機動戦士ガンダム三次創作 ゆっくり機動戦士ガンダムZZ 作:泉 とも
月のグラナダにて。
「あなた、あなた!」
「うん、ああ、どうした、ララァ」
グリプス戦役が終わると、シャア・アズナブルは妻のララァと共に月へ移り住んだ。
ジオン軍の中ではここが最も中立性が高く、安全だった。
「心ここに在らず、あなたも何かを感じ取っているんでしょう」
「そうか、君もか。アムロが来ている」
酒の入ったグラスを傾けて、シャアは呟く。
「会ったことはない。知らない人間だが、とてもそう思えない。名前を口にするだけで、彼のことを思い出せるような気さえして来る」
それは奇妙な共鳴であった。ニュータイプとしての接続、あるいはもっと深い繋がり。
「ですがこれはとても、とても禍々しいものです。人間の心には思えません」
「ああ。それでもアムロなんだ」
そう言ってシャアは虚空を見つめる。このところの彼は、変な夢をよく見た。
カートゥーンめいたギャグアニメの住人になったり、客を期待値で釣った映画に出たり、トレジャーハンターではなかったり、スナイパーだったり。
「彼は怯えています、私たちの存在に。私たちの存在を許せば、自分の存在が否定されるかのような、そんな恐怖が伝わってきます」
ララァはアムロの狂わんばかりの、既に狂ってしまったかも知れない思念から、そう結論付けた。
「いったい何が起きているんだ、む?」
「旦那様、ハマーンと名乗る女性士官から通信です」
ドアを開けて入って来たのは、元ジオン軍人で使用人のアカハナだ。ゴッグみたいな姿が子供たちに大ウケしたので、今もマッドアングラー隊の姿で働いている。
「ハマーン、誰だ?」
「ソロモンの駐留部隊の司令だそうで」
「分かった、繋いでくれ」
シャアに言われてアカハナはタブレット端末を持ってくるが、この場面の画質は昭和と思って差し支えない。
「もしもし?」
「お初にお目にかかります、シャア・アズナブル大佐。私はハマーン・カーン。マハラジャ・カーンの娘で、今は任務にてソロモンに留まっております」
ソロモン壊滅のニュースは月にも入っていた。
彼とララァはちらりと視線を交わす。
「うむ、それで?」
「実は込み入った事情がありまして、パイロットとして大佐の助力をお願いしたく、連絡をさせて頂いた次第です」
「詳しく話を聞かせてくれ」
「荒唐無稽な内容ですが、お望みとあらば」
そしてハマーンはこれまでにあった出来事を、過不足なく伝えた。
「あなた、これって」
「何か?」
「いや、実は我々にも思い当たる節があるのだ」
今度はシャアが、最近自分たちの身に起きている変化を伝える。
「明らかにそのアムロが私たちを呼んでいるのだろう。ララァ、私は行かねばならない。君は子供たちを頼む」
「いいえ、あなた。アムロが出て来るのなら、私も行かねばなりません。例えこの身が引き裂かれても、あなたとこの宇宙を守らねばなりません」
シャアはララァを見つめた。彼女はこの宇宙でも指折りのニュータイプである。
自分よりも事態に対して、一段踏み込んだ理解をしていると、彼は判断した。
「そうか。分かった。ハマーン、聞いての通りだ。私たちも直ぐにそちらへ出発する。私たちの機体はどうなっている?」
「現在開発中ですが、お二方が到着することには完成しているかと」
「分かった。ありがとう、ではまた会おう」
「はっ!」
通信が切れると、シャア少しだけため息を吐く。それは随分と懐かしい仕草に思えた。
「あなた、くれぐれも無理はなさらず」
「分かっている。だが、一つくらいは私が勝つ話があってもいいはずだ」
その頃ソロモンでは。
「どっちだ!?どっちのアムロが核を撃てる!?」
「インパクトの方のGP02よ魔理沙!」
ゆっくりたちは湧いて出るアムロたちとの死闘を繰り広げていた。
「奇跡が使えるアムロは限られているわ!」
「またZZが、いけない避けて!」
気力が足りず撃てないはずのハイメガキャノンが宇宙を切り裂く!
「クソ! 何なのだあの機体は!」
「アムロより強い主人公が乗ってたνガンダムより強いガンダムだぜ!」
聞く人によってはキレるような発言である。
「Gジェネのアムロが来ます!」
「リックドムを12機ぶつけろ!それで勝てる!」
「ギレンの野望のアムロが来ます!」
「リックドムを12機ぶつけろ!それで勝てる!」
ドムは強い。実際これで落とせる。相手が初期のガンダムならの話だが。
「やはりガンダムゲー出身のアムロが一番弱いな」
他の主人公を食ってしまうと皆がしらけるからである。
「スパロボのアムロはこんなに厄介なのにね」
それでもシリーズを追うに連れて、徐々に弱体化していくので、まだマシではあった。
加えて援護防御も満足にできないし、乗って来る機体も噛み合わなければ、覚醒もないので連携が取れないのだ。
「スタンドプレーしか取り柄の無い男なぞ!」
「怖るるに足らん!」
グレミーとマシュマーが見事な連携で、ディジェという名の何かに乗ったアムロを撃破する。
「ガンオンのアムロが来ます!」
「しゃぶれ」
一見して優勢ではあったが、それはゆっくりハマーンの支えがあってこそだった。
彼女はアムロのニュータイプ能力、つまりボス属性や主人公補正を切りながら、ひよこのオスメス鑑定士の如く、誰がどのアムロかを見極めている。
それを霊夢や魔理沙が伝え、対策を講じる。
「意外とハマーンが優位に立ててるのも助かるぜ」
ちょっとでもクロスオーバーすると話を盛られるが、ゼータ時点でのアムロがハマーンやシロッコと戦っても、そこまで大物とは見られないだろうが、だいたい逆シャア時点のアムロで話しているので、その辺を誤魔化してるのずるいと思う。
「どこまで行ってもアムロなのもそうね」
「そういえばそうだね。奴に部下や仲間はいないのかい?」
「いることはいますがニュータイプ能力は高くないので、連れて来ることができないのでしょう」
仲間(引き立て役)はだいたい散り散りになり、死別したり職場の上司になったりする。
「また本人は高機動と必要十分な火力のシンプルな機体攻勢を好みますが、相場を超えた重装甲には非常に相性が悪いので、ジオンが勝利を迎えたこの世界では、思うように戦えないでしょう。ここにはバルカンで大爆発を起こすような軟弱なネオジオン製MSはいません」
MSの性能の違いが戦力の決定的な差を埋めている。
これこそが別ルートの醍醐味である。
「だけど妙ね。未だに奴が姿を現さないわ」
「奴とは?」
「本家本元というか、偶像崇拝の極致みたいな奴だぜ」
50年と言う歳月をかけて凝り固まったドグマ。
その根幹たる白い悪魔の最終形態。
「むっ、総員離れろ!」
ハマーンが警告するのとほぼ同時に、ニュータイプ能力のあるものは全員が頭から白いのを出した。
そして虚空から無数のビームとファンネルが飛来する。
「来たぜ!」
「噂をすれば、ね!」
盾と重装甲で耐えつつ、全員が機体を寄せ合う。
「密集隊形! アレに複数を薙ぎ払うような武器は、む!オープンゲット!」
ゆっくりハマーンは咄嗟に期待を分離させると、ゲッターがいた地点を太いビーム光が貫いて行く。
「これは……!」
「出やがったわね後付け最強軍団!」
「いよいよ一軍のお出ましって訳かい」
MSVを含めたνガンダムたちが、最後の攻勢とばかりに宇宙の裂け目から殺到する。
『『『『『いけっ!フィンファンネル!!』』』』』
オールレンジと言いながら推進剤の都合上遠距離攻撃はできないはずなのに一方的に飛び込んで来る無数のファンネル!
「怯むんじゃない! 全員一斉後退! 追って来た奴を撃ち落とすんだよ!」
「ビルドファイターズでやってた奴ね!」
「ファンネルは早い段階で廃れる技術です。狼狽えずに対処してください!」
シーマの指示にゆっくりハマーンがメタいことを言う。やりたいことは早々にやってしまったせいとも言う。
「あむぅぅぅぅろろろろろろろろ!」
「男の風上にも置けぬ悪霊めが! このマシュマー・セロが成敗してくれる!皆の者続けい!」
ファンネルを撃ち落とし、切り払いながらマシュマーが叫び、宙域は俄かに乱戦となる。
その中を、味方を巻き込むことなく、ハイパーメガ粒子砲が突き抜ける。
「どうやら既に戦いは始まっているようだな」
「行きましょう。この戦いに終止符を打ちに」
「ああ、そうだな、ララァ」
ラーカイラムともネェルアーガマとも付かない戦艦が一隻、リリーマルレーンへと接近する。
「あれは!?」
「あれこそ、この世界の光」
「グルルルルルルル!」
温かいニュータイプの心に、アムロが敵意を剥き出しにする。
「彼こそは生ける伝説にして、バンナムが最も恐れたガンダムの真の主人公」
ゆっくりハマーンは僧侶めいた言い方で呟く。
戦艦のカタパルトには、燦然と輝く赤い重MSの姿。
「こちらシャア・アズナブル。これより貴君らを援護する!」
「サザビー出ます!サザビー発進!」
長きに渡り磔にされていた男が今、ガンダム神話を脅かす。