第四魔法使いのヒーローアカデミア 作:ネル
3億のロボを破壊した雄英の入試からしばらく経ったある日。雄英からの郵便が届いた。
この時期の雄英高校からの郵便は合否通知。
合格、不合格でのちの人生が大きく変わる。
そんな人生を左右することになる封筒を開けたが、中身はまさかの円盤型の謎の機械。
…使い方がわからん。何故に円盤?
あまりの意味のわからなさに円盤を持ち固まった次の瞬間。
『私が投影されたァ!』
唐突に機械から空中に映像が投影された。
投影され出てきたのはオールマイト。
オールマイトは圧倒的な知名度、実力共にNo. 1のヒーロー。
なんと一日で62の街を救ったと報道されたこともあるヒーローだ。
ギリシャ神話の大英雄ヘラクレスに劣らぬのではないかと思わせる筋肉と筋肉と筋肉と狂気で出来ているヒーロー。
『いやぁ驚かせてすまないね。
この映像に私が映ってるのは他でもない、来年度から私が雄英に勤めることになったからだ。まぁ1つのサプライズってやつさ!!
さて、君の試験結果についてだが…筆記はギリギリだが合格!実技試験のポイントは56ポイント。実技は優秀な成績で合格!筆記はもっと頑張ろうな!』
「よかった、よかった。でも筆記は勘弁してくれ…」
でもセーフならヨシ!終わりよければ全てヨシ!
…ヨシっすよね?ここから大逆転で不合格は辞めてよね!
『そして…見ていたのは敵Pのみにあらず!
救助活動Pレスキューポイント!しかも審査制!我々雄英が見ていたもう一つの基礎能力!箱内少年、耳朗少女と共に怪我人の救助及びその後の危険の排除!10P!』
ふーん、そっすか。貰えるもんは貰っときますよ。
『合計66P!先ほども言ったがもう一度だ!合格!来いよ箱内少年!雄英ここが君のヒーローアカデミアだ!』
謎の機械は合格通知でついでに成績発表も兼ねてだった。やはり筆記は危なかったが、実技は意外と余裕があった。
筆記はダメだよ、筆記は。この個性社会は常識が色々おかしくなってるから筆記はキツいよ。
ともあれ、こうして雄英の合格通知は終わった。来春からは雄英生。ヒーローの卵としての生活が始まる。
しばらくして出会いと別れの季節の春。
合格通知から入学まで、隕石も降ってこないし、ラグナロクも起きず、雄英高校を勧めてきた教師を筆記試験難しかったんだが?と詰める、そんな平和な日々を過ごした。
多くとの別れは終わり、今日は出会いの日。雄英高校の入学式。
初登校はあまりの雄英高校の大きさに迷いつつも教室に着いた。
あまりにも大きく広い校舎で、どう考えても普通の学校の規模ではない。
クラスは1-A。教室のドアを開けると既にかなりの数同じクラスとなった生徒が揃っていた。
まだ来ていない数人もいるが全員で20人。
自分の席を探していると教壇のすぐ横に立っていた紺色の髪に四角い眼鏡の男子が話しかけてきた。
「おはよう!俺は私立聡明中学出身の飯田天哉だ、これからよろしく!」
「箱内狭。よろしく」
「ああ、これからよろしく!」
指定の席に座りカバンを下ろす。 苗字順のようで席は1番廊下から離れた列、前から二番目。
まだ来てないが前の席は爆豪、後ろは緑谷らしい。
クラスに知り合いは誰もいない。
かと思えば入試の時に協力した耳朗がすぐ近くの席に座っていた。知り合いが一人もいない事を覚悟していたがありがたいことだ。
「おはよう、入試ぶり。お互い合格できてたな。良かった」
「ウチも驚いたよ。試験の時に一緒にいた人だって」
先ほど話しかけてきた飯田とすぐ後に入ってきた金髪の爆発頭をした爆豪がすぐ目の前の席でギャギャー騒いでいるのを尻目に耳朗と話す。
爆豪は雄英高校をヴィラン養成所と間違えて入ってきたのかと思う程口が悪い。
軽く耳朗と喋りつつ、しばらく待っているとチャイムの音が鳴った。それと同時に廊下からクリームイエローの寝袋に包まれた人物が現れる。
「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね。」
黒いツナギ、首元に緩く巻かれた包帯のような布、ボサボサで伸ばしっぱなしの黒髪、無精髭、猫背IN寝袋。
外見からすると高校にいるべき人物には見えない。高校関係者というよりホームレス。
「担任の相澤消太だ、よろしくね」
まさかの暫定寝袋ホームレスが担任。雄英の教師は全員ヒーローと聞くが全くヒーローには見えない。街中で出会ったら不審者として警戒するだろう。
そんな警戒心は間違っていなかったようで、これから入学式があると言うのにこう切り出した。
「早速だが、体操服着てグラウンドに出ろ」
…なんか嫌な予感がする。
俺たちは苦労して更衣室を探し当てたあと、着替えてグラウンドに出た。
当然だが、1-Aの他には誰もいない。本来ならば入学式であり、こんなところにいるのはイレギュラーとしか思えない。
あー嫌な予感がするんじゃあー。
「今から、"個性"把握テストを行う」
「"個性"把握……テストォ!?」
移動した先でのいくつもの白線が引かれたグラウンドで相澤先生の言葉に驚く面々。
嫌な予感はこれか…。まぁそうですよね。ここから入学式に行くには時間が足りないですよね。
「入学式は!?ガイダンスは!?」
「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事出る時間ないよ」
「……!?」
おいおい、保護者はどうするつもりなんだ?遠くから入学式に来たのもいるだろうに放置プレイ?クレームこないの?黙殺する?度胸あるね!
「雄英は"自由"な校風が売り文句。そしてそれは"先生側"もまた然り」
「……?」
「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50メートル走、持久走、握力、反復横とび、上体起こし、長座体前屈。
中学の頃からやってるだろ?"個性"禁止の体力テスト。国は未だ画一的な記録をとって、平均を作り続けている、合理的じゃない。まぁ、文部科学省の怠慢だよ」
ま、お役所仕事ですし。全く意味がない訳でもないしいいんでは?
「爆豪。中学の時ソフトボール投げ何メートルだった」
「67メートル」
「じゃあ"個性"を使ってやってみろ、円から出なきゃ何してもいい。
早よ。思いっきりな」
「んじゃ、まぁ……死ねェ!!」
爆豪が投球ホームに入り個性の爆破を使いボールを投げた。
…死ね?…やっぱヴィランアカデミアと間違えて入学してない?
爆破の個性で発生した爆風が見ていた俺たちへと荒々しく吹き付ける。
罵声、爆発音と共に高く遠くへ飛んでいくボール。
「まず、自分の『最大限』を知る。それが、ヒーローの素地を形成する合理的手段」
相澤先生の手にある機械に表示されたのはーーー705.2メートル。
「なんだこれ!!すげー"面白そう"!」
「705メートルってマジかよ」
「"個性"思いっきり使えるんだ!!さすがヒーロー科!!」
「…………面白そう……か。
ヒーローになるための3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのか?
ーーーよし。トータル成績最下位のものは見込みなしと判断し、除籍処分としよう」
「はああああああ!?」
「生徒の如何は先生の"自由"。ようこそ、これが―――雄英高校ヒーロー科だ」
個性把握テストが除籍危機と一緒にやってきた。中々ハードだ。
入学式前から除籍するペースで年中除籍しつ続けるなら2年になる頃には誰もいなくなる。だが、それは今回に限っては最下位はあり得ない今の俺が心配することではない。
まずは50メートル走、握力、立ち幅跳び、反復横跳び。
ーー強化の魔術だけで押し切る。
正直下手に工夫するよりも力押しの方が効率的、相澤先生に目をつけられないためにも余計なことはしないに限る。
種目に対して相性の良い個性を持った人には負けるが最低でも平均は超える結果を出せる。だが、同時に流石に強化されていても握力で万力使う奴やハンドボール投げで無限出す奴らには勝てない。
そりゃそうよ。人類の叡智と無限に勝てる奴なんていてたまるか!
ハンドボール投げ。二百メートル越え。そこそこいい記録で平均は超えた。
ボールを投げ終わり、次の緑谷と交代する。緑谷は今のところ個性把握テストと相性が悪いのか、使い勝手が悪いのか全く個性を見せていない。
「緑谷くんはこのままだとマズいぞ……?」
「ったりめーだ、無個性のザコだぞ!」
「無個性!?彼が入試時に何を成したか知らんのか!?」
「は?」
そこまで言うならと緑谷に注目するが一球目、大して飛ばない。
個性抜き、素の身体能力と考えればそこそこ。だがそれだけ、特に評価できる点はない。
「46メートル」
そんな大したことのない記録を聞いて緑谷が狼狽えている。
「な……今確かに使おうって……」
「"個性"を消した。つくづくあの入試は……合理性に欠くよ。お前のような奴も入学出来てしまう」
髪を逆立たせた相澤先生の言葉で理解させられる。
相澤先生が個性を止めた。つまり相澤先生の個性は、個性を止める個性。
つまり素の身体能力がクソ雑魚貧弱な俺の天敵じゃないですかー!対策必須ですね!
魔術に効くのか?ふと考える。俺は魔術が個性ということになっているが実態は別物で個性ではない。
魔術回路を持つ純粋な魔術師だ、なので個性で魔術を使ってるわけではない。
個性を止める個性なら、俺には効かない可能性がある。だが…効かないと想定する方が危ないですよねー!戦闘はワンミス即死ですよ!
「消した……!あのゴーグル……そうか……!視ただけで人の"個性"を抹消する"個性"!抹消ヒーロー、イレイザーヘッド!!」
緑谷による解説。俺にとってはありがたい説明。ヒーローに興味がなかったので知っているヒーローは数えるほど。有象無象のヒーローには興味がなかったのでヒーロー関係の知識はあまり知らないのだ。
「"個性"は戻した……ボール投げは2回だ。とっとと済ませな」
相澤先生に何事か話されていた緑谷の2球目。投げる前にブツブツ呟いていた緑谷だったがSMASHという掛け声とともにボールは遠くへと飛んでいく。
ボールを投げ終わった後の指は紫に腫れ上がっている。しかし指を代償としてボールは700メートルと結構な距離を飛んだ。
そんな記録を見て緑谷と知り合いらしき爆豪が騒いでいる。緑谷を無個性だと思っていたらしい。
個性一回使うあたりの代償が大きすぎる。だから今まで使わなかったんだろうな。ハッキリ言えば使う奴の気がしれない。俺だったら除籍の方がマシ!
その後は特に変わったこともなく進む。予想通りと言うべきか、俺の成績は全て平均以上。
どれも一位にはなれなかったが、優秀な部類。となれば心配なのは自分ではなくなる。
「耳朗さん、大丈夫?相性良さそうな競技なかったよな」
朝軽く聞いた耳朗の個性はイヤホンジャック。耳たぶから出たイヤホンを操ることが出来、イヤホンを挿すことで心音を衝撃波として出す個性。イヤホンジャックの個性と個性把握テストでは相性の良さそうな種目はない。
入試で一度会ったことがあるので声をかけてみたが、特に理由があるわけでもない。強いて言えば知り合いの顔を見れば声のひとつもかけるのは普通のことだろう。
「厳しかったけど、何とかなりそう。箱内は余裕そうだね」
「テストと相性が良かったんだよ」
魔術の強化は身体能力を普通の数倍に跳ね上げる。世の中で増強系と呼ばれる個性と似たように身体能力を普通の数倍に跳ね上げることが出来、体力テストには向いている。よっぽどヘマをしなければ上位陣に食い込めるのだ。
しかし、文句を言うわけにもいかないので黙ってテストを受けていたが、正直この個性把握テストも個性の得意不得意でかなり差が出る。
個性抜きの体力テストや入試を不合理という割に、この個性把握テストも十分不合理ではないだろうか。
そんな俺の内心は関係なく、相澤先生による結果の集計は終わった。
「んじゃ、パパっと結果発表」
相澤先生が前置きなしで空中ディスプレイでテスト順位を投影した。俺の順位は20人中4位、中々いい順位。
一位は八百万、黒髪をポニーテールにしている背の高い女子。1クラスに二人しかいない推薦入学者で、個性で物を作り出している。持久走や握力測定でバイクや万力を作り出す荒技を見せた。どこまで物を創り出せるのか知らないが、ちょっと身体能力を強化したぐらいでは勝てないし、勝てそうとも思えない。
逆に最下位は緑谷。ボール投げ以降、指の痛みか調子の悪そうな動きをしていた。個性を使わない方がトータルいい成績を出せた可能性まである。
まぁ残念、縁があったらまた会おう。緑谷に内心別れを告げていると相澤先生が声をあげた。
「ちなみに除籍は嘘な。君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」
相澤先生の言葉に声をあげて驚くクラスメイトたち。特に最下位で除籍対象だった緑谷は顔が崩壊している。
「あんなの嘘に決まってるじゃない…ちょっと考えればわかりますわ…」
「そういうこと。これにて終わりだ。教室にカリキュラム等の書類あるから目ぇ通しとけ」
怪しい、本当に嘘だったのか、不審者ルックといい、言動といいこの先生は怪しすぎる。この先生は今後も注意が必要だろう。
こんな訳で雄英初日の入学式に代わる個性把握テストは幕を閉じた。
本当に急な除籍テストは勘弁!
そして入学式は?本当に行かなくていいの?