静かな通路と三人の異変探し   作:肩幅ひろし

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第4話 “姿が少し違う”

 通路は、5番出口を越えたあたりから“視界の密度”が変わった。

蛍光灯の光は均一なのに、どこか“見えすぎる”ような感覚がある。

まるで、空気そのものが透明度を増して、細部まで見せつけてくるような──そんな不気味さだった。

 

 魔理沙が小声で言う。

「なぁ霊夢……なんか、見える範囲が広くなってないか?

 奥の方までハッキリ見えるんだが……」

 

 霊夢は歩きながら周囲を見渡す。

「確かに……光量は変わってないのに、視界が妙にクリアね。

 この世界、音の次は“視覚”をいじってきたわね」

 

 麟は淡々と分析する。

「うん。段階的に異変を強くしてくるのは予想通りだよ。

 次は“見た目の異変”が来ると思う。

 人型か、構造物か……どちらにしても、視覚に訴えるタイプだね」

 

 魔理沙は肩をすくめる。

「お前の予想、当たるから怖いんだよ……

 頼むから今回は外れてくれ……」

 

 霊夢は苦笑しながら言う。

「期待しない方がいいわよ。ここ、普通じゃないもの」

 

 

 

 

 三人が歩いていると──

通路の奥に、誰かが立っているのが見えた。

 

 霊夢が立ち止まる。

「……また誰かいるわね」

 

 魔理沙は目を凝らす。

「いや……あれ……私たちじゃないか?

 なんか……三人組が立ってるぞ……」

 

 麟は静かに言う。

「うん。霊夢、魔理沙、僕……

 “僕らと同じ姿”が立ってる。

 でも、立ち方が少しだけおかしいね」

 

 通路の奥には──

確かに三人と同じ姿の“影”が立っていた。

 

 しかし、その立ち方が不自然だった。

 

 霊夢の影は、肩がわずかに上がりすぎている。

まるで、常に息を吸い続けているような姿勢。

 

 魔理沙の影は、腕の角度が左右で違いすぎる。

右腕は自然なのに、左腕は“真横に伸びたまま固定”されている。

 

 麟の影は、首の角度が不自然に傾いている。

まるで、ずっと誰かの耳元に囁こうとしているような角度。

 

 霊夢は眉をひそめる。

「……私、こんな立ち方しないわよ」

 

 魔理沙は震えた声で言う。

「私もだ!なんで左腕だけ水平なんだよ!

 絶対おかしいだろ!」

 

 麟は淡々と観察する。

「うん。これは“姿の模倣型の異変”だね。

 僕らの姿をコピーしてるけど、細部が不自然。

 この世界、音の次は“見た目”を模倣してきたみたいだ」

 

 霊夢は即決した。

「戻るわよ。これは完全に異変だわ」

 

 魔理沙は全力でうなずく。

「賛成!満場一致!」

 

 

 

 

 三人が引き返すと──

影は、まるで霧が晴れるようにゆっくり消えていった。

 

 魔理沙は肩を落とす。

「消えるなよ……余計怖いんだよ……

 なんでゆっくり消えるんだよ……!」

 

 霊夢は深く息を吐く。

「でも、異変は見逃さなかったわ。

 これで次は7番出口ね」

 

 麟は淡々と付け加える。

「この世界、模倣の精度が低いのが逆に怖いね。

 “似てるけど違う”っていうのは、人間の本能に刺さる不気味さだよ」

 

 魔理沙は叫ぶ。

「刺さってるよ!めちゃくちゃ刺さってるよ!!

 もう帰りたいんだが!!」

 

 霊夢は歩きながら言う。

「次は……もっと強い異変が来るかもしれないわね」

 

 麟は静かに言う。

「うん。次は“動きの異変”が来ると思う。

 段階的に強くしてくるから」

 

 魔理沙が叫ぶ。

「やめろって言ってるだろ!!」

 

 三人は、静かな通路を再び歩き始めた。

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