機動戦士ガンダム三次創作 ゆっくり機動戦士ガンダムZZ 作:泉 とも
「アムロォォォォ……!!」
「くっ、たった一人相手に、なんてザマだい!」
ボッシュの凶行の後に現れたアムロは、シーマたちに攻撃を開始した。
機体性能はそこまで高くないはずだが、盛られまくった能力のせいで、あっという間に彼女たちを追い詰める。
「くっ、なんという強さなのだ!」
「エネルギーも無尽蔵なのか、どうなっている!」
マシュマーとグレミ―も焦り、苛立つ。勝ってる間は弾切れを起こさないのがガンダムである。
「いったい何が起きているというのだ……」
「この世界の私、聞いてください」
「なんだ化物、今は遊んでいる暇はないぞ」
「私たちのサイコミュで、あの機体のニュータイプ能力を封じ込めます。そこを狙うよう皆に伝えてください」
ハマーンはゆっくりハマーンを睨んだ。
まるで全てが分かっているかのような態度が疑わしかった。
しかし迷っている暇も無かった。
同じ超能力を持つ者同士、嫌でも分かり合ってしまう。
「分かった。各員、今から敵MSのサイコミュを封じ込める! その瞬間を狙え!」
「霊夢さん、魔理沙さん、お聞きの通りです。お二人の力も貸してください」
「いいわ、元々あんたから借りた設定だしね」
「設定言うなし。でもいいぜ、持って行いけ!」
ゆっくりハマーンはゆっくり霊夢と魔理沙から、ニュータイプ力を借り受け増幅。
「悪しきサイコ力よ、下がれ!」
「アムロ!?」
強力な緑色のオーラが宇宙へと伸び、リック・ディジェを拘束する!
「今です!」
「子供騙しがぁッ!」
機体の能力を押し上げていた超能力を奪われ、弾幕を回避できなくなったディジェに、次々と攻撃が突き刺さる。
重装甲も数の暴力から耐弾能力をオーバーし、破損、圧壊を続ける。
「あ、アムロオオオオオオーーーーーー!!」
アムロ・レイ爆散!
「はあ、はあ、やったぞ!」
マシュマーが勝鬨を上げる。ここでやったかと言わず、素直に勝利を確信したことで、戦闘が終了した。
「各員帰投せよ。それと、桃毛の化物から話があるそうだよ」
そしてザンジバルの艦首にて。
「皆さん揃ったようですね」
「どういうことだハマーン、展開が唐突過ぎて訳分からんのぜ」
「それを私というな」
「まずあの機体とパイロットについて教えな」
仲間たちに囲まれたゆっくりハマーンは、小さくため息を吐いてから、一同を見回す。
「アレはアムロ・レイの霊。略してアムロ霊です。機体はこの世界で活動するために形作られた肉体でしょう。実際のMSという訳ではありません」
「アムロ・レイ?誰だ」
「連邦軍の技術士官、テム・レイの息子で、別の世界では人類の破滅の道筋を立てた超人です。MS操縦の天才で強力なニュータイプでもあった彼は、一人で戦争を終わらせるほどの力を持っていました」
「別の世界、もしかしてお前たちがたまに言っていたことは、本当のことだったのか?!」
「往生際が悪いのぜグレミ―」
「現実を受け入れる根性がないから詐欺に引っかかるのよ」
「うっ!」
霊夢の一言がグレミ―の胸を抉る。そもそもガンダム自体幽霊ネタは散々擦ったしSDガンダムでもやった。
「にわかには信じ難いが、優れたニュータイプや強化人間が、死者の念と交流したとの記録もある。死者の魂がある以上、地獄や冥界もあるのやもしれんな」
額に手を当ててハマーンが呟く。そういえばこの人だけ幽霊になってうっふんとかぼっぴんとか言わなかったな。
「話を戻すけど、どうしてアムロがここに?」
「恐らくはサイコフレームのせいでしょう」
「サイコフレームだって?」
「知ってるのかガラハウ大尉」
「確かアナハイムで作ってる、バイオセンサーやニュータイプ強化用の金属素子が、そんな名前だったね」
そう言ってシーマはそれの説明を粗方してくれた。流石は産業スパイもこなす元工作員である。
「ニュータイプとしての力を極めた者は、刻を見ることができます。それは人が書物の頁を捲るように」
「確かそれでララァは人類の歴史とかを見て、最近の二次創作だと異世界に移動できるようになったんだったわね。アムロも似たようなことしてたわ」
ゆっくりたちの話に周りがどよめく。明らかに信用できなくなってきたようで、真面目に聞き入っているのは最早マシュマーだけである。
「アムロはララァや他の若者たちよりニュータイプ能力自体が劣っており、加齢も伴った結果、そして何よりも彼自身の正体のせいで、サイコフレームに寄生しても、別の世界に現れるには依り代が必要でした」
「サイコフレームに寄生だって?」
「そうです。アレは死者の念を取り込み、それを強めることができます。やがて宇宙を彷徨い、別の宇宙、別の世界へと向かうのです。アレは第二次ネオジオン抗争の最後、彼はサイコフレームに寄生して宇宙を脱出しました。そして生前の未練である、ララァ・スンとの恋路を成就させるべく、他の世界へと干渉を始めたのです」
「何とも情けない男だね」
「能力は品性を担保しないわ」
「性格が終わってるけど優秀な科学者とか幾らでもいるしな」
むしろガンダムはそんなのばっかり。
「奴の正体とは何だ?度が過ぎた悪霊という訳でもないのだろう」
「根源的破滅招来体」
「何と言った」
「根源的破滅招来体、文字通り人類や世界に破滅を齎す者。アムロ・レイは彼らの一側面に過ぎないのです」
ゆっくりハマーンは悲しげに語った。
「それってウルトラマンの奴でしょ?」
「いいえ、それは世界毎に異なる形で存在します。仮面ライダーでも、ガンダムでも、世界を破壊する者は、その世界に合った形を取るのです。アムロは宇宙移民の独立を最後まで妨害することで、一度は人類の文明が崩壊するルートに乗せました。彼はガンダムの世界における根源的破滅招来なのです。宇宙の裂け目、大地や海の底から、人知れず這い寄る混沌そのものなのです」
「宇宙の裂け目、そういえばボッシュが死ぬ前にそんなこと言ってたわね」
「彼は原作ではアムロの狂信者でしたからね。取り憑かれてしまったのでしょう。ですがさっきも言ったように、根源的破滅招来体は、その世界に見合った姿を取ります。この世界のようにアムロが台頭していない状況では、上手く存在を保てないのです」
「その世界というと、他の世界だとどうなるのだ」
「例えば宇宙を埋め尽くす怪獣軍団や、正義の改造人間だったりするのぜ」
場合によっては人類が勝ったり、根源的破滅招来体自身がヒーローになったりする。
「さっきから聞いていると、お前たちも同じようなことをしているように聞こえるのだが」
「一応私たちって上位存在なのよね」
「ちょっとした休暇でこの世界に遊びに来ただけなんだぜ」
「この世界は私たちにとって物語に過ぎなかったのですが、これは予想外のことが起きましたね」
極めて近く、限りなく遠い世界の隣人である。
「そうか。だがそのアムロとやらも今し方倒した。脅威ではあったが、既に問題は解決しているのではないか?」
マシュマーが爽やかな顔で頷く。
わざわざ胸の薔薇をハマーンにアピールしながら。
「いや、あれが最後の一人とは思えないわ」
「そうですね。宇宙の穴を塞ぎ、サイコフレームを封印しなければ、これから第二、第三のアムロ霊がやってくるでしょう」
まるでモンスターパニック映画のラストである。
だいたい最後に生き残りの一匹が出て来て、後味を悪くする。
「宇宙に穴ねえ、本当にそんなのがあるのかい?」
「一度に大勢が死ぬと、その空間が抱えられる死者の念が飽和して、宇宙に穴を開けるわ。だけど大抵はそこに残留する上に、宇宙の外から良からぬモノを呼び込むのよ」
「この辺は宇宙巫女だけあって霊夢が詳しいのぜ」
「穴を塞ぐには大量のサイコフレームに死者の念を吸わせて、穴の向こうに放り出さなければなりません。お供養もままならないのが残念ですが」
ゆっくりたちの説明に、この場の人類はすっかり気を落としてしまった。
コズミックビーイングからオカルト話を聞かされて、正直どう反応すべきかを決められない。
「直ぐには信じられないでしょうが、本当のことです。一部の信用できる人にだけ、この場のことを話して、協力を仰ぎましょう。今やるべきはサイコフレームの調達と、その後に製造を中止させることです」
ゆっくりハマーンが具体的な指示を出すものの、人間たちは渋い顔をしている。
「サイコフレームを作っているのは月のアナハイムだけど、そこに話を持って行ける人間となると」
「そんなことが可能な人間は一人しかいない」
頭身の高いハマーンが頭痛に顔を歪める。これなんて報告したらいいんだろう。
言うなればそんな表情だった。
「キシリア閣下……」
宇宙世紀0088年。
ニュータイプの修羅場が、始まろうとしている。