機動戦士ガンダム三次創作 ゆっくり機動戦士ガンダムZZ 作:泉 とも
アクシズ内のとあるMS格納庫にて。
――おい聞いたか?あの偽ザビ家の話。
――何でも代表はグレミー・トトに決まったとか。
――どういう風の吹き回しだろうな。
宇宙要塞アクシズには、宇宙戦艦等が入港するドックの他に、MSの格納庫がそこかしこにある。
有事の際には蜂の巣を突いたかのように、多数のMSが出撃できるようになっている。
「それで、私に用事とは何だ」
「何ってお前の機体を用意してやったんだぜ」
そしてマシュマーは、ゆっくり魔理沙に呼び出されていた。
周囲の者も最初こそゆっくりには驚いていたが、深く考えないようにしたり、関わり合いにならないようにしたりと、精神的な自衛によって平静を取り戻していた。
「私の機体、私にはガルスが、あ!?」
「これこそガルスJの改良機、イフリートⅡ(ツヴァイ)なんだぜ!」
イフリートⅡ
一年戦争時、イフリートというグフとドムの中間的な機体が存在した。
グフの装甲とパワー、ドムの機動性という強そうで実際に強い機体が。
本機はそれらの後継機に当たるガルスJとドライセンによって、現代に再現されたものである。
「スラスター周りの干渉を避けるために、気持ち胴体を長くして、バックパックをちょっとだけ上にズラしたのぜ」
ガルスJをベースにしながら、腕部のカバー及び肩部と腰部をドライセンと交換。これにより背部全面に推進器が拡充され、腕部には袖が付きビームキャノンが追加された。
胸部中央には目眩まし用の拡散メガ粒子砲、首と脚部にはエネルギーパイプが増設。
至近距離での丸腰が最も火力を発揮する仕様になっている。
「とにかくパワーがあるから、乗り回して慣らしを済ませて欲しいのぜ」
「驚いたな。貴様がこれをやったのか」
「この世界は頭の悪い設定をゴリ押しするためにコンピューターが異常に発達してるのぜ。たぶんサルでも使えるんじゃないのか?」
他の作品では実際にサルが動かすMSが出て来たりする。
「今度の試合のことも考えて、ちゃんとビームの出力や弾薬は低ランクにしてあるのぜ」
「うむ。なるべくなら不幸な事故は避けたいからな」
「ちゃっちゃと慣らし運転をして欲しいぜ」
ハマーンが提案した代表同士の決闘は、主に次のようなルールが制定された。
一つ、頭部を破壊された者は失格となる。
一つ、コクピットを攻撃してはいけない。
一つ、アクシズがリングだ。
などなど。その他細部が決められたが、要は戦えなくなったら負けというものである。
――おいアレ。
――グレミーだ。
――あいつもここに機体を取りに来たのか。
「グレミー?グレミー・トトだと」
整備班の声にマシュマーが振り向くと、そこには金髪の如何にも坊やという風情の青年がいた。
グレミー・トト(18)※である。
※この物語ではグレミーとマシュマーは同い年という設定。
「マシュマーか。久しぶりだな」
「お前も自分の機体を用意したのか」
「ああ、この勝負はジオン軍に属する者が有利だからな」
グレミーはマシュマーの機体を見ると、表情を引き締める。
「アレがお前の機体か。随分力強いな」
「ふっ、騎士たる者、常に堂々とせねばいかん」
(設計したのは私なんだぜ)
そして今度は奥の一画を見る。そこには連邦系と分かるゴーグル顔の機体が佇んでいる。
「アレが私の機体だ。ガンキャノン・ディテクターというティターンズの新型を接収し、ネモⅡの部品でカスタムした」
(水子の悪魔合体なのぜ……)
グレミー・トト専用ガンキャノン・ディテクター
グリプス戦役中にティターンズによって開発されたが、同組織が壊滅し紛争も終結したことで、完全に行き場を無くし、ここまで流れて来た物が本機である。
同様に後継機を開発したが、同じ経緯で彷徨っていたネモⅡの、部品と設計を流用し補強がなされている。
シールド内側のスカスカの肩、隙間が空いて関節部が露出し防御能力の無いスカート部、前腕部プロテクターの二の腕への流用や埋め合わせに加え、背部や後脚部への推進器の増設等と、ケチった部分の埋め合わせが主な改善項目である。
砲撃機なのに不安になるほどの細腕も太くなった。
「下克上の意思表示という訳か」
「キャノンのバックパックも改良した。決闘時には出力を抑えてやるが、本来はかなりの威力が出るぞ」
グレミーの言う通り、ディテクターの大型かつ歪な機体背部は、改良した物へと変更されていた。
マラサイの大型プロペラントタンクをベースにしたバックパック、その下部にはジムキャノンⅡの物を組み合わせ、上部にはディテクター本来の推進器と砲が付いている。
機体が重くなるならパワーで補えば良いという、あまりにも愚直な機体設計だった。
「もしも同じ防御力を持った軽い装甲材が開発されれば、この機体は大化けするだろうな」
「敵ながら天晴。それでこそ倒し甲斐があるというもの」
重量級同士の殴り合いをするという合意。気が付けば二人の青年は、闘志に満ちた、それでいて友好的な空気が流れていた。
「だがそれだけに解せん。グレミー、お前ほどの男が、何故あのような連中の中にいたのだ」
「笑わずに聞いてくれるか」
「無論だ。話してくれ」
マシュマーは率直な態度で尋ねた。裏表のない真っ直ぐさが、彼の人間としての魅力だった。
「……実は私は、自分の生まれについて、心当たりがあったのだ。それで、自分の今の地位は努力によるものではなく、血筋のおかげだったのではないかと。ある日届いたあの不審なメールに、私の不安は爆発した」
元祖ジオンに蔓延した、出所不明の血筋の証明書。
グレミーはそれを見て居ても立っても居られなくなった。
「馬鹿な。私はいつだって貴様に全力で挑んで来た!士官学校時代、何度も貴様に前を行かれて、幾度と無く煮え湯を飲まされ、どれだけ枕を濡らしたことか!私の敗北を嘘だと言うつもりか!」
「そうだ、私は馬鹿だった」
憤慨するマシュマーの顔を見て、グレミーが悲し気に微笑む。
自嘲の笑みだった。
「蓋を開けてみれば、自分と同じ口車に乗った者があんなにいた。安心したよ。私はただ詐欺に引っ掛かった愚か者に過ぎなかった」
「そこまで分かっていながら、何故あのような場所に留まるのだ。奴らはまるで、貴様を身代わりにするかのように、代表に仕立て上げたのだぞ」
マシュマーの怒りは、次第に献身へと変わっていた。
同じ学び舎で競った同胞のことを、彼は心から案じていた。
「だからだ。こんなくだらないことで、誰も彼もが人生を棒に振ることもあるまいと思った。祭り上げられるのは、私にとっても都合が良かったのだ」
「グレミー……」
グレミーはこの乱痴気騒ぎの責任を取るつもりでいた。周りが押し付けるつもりでいることを、理解した上で。
「代表として罰を受ければ、その下にいる組織も解散させられるはずだ」
「そこまで覚悟の上なら、私も止めん。だがなグレミー、共に士官学校を出た誼だ。貴様に一つだけ入れ知恵をしてやる。耳を貸せ」
「……?何だ」
マシュマーはグレミーを手招きすると、一計を授ける。
空回りしたり性格が捻じ曲げられたりしがちだが、何も考えられない人間ではないのだ。
「そんなこと、彼らを裏切ることになるだろう!」
「元より貴様がそうだろうに。むしろ話を有耶無耶にするにはこれしかない」
ともすれば談合にも映る二人の会話。
政治劇ならば脇が甘いと言われても仕方がないが、彼らは決して敵同士ではない。
「有耶無耶にする、か。確かに」
「それにだ、これには一つ困難な条件が伴う」
「困難な条件、それはいったい」
マシュマーはその言葉を聞くと、少し距離を置き、指をビシッと前に突き出した。
「グレミー・トト!貴様が私に勝つことだ!」
高らかな宣言。
やる前から勝ち誇る同期に、グレミーは残念そうに首を振る。
「それならば問題はない。今度も勝つのは私だ、マシュマー・セロ!」
世上の邪気を振り払うかのように、二人の青年は睨み合い、火花を散らした。
そして。
「ということがあったんだぜ」
「ああ~男の子って感じね~」
「ちょっと見たかったですね」
その晩ゆっくりたちは、マシュマーたちの件でそこそこ盛り上がったのだった。