静かな通路と三人の異変探し   作:肩幅ひろし

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第2話 “立ち方”がおかしい

 地下通路の空気は、先ほどよりもわずかに重く感じられた。

蛍光灯の光は均一で、影がほとんど生まれない。

その“影のなさ”が、逆に三人の神経をじわじわと削っていく。

 

 霊夢が前を見据えたまま言う。

「ここが……4番出口ね。そろそろ本格的に変なのが来そうな気がするわ」

 

 魔理沙は肩をすくめる。

「もう既に変なのばっかりだったけどな。看板の向きとか、壁の呼吸とか……」

 

 麟は淡々と歩きながら、静かに付け加えた。

「でも、ここまでの異変は“物体の挙動”ばかりだった。

 そろそろ“人型の異変”が来る気がするよ。こういう世界、段階的に怖くしてくるから」

 

 魔理沙が顔をしかめる。

「やめろよ、そういうメタい予想は当たるんだよ……」

 

 霊夢は小さく息を吐いた。

「まぁ、異変を見逃さなければいいだけよ。ルールはシンプルだもの」

 

 

 

 

 通路の奥に──

確かに“誰か”が立っていた。

 

 距離は30メートルほど。

蛍光灯の光が均一に届くため、シルエットははっきり見える。

しかし、その“はっきりさ”が逆に不気味だった。

 

 霊夢が目を細める。

「……人間? 妖怪? それとも、この世界の住人?」

 

 魔理沙は震えた声で言う。

「いや、あれ……立ち方がおかしくないか?

 なんか……前のめりすぎるだろ……」

 

 麟は静かに観察を始めた。

「うん。まず、重心が前に寄りすぎてる。普通なら転ぶよ。

 あと……腕の角度が左右で違いすぎるね。右腕は自然だけど、左腕は“90度で固定”されてるみたいだ」

 

 霊夢が眉をひそめる。

「つまり、異変ね」

 

 魔理沙は叫ぶ。

「いやいやいや!あれ絶対ヤバいやつだろ!?」

 

 麟は淡々と続ける。

「しかも……僕らの方を見てない。壁を見てる。

 壁に向かって直立してる。意味が分からないね」

 

 霊夢は即決した。

「戻るわよ。あれは絶対に関わっちゃダメなタイプ」

 

 魔理沙は全力でうなずく。

「賛成!満場一致!」

 

 

 

 

 三人は引き返し、通路を戻る。

その間、誰も口を開かなかった。

足音だけが、静かに響く。

 

 魔理沙がそっと振り返る。

「……いない。消えてる……」

 

 霊夢はため息をつきながらも、どこか楽しそうだった。

「まぁ、異変は見逃さなかったし、これで次は5番出口ね」

 

 麟は静かに言う。

「この世界、ホラーの演出が“微妙にズレてる”のが逆に怖いね。

 人型を出すならもっと自然にすればいいのに……わざと不自然にしてる感じがする」

 

 魔理沙は肩を落とす。

「不自然だから怖いんだよ……頼むから次は普通の出口であってくれ……」

 

 霊夢は歩きながら言う。

「期待しない方がいいわよ。ここ、普通じゃないもの」

 

 麟は淡々と付け加える。

「次は“声の異変”が来る気がするね。段階的に強くしてくるから」

 

 魔理沙が叫ぶ。

「やめろって言ってるだろ!!」

 

 三人は、静かな通路を再び歩き始めた。

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