第四魔法使いのヒーローアカデミア   作:ネル

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7話 世界の別れ目

 

 

 世界は例えるならば大樹、或いは大河のようなものだ。

 大樹、大河と同じく世界の流れがあり、歴史には大枝、本流と呼ぶべき正史のメインルートがある。

 

 この世界は大枝、本流に沿っていた。

 人、人間関係、戦力、多少違えども大枝、本流の中にあった。

 

 だが大樹、大河には大枝、本流しか存在しないわけではない。

 枝分かれもするし分流もする、世界も同じだ。

 

 この世界の流れはここから大きな流れと分岐する。あるべきメインルートである大枝、本流から離れる。

 大枝、本流と呼ぶべき僕のヒーローアカデミアから少しずつ。

 魔法使いのヒーローアカデミアへと。

 

 

 

「ヴィラン!バカだろ!?

 ヒーローの学校に入り込んでくるなんて、アホすぎるぞ!」

「先生、侵入者用センサーは!」

「もちろんありますが……!」

「ダメだ、センサーも電話も通信関係は全部ジャミングされてる!

 おそらくそういう"個性"が敵にいる!」

 

 雄英高校の本校に救援要請は出来ない。

 襲撃は綿密に練られた計画的なものであることは確定。

 ここまで計画的な襲撃なら何処からか情報が漏れたことも確定。

 それとも諜報系の個性?個性はなんでもありだから対策は見てからしかできないのが痛いな。

 

「現れたのはここだけか、学校全体か……。

 何にせよセンサーが反応しねぇなら、向こうにそういうことが出来る"個性"がいるってことだな。

 校舎と離れた隔離空間、そこに少人数が入る時間割……。バカだがアホじゃねぇ。

 これは、何らかの目的があって、用意周到に画策された奇襲だ」

 

 轟が冷静に状況と敵の分析を行う。

 そう、轟の分析通り、よく街にいるただ暴れるしかない単細胞ではない。

 オールマイトをターゲットにして潰そうとする厄介な計画的なヴィランだ。

 しかも敵の言うことを信じるならば平和の象徴と讃えられるオールマイトをターゲットにした計画。

 

 まぁ、本当にオールマイトが倒せるかどうかは別だけど。

 アレめっちゃ強いよ。今の俺なら倒すのに最低500人ぐらいは必要だよ。多分それでワンチャンあるかないかだね。

 

「13号、避難開始!センサーの対策も頭にあるヴィランだ……上鳴、お前も"個性"で連絡試せ!」

「っス!」

「先生は!?1人で戦うんですか!?

 あの数じゃいくら"個性"を消すっていっても!!

 イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の"個性"を消してからの捕縛だ。正面戦闘は……」

 

 相澤先生の個性は先程バスで考察した内容が当たっていれば、集団戦との相性は良くない。

 個性を消せるのは視界に入れる必要があるので、周囲を囲まれる状況では全員の個性を消す事は出来ない。

 本領を発揮するのは戦闘場所から少し離れた所からヴィランの個性を消し、その間に戦闘向きのヒーローがヴィランを制圧する時、具体的には盤面全体を俯瞰出来る場所でのサポート時が一番強いだろう。

 少なくとも単独行動で敵を倒すには向いてない。

 

「一芸だけじゃ、ヒーローは務まらん。

 13号!任せたぞ!」

 

 それでも相澤先生は一声あげると噴水のある広場へと飛び出した。

 ヴィラン達の中に飛び込むとともに、相澤先生は次から次へとヴィランの個性を消し体術で薙ぎ倒していく。

 俺が杞憂していたのとは裏腹に相澤先生は無駄のない体捌き、敵の行動すらも利用する戦術眼、首に巻かれた捕縛布と圧倒的な強さスピードでヴィランを薙ぎ倒していく。

 

 抵抗しようとするヴィランもは誰が個性を消されているのか分からないため"個性"が使えず戸惑い、狼狽えている。

 発動型や変形型の"個性"は大抵"個性"を使わない戦闘方法などほぼ持たない、持っていてもそれは相澤先生には対処可能なレベル。

 "個性"を"抹消"出来ない異形型も、消せないからこそ相澤先生は対策を立ててあり淡々と撃破していく。

 

 「さぁ!ここは先生に任せて避難を!」

 

 相澤先生が作り出したその隙に13号が皆を避難させようと動くが邪魔が入る。

 

「させませんよ」

 

 出口の前に黒い霧が溢れヴィランが姿を現す。

 生徒を先導して避難していた13号と皆の前に、あの黒いモヤの敵が立ち塞がった。

 

「初めまして、我々はヴィラン連合。

 僭越ながら……この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは―――平和の象徴オールマイトに、息絶えて頂きたいと思っての事でして」

「!」

「本来ならば、ここにオールマイトがいらっしゃるハズ……ですが、何か変更あったのでしょうか?

 まぁ……それとは関係なく……私の役目はこれ」

 

 オールマイトは平和の象徴として全世界に名を轟かせている存在。

 並のヴィランが50人程度居ようとオールマイトに正面からぶつかれば10秒と保たずに粉砕される。

 それでもオールマイトを殺すと気負いもなく言い切るだけの根拠があるなら予想以上に準備を整えて来ているのだろう。

 敵の目的とオールマイトに対処出来る手札の存在は確定したが状況は良くない。

 

 話し続けているヴィランの目前に、大きな爆発音と爆炎が広がる。

 飛び出したのは左腕を硬化させた切島と、右手で爆破を使った爆豪。

 

「その前に俺たちにやられることは、考えてなかったか!?」

「危ない危ない…………そう……生徒といえど、優秀な金の卵」

「ダメだ!どきなさい二人とも!」

 

 倒せていれば問題なかったのだが、ヴィランは無傷。

 13号先生が警告してくれたけど、遅かった。

 二人が13号先生の射線に入ってしまった。

 

「散らして、嬲り殺す」

「皆!」

 

 モヤの異形はおれたちを包み込むように広がった。

 

 

 

 ヴィランの黒い霧に包まれ空中に投げ出される。

 次に見えた場所は岩場と俺の落下を待ち構える20人を超えるヴィラン連中。

 計画的な作戦だ。黒い霧から解放されるのと同時に襲われている。

 リスポン狩り反対!リスキル反対!クソゲー!

 

「うぅあ!コエー!マジ!いま三途見えたマジ!なんなんだよコイツら!」

「何ってサンドバッグへの就職希望者だ!お望み通りサンドバッグにしてやれ!!」

 

 一緒にいるのは上鳴と耳朗、八百万、4人。

 たまたま近くにいたメンバーが纏めて飛ばされた。

 

 叫びながらも手近な敵を殴り飛ばす。

 1人目、殴り飛ばし顔を不細工に整形してお空の旅をプレゼント。

 2人目、ボクシング式ワンツーを進呈、一撃目は魔弾で省略。あっ、まだ意識あります?なら5連ダァ!

 

「そっちは任せた!」

 

 適当に魔弾をばら撒く、それだけでヴィランの足止めになる。

 こんな適当な攻撃で牽制には十分。片手間で対処できる範囲内で正直、雑魚すぎて困る。

 苦戦しているようなら手を貸そうかとチラリと横を見れば他の3人もヴィランに抱きついて電撃を浴びせ創り出した刃物で牽制したり、音波攻撃で撃破したりと順調に敵の無力化を進めている。

 

 正直な感想としてオールマイト狙いと称している割には非常に弱い。

 いくら狂気の倍率を突破した雄英生だろうと、つい最近まで戦いに縁のない中学生に倒されるヴィランなどあり得ない。

 こんだけ弱いと実は訓練でした、も想定して動かないといけない。

 つまりやりすぎ禁止ですね。

 

 淡々と丁寧にヴィラン狩りを進めていると八百万から声がかけられる。

 

「箱内さん!コチラへ!急いで!

 時間がかかってしまいますの。大きなものを創るのは!」

 

 八百万に駆け寄ったところで八百万の背中から大きなシートが飛び出て八百万、耳朗、俺の3人を包み込む。

 とりあえず入ったんですけどこれ、なんですかね?

 

「シート?盾のつもりか?」

「厚さ100mmの絶縁シートです。上鳴さん」

「なるほど、これならオレはクソ強え!」

 

 絶縁シートの言葉を聞いた途端、納得の声と共に激しい放電が上鳴から放たれた。

 上鳴の個性は帯電。電気を貯めて放電することが出来る個性。自由自在に操れる訳ではないので放電すると味方ごと感電させてしまう。だが絶縁シートがあれば話は別で、上鳴の全力放電により残っていた十五人以上のヴィランは全滅した。

 

「他の方々が心配。早く合流しましょう」

「つーか服が超パンクに…発育の暴力…」

「早めに隠すことをおすすめする…むしろお願いします!

 流石にこの状態で至近距離にいると気まずいんで!」

 

 八百万は絶縁シートを創造で創る際にコスチュームを突き破って創造したようで、コスチュームの大半は破れてほとんど残っていなく。

 狭い絶縁シート内に収まるように体を寄せ合う体勢で固まっていたのですぐ近くに柔らかい感触と体温を感じてしまう。

 一応今の体は思春期真っ盛りなのだ、勘弁してくれ!精神は身体に引っ張られているので中々キツイ。

 

「箱内はあっち!!ヤオモモ早く服作り直して!」

「アイアイサー!」

 

 八百万と耳朗が入っていた絶縁シートから這い出て周囲を見渡す。

 物理的なダメージは受けてないが今の一幕でゴリっと精神力が減った。

 俺の精神力を削る策とは、おのれヴィランめ。中々やる策士じゃねぇか。

 

 そんな策士なヴィラン達は見事に上鳴の大規模な電撃にやられ感電してピクピク跳ねている。

 

 一方、上鳴は個性で放電した後の副作用でウェーイとしか言わないアホと化した。

 手を振ることで意思の疎通はかろうじて出来るが、今のところは手を振るだけのMVPだ。

 そんなヴィランの半分を持っていったMVPは八百万から離れた場所にいるので放置し周囲の探索に向かう。

 

「上鳴と向こうで近くの様子を見て来るから服の修復が終わったら声かけてくれ。

 耳朗は敵いないかを索敵をよろしく」

「任せて」

 

 軽く歩き見晴らしのいい場所から周りを一望する。

 見えるのは水場に浮かぶ船、燃えるビル、土砂で埋もれた建物、あらゆる事故や災害が再現されたUSJ。

 俺達がいるのはUSJの山岳地帯、出入り口ではまだ何人かが黒霧に足止めされているのが見える。

 転移先がここでよかった。ビルより高い空中や深海、石の中などに飛ばされてたら皆死んでいた。

 

 だけど俺たちを殺してないって事は…やっぱり人質狙いですねー!

 仮にも雄英に入学した将来有望なヒーローの卵をヴィランが殺さない理由がないですもんねー!

 

 更に情報を得ようと辺りを見渡すと相澤先生がヴィランと戦っていた広場が見える。

 相澤先生はまだ戦い続けていたようで、ほとんどのヴィランが倒れている。

 早めに先生を助けに行くか、USJを脱出するべきだろう。

 サッサと動かねばと思うが、まだ此処での戦いは終わっていなかった。

 

 

 

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