空棺のヘルミナ   作:謀略パートムズくない…?

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第一部 六合上覧 予選
ゴカシェ砂海


彼岸(ひがん)のネフトが」

 

並外れて巨大な体躯を誇る(ドラゴン)であった。

漆黒の鱗が継ぎ目なく連なり、黄金の瞳には最強種たる傲慢と誇りとが宿っている。

()()()()()()()()。内実がそうでないのはゼーエフ群の狼鬼(リカント)にとって周知の事実である。

 

東の辺境に位置するゴカシェ砂海(さかい)。一国にも値するという価値の数多の“彼方(かなた)"の蔵書を収めるとされる難攻不落の迷宮。

砂の迷宮を阻む、ゼーエフ群を名乗る屈強無比なる狼鬼(リカント)の群れが。

この世で初めて“本物の魔王”に立ち向かった“最初の一行”の生き残り、彼岸(ひがん)のネフトの薫陶を受けた()の悉くが破れ、開祖であるネフトもまた破れた。

 

()()サイアノプに?信じ難い……信じ難い成長だ……」

 

常識ではあり得ない不条理に直面した狼狽の中に、一抹の喜びがある。異形の(ドラゴン)彼岸(ひがん)のネフトとは旧知の仲である。

ネフトがゴカシェ砂海(さかい)に隠遁した後も、蛇竜(ワーム)を狩るついでにゼーエフ群を訪れていた。

 

その卓越した武術と生術は目の当たりにした経験がある。尚更信じ難くはあったが、しかし狼鬼(リカント)達が空棺(くうかん)のヘルミナに嘘を吐く理由もないだろう。

だからこそ、それが真実であると信じる。

 

「サイアノプは黄都(こうと)に向かったのだな?」

 

「─────確かに。王城試合に出場する、と」

 

「度し難い……!度し難い……愚かさだ。誰も“本物の魔王”に勝った勇者を本気で探そうとはしていないだろうに……真っ当に武を競えるのかすら、怪しい舞台だ……」

 

真に愚かであるのは、果たして誰なのか。

身分種族を問わない、という公募など題目に過ぎないだろう。王城試合の目的は過去の清算ではなく、未来の礎作りだ。

ヘルミナはその事実を理解している。それでも尚、サイアノプの宿願を断ち切り難い。

 

(……(はく)が要る。彼岸(ひがん)のネフトを打ち破った物証があったとしても、それが事実か否かを判断するのは黄都(こうと)だ。単なる戯言として片付けられる恐れがある……)

 

サイアノプの実力を目の当たりにしたのなら、王城試合に出場する勇者候補と遜色ない実力だと理解するだろう。

しかしサイアノプに実力があると周知されたとしても、王城試合に出られるかは分からない。

黄都(こうと)人間(ミニア)によって支配される王国だからだ。

 

誰が見ても納得する、証拠が必要だ。

例えば────竜殺し。絶対(ぜったい)なるロスクレイが果たした偉業のような、確固たる証拠か。

 

(計画は狂ってしまうだろうが……それでも、私の願いを無下にはしないだろう。サイアノプが出場しても、出場するだけなら致命的な障害にはならない筈だ)

 

ゴカシェ砂海(さかい)に別れを告げるべく、空棺(くうかん)のヘルミナは大きく翼を広げた。

骨伝導によって詞術伝達を可能とする蛇竜(ワーム)の頭蓋を丁寧に爪で引き抜き、丸呑みにする。

 

 

(すまない、ヒロト)

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