第四魔法使いのヒーローアカデミア 作:ネル
2回戦の初戦は緑谷対轟。
「両者トップクラスの成績!!まさしく、両雄並び立ち、今!!
緑谷!対……轟!スタート!!」
試合開始のアナウンスに合わせて先に動いたのは轟。
右足から氷を地面に走らせ、緑谷に仕掛けた。
1回戦で瀬呂に仕掛けた攻撃と同じく個性の相性によってはこのワンアクションだけで完封されかねない規模の氷結。
対する緑谷の個性は迫る氷にむけて指を曲げた。
圧倒的な超パワーを発揮し、緑谷はデコピンひとつで氷を吹き飛ばして打ち消した。
『おオオオ!破ったぁ!』
「痛そ…」
轟の氷を打ち消したが緑谷の指は自身の力に耐えられず折れている。
緑谷がとった行動は継戦能力の低下をかんがえれば悪手、だが勝つ為の道筋は考えられる限りこれしかないのもまた事実。
もしくは後の試合は棄権する前提になるが腕を折ってでも超パワーで轟を一撃で仕留めるため特攻するのもありだ。
自傷前提の瞬間火力なら緑谷はクラスの中ではダントツの一位、氷ごと轟を吹き飛ばすことなど造作もないだろう。
そんな力尽くな手段は選ばなかった緑谷は遠距離から何度か凍らせようとした轟の氷を何度も指を砕きながらも防いだ。
焦れた轟は近距離から確実に凍らせようと緑谷に近づく。
緑谷も轟との個性の練度差を考慮すればかなり善戦しているが次第に追い詰められ、遂には全ての指がボロボロになった。
「もう、そこらのプロ以上だよアレ……」
「さすがはNo.2の息子って感じだ」
スカウト目的で来場していたプロヒーローからも轟の強さを評価する声。
ヒーロー達の意見には同感で、少なくとも俺がサッカーボールにして遊んであげたヴィランや埋めて河原を賑やかにしたヴィランより圧倒的に強い。
あいつらは弱かったからよかったね…また襲ってきたら遊んであげるね…魔術や個性の実験台はいくらいても困る事はないからね…
そんな通常のヒーロー科とはかけ離れた実力をもつ轟は氷結を相殺する為に両腕を壊した緑谷にトドメの氷結を放つ。
だが、緑谷は骨折し壊れた指で何度目かの氷結の相殺。
直後、緑谷の声がスタジアムに響き渡る。
「皆……本気でやってる。勝って……目標に近付く為に……っ!一番になる為に!
半分の力で勝つ!?まだ僕は君に、傷1つつけられちゃいないぞ!
ーー全力でかかって、来い!!」
緑谷の叫び。
轟は今まで炎はほぼ使ってなかったが、個性は半凍半燃。
炎を使わないのは緑谷に対しての手加減とも甘く見ているとも言える。
うーむ、なぜ強敵を更に強化しようとするのか分からない。
強化したってラスボスが裏ボスになる程度で半ば瀕死の緑谷からすればどちらも倒せるレベルを圧倒的にオーバーしている事実に代わりはないのに。
何かをしたいのは分かるが何が目的なのかは分からない。
だが、緑谷の言葉は轟に響いたようで、氷と炎、2つの相反しているようで似たような力を使い始めた。
轟は氷を地面に走らせ次いで、炎を放つ。
緑谷は左足を壊す勢いで跳び、次いで腕が壊れることを気にしない全力のパンチを放つ。
結果ーー轟と緑谷同士の大技がぶつかり合い、爆発が起き緑谷は爆発に吹き飛ばされて場外。
轟の三回戦進出が決まった。
緑谷が担架で運び出された後、爆発で一瞬にして砕け散ったステージを眺めながら上鳴と一緒に震え上がる。
「体育祭でここまでやるの…?ヒーロー科はここまでやんなきゃいけないの…?」
「俺はあんなにやりたくないよ…」
ヴィランよりヒーローの方が怖し…正義は悪に破壊規模でも勝つんだね…
そんなことを思いながら見応えのある緑谷と轟の試合は終わった。
………えっ、もし飯田に勝ったらアレと戦うの…?…ウッソだろ?
2回戦、飯田との試合。
『ザ・中堅って感じ!ヒーロー科の飯田天哉!
対、魔術の使い手!パワーもスピードもあるぞ!箱内狭!』
ステージ上で向き合うのは飯田。
また面倒な相手だとため息を飲み込みつつ、情報を頭の中で整理する。
飯田は真面目な奴で四角四角した性格、そして真面目だが空回りすることが多い。
要は罠やトラップを使う事はない性格。
個性はエンジン。
ふくらはぎにエンジンのような器官が備わっていてこの器官が高速での移動を実現する。
緑谷の一撃必殺、轟の広範囲攻撃などの一手で戦闘に大きな影響を与えるものではないが堅実かつ、使い勝手のよい個性。
『さぁ!サクサクいくぜ!START!!』
プレゼントマイクの合図と共に飯田のエンジンが唸り、50メートルを3秒で駆け抜けるスピードで飯田が突っ込んでくる。
スピードが乗りきる前に前に出て飯田の蹴りを受け止める。
蹴りを受け止める前に生成し待機させていた魔弾をショットガンの様に飯田へと撃ち放つ。
それを見るか見ないかのタイミングでエンジンをふかし距離を取る飯田。
お互いに有効打になるとは思ってない、相手の手札を理解した上での小手調べ。
軽い朝の挨拶、社会人の名刺交換と変わりはない攻撃とも言えぬ儀式。
物騒なヒーロー式の軽いご挨拶の後は本題に入る前に軽い話題振り。
「おひとつどうぞ」
飯田と俺の間を隔てるようにして放たれる魔弾。当たれば痛いですまない一手。
「これしき!!」
飯田は俺の周りを回り込むようにして走り出した。
迷いなく、魔弾にどう対処するかも決めていた動き。
その飯田の動きは予想の範疇。
魔弾はクラスメイトに散々見せている。
こちらはクラスメイトの個性を把握して対策を立てている。同じく、クラスメイト達も俺の個性に対する対策を立ててある。
故に、一撃でダメなら数で押す。魔弾を作り連射する。
「リアルインベーダーゲームやろうぜ!お前、的な!」
頭上から降り注ぐ魔弾と背を追う魔弾に追われながらステージを駆ける飯田。
ステージの上から降り注ぐ魔弾と飯田から逸れた魔弾がステージを砕き大量の瓦礫を作り出す。
ステージを補修するセメントスがまた仕事ができた、といいたげな顔をしているのを横目に順調にステージを砕き穴を開けてゆく。
『飯田、箱内の魔弾の連射の前になすすべもない!全く箱内に近寄れてないぞ!』
粉砕され穴だらけになったステージ。
その割合は徐々に増えてゆく。
穴だらけになったステージを見た飯田は切り札を切ることにした。
「こんなところで諦めるわけにはいかない!勝たせてもらう、いくぞ!」
飯田の言葉と共にエンジンの音が変わる。
個性を使っているところは何度か見たが、このエンジン音は聞いたことがない。
来た。
騎馬戦で緑谷チーム相手に初解禁し、瞬間的に圧倒的なスピードで緑谷チームの横を駆け抜けハチマキを獲ったという切り札。
ご挨拶が終わった後の本題が始まる。
待機させていた魔弾の後ろに下がりながら飯田が跳んでくるのを待つ。
「レシプロバースト!!」
飯田の切り札はただでさえ早い飯田のスピードを何倍にも引き上げる脅威的な技。
体育祭を見据えてこれまで隠し切っていた切り札。
そんな分かりやすい切り札、使いたいに決まってるよなぁ!
だが、その超スピードを出せる経路はさりげなく絞られているのに気づいているかな!?
瓦礫になってない足場はだいぶ絞られ、蹴りを当てるには待機している魔弾が邪魔だよなぁ!
「ここ!」
「何っ!ぐはっ!!」
レシプロバーストの目にも止まらぬ超スピードで後頭部に跳んできた足を掴み飯田を地面に叩きつける。
強引な投げがうまく決まり、勢いよく叩きつけられたことで舞い上がる土煙。
『飯田の超スピードを利用して地面に叩きつけた!コレは勝負決まったか!?』
「降参?しないよな!魔術の後は物理で勝負だ!」
なので追い討ち!飯田に馬乗りになってフルボッコ!
マウントポジションの威力を感じよ!
飯田に馬乗りになって殴る、殴る。物理最強!物理最強!
飯田に半分以上防がれているが気にしない!
「容赦がなさすぎないか!」
喋る余裕があるなら余裕だね!ボコす!
「君が泣いても!殴るのを止めない!」
「君は本当にヒーロー志望か!?」
一発、二発、三発と飯田の抵抗を封じ込む様に淡々と拳を打ちこむ。
「泣かれても勝ちにはならないし…」
「確かに!ルールでは相手が降参するか審判が止めるまで勝ちではないが!」
チラリと審判のミッドナイトの方を見る。
ミッドナイトも止める事はなく、ただ見ている。
「止められない、つまりミッドナイトももっとやれって言ってる!」
「恣意的解釈が過ぎる!」
ミッドナイトが無の表情で天を仰ぐのを他所目に拳を飯田に防がれつつ叩き込む。
こんな無駄話をしている間にも飯田の超スピードは途切れてない。
マウントポジションを振り解かれたら置き土産のキック一発で負けかねない。
そんな風に飯田と戯れている間に飯田のエンジンが弱まる。
聞いた話ではレシプロバーストは超スピードは出せるが消耗が激しく維持できる時間も少ない技。
さらには制限時間を超えたらしばらく個性が使えなくなるデメリット付き。
そんなリターンもデメリットも大きなレシプロバーストが途切れたのを境に飯田の力が抜ける。
「もうレシプロも切れてしまった…僕の負けだ」
「飯田君降参!箱内君準決勝進出!」
『飯田を下して準決勝進出だァー!!』
飯田は起き上がりながらレシプロを読んでいたのかと聞いてくる。
「膠着した試合に使ってない決め技を使わない理由はないだろ?
だから泥試合の気配をみせて、後は決め技のルートはステージを壊すことで絞らせてもらった。
ここまで用意すれば一回限りならば捕まえられる」
「そうか…そこまで考えられてたか…今回は僕の完敗だ。
次はカウンターできない程スピードになって…勝たせてもらう!」
「勘弁してくれ、ただでさえかなりのスピードなんだ、戦闘機並みのスピードになっちまうぞ」
「いいな!!戦闘機を目指そうか!!」
勘弁。流石に戦闘機のスピードにカウンターは決まらない。
進行方向に頑丈な壁を設置しとくぐらいしか対策は思いつかない。トゲも生やしておこう。
透明な壁だったら更に喜んでくれるかな?
出来るように練習しておこう。
で、どうやったらできるの?誰か教えて!
飯田との試合が終わり観客席に戻るが、戻った頃には次の試合の耳郎と常闇の勝負は決まりかけていた。
「どうなってる?」
「準決勝進出おめでとう!耳郎は常闇のダークシャドウを攻略出来なくて苦労してるぜ」
耳郎は常闇の個性のダークシャドウと戦っているが有効打を与えられず舞台の端に追い詰められていた。
イヤホンによる衝撃がダークシャドウには有効でないようだ。
「ダークシャドウ、強敵ですわ」
そんなことを言っているうちに耳郎がダークシャドウに抱えられ場外に投げ飛ばされた。
ダークシャドウにイヤホン挿しても効果薄しと。
「あっ、やられた。ダークシャドウが強いとなると勝つには常闇を直接攻撃するしかなさそうだな」
「そうですわね、ダークシャドウを放置して速攻が1番勝率がよろしいかと」
結局は耳郎は常闇に勝てず場外負けとなってしまった。
南無南無。ダークシャドウどうやって攻略するかな?
あの様子、物理は有効だよな。…やはり暴力…!暴力は全てを解決する…!
次の対戦は切島VS爆豪。
「爆豪のセンスありすぎ」
「えげつねェなオイ」
二人の戦いは始まりは互角の形勢、だが爆豪が余りにも冷静だった。
切島も爆破を硬化の個性で受けて最初はノーダメージを貫いていたが、カウンターの拳を爆豪は的確に避ける。
その上で、切島の硬化が弱まるタイミングで切島を爆破。
そこからは爆破の連打で反撃を許さず押し切った。
切島も悪い動きではなかったが負けだ。
「イヤだイヤだ、初めての対人訓練とは大違いじゃん」
「あの時は緑谷相手に余裕なかったものなー」
「キレ散らかしていた爆豪があんなになるなんてねー」
「常闇と爆豪戦は爆豪の勝ちかな…もし轟に勝てたら爆豪が相手か…」
「常闇が勝つかもしれないじゃん」
常闇の個性は確かに強力だが基本戦闘スタイルは本人は戦わないスタイルだ。
爆豪は指揮を取る奴を優先的に狙うぐらいはやらない筈もない。
そうするとダークシャドウは常闇を守りながら爆豪を倒す必要がある。
そんな隙を爆豪が見逃すとは思えない。
「そもそも轟に勝てるの?」
「ふふふっ、夢を見るのは自由なんだ…手加減してくれないかな…」
「弱気過ぎんだろ!」
正直、轟に普通に戦っても勝てる見込みは少ない。
どうしても高威力範囲攻撃の連打に押し切られて負ける。
更には炎まで使い出したのだ、新技も次々出してくるだろうし戦いにくくてしょうがない。
今からでもプロヒーロー以上の力があるってことで轟は殿堂入りになりませんかね?