機動戦士ガンダム三次創作 ゆっくり機動戦士ガンダムZZ 作:泉 とも
ボッシュの単独テロとソロモン襲撃から早数か月。
復興に勤しむ同宇宙基地にて。
「そうか、お前たちも帰るのか」
「思ったより長い休みになっちまったのぜ」
「次の収録も決めないとだし」
ゆっくりたちはマシュマーたちと、別れの挨拶を交わしていた。
彼は手足をギプスで固め、車椅子で移動していた。押しているのはゴットンである。
「宇宙の裂け目もそろそろ閉じるからね」
彼女たちはそれとは関係ないのだが、敢えて関連付けて話した。その方が話の流れがスムーズだからである。
「なるべく気にしないようにしていたが、そのせいか気にならなくなってしまったな」
グレミ―が苦笑しながら言う。
気が付けばゆっくりたちの数も、結構増えていた。
「それくらいの距離感が互いに丁度いいのです」
「異形のハマーン様、あなたには、大変お世話になりました」
「それを私と呼ぶなマシュマー」
「マシュマー。あなたの献身には大いに助けられました。感謝します」
「もったいなきお言葉」
ゆっくりハマーンの方が扱いが良いせいか、マシュマーはどちらかというとゆっくりの方に懐きつつあった。
「変なお咎めもないみたいだし、これで安心して帰れるのぜ」
「心配してくれているのか」
「半分くらいは私たちが原因だからね」
「どういうことだ?」
「私たちがこの世界を見つけなければ、こんなトンチキは起きなかったと思うの」
「まあ見つけたのが私たちだから、こんなもんで済んだとも言えるのぜ」
言われてハマーンは、先日の戦いでララァ・スンの言っていたことを思い出した。
「サイコフレームの力か」
「ええ。もっと真面目で思い悩んだ人間がこの世界を見つめていたら、あんな勝ち方はできなかったはずよ」
「これ以上世界を荒らさないよう、私たちは引っ込むんだぜ」
ボッシュは世紀の単独テロリストとして悪名を馳せていた。
地位と技術さえあれば、一人でもこれだけのことができると、歴史の教科書に載る最も新しい人物となっていた。
だが、それはゆっくりたちという観測者たちを経ることで、現れた形である。
もっと良い形に済むことも、悪い形に発展することも、十分に有り得た。
「みんな考えることは同じって昔から言うでしょ?これからはそれが実現していくの。だからみんなが作者の位置を取り合うことになるのよ。これは他の世界でも珍しくないわ」
「嫉妬に狂い、心を閉ざし、世界の破滅を願う。それはあまりにもありふれた物語です。もう一人の私もそうでした」
ゆっくりハマーンの言葉に、人間のハマーンの肩眉が上がる。
「私があんな俗物になるというのか」
「私たちの中には子供の頃に悪い男に騙され、人を見る目を失い、ヒステリーで取り返しのつかない罪を犯して、どんどん人生を転げ落ちて行く者もいました。誰がどう間違えるのかは、その世界次第なのです」
「なんとお労わしやハマーン様……」
マシュマーが死ぬほど痛ましい物を見る目でハマーンを見つめる。彼女の顔がまた険しくなる。
「ここでのあなたは彼らと接点がないので、平和に生きていけます。仲間にも恵まれました。私は全ての私たちの、言わば集合体のようなもの。あなたの平和と幸福は、私たちの願いなのです。どうかそのままのあなたでいてください」
「お前は……」
ハマーンはゆっくりの自分の名を呼びたかったが、できなかった。自分の名前であるから。
「それと、くれぐれも内乱は謹んでください。また宇宙の裂け目が出来たとき、今度こそこの世界が終わるかもしれないのですから」
「やり過ぎると全然話がピンと来ない、宇宙の平和を守るシステムとかが来ちゃうのぜ」
(ガイアセイバーの話かしら……)
「個人でどうなるものでもないが、そうだな」
「あなた方に魂の安らぎあれば、またゆっくりとして出会うこともありましょう」
二人のハマーンが見つめ合う。人間のハマーンは、少しだけ不機嫌そうに唇を結び、ゆっくりの方は小さく微笑む。どちらも寂しさを伝えていた。
「それと一つ忠告をしておきます。私たちは好みの異性からは嫌われる相性ですので、早めに妥協点を見出すことが肝要ですよ」
「まるで小姑のようだが、他ならぬ私の言葉だ。気を付けるとしよう」
最後にそう言って、彼女ふっと笑った。
「さあ、そろそろシャトルが来るから、もう行くのぜ」
「お世話になりました。じゃあね!」
そしてゆっくりたちは、宇宙港の一画を目指して跳ねて行く。
『まろん社』とか書かれたボロボロのスペースシャトルに、ゆっくりたちが乗り込んでいるのが見えた。
それはゆっくりと発進すると、直ぐに宇宙の闇に紛れて見えなくなる。
「まるで銀河鉄道だな」
「と言いますと?」
「あんなシャトルの手配は、どこにも入っておらん」
「じゃあ、幽霊か何かということですか……!?」
この世ならざる宇宙船と、奇妙な隣人たちを見送ると、ハマーンは歩き出した。
後を追ってマシュマーが車椅子を押してもらう。
「さあな、だが随分と毒気を抜かれてしまった。当分は仕事にならん」
「でしたら、このマシュマー・セロが如何様にも働いて御覧に入れます!」
「マシュマー様、その前に怪我を治しませんと。全治三ヶ月なんですよ、その体」
道行く三人の元に、今回出番の無かった部下たちがやって来る。
特に内紛も無く、ガンダムの窃盗も起こらず、一瞬の嵐も去って、彼等は日常を取り戻す。
これより数年後。
医療分野の基礎技術として位置づけを検められたサイコフレームは、程なくして陳腐化し、より発展した物に取って代わられ、歴史の一部となって忘れ去られていく。
一方その頃のゆっくりバース。
「ただいまなのぜ」
「ふー、今回も冷や冷やしたわ」
どこかの神社っぽい家に、ゆっくりたちも帰宅した。
「出先の世界のゆっくりがいたから良かったけど、そうじゃなかったら終わってたかも」
「私もこれに懲りて、今度から有名所以外でのクロスオーバーは気を付けるのぜ」
ちゃぶ台を囲んで饅頭たちが人心地をつく。
「そういえばハマーンたちはどうしたのかしら?」
「他のゆっくりたちとSD界に行くって言ってたぜ」
「私たちも最初からそうしとけばよかったわね」
「そうかなあ」
SD界はガンダム世界の中でも、比較的ゆっくりたちと距離感の近い世界だった。
「あそこは手塚治虫の火の鳥みたいなのがいるから、迂闊に目を付けられたら大変なのぜ」
「どこにでもいるのねそういうの」
まったりと過ごしながら、二人は荷解きを始める。
「あんなに戦ったんだし、機体の一つくらいお土産に欲しかったのぜ」
「あっても維持ができないでしょ。プラモで我慢しなさい」
ゆっくり霊夢がちゃぶ台の上に、完成品のガンプラを積み上げていく。
それらはどれも、つい最近見たことのある物ばかりだった
「それってあの世界のMSか? いつキット化したんだ」
「帰り際にグレミ―に頼んでね、整備班が自作してたのをお土産に譲ってもらったの」
「ちゃっかりしてるなあ」
言いながら魔理沙は、戦艦のクルーたちと撮った写真を並べる。
「あんたこそ何時そんなの撮ったのよ」
「舞台裏の処理ってことで一つ」
写真の中には『本編にそんなシーンなかったですよね?』みたいな場面が映っていた。
「月並みだけど、終わり良ければすべて良し、だな」
「まあ魔理沙の企画にしては面白かったって言ってあげるわ」
やいのやいの言いながら、二人もまた自分たちの日々に帰った。
「あいつらも面白かったから、その内また会いたいのぜ」
「そんなポンポン行っていいもんじゃないでしょ。気持ちは分かるけど」
もう二度と交錯することのない世界で、彼等は自分たちの明日をまた迎える。
その先でまた、両者の行く末が交わることを祈って。
<了>