【お姉ちゃん……起きて…お姉ちゃん……!!】
『んーーっ!!おはよ……!?』
朝日を浴びて起き上がったモモカ、今日もいつものようになにも変わらない朝が始まる……ハズだった。隣を見ると、双子の妹……ノノカが倒れている。すぐさまかけより、体を揺するが返事はない。
『おい!ノノカ!ノノカ!返事をしろ!!ノノカ!!!』
ノノカの体はとても冷たかった。しかし、死んでるようにも思えなかった。まるで、人形のように無機質な感じがして仕方が無かった。
『待ってろ!今連れてくから!』
ノノカを抱え込み、全力疾走で街の病院へと向かう。無我夢中で、とにかく足を動かした。途中で目を開けて、ドッキリでした!と笑ってくれたら良かったと。そう考えた。しかし……
「残念ながら、妹さんは……もう…」
『そ、そんな……』
医者に見せても死んでいるが詳細はわからないと言われる。しかし、姉妹の絆か何かの因果か、モモカだけは違った。
『……違う、ノノカは死んでない……死んでない死んでない死んでない死んでない死んでない……!!』
ノノカは、幼い頃不治の病に掛かっていた。体内の魔力が徐々に抜けていく原因不明の病気だったが、ある時からぴったりと止んだ。両親が行方不明になったのもそれと偶然にも同時期だった。
『ノノカは……何処へ……』
自問自答しているモモカに、昔両親に読んでもらった本を思い出す。それは、魂がどういうプロセスを経てどんな場所へと行くのかを幼いモモカにもわかるように描かれたものだ。そのタイトルは……
『……ユグドラシル……!』
ユグドラシル、魂が集まる楽園、世界の中心にそびえ立つ、世界樹の真下にあると言われている。そこに、きっと妹のノノカがいる。モモカは、両親からのとある約束を律儀に守っていた。
【お父さんとお母さんが帰ってくるまで仲良くしてるんだぞ……】
【帰ってきたら皆でご馳走を食べましょうね……】
それが、両親からの最後の言葉になるとは思いもしなかったであろうモモカ。両親の約束を破ったことは一度もなかったモモカだが、今、決意する。
『怒られちゃうかな……でも、私は、決めたんだ!!』
そう高らかに宣言し、必要最低限の物と遺物を詰め込み、玄関に出ようとしたところで大事なことを思い出すモモカ。
『せめて、ちゃんと寝かせておかないとね。』
ノノカを大事に大事に抱える、冷たさが肌に突き刺さるが、気にせず優しくベッドに寝かせる。魂だけが抜けているなら、体は生きているので腐ることはないだろう。モモカは、ゆっくりとノノカのほっぺたをそっとなぞった。
『じゃあ、行ってきます……!』
そう言い開けた玄関。差し込む光はいつもより鋭く目を刺す。大地へと吹き抜ける風は、ゴオオッと少し強く吹き荒れ、まるでモモカを歓迎していないようだ。それでも、モモカは歩みを止める気など早々無かった。最初の目的地は中心街、通称【楽園】ギルド本部や、出店やらがずらりと並ぶ中心都市だ。
~数十分後~
『……あれ、何処だっけここ……』
気ままに歩いていると迷子になっていたモモカ、しかし、困ったことに看板も何もない平原だった。このまま変に歩くと命の危険も出てくる。
『世界樹に向け……だっけか。』
世界樹……世界の中心にある天にそびえる大木。その高さは空をも越え、天界まで繋がり、その太さは街一つ分より大きく、中には楽園があり、世界樹の真下にはユグドラシルがあると言う。そんな世界樹に関することわざもいくつかある。それが【世界樹に向け】何か困ったときには世界樹に向かえば大抵は見つかると言うことわざだ。そんなことはないのだが。
『世界樹は……あっちだ……!』
世界樹を向き、歩みを進めていると、草むらから黒い影が現れる。咄嗟に身構えるモモカに対し、黒い影の正体が鮮明になる
「おいおい嬢ちゃん、こんなとこで何してんだい」
「危ねェぞォ?俺らみたいな野郎がいるんだからよォ……」
見ての通りな柄の悪い盗賊二人が、下卑た笑いを浮かべながら近付いてくる。一人はいかにも力任せで拳を振り抜きそうな大きなカバンを背負う大柄の男、もう一人は、細身でナイフを持っており、素早さが高そうな男。
「なーに。ちっとだけ貰うもん貰ったらここを通らせるってだけや」
「まァ、おまえ自身が金だって言うなら遠慮なく頂くけどなァ!」
モモカと細身の男が飛び出すのはほぼ同時だった。物怖じせずに突っ込んでくるモモカに少しよろめいた細身の男めがけて、右ストレートが直撃する。
『ここっ!』
「ひでぶっ!」
綺麗な弧を描き、男は宙を舞い、地面に激突する。大柄な男がそれに気が付くのに三秒かかった。気が付いたとたん。激昂し顔を赤く染めて、イノシシのように突撃してくる。モモカは、浅く呼吸をし、近くに落ちてあった大きめの棒を拾い上げる。
「そんな棒切れで何が出来るってんだ!!」
『こうするッ!』
大柄な男がモモカに当たる……と思われた直後、バキィ!!!と言う割れた音が響く。どうやら、モモカは木の棒を即席のバットとして使用したらしい。棒は、見事に大柄な男の腹にに直撃し、よろめいた。
「うぐっ!!ぉ……ぁ……」
そのまま、膝からがくんと崩れ落ちた大柄な男を確認した直後、モモカは盗賊二人に近付き、まずは大柄な男を漁ろうとしたその時、遠くから複数の足音が聞こえる。どうやら巡回の兵士に見つかったらしい。
「お前……そこで何をしている?」
『え、あ……その…』
モモカがもごもごとしている内に、6人の兵士が周りをぐるりと囲んでいた。モモカは少しため息をつき、渋々両手を上げながらこう考える。
『(ここで抵抗するのは得策じゃないな……増援を呼ばれる可能性がある)』
「着いてこい」
モモカは馬車に乗せられ、て揺られて何処かへと行く。まだ旅は始まったばかりだというのに。先が思いやられる1日だった。
──────────────────────────
とある薄暗い部屋の中で、何者かが会話をしている。
「アイツら……帰ってくんの遅いぞ!……またなんか盗みでも働いてんのか……それは止められてた筈だろ……?」
「まぁまぁ、落ち着きなさい。で、どうするのよ、船長?」
「あの人らの事だし、またどこかで何かやらかしてるんじゃないかなぁ……取り敢えず探しに行こうか!」
次回予告
を聞いて貰えず牢獄に入れられそうになるモモカ。だがそこに救世主が現れる。金色の鎧に大剣を背負った謎の人物。そして、何処かで動く黒い影。妹を救いに行く筈だったモモカに、次なる試練が牙を向く!
次回!【討伐】