明らかにボロアパートで暮らす獣人彼女はキメているのに「これはタバコ!これはビタミン剤!」とか言い訳しているのだが? 作:SUN'S
越司丸を迎えに行くと駐車場で落ち込んでいた。
「またバイト落ちたのか」
「……やっぱり、自分、ダメなんスかねえ」
しょんぼりと地面に座ってタバコを吸おうとして、タバコは空だったので箱をポケットに仕舞う事になった越司丸の垂れた耳と、尻尾を触りたい衝動に刈られる。
しかし、我慢だ。
落ち込んでいる彼女の隣に座る。
「越司丸はよくやってる。頑張り屋だ」
「彼ピぃ……」
「彼ピゆうなて」
ピコピコと動く耳も頭も一緒に撫でて、オレのアルバイト先を紹介する。獣人も働いているし、危ないところというわけでもない。
目尻の隈もじつに
「どうしたんスか?」
「結婚しよう」
「……ほえ?」
「すまん。順序を間違えた、オレが就職したら結婚しよう。指輪も買いに行こうぜ」
「彼ピとヤクぅ、ニャーの部屋の下でプロポーズとかやめるにゃ。ハメが滅茶苦茶に舌打ちしてて恐いにゃ。ずっと『年下の好青年彼ピとかふざけんなよ?』とか『はぁーーーっ?なんでゆるふわ天使のハメちゃんに彼ピできないわけ?』とか騒いでるにゃ」
佐藤が逆さまで現れた。
「先輩、足折れるスよそれ」
「大丈夫にゃ、きちいけどにゃ」
逆さまでタバコを吸う佐藤を避け、背後に回るとタバコの吸い殻が張り付いていた。
「佐藤、部屋は綺麗か」
「綺麗だにゃ」
「いや、汚いス」
「おみゃはどっちの味方にゃ!?」
「彼ピッス!!」
「にゃあああああいいああああっ!!!」
裏切られた慟哭を放つ佐藤を無視し、越司丸を担いでデートに行く予定だと伝える。まあ、今回はアルバイト面接に落ちた慰め会も兼任だな。
「どこ行くんスか?」
「とりあえず、飯食おうぜ」
「ニャーもづれでぐにゃあぁっ!」
「やだよ。佐藤、店でタバコ吸うじゃん」
「吸わないにゃ」
「本当かぁ?」
「………………吸わないにゃ!」
シュボッとライターを使い、タバコを吸う佐藤を無視して普通の軽自動車の窓を閉める。消臭剤が幾つ有ってもお前が乗ったら足りんのだ。
ニャーニャーと騒ぐ声を無視し、発進する。オレはバックミラー越しに、助手席の越司丸はサイドミラー越しに、追い掛けてくる佐藤を見ている。
「先輩、今日の日雇い辞めたんスよね」
「だからツクシ食ってたのか」
「ッスね」
まあ、オレは越司丸の満足な顔が見たいのだ。
佐藤、ただしお前はダメだ。
この前、シートにタバコ押し付けたヤツはまだ許していない。
あと普通に金も返してくれ。
「……さっきの、プロポーズってマジスか?」
「マジだ。結婚しような」
「う、ウッス…えへへ…」
は?なんだその笑顔可愛すぎるんだが?