなものだった。
……中には。
『ヒナチャン!ヒナチャン!ヒナチャン!ヒナチャンうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!ヒナチャン!ヒナチャン!ぅううぁわぁああああ!!!あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!んはぁっ!ヒナたんの白髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!』
『ヒナ局長を吸うことで今は効かないが、そのうち不老不死に至る効能になる』
『お菓子好きかい?』
『ティンときた!ヒナ局長、バンドかアイドルをやろう!』
などなど……と。少々おかしな書き込みもあったが、概ね印象変化としては成功している。結果として、この情報発信の活動と話題になったヒナの日常風景の写真のおかげでミレニアムへと興味を持つ者は増えた。実際のこととして、ゲヘナ時代の印象が強すぎてミレニアムの治安維持関係の部署を志そうとしても躊躇してしまうという生徒も居たのだが、今回のことでそれもなくなった。
そんな騒ぎがあった後。話題の時の人。空崎ヒナの日常にはちょっとした変化が訪れていた。
◆ ◆ ◆
「ヒナちゃん先輩!これお菓子の差し入れです、みんなで食べて下さい!」
「私も差し入れです!あの、一緒に写真撮って下さい!」
「ヒナちゃん先輩吸わせて下さ……な、なにをする貴様らーッ!」
「治安維持局だ!こいつをミレニアム式デュエルで拘束しろ!」
「言っておくが私はレアだぜ……?あっまってドナドナはやめて――」
治安維持局としての業務には、自治区の巡回も含まれている。緊急の案件はないため、制服姿で副局長であるセンナと共に町中を歩いて巡回していれば、結構な頻度でミレニアムの生徒から声をかけられる。正直ヒナとしては戸惑っていた、ゲヘナの頃にはこういうことはあまりなかったし、最近までもそうだったからだ。
急によく話しかけられたりするようになったのは、ミレニアムの広報関係の部活動が活動の一環として自分やセミナー、その関係機関の日常風景の写真をSNSで発信し始めた頃からだろか。別に嫌なわけではないのだが、正直対応に戸惑っているのが実情である。
「あっはは!大人気ですね局長」
「……みんなよくわからないわね。私、そんなにかわいいわけでもないと思うのに。センナのほうがよっぽどかわいいし人気がありそうだけれど」
「正気で言ってます?」
元々、空崎ヒナとは自己肯定感が低い。だからとでも言うべきか、周囲から褒められたりするのにあまり慣れていないし、周囲からの評価をそのとおりに受け取ることも出来ない。ミレニアムに転入してから、業務や生活の環境がだいぶマシになったためそれも多少よくはなっているが、それでも自己肯定感はかなり低い方なのだ。
「はぁ……これは、一度局長に
「センナ?えっと、どうしたの?いきなり立ち止まってそんな真剣な表情をして……」
ここまで自己肯定感が低く、周囲から見ての素晴らしさがわからないならば理解らせるしかないだろう。そう、きっとそれも副局長としての務めだ。そう悪ノリ感覚でセンナは心に決めると、足を止めて隣のヒナを、身長差で見下ろす形になるが真剣な眼で見る。
「いいですか、局長はかわいいんです。それも、超かわいいんです。かわいいは全世界共通であり、かわいいは世界を救うんですよ。つまり、局長はその存在だけで世界を救っているんです」
「い、いきなりどうしたの。え、周囲の生徒達も真剣な顔で頷いているけれどなんで……と、というかここ街中!」
「まずそのギャップがかわいい。業務中はクールで真面目、治安維持局の局長としての威厳があって格好いいのにオフではよく笑って遊んでいたり、気持ちよさそうにお昼寝したりしているのが最高に可愛い!寝起きのふにゃふにゃした感じの局長なんて、あれはもう条約で禁止されるレベルの破壊力ですよ!?」
「ち、ちょっ……何言って!や、やめっ――」
時として、副局長として。局長の片腕として心を鬼にしなければならないこともあるのだ。そうセンナは自らに言い聞かせ――実際にはノリに乗っていきながら続けていく。ここは街中であり、周囲にはヒナのファンの生徒だらけである。
「セミナーの資料室で高いところの資料に一生懸命手を伸ばしても足をプルプルさせるだけで届かなくて、両脇からユウカに抱えてもらって資料を取るのもかわいい!ユウカに取らせずに自分で取ろうとするのもポイントが高い!」
「寝起きでぼんやりしていて、そのままユウカとノアにお世話してもらいながら頭を撫でられていたりするのもあれはヤバかったですね……!後は、お昼寝から起きてそのまま寝ぼけたままそこに居たリオ会長に抱きついて甘えに甘えた挙句、膝枕してもらってまた寝ている姿も。おっと……周囲の諸君、残念だけれどその写真は渡せないな。ミレニアム上層部としての企業秘密というヤツさ」
周囲からは極めて大きなブーイング。対してヒナはあの時の様子を撮られていたのかと顔を真っ赤にしてあわあわとしている。
「その小さな身体であの強さを持ち、今やミレニアムにおける法と秩序の番人と呼ばれているのもポイントが高い!小さい局長がドデカイ破壊力抜群のデストロイヤーを自在に振り回したり、あの超大型二輪ビークルであるフェルニルを駆る姿、これだけでも人気ポイントです!実はかわいいものが大好きで、最近はモモフレンズのウェーブキャットが大好きなことも知ってますよいいですよねモモフレンズ!ウェーブキャットもいいですが私の推しはスカルマンです!」
「そ、それはウェーブキャットは好きだけれど……かわいいし……でも、スカルマンもかわいいわよね」
「かーっ!聞きましたか諸君!もう今の言葉だけで医療室行きが何人か出ますよ!? ……おや、実際に出ているようですね。さて、局長。残念ですが我々は現在巡回中、局長のかわいさを語るには今のではまだ表層も語れていませんがこれくらいにしておきましょう。 ――それでは最後に、周囲の諸君!ヒナ局長はー?」
『可愛いー!』とまるでライブのコールのようにその一帯に木霊する生徒達の声。対してヒナはといえば、プルプルと震えながら俯き顔を真っ赤にしており、『センナ……帰ったら……お説教……!』となんとか言葉にしていた。
こんなドタバタ劇もある。それが、今の彼女。空崎ヒナの日常なのである。
そうして。暫くした後日、ある展開が外からもたらされる。
ある日ヒナへと来た連絡。それは――シャーレの先生からのもので。
アビドスでの案件を手伝って欲しい、というものだった。
バイク乗ってるヒナちゃんのイメージは某崩壊なサードの理の律者ことブローニャ。脳内名称は臨戦ヒナ。バイク乗りながらデストロイヤーぶっ放して機体からはマイクロミサイルやらホーミングレーザーをばら撒く。臨戦ヒマリが乗ってたアレがベースなのでホバーもする。ミレニアムの犯罪者や不良は逃げようとするとこれに追いかけられてます。
本作ヒナちゃんは、何よりも大切にしているのが自分と自治区の日常であり、それを守るために局長を務めているので本編時空最新のあんなことにはなりません。イオリのあの台詞は本当に痺れた、かわいくて格好良くて足を舐めさせてくれて声がいいとか最強では?君もミレニアムに来る?え?イオリまで消えたらゲヘナがガチで崩壊するって?
さておいて、ヒナ局長は大絶賛日常を謳歌しています。仕事をしすぎると怖い後輩や友人が飛んでくる。時間的な余裕もできたので最近は娯楽的なものにも手を出しています、モモフレンズに興味を持ったのはその産物。巨大ウェーブキャットぬいぐるみを抱き枕にしてお昼寝するのが好き。休みは愛車の整備や洗車をしたり、ユウカとノアに連行されてお出かけしたりしたり、こっそりとヴェリタスのハレにエナドリを分けて貰いに行っている。なお、ユウカにバレると数本残して大半が没収される。
次回あたりからアビドス編に介入。
本作ではホシノと交友があるヒナ局長ですが、さてさて……。
なお、作者は現在パヴァーヌ編を書いています。ゲーム開発部とヒナ局長……いいよね、いい……。
お盆休みっていいですよね……お盆中にパヴァーヌまで行けたらいいなと思っている所存。