第四魔法使いのヒーローアカデミア 作:ネル
箱内狭は代償魔術の使い手であり、代償魔術を発展させ第四魔法を獲得するに至った魔術師だ。
代償魔術とは何かを捧げて対価を得る魔術。
箱内は他の魔術はほぼ使えず、代償魔術に特化している。
八百万を治癒した魔術はおろか、魔弾ですら代償魔術を一工夫したもの。
他の魔術は使えるが代償魔術の練度には遥かに及ばない。
箱内がある目的を達成するには多くの魔術に手を出すことは不可能だった。
だからこそ、個性を代償魔術と呼べる程に特化した。
最終的には魔法にまでたどり着いた箱内の代償魔術、その極致のベールが剥がれる時がきた。
雄英高校ヒーロー科、それは数多くのトップヒーローを世に送り出してきた名門。
いずれヒーロー科の生徒達はヒーローの中でもトップクラスの実力を持ち世に羽ばたく。
だが、現時点で襲われているのはヒーロー科に入ったばかりの学生。
であるが故に理解出来ない。理想と現実の差を。
夢と悪夢は紙一重に存在することを。ヒーローとヴィランという存在を。
「相澤、先、生・・・・・」
ヒーロー科の緑谷の目の前で相澤先生が黒い巨体のヴィランに組み伏せられたまま腕を折られる。
相澤先生は生徒たちの避難する時間を稼ぐ為広場に飛び出し、そこにいたヴィランのほとんどを制圧した。
しかし敵の主力と思しきヴィランに敗北。
脳無と呼ばれるヴィランに押さえつけられ叩きつけられ血の池をつくりながら死に体へと変えられていく。
緑谷出久は手助けができると思っていた。
皆を守る為に一人で戦う担任の負担を、僅かでも減らせないかと考えて来た。
待ち伏せしていた敵を一掃する事に成功してしまったから、自分達も戦力になれるのだと、傲慢にも根拠の無い過信を抱いた。抱いてしまった。
違う。運が良かった。敵との相性が良かった。個性と場所が噛み合った。
多くの運、相性、環境は緑谷達に味方した。だが今度は味方しない。
さらに味方したところでどうしようもない圧倒的な力の差。
子供と英雄。緑谷に幾らハンデを与えたところでオールマイトには勝てない。
それと同じだけの力の差がヴィランと緑谷の間にはあった。
緑谷が幾ら助けたい、救いたいと望むも果たされることはない。
この窮地を逃れるには奇跡が必要で。まだ緑谷達には奇跡は起こせない。
では救い手はいないのか?いる、それは大量の魔弾と共に降ってきた。
「脳無!防げ!」
俺は耳朗達と別れた後、相澤先生を援護するために広場まで来ていた。
しかし、到着時には相澤先生は脳無に倒されていた。
やっぱ多対一はキツかったか。ま、倒れているかなりヴィランの数を考えれば大健闘したと言えるけどね。
特に目の前にいる脳無と呼ばれた個体。
不意打ちで魔弾一セット浴びせたが吹き飛ばせただけで何の痛痒も感じていない様子。
想定より2段階ぐらいは耐久力が高い、厄介すぎる。
鉄壁でも2積みしましたか?
「緑谷、相澤先生を頼む」
すぐ側に隠れていた緑谷達に呼びかける。
その隠れていた行動は正解だ、しかし今は隠れたままでいては困る。
相澤先生が倒れた以上、回復するか助けが来るまで粘らなくてはいけないのだ。
是非治療でもして相澤先生にワープの個性を抹消してもらいたい。
「箱内くん!?腕は!?」
「安いもんだ…腕の一本ぐらい…お前が無事でよかった…」
「箱内くん!ネタに走ってる場合じゃないよ!」
アホウ!ネタに走って救援が来るまでの時間を稼ぐんだよ!ヴィランがネタに乗ってくれば、それだけで軽い時間稼ぎになるんだよ!こいっ!乗ってこい!
そんな願いをヴィランは気にしない。
手を身体中につけた男は隣にいた脳無に短く呼びかけた。
「なんだいきなり血まみれで?
せっかく倒した中ボスを逃すと思うか…?やれ脳無」
悪意だらけの短い一言は脳無を動かす。
チリっときた直感を信じて必死になって横に飛び退く。
次の瞬間、脳無は地をひと蹴り、豪速で拳を振り下ろし終わっていた。
拳は軽々と先ほどまで立っていたコンクリートを割り、足は踏み込みだけで道中にハッキリとした足跡を残している。
驚愕すべき人類離れしたスピードとパワー、これなら相澤先生が負けたのも納得だ。
…マズイ、相澤先生が負けてるのも想定外だしこんなフィジカルお化けがいるのも想定外。
他の敵がレベル5なら、この敵はレベル60はある。
現状の魔力の残量は強敵と戦うには不安が残る程度しかない。
治療でほとんどの魔力を使ってからコイツと戦うのは苦行。
逃げたい。
それでも動揺を表に出さず問いかける。
「驚いた…こいつがオールマイト対策か?」
「オールマイトの100%を耐えられる衝撃吸収と超再生の個性を持つ怪人さ」
「なるほどそいつでオールマイトをやる予定だったんだな…だが計画は御破算だぜ。
それにオールマイトは本日有給でお休み、オールマイト殺害計画は諦めな」
ブラフだなと嘲るヴィラン。
しかしすぐ嗤っていられなくなる事態となる。
「“死柄木弔”」
「・・・・・っ!」
手の男の横に、唐突に黒い靄が生まれた。
それは一瞬の間に寄り集まり人形を成し、そこにはあのワープのヴィランがいた。
今回の襲撃で主力と思われるのは三人。
黒い巨体の持ち主で再生能力とパワーとスピードを併せ持つ脳無、手の飾りを身体中につけた死柄木と呼ばれた男と全身から黒い霧を溢れさせるワープの個性持ち。
今回ダントツで一番厄介なのがワープの個性持ち。
ワープ可能距離は雄英の警報作動範囲外からヴィラン達を連れて来れる事を考えると最低数キロ。
追加のヴィランを連れて来られるだけで戦況は絶望的、逆に誘拐され雄英外に連れ出されるのもアウト。
攻撃力はないように見えるが上空1キロ地点にでもワープさせられたら死亡確定。
黒い霧に包まれたら即アウト、オワタ式のクソゲーだね。
「――黒霧。13号は仕留めたのか?」
「行動不能には出来ました・・・・・が、何人かは散らし損ね――生徒に一人、逃げられました」
「――――は?」
出入り口前に残った奴らも突破口を開いたらしい。
突破できるとしたらスピードを出してヴィランを振り切れる個性の飯田だろう。
いつ逃げれたのか知らないが場合によっては今すぐの救援も期待できる。
いいぞ!飯田!お前がNo. 1だ!
「・・・・はあー・・・・・黒霧おまえ――お前がワープゲートじゃなきゃ、ここで粉々にしたよっ!」
ハイハイ、個性は粉々にする系ね。
手の飾りを身体中たくさんつけてるから触ったら発動する系の個性かな?
警戒するのは手だけでいいなら楽な方だね。
隙見て切り落としておこ。
しっぽ切って役目でしょ。って言われる前にお仕事だね。
死柄木は首を掻きむしりながら濃密な怒り、殺意を味方に向ける。
癇癪を起こしているが全て計画通り行くことなんてそうそうない。
今の俺みたいにな!相澤先生に八百万がピンチだった事と救援依頼が出来たことを伝えた後、後ろからチマチマ救援来るまで時間稼ぎしておこうと考えていたのに全てご破産になった俺みたいにな!…人生ままならんなぁ…。
「流石に何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ。あーあ。今回はゲームオーバーだ・・・・・帰ろっか」
迷惑客のお帰りだ、もう二度と来んな。
出禁だ、出禁。…よく考えたら最初から出禁では?
「けどもその前に、平和の象徴としての矜持を少しでもへし折って帰ろう!」
一瞬意識が飛ぶ。
気づけば脳無に横から殴り飛ばされていた。
それに気づいたのは殴り飛ばされて盛大に地面を転がっている最中。
やはりダメだ、今の弱体化したままでは分が悪い。
それでもただ嬲られて終わる訳にはいかない。
魔弾を幾つか脳無に向けて放つ。
脳無の動きが少し動きがとまったが成果はそれだけ、強すぎる。
「大魔弾!行け!」
「はっ、そんな豆鉄砲効く訳ないだろ!やれ脳無!」
普段の大きさを二、三倍にした魔弾が正面から当たったが少しスピードを落とさせるだけだ。
やっぱ魔弾で倒すのは無理っ!必死で避ける。
知ってた。知ってたがこれでどうにかなって欲しかった。
このままマトモに戦っても勝てない。
少なくともこの状態で勝とうとするなら大掛かりな下準備が必要。
脳無の剛腕をギリギリで躱わす。
相澤先生は?緑谷達が担いで逃げたが、遠くには逃げれてない。
ここから引けばターゲットを相澤先生達に変える。
そうすれば瀕死の相澤先生諸共緑谷、蛙吹、峰田が脳無に潰されて終わるだろう。
それで終わればまだマシ、上出来だ。
このヴィラン達はオールマイト或いは、雄英教師陣が来るまでクラスメイトを次から次へと殺して回る可能性が高い。
逃げてもいいがワープの個性持ちのせいで逃げれる気がしない。
なら足止めが出来るなんだから少しでも足止めするしかない。
魔弾が効かないなら…
「なら接近戦しかないよなぁ!」
…爆豪と同じような右の大振り!
反対側の腕の方に避ける、脳無の周りを回り込む、掴みかかってくる、腕を足で跳ね上げる、足が痺れる。
避けられない拳は受け流す、一瞬の接触で骨まで響く衝撃が届く。
対オールマイトを称するだけあってパワー、スピード、耐久力そのどれもが常識はずれ。
それこそオールマイトクラスの力を持っていた。
ギリギリ見切れるが長くは持たない、息が上がる。
少し距離をとり一呼吸入れる。
その行動は間違いだった。敵に対する認識が甘かった。
対オールマイト用の脳無、それを目の前にして一呼吸などあり得ない。
オールマイトならば一呼吸の間に1ダースはヴィランを退治をする。
それに並ぶようなヴィランを前に一呼吸など致命的な間違いで…
その代償は体で支払うことになる。
「しまっー」
この戦いは脳無の動きは技も何もないただの力任せな動きをかろうじて見切り、初動で潰せてこそ成立していた。
それが距離が空いて脳無が加速するためのスペースが空いたなら、魔弾でスピードを殺せてないならば、結末は一つ。
「おいおい、もう終わりか?元からボロボロったが更にボロ雑巾になったぞ」
体当たりされただけで10メートルは空に投げ出される。
かろうじて立ち上がれるが全身ボロボロ、口の中は鉄臭い。
腕は折れてプラプラと垂れ下がっている。
胴体もぶつかった瞬間軋んだような感覚がある、頭もふらふらする。
だか、待ってくれるような敵ではない。
「終わりか?ほらもう一発行くぞ」
脳無の追撃をなりふり構わず前に転がり避ける。
踏みつけ、魔弾を横から当てて逸らす。
…何でこんなことしてるんだ。相澤先生に救援を要請できたと伝えて、後は精々相澤先生の後ろからヴィランの牽制をするだけのつもりだったのに。
叩きつけ、脳無の足の間を潜り抜ける。
ヒーローになろうとしてはいるが真面目に働く戦闘系のヒーローを目指している訳でもないのに…
顔面へのパンチ、首をずらして対応。
ボロボロのコスチュームを脳無の顔に投げ目隠し、その隙に顔面へ魔弾を叩きつける。
「やめだ、やめ。やってられるか!」
「どうした?もうギブアップか?」
ギブアップ?な訳なかろう。黙って殺される?な訳あるか。
色々問題になりそうだが…殺させてもらう。
「ギブアップ?な訳あるか。諦めるにはまだ早い、全てを捨てるにも早すぎる。
ここからは魔術師としての時間だ。」
「はっ、やってみろよ。ヒーロー気取り」
ヒーロー科としての顔を捨て去る。普段は抑えている憤怒を僅かばかり表に出す。
天秤は傾いた。慈悲は要らず、残すものはない。コイツらは不用。
無言で手を天井に向けて掲げ白き光を生み出す。
俺の手の中に出来た白い光がUSJの天井を吹き飛ばす。
爆心地となった俺の周囲はクレーターとなり、余波は周囲の池、地面、建物を粉砕する。
箱内は何の考えもなく残り少なくなった魔力を使って破壊行為を行なったわけではない。
粉砕されたコンクリートブロック、鉄骨、土、水、全てが吸い込まれる。
歴史を燃料に、未来を光に、存在を空想に。実在を虚構に堕とす。
全ては先に繋げるため。
空気が変わる。光が歪む。世界が揺らぐ。
一つの魔力塊が箱内の前に形を刀にと変えながら現れる。
銘はない、箱内と同じく定義できない故に。
銘はない、箱内と同じく存在しないもの故に。
「次の命題は直ぐそこに。…お色直しは終わり」
USJに滅亡の足音が姿を現した。
緑谷達3人は相澤先生を連れて逃げていた。
だが同時に援護できないか、やれる事はないかと様子も伺っていた為見ていた。
箱内が脳無に押されて負けかけ、雰囲気が変わりヴィランと対峙する瞬間を。
「ーーこれは箱内くんが…?」
「狭ちゃんね、スゴイわ。まだ戦うつもりね」
その様子を見て本能的に脳無をけしかけた死柄木。
しかし脳無は生み出された箱内の刀の一振りにより胴を一閃され上半身と下半身に別れるのを見て失敗を悟る。
「マジかよ脳無が瞬殺とかどうなってるんだ…?」
脳無を切り捨てた箱内だったがその切り捨てた脳無の感触に疑問を抱いていた。
衝撃吸収と超再生の個性を持つが故の違和感とはまた別の違和感。
何かおかしい、何か変だ。
箱内が代償魔術を脳無に向けて使うと答えは出た。
「脳無は…死体…?どうなってる?」
調べた結果脳無は切り捨てる前から死体であるという結果が出た。
生前の姿も理解した、こんな黒い脳みそ丸出しの巨漢ではない。
生前の姿は路地裏にいるようなチンピラ風の男であり今の姿と全く一致しない。
「お前スゴイよ、脳無が死体だ、なんて気づくと思わなかった。流石ヒーロー気取り優秀だな」
ハッと他の2人も同じ死体である可能性に気づいて他の死柄木と黒霧に向き合い2人の情報も魔術で集める。
死柄木は人間。コチラはただの人。
ワープの奴、黒霧も死体。脳無と違うが…死体という意味では同じだ。
時間があればもっと調べるところだが今はここまでが限度。
調べるのは始末あるいは捕獲してからで遅くない。
牢に入れてからゆっくりとおしゃべりの時間を取ればいいのだ。
「対オールマイトの要は切り捨てた、後はお前達だけ詰みだな」
「おいおい、ヒーローが切り捨てちゃダメだろ」
「正当防衛って便利な言葉だよな」
「そうかよ」
頼みの綱である脳無を切り捨てられても嘲笑いながら余裕を見せる死柄木。
「その力は制限時間か回数制限があるんじゃないか?
最初から使ってれば余裕だったもんな。あと一つ、まだ俺たちはゲームオーバーになってない」
余裕たっぷりの死柄木のセリフ。
それが何を意味しているのか理解するより早く、背後へ腕を振り抜くと脳無の拳が迫っていた。
ほんの少し前には脳無を切り捨てた一撃だが今度は唐突な一撃に拳と刀がぶつかり拮抗する。
切り捨てたはずの脳無が何事もなかったかのように襲いかかって来ていた。
「確かに真っ二つに切り捨てたが」
「超速再生の個性持ちの怪人って言わなかったか?
脳無は真っ二つにされても再生するんだよ」
切り捨てた脳無の下半身はすぐそこに落ちている、離れた場所に落ちたはずの上半身から足が生えて再生していた。
脳無とぶつかる。殴る、斬る、蹴る、何度も攻撃を当てるが高速で回復していく。
脳無は今切り捨てた片手すら再生して段々とこちらにだけダメージが増えていく。
あえて脳無の技も何もない力任せな拳を受けて殴り飛ばされヴィラン達から距離をとる。
魔力的にも厳しくなってきたし、戦闘はここらで終わらせなくてはならない。
これ以上は周囲に被害を撒き散らす可能性が出てくる。
「異界装填、実在要素破棄、境界喪失、ロストオーダー…」
用意されるこの一撃は未だ虚構たる純白の一撃。
スッとヴィランに滑らかに向けられるのは夢の末路。
当たったものにはあり得ざる末路を辿ることになり世界から弾き飛ばされる。
「脳無!黒霧ー!」
ヴィラン達はもう助からない。
危機感を覚えた死柄木の指示で脳無が身体をはって防ごうとしようが、いくら黒霧がワープの用意をしていようが助からない。
全ては無駄。
代償魔術の極地に、四の魔法に至る一撃は防げない。
彼らは幾ら助かりたい、生き延びたいと足掻くも果たされることはない。
この窮地を逃れるには奇跡が必要で。彼らには奇跡は起こせない。
では救い手はいないのか?
いる、それは。絶対的な正義は空から降ってきた。
ヒーロー、ヴィランの全ての苦境をひっくり返すジョーカーがやってきた。
破壊し尽くされたUSJの上空から激怒したオールマイトが姿を現したのだ。
「嫌な予感がしてね……校長のお話を振り切りやってきたよ。来る途中で飯田少年とすれ違って……あらまし聞いた」
『まったく己に腹が立つ……!子供らがどれだけ怖かったか……後輩らがどれだけ頑張ったか……!しかし……!だからこそ胸を張って言わねばならんのだ!』
「もう大丈夫!私が来た!」
憤怒の表情のオールマイトはネクタイを引きちぎり、広間に降り立つ。
あまりの迫力に敵味方共に動きが止まる。
「箱内少年!よく頑張った!ここからは彼らの相手は私がする!」
………。ここまででいいか。
「分かりました。後はお任せします。
脳みそが再生能力と超パワーにスピード、モヤがワープ。手の奴以外は動く死体です」
手に持っていた極光を握りつぶす。
戦闘体勢は解除だ。学生の立場、オールマイトのヒーローとしての立場を考えるとこれ以上手を出すのはやめといた方がいいだろう。
これで俺の戦闘は終了だ。
よっしゃ、逃げたろ!サービス残業終了ー!
オールマイトと脳無の激しく殴り合う音を背に相澤先生を背負って逃げていた緑谷達の元に向かう。
「緑谷に峰田!蛙吹さん!」
「箱内ー!お前死んじまうかと思ったぞー!でも腕がー!」
「まず俺はしばらく気絶する、心配は無用。命に別状はない。
代わりに八百万がマズイ、致命傷だった。
俺の個性で治したが何が起きるか分からない。
リカバリーガール若しくは救急隊に詳しく見てもらってくれ」
「八百万さんが!?それに気絶!?
ちょっと待って!待って!説明を…!」
「ん、じゃよろ!」
時間がないので早口で一気に要件を捲し立てる。
治療は初めての事だ。練習も何もあったものではない、一時の窮地を凌ぐ為だったが出来ることならやりたいことではなかった。
そう一方的に言い切った後意識は薄れて闇に包まれる。
魔力切れって辛いよね。……やっぱり、働き過ぎは良くないね。