静かな通路と三人の異変探し   作:肩幅ひろし

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第3話 “声が少し違う”

 通路は、4番出口を越えたあたりから“音の密度”が変わった。

蛍光灯の光は相変わらず均一で、影はほとんど生まれない。

しかし──静けさの質が違う。

まるで、空気そのものが耳を澄ませているような、そんな沈黙だった。

 

 魔理沙が小声で言う。

「なぁ霊夢……なんか、静かすぎないか?

 さっきまでの“地下っぽい響き”がなくなってる気がするんだが……」

 

 霊夢は歩きながら周囲を見渡す。

「確かに……音の反響が薄いわね。

 通路の形は変わってないのに、音だけが変わってる」

 

 麟は淡々と分析を始める。

「うん。壁の材質が変わったわけでもない。

 つまり、これは“音の異変”が来る前兆だと思うよ」

 

 魔理沙は肩をすくめる。

「お前の予想、当たるから怖いんだよ……」

 

 霊夢は苦笑しながら言う。

「まぁ、異変を見逃さなければいいだけよ。

 ルールはシンプルなんだから」

 

 

 

 

 三人が歩いていると──

通路の奥から、誰かの声が聞こえた。

 

 霊夢が立ち止まる。

「……誰かいる?」

 

 魔理沙は耳を澄ませる。

「いや……これ、私の声じゃないか?

 なんか……私が喋ってるみたいな……」

 

 麟は静かに言う。

「うん。僕にも聞こえる。

 霊夢の声と魔理沙の声……そして僕の声も。

 でも、言ってる内容が“微妙に違う”ね」

 

 通路の奥から聞こえてくる声は──

確かに三人の声だった。

しかし、言葉の内容が少しだけズレている。

 

 霊夢の声は、

「異変はないわ。進みましょう」

と言っている。

 

 魔理沙の声は、

「戻る必要なんてないって!」

と叫んでいる。

 

 麟の声は、

「この世界は安全だよ」

と淡々と言っている。

 

 霊夢は眉をひそめる。

「……私、そんなこと言ってないわよ」

 

 魔理沙は震えた声で言う。

「私も言ってない!絶対言ってない!

 なんで“私の声”が勝手に喋ってるんだよ!」

 

 麟は静かに観察する。

「声の高さ、抑揚、呼吸のリズム……全部僕らの声と一致してる。

 でも、内容だけが違う。

 これは“音声模倣型の異変”だね」

 

 霊夢は即決した。

「戻るわよ。これは完全に異変だわ」

 

 魔理沙は全力でうなずく。

「賛成!満場一致!」

 

 

 

 

 三人が引き返すと──

声は、まるでスイッチを切ったように突然消えた。

 

 魔理沙は肩を落とす。

「消えるなよ……余計怖いんだよ……」

 

 霊夢は深く息を吐く。

「でも、異変は見逃さなかったわ。

 これで次は6番出口ね」

 

 麟は淡々と付け加える。

「この世界、音の異変を出してくるのは予想通りだったけど……

 “自分の声を使う”のは、ちょっと悪趣味だね」

 

 魔理沙は叫ぶ。

「悪趣味どころじゃないだろ!

 私の声で勝手に喋るなってんだよ!」

 

 霊夢は歩きながら言う。

「次は……もっと強い異変が来るかもしれないわね」

 

 麟は静かに言う。

「うん。次は“視覚の異変”が来ると思うよ。

 段階的に強くしてくるから」

 

 魔理沙が叫ぶ。

「やめろって言ってるだろ!!」

 

 三人は、静かな通路を再び歩き始めた。

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