明らかにボロアパートで暮らす獣人彼女はキメているのに「これはタバコ!これはビタミン剤!」とか言い訳しているのだが? 作:SUN'S
「越司丸、生きてるかぁ?」
カンカン、カンカン、と少し錆びた二階建てアパートの階段を上がり、手慣れた動きで無病息災の御守りを着けた鍵を取りだし、ドアノブの鍵穴に差し込み、捻ると重い金属音が聞こえる。
古いと良く聞こえる音らしい。
ドアを開けると二の腕の血管に注射器をブッ刺す越司丸益子ことヤクねこがアホ面で、ぼけーっと天井を見上げていた。
相変わらず、汚ない部屋だな。
「あぁぁ……あ?」
「よう」
「これはビタミン剤っす!!違うから!危ないのとかじゃないから!」
「分かったから離れろ、ブッ刺したままだと危ないから抜いとけ抜いとけ」
「うぅ、彼ピぃ……!」
「彼ピゆうなて」
プリン頭を撫でながら無駄に生臭い越司丸の頭を嗅ぎ、やっぱり臭いなと思う今日この頃。隣町なのに、なぜこうも違うのか不思議でならん。
「越司丸、ほら元気出せー」
ティッシュを鼻に当て、鼻をかませる。ネコなのに、どっちかっていうと寂しがり屋なウォンバットなんよ。お前はそれでいいよか、越司丸。
「ぐすッ、自分の彼ピが優しいス…」
「彼ピゆうなて。今日はバイト休みだから行くって言ってたろ?」
「いや、覚えてるスよ!一週間ぶりに会えるんで気合いを入れようとビタミン剤してました!」
「そうか」
「そうス!」
グルグルと回った目をする越司丸の頭をまた撫でてやり、色々と買ってきた日用品や作り置きの飯を冷蔵庫に仕舞っていく。
飲みかけと食いかけばっかりだな。
「ビール冷やしとけよ」
「にゃ、にやぁ」
「は?可愛い過ぎるだろ」
「そ、そうスか?」
にゃあと照れる越司丸の頭を撫でて、耳の回りを刺激すると顔を真っ赤にしてきた。可愛いの権化がよ、可愛さでブッ刺すのやめろよ。
プリン頭のネコ天使が、クソ可愛いんだよ。
「彼ピ、自分に甘いスよね」
「彼女に甘いのが彼氏だろ?あと彼ピゆうなて」
「でも、彼ピは
「……確かに」
そんなことを言われると納得できるな。
でも、彼ピゆうなて。
「じゃあ、秀夫スか?」
「それは結婚したら呼んでくれ」
「ぶにゃあっ!?」
総毛を逆立てて倒れた越司丸は白目を剥いて、ピクリとも動かなくなった。とりあえず、布団敷いて寝かせとけば問題ないな。
「ヤクねこ、ちょっとずつ進もうな」
ついでに飯でも作っておけば問題ないな。いや、隣のヤニカスに食われるな。あいつの嫌いそうなのも作っとけば帰るだろ。
「しかし、獣人の予防接種ってどうするんだ」
未だに分からんぞ。