明らかにボロアパートで暮らす獣人彼女はキメているのに「これはタバコ!これはビタミン剤!」とか言い訳しているのだが? 作:SUN'S
「タバコは悪、喫煙は犯罪にゃ」
シャコシャコと歯ブラシを動かして、そう宣うバケモノにオレは困惑していた。あの人生その物をタバコに捧げ、悪臭を振り撒いていたヤニカスが、わりとまともになっているのだ。
「益子、コイツどうしたんだ?」
「いやー、ははは。この常識改変アプリを使ったから本当に催眠に掛かっちゃったみたいなんスよ」
「なんだ常識改変アプリって?」
「それもうウチがゆうたで」
カンサイねこ、西が言ってきた。
「汗臭いのは悪」
「悪かったな。汗臭くて」
ちゃんと仕事帰りに銭湯に行ってきたんだが、まだ臭いか?とシャツの首元を引っ張って臭うも自分では分からず、シャコシャコと歯磨きする佐藤を見る。
「なあ、これで禁煙させれば良いんじゃないか」
「秀夫さん、天才ッスか!?」
「そ、そうか?」
「何日持つやろなあ」
そんなことを話しながら、部屋を出ていこうとする佐藤の頭を掴み、ドアノブに縄で繋ぐ。絶対に余計な事件を仕出かすに決まっている。
「ナチュラルに縄出てきたな」
「あ、あれは自分のヤツです。禁断症状が出たときに秀夫さんに押さえて貰ってるんス……ただ、最近は押さえ込まれるときに変な気持ちになって……♪︎」
「オーケー。そのさきは聞きたくない」
ドアを閉め、暫く雑談する。
「せや。ちょっと早いけど、結婚のお祝いにご祝儀渡しとくな!ウチんときは倍返しにしてくれるとうれしいさかい!」
「マジか。ありがとうな、西先輩」
「そう思うんやったら大学でも話しかけえい!」
「いや、無理だな。西先輩の周り、女の子が好きな女の子が集まってるだろ?男が行ったら、吊し上げのリンチを受ける」
それだけは困る。
益子を未亡人にするわけにはいかない。
「なんやのそれ。はあ、ヤニねこ、もうなお」
「タバコは悪、タバコは悪、タバコは悪、タバコは悪、タバコは悪、タバコは悪、タバコは悪、タバコは悪、タバコは悪、タバコは悪、タバコは悪、タバコは悪、タバコは悪、タバコは悪、タバコは悪、タバコは、タバコは、タバコは、タバコは、タバコは、タバコは、タバコは、タバダバタバダバダダバダダ……」
「ひいぃぃっ!!?なんやのこれ?!」
「あ、自我が崩壊しかけてるッスね。催眠系だと良くあるパターンだと思いますよ」
「「良くあるパターン」」
そんなに催眠に掛かりやすいのか、獣人。
ちょっと心配になっていたんだが?
あとで大家にも情報を伝えて、獣人を守る手段を高める必要があるみたいだな。まあ、アプリだから止め方知らんわけだが。