第四魔法使いのヒーローアカデミア 作:ネル
本日は雄英体育祭。
雄英高校の内外を警備のヒーローが固めるなか、スピーカーが一斉に沈黙を破りプレゼント・マイクの雄英全体に行き渡るような大声がスピーカーから響く。
「群がれマスメディア!今年もお前らが大好きな高校生たちの青春暴れ馬……。
雄英体育祭が始まディエビバディ、アァユウレディ!?!?」
入場口が開くと雄英高校の敷地内にある大きなドームに大量の観客が雪崩れ込む。
体育祭はヴィランの襲撃もあったので中止やむなしの意見もあったそうだが警備を10倍にしての開催だ。
出店も出て下手な祭りよりも人がいる大規模体育祭、人の入りはヴィランの襲撃があったのにも関わらず例年並、いやそれ以上。
もう既に多くの観客やスカウト目当てのプロヒーローが多数詰めかけている。
観客たちは楽しそうだが自分たちは出場選手であり見物に回ることは出来ない。無念。
もうすぐ入場の時間で体育祭に参加する生徒は各自体操服に着替えスタジアム内のクラス控え室に行くようにと指示があった。
誰もが気合いはバッチリ、各自開始を待っている。
「皆準備はできているか!?もうじき入場だ!!」
飯田が張り切って声掛けをしているが、全員とっくに準備は終わっているので誰も反応しない。
安定の空回り具合。ほっこりしますね。
皆思い思いの方法で過ごしている中、轟が緊張でガチガチになっている緑谷に近づいていった。
「珍しい組み合わせだね」
「接点はなかった筈ですがどうしたのでしょうか」
珍しい組み合わせに、皆各々で話しながらチラチラと様子を伺う。
緑谷と轟にはマトモな交流はなかったはずだ。
そもそも轟はクラスメイトとは距離をとるタイプだったので轟が誰かに話しかけること自体が珍しい。
「緑谷」
「轟くん……何?」
「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」
緑谷は個性把握テストでもビリ、対して轟は2位。
轟の言葉は当然のことでこれに議論の余地はない。
実際、緑谷は超パワー個性を使うたびに軽くても骨折の重傷、対する轟は自由自在にビル丸ごと凍らせるほどの氷を自由に操る。
今のところ轟が圧倒的に上で比較対象にすらならない。
「おまえ、オールマイトに目ぇかけられてるよな。別にそこ詮索するつもりはねぇが……お前には勝つぞ」
「おお!?クラス最強が宣戦布告!?」
「急にケンカ腰でどうした!?直前にやめろって……」
「仲良しごっこじゃねぇんだ。何だって良いだろ」
これは轟が正しい。同じクラスだから味方になる訳ではない。むしろ手の内を知られている分、厄介な敵だ。
「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのか…は、わかんないけど…そりゃ、君の方が上だよ…実力なんて、大半の人に敵わないと思う……客観的に見ても…」
「緑谷もそーゆーネガティブな事言わねぇ方が…」
「でも…!皆…他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。
僕だって…後れをとるわけには、いかないんだ、僕も本気で、獲りに行く!」
緑谷は体育祭には本気で行くようで、少し前のガチガチになっていた時とは全く違う覚悟の決まった顔で返事をした。
面倒な事になった、緑谷は怪我のことを考えなければ一発逆転もありうる個性なので本気で来るなら警戒しなくてはいけない。
轟め、本当に余計なことしやがった。寝た子を起こすにも程がある。今から睡眠薬ぶち込んだら寝直さない?
寝るならキロ単位でぶち込むよ?過剰摂取で永眠?知らない子ですね。
『1年ステージ、生徒の入場だ!』
入場と共に、プレゼント・マイクの声が響く。雄英体育祭、始まりである。
『雄英体育祭!ヒーローの卵たちが、我こそはとシノギを削る年に1度の大バトル!
どうせてめーらアレだろ、こいつらだろ!?
ヴィランの襲撃を受けたにも関わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!
ヒーロー科!1年!A組だろぉぉ!?』
A組の入場に合わせてプレゼント・マイクに実況される。
雄英もテレビの視聴率を気にかけているのか話題性のあるA組を派手に紹介している。
マスコミの群れも撮りどきだとカメラを向けている。
結構鬱陶しい、重傷者が出たと報道されたので分かりやすく片腕になっているのを撮りどきだとカメラの目がついてきている。
『B組に続いて普通科C・D・E組……!!サポート科F・G・H組もきたぞー!そして経営科……』
その後もアナウンスに合わせて普通科、サポート科、経営科も順番に入場して整列した。
アッサリ流された他の科は実況に怒ってもいいと思う。
「選手宣誓!!」
18禁ヒーローの名に違わぬ、過激に衣装を身に纏ったミッドナイト先生が宣言しながら鞭をピシャンと鳴らす。
彼女1人のコスチュームはあまりの過激さでヒーローコスチュームに露出についての法律を作らせたらしい。
その姿は法律で規制されてなお18禁ヒーローの名に相応しく、身体のラインを惜しげもなく晒け出している。
他の女性ヒーローコスチュームも身体のラインが分かるものが多いがミッドナイトクラスまでのは中々ない。
現時点でも過激だが法律で規制せざるを得なかった昔のコスチュームはどんな格好だったのだろうか、正直結構気になる。
「選手代表!1-A、爆豪勝己!」
ポケットに手を突っ込みながら台上に上がる爆豪の後ろ姿を見ると嫌な予感が膨れ上がる。
あの爆豪だ、マトモな宣誓にはしないだろう。
そんな信頼を裏切ることなく爆豪が言い放った。
「俺が1位になる」
「絶対やると思った!」
「不遜!」
「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ」
爆豪は一年全体からのブーイングに対して、首を掻っ切るような仕草をした。
見事な挑発である、敵の冷静さを失わせる点では満点をあげられる。
「完璧だな…!素晴らしい…!」
「君は一体何をいっているんだ!?」
敵の冷静さを失わせるには最適だと思う。冷静さを欠いた敵はカモだ。
その意味では爆豪は見事なデバフを一年全員に撒き散らしたのだ。
たった二言で全体デバフを撒くとは見事!見習わなくては…!!
「さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう!」
爆豪のデバフ撒きが終わり、競技説明が始まると同時に、ミッドナイト先生の後ろにホログラムが投影された。
「いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者がティアドリンク!さて運命の第一種目!
今年は……コレ!」
ホログラムに"障害物競争"という文字が大きく表示される。
「計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周約4km!我が校は自由さが売り文句!ウフフフ……コースさえ守れば何をしたって構わないわ!
さあさあ位置につきまくりなさい……」
何をしてもオッケーって本当ですか!?
つまり結果まで全カットしてもOKってことっすよね!
「予選通過は上位42名!残念ながら落ちちゃった人も安心なさい!まだ見せ場は用意されてるわ!そして次からいよいよ本戦よ!ここからは取材陣も白熱してくるよ!キバリなさい!」
全員が走り終わったところで、ミッドナイト先生の説明が始まった。
先生が声を張り上げるとともに、通過した上位42人が載っているホログラムが投影される。
「えっ、待って!?今、何が!?予選は!?障害物競走は!?」
「何言ってんだ、緑谷さっき走ったばかりだろ」
やれやれだぜ。
「そうかな、そうかも…」
「デクくんの一位通過凄かったよね!」
俺の順位は16位、ほどほどに良い成績だ。
そう、何事もなく障害物競走は終わった。何事もなくね。
雄英の障害物競走に地雷を使う常識を無くしたような行動を除けば。
「さーて第二種目よ‼︎私はもう知ってるけど~~~……何かしら⁉︎言ってるそばから、コレよ‼︎」
その言葉と同時に、ホログラムには"騎馬戦"と表示される。
「参加者は2~4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ!」
ルール説明で13号先生とマイク先生でオールマイトを担いでいる映像が映し出されている。
オールマイトは機嫌良さそうに「フジヤマー!」なんて言ってる。なぜその単語を?
ルールはシンプル。ハチマキを奪い合い合計ポイントを競う。
ポイントは第一種目の順位によってそれぞれ振り分けられ、42位が5ポイント、そこから5刻みで増えていく。
ただし1位は1000万ポイント。上位の者ほど狙われる、下克上サバイバル。
「上を行く者には、更なる受難を。
雄英に在籍する以上、何度でも聞かされるよ。これぞPlus Ultra!
予選通過1位の緑谷出久くん!―――持ちポイント、1000万‼︎」
出場選手全員の目が緑谷に向く。
緑谷からハチマキを奪えば一位に。或いは緑谷のハチマキを守り切れば一位に。
「制限時間は15分。終了までにハチマキを奪い合い保持ポイントを競うのよ。
そして重要なのは、ハチマキを取られても。また、騎馬が崩れても、アウトにはならないってところ!
"個性"発動アリの残虐ファイト!
でも……あくまで騎馬戦!悪質な崩し目的での攻撃等はレッドカード!一発退場とします!
それじゃこれより15分!チーム決めの交渉タイムよ!」
チーム決めでは爆豪が人気。爆豪は性格と協調性に難あり。
だが強さ単品で見ればかなりの強さ。
パッと見ただけで6人以上から誘われている。
轟もかなりの人数に囲まれてる。
普通科でただ一人、一次試験を突破した奴にも話しかけられている。
「箱内、ウチと組まない?」
そんな人気が二極化する中、誘いをかけてくるのは耳朗。
初めは1000万ポイントを持ったせいで不人気な緑谷あたりと組もうと思っていたがお誘いを断る必要はない。
「組もう、どうするか悩んでたから助かる」
「ヤオモモと組んるから少し待ってて」
既にメンバーを決めた上で動いていたようで、動きがとても早い。
「お待たせしましたわ」
「よろしくー」
八百万と一緒に来たのは上鳴。
偶然か狙ったのか、USJでヴィラン襲撃を受けた時のメンバーが揃った。
「みんな助かったよー、爆豪も轟もチームに入れてくれなくてさー。感電するじゃねーかだってさ!」
上鳴は電気を放電する事はできても制御は出来ないので騎馬戦では自爆前提になるのが痛い。
「そこで私が絶縁体で出来た服をお配りします。それすれば上鳴さんも放電することが出来ますわ」
「ウチが騎手で上鳴が前、箱内とヤオモモが左右の警戒」
「箱内さんは魔弾で遠距離から近づいてくる相手の牽制をお願いします。上鳴さんはハチマキが取られそうな時に放電してください」
妥当な作戦だ。
遠距離からもイヤホンを伸ばしてハチマキを奪える耳朗を上に置き、近距離での防御を上鳴が俺は遠距離からの防御を担当するそうだ。
「ウチらは無傷で完全勝利、一位を狙うよ。」
「今回はUSJの時のメンバーを集めさせていただきましたわ。あの時は苦い教訓を得ることとなりましたが、今回はあの時のメンバーで勝ちUSJでの敗北を過去のものとしますわ」
ほーん、中々USJのこと根に持ってるのね。まぁ、文句はない、OK!
箱内の礼装最高傑作。
トイレの花子さん
モチーフのトイレの花子さんらしくトイレ中でしか動けない。
だが、その代わりに人間以上のスピードで掃除、トイレットペーパーの入れ替え、電球の取り替え等を自動でこなす。
造形は都市伝説に従い赤いスカートにおかっぱ頭の女の子。
作り上げた礼装の中ではかなりの性能をもつ逸品で性能面では文句をつけるところがない。
これには箱内もにっこり。
だが箱内はアパートで一人暮らしであった。
アパートのトイレは一つの個室のみ。すなわち。
「掃除も終わったようだし使わせてもらうか」
「…花子さんや、トイレを使うから外に居てもらいたいんだけど…出てってくれない?」
「トイレの花子さんをモチーフにしたからトイレの外に出られない…?」
「………つまり花子さんに見守られながら使うことになると…?」
そんな羞恥プレイに耐えられる訳もなく、使用断念。
動かないように手足をガムテープで縛ってからゴミ袋に押し込んだ。
見つかったら警察通報待ったなし。
虚の合わせ鏡
第四魔法の応用で製作された礼装。2枚の鏡を向かい合わせた形状をしている。
鏡には何も映らないこともあれば、映ってはいけないものまで映ることもある。
いわゆる切り札なのだが、使用=バカとアホとポンコツによる乱闘開始のゴング。
礼装を使わない戦いをメインにしてる理由の半分は礼装はこの乱闘で壊されるから。
本来の使い方は全くされてない。されないうちが花とも。
『鏡に映るのが虚像とは限らない。
鏡を壊した時、消えたのは鏡の中の君だろうか。君だろうか。』
そも虚像と本物になんの違いがあろうか。
『なんか厨二病が居るんだけど』
『答えの出てることを聞くとは暇なの?』
『愚か愚か』
『おっと?周りを巻き込んだ自爆は辞めようか。』
『鏡に呟いてないで働け』
『(ピキピキ)今日は覚悟しておけ。
口内炎の呪いをかける礼装をもって『礼装持ちがいるぞ!タタメ!』ちょっ待て!』
第15回大乱闘勃発。口内炎の礼装は壊された。