静かな通路と三人の異変探し   作:肩幅ひろし

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第5話 “歩き方”がおかしい

 通路は、6番出口を越えたあたりから“空気の流れ”が変わった。

風はないはずなのに、どこか“動いている気配”がある。

蛍光灯の光は均一で、影はほとんど生まれない。

しかし──その均一さの中に、わずかな“揺らぎ”が混じっていた。

 

 魔理沙が小声で言う。

「なぁ霊夢……なんか、空気が動いてないか?

 風なんてないはずなのに、服がちょっと揺れるんだが……」

 

 霊夢は歩きながら周囲を見渡す。

「確かに……空気の流れが変わってるわね。

 この世界、視覚の次は“動き”をいじってきたみたい」

 

 麟は淡々と分析する。

「うん。段階的に異変を強くしてくるのは予想通りだよ。

 次は“動作の異変”が来ると思う。

 人型が動くか、構造物が動くか……どちらにしても、動きに違和感が出るはず」

 

 魔理沙は肩をすくめる。

「お前の予想、当たるから怖いんだよ……

 頼むから今回は外れてくれ……」

 

 霊夢は苦笑しながら言う。

「期待しない方がいいわよ。ここ、普通じゃないもの」

 

 

 

 

 三人が歩いていると──

通路の奥に、誰かが歩いているのが見えた。

 

 霊夢が立ち止まる。

「……また誰かいるわね」

 

 魔理沙は目を凝らす。

「いや……あれ……普通に歩いてるように見えるけど……

 なんか……歩き方が変じゃないか?」

 

 麟は静かに言う。

「うん。歩幅が一定じゃない。

 右足は普通だけど、左足だけ“半歩分短い”。

 しかも、腕の振りが左右で違っているね」

 

 通路の奥には──

確かに“人型の影”が歩いていた。

 

 しかし、その歩き方が不自然だった。

 

 右足は普通に前へ出るのに、左足は半歩しか進まない。

そのため、身体がわずかに左右へ揺れている。

 

 腕の振りもおかしい。

右腕は前後に自然に振れているのに、左腕は“後ろへだけ”振れている。

 

 霊夢は眉をひそめる。

「……あれ、普通の歩き方じゃないわね」

 

 魔理沙は震えた声で言う。

「いやいやいや!なんで左足だけ半歩分短いんだよ!

 絶対おかしいだろ!」

 

 麟は淡々と観察する。

「うん。これは“動作の模倣型の異変”だね。

 人間の歩き方をコピーしてるけど、細部が不自然。

 この世界、音→姿→動きと順番に異変を強くしてきてる」

 

 霊夢は即決した。

「戻るわよ。これは完全に異変だわ」

 

 魔理沙は全力でうなずく。

「賛成!満場一致!」

 

 

 

 

 三人が引き返すと──

影は、歩いたまま、まるで空気に溶けるように消えていった。

 

 魔理沙は肩を落とす。

「消えるなよ……余計怖いんだよ……

 なんで歩いたまま消えるんだよ……!」

 

 霊夢は深く息を吐く。

「でも、異変は見逃さなかったわ。

 これで次は8番出口ね」

 

 麟は淡々と付け加える。

「この世界、動きの異変を出してくるのは予想通りだったけど……

 “歩き方のズレ”を使うのは、かなり不気味だね。

 人間は、歩き方の違和感に敏感だから」

 

 魔理沙は叫ぶ。

「敏感だよ!めちゃくちゃ敏感だよ!!

 もう帰りたいんだが!!」

 

 霊夢は歩きながら言う。

「次は……最後の出口ね。

 ここまで来たら、もう引き返せないわ」

 

 麟は静かに言う。

「うん。最後は“出口そのものの異変”が来ると思う。

 でも、異変を見逃さなければ大丈夫だよ」

 

 魔理沙が叫ぶ。

「やめろって言ってるだろ!!」

 

 三人は、静かな通路を再び歩き始めた。

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