実家で色々あったり生活が落ち着かなかったりしたせいでここまで時間がかかってしまいました。
あまり見ている方は少ないかもしれませんが、精一杯更新を速めていこうと思います
艦娘。
それは深海棲艦に対抗する有効な術であり、在りし日の艦船の魂を受け継ぎ戦う戦船であり、海軍の切り札。それが艦娘という存在である。
「ん…ふああ…ねむ…」
私、特型駆逐艦吹雪型5番艦『叢雲』の朝は早い。
一日の始まりは五時前には起床し、運動着に着替えること。
それから六時に「総員起こし」の号令とラッパを、宿舎中に響かせる。
全員が宿舎前に集まると朝の体操を行い、終わって朝餉を済ませたなら、制服に提督室に行くのが日課になっている。
何時からこんなふうになったのかと思いながら、水色のパジャマを脱ぎ、運動用のジャージーに袖を通す。
あとは、八時までいつもの通り……。
朝の日課を終えて、いつもの執務室へと向かう。
最初に会ったときの司令官の印象は何とも頼りのない感じで、本当にコイツでやっていけるのかと心配だった。でもそれは私の勝手な杞憂だった、あの日にそれは証明されている。
あの時のことを私は忘れたことはない。その記憶は鮮明に脳裏に焼き付いて、決して色褪せることはない。それぐらい大切な出来事だった。
……少し思い出に浸ってしまったわね。
まあ、そんなことがあったからこそ私は司令官に信頼を置いている。
だからこそ、私はある意味司令官に染められてしまったのかもしれない。悪いとは思ったことはないし困ったこともないけれど、確実に染められてしまった。
なんだかんだで提督の世話を焼き、仕事を手伝い、馬鹿な言動に制裁を加える。
これが日々の私の生活に組み込まれてしまうほどに。それが当たり前になってしまうほどに。
「司令官、入るわよ」
だから私は今日も執務室の扉を開ける。
「あ」
「ん?」
そして執務室で新聞の特集記事を読む司令官を見てしまう。
そう、それはこの間総司令のところにいる青葉に提督のことを取材された時の私の言葉が書かれているであろう特集記事を。
「新聞読んでないで仕事をしなさい!」
「ちょ、ま、俺が何をsオゲラ!?」
今日も制裁と言う名の
「だからいつも言ってるだろ…俺じゃなかったら死んでるって…」
「寧ろなんで無傷なのよ」
いつも思うけど、何で司令官(コイツ)は私の攻撃をまともに受けてケロッとしているのか全く分からない。全ての司令官たちには“スキル”と呼ばれる力を持っているがその数は一人に付き大体一つか二つ。だがうちの司令官が持っているものは身体強化系ではなかった。本人も理由は分かっていないようだけどまさか本人も知らない“スキル”でもあるかと疑うわ。
「ところで、何読んでたのよ。青葉が突っ込んだ特集記事?」
「それも興味があるんだけどかなり重要なのがあってな。八岐大蛇が出現したらしい」
「や、八岐大蛇ですって!?」
現在世界の敵は深海棲艦だけではない。陸にも怪異は発生しているのだから。
街は龍脈の上に作られ魔除けの防壁で街を囲み、更に街の配置を霊的結界の配置にして漸く安全が確保される。防壁の外には鬼や天狗、火車など関係性もなにもない魑魅魍魎が跋扈している。その魑魅魍魎が入ってこないよう化学と陰陽道などの呪術で武装した陸軍が街の防壁防衛担っているけど、、八岐大蛇は別格。
八岐大蛇が活動した時、龍脈が乱れるために霊的結界の全てが効果がなくなってしまう。魔除けの防壁だけでは絶対に突破されてしまうために八岐大蛇は恐怖の象徴なのだ。
対策は二つ。撃滅するか、伝承と同じく酒と女を贄として差し出すか。
前者は八岐大蛇自体が強大であるが故にほぼ不可能、甚大な被害と街が壊滅してしまうために実行は出来ない。そこで後者の贄しかない。皆苦しいし悲しい。いい気分ではない。勿論、私も…。
「今度は、何処が無くなったの…?」
八岐大蛇が新聞に出たということはつまり、撃滅を試みたが返り討ちにされて街が一つ滅んだということを意味している。
「いや、今回は八岐大蛇を撃滅したみたいでお祭り騒ぎだってさ」
一瞬、理解が追いつかなかった。
え、倒したの? あの生きた災害を?
「うそ、あの八岐大蛇を…一体どうやって…!?」
一体、どんな方法で屠ったというのだ、あの八岐大蛇を。
「布都御魂剣が顕現できたんだってさ。あの神を退かす力を持った剣を」
「布都御魂剣って…神剣じゃない…一体誰が…」
神剣の適合者なんて、ほぼ出てくることなんてないのに…。
「しかもそれを抜いたのが俺の学生時代の友人だったんだよ」
まさかあいつがあの剣顕現させるなんて思ってなかったな-といいながら笑い友人を思い出している。
「…あんたの交友関係が不思議でしょうがないわ」
「学校が学校だったからなぁ…」
どこか遠い目をしながら今度は過去に思いを馳せている
「ごめんさなさい教官…まさか教官の大事にしていた盆栽だなんて知らなかったんです許して下さいああチェーンソーなんて振り回さないでごめんさない私が悪かったんですごめんなさい許して下さいごめんさないごめんさないごめんさないごめんさないごめんさないごめんさないごめんさない」
馳せている…のだろうか。一体軍学校で何をしたのか非常に気になるところね。
その時突然インカムが鳴った。
「叢雲よ。どうしたの?」
『こちら古鷹です。提督にお客様が来ているんですが』
古鷹型重巡洋艦一番艦古鷹。
この鎮守府でも早い時期にやってきた艦娘であると同時に、私こと叢雲という艦とも親交があった艦でもある古鷹。再会した時は互いに泣きあったりもしたけど、また会えて嬉しいかったわ。
「お客?昨日そんなこと連絡きてなかったわよ?」
しかし、お客とは一体誰なのか。
『ここの鎮守府のもう一人の提督ですけど』
「ああ、‘あの人’ね。わかった、司令官に伝えるからそこで待っててもらって」
『わかりました』
そこで待っててもらうように古鷹さんに伝え、司令官に‘あの人’が来ていることを伝える。
「思い出に浸ってるところ悪いんだけど、お姉さんが来てるわよ」
ビシリ。
そんな幻聴が聞こえるほど司令官の動きが固まった。
「ね、ねーちゃん来てるの?」
顔は何故か若干青ざめているのは気のせいだろうか。
「ええ、一応外で待ってもらってるけど」
「急いで上がってきてもらって!」
お茶の準備しなければ!と言いながら大急ぎでお茶菓子を探し回る司令官。普段では考えられない…いや、総司令が来た時ぐらいの慌てぶりね。
「ま、後でわかるでしょ」
慌てふためく司令官を置き去りにして私は迎えに行った。
いつ見ても思う。この人は本当に提督なのだろうかと。
白い海軍制服に白の帽子、そしてその隣には秘書艦の加賀型一番艦正規空母『加賀』を従えている。ここまではいい。
だが、髪は寝癖がそのままで制服のボタンは幾つかはズレてつけている。雰囲気もしっかり起きているという感じではなく寝ぼけているのではないかと思うほどに目がとろんとしている。
これ、完全に寝ぼけてるでしょ…。
「んで、なんかあったのかねーちゃん」
ねーちゃん。
そう、この人は私の司令官である犹守湊の姉、| 犹守楓≪えぞもりかえで≫その人なのだ。この人のスキルは<妖精の輪>という広域探査能力及び空間把握という二つの力を持つ複合スキルという、激レアのスキルを持っている。
ようはこの人自体が超高性能レーダーなのだ。階級は中佐で三年間でここまで来たという実績と、大和型、及び一抗戦、二抗戦での超遠距離殲滅戦を自身のスキル<妖精の輪〉による精密空間把握で行う物量作戦の鬼。
の、はずなのだが。
「なにかようがないとここに来ちゃいけないのかな、みーちゃん?」
「いや、そんなわけではないんだけど」
みーちゃんとは提督の所謂あだ名なのだが本人曰く恥ずかしいらしく、やめてほしいそうだ。とはいえ楓司令官は全く直す気は全くないようであるけれど。
「半年も過ぎたんだから艦娘も増えて仕事も多くなっただろうからちゃんと仕事で来てるか心配でね、それで様子見に」
まさか普通に心配で来ていたとはこの司令官には勿体無い姉だ。
「それで、本音は?」
本音?何を言ってるのよこの司令官はなどと思っていたら
「どんな黒歴史を作ってるか気になって」
「やっぱりろくでもねえことだったよ!」
「く、黒歴史?」
確か、過去の恥ずかしいノートとか言動とかのはずだったけど…。
「昔みたく有名な神社のお寺の前で奇怪な行動取ったり自分の水と間違って先生の水のんだり」
「うおおおおおお!やめろ、やめてくれぇ!!これ以上俺の黒歴史を部下の前で話さないでくれえええええええ!!」
頭を抱えて絶叫を上げている司令官。しかし思う。確かにこれは例え幼い時の行動とはいえ、これは末代までの恥だ。過去に蓋をして永久に記憶の底にしまっておきたいはずのものよね。だけど――
「ちょっと、くっくく…あんた昔何してたのよ…ぶふ」
だからこそ、笑いを堪えられない。こんな、こんな、普通に考えて絶対にしないであろう行動をとったという事実で、この私が笑ってしまう。
よく見ればあの表情が分かりにくいとよく言われている加賀でさえ、声には出していないが手を口に当て、少し前かがみになり、必死に笑いを堪えているじゃない。
「だあああああああ!もうほんとに何をしにきたんだよねーちゃん!!」
「様子を見に来たのとからかいにきたのと、建造の順番回ってきたってのを伝えに来ただけ」
にししと笑う楓司令官。
「普通にそういえよ!」
黒歴史ばらさなくてもいいじゃないかーと項垂れる司令官。
「今度はどんな艦が来るのか楽しみね」
笑っている楓司令官と項垂れている司令官を他所に私は少しばかり心を躍らせた。
工廠。大体どこの鎮守府にでもあるものであるが基本的に共用している。
理由は鎮守府一つに付き同じ艦娘はでないからだ。理由は分かっていないがそういうものなのだと納得している。戦力が足りなかったりした場合は他所の鎮守府から艦娘を出向させることになっている。
装備だけはいつでも作れるのだが建造はこういう背景もあり順番待ちだったりするのだ。
「さんばんどっくあきましたでアリマス」
「こっちにバーナーもってくるでアリマス」
「かいはつしざいをたべたのはでアリマス」
「さぼらずはたらくでアリマス」
三頭身くらいの大きさの妖精さんがあっちへいったりこっちへいったりしている姿にいつも私は可愛いなぁと思ってみているのだが、工廠長だけは異彩を放っている。
「どうも湊提督。今日もいい建造日和ですね」
「ああ、今日もよろしく頼む工廠長」
そういってムキムキマッチョで私たちとなんら変わりない大きさのアニメ声でしゃべる妖精さんと握手している司令官。
そう、他の妖精さんと違い、私たちと変わらない大きさで、かつ、ムキムキマッチョで、厳つい顔なのにアニメ声という違和感バリバリな妖精さんなのだ、工廠長妖精さんは。そしてその名前は谷矢てい。
あの愛らしい姿の妖精さんじゃないのかと私も司令官も最初に会ったときは吃驚したものだわ。見た目と声が全く合わないのもそうだけれど、何より性格があの顔に似合わずとてもいい人なのだ。これで普通の妖精さんだったらどんなに可愛かったことか…残念で仕方がない。
「じゃあ今日は何を狙ってみる?前みたいになるのだけはごめんだけど」
前は最低値で建造して不知火の艤装と大量のペンギンモドキとワタモドキに押しつぶされたんだもの。前回みたいなことだけは勘弁してもらいたいわ。
「そうだな…うん、今日は加賀さんの素敵なサイドテールを見たから空母狙ってみるか」
「狙ったところで加賀さんは来ないけどね」
それをいうなよなーという司令官の言葉を背に空母が出やすいと聞く配分を妖精さんに
指示を出す。まあ、これで出ないのが建造なのだが。
「しざいはこぶでアリマス」
「どりるつかうでアリマス」
「れんちはこうつかうでアリマス」
最後待ちなさい。レンチはくっつけてヌンチャクみたいに振うものじゃないわ。
などと思ううちに建造予定時間が表示される。
「時間は…二時間四十分ね」
「確か軽空母の祥鳳型の時間だな」
軽空母…半年で一度も出てきてないわね。まあうちの艦隊に空母が加わるのはいいことね。
「で、高速建造剤使う?」
「ここで使わないでいつ使うのさ」
「それもそうね。じゃあ、高速建造剤をお願い」
「けんぞうざいはいりましたでアリマス」
「ばーなーでアリマス」
「ひゃっはーでアリマス~」
「今は世紀末じゃないからな!?」
いつものことにツッコミを入れる司令官を放置して妖精さんたちがバーナー片手に一つの箱を囲って燃やしてる光景は異様のひとことよね。
「さて、艦隊に新しいメンバーが加わるわね」
「実に楽しみだな」
そして、ハッチが開き、現れたのは――
縁沿って朱い飾りの付いた、振り袖を肩口で紺色の糸のようなもので数カ所縫い付けて、意図的に肩口あたりを露出しているノースリーブの白い弓道着を身につけ、丈の短い赤に白のラインが入ったもんぺを着用してそのふとももあたりに付いた金具で裾を縛っているセミロングの茶髪を一房だけポニーテール状にまとめ、紅白縞模様の鉢巻をし、黄色がかったキリッとした目をした艦娘。その名を
「瑞鳳です。軽空母ですが、錬度があがれば、正規空母並の活躍をおみせできます、よろしくお願いしますね提督!」
まさかの激レア艦…この司令官は本当に運がいいと思う。幸運ではなく、激運というべきか。
「よろしく瑞鳳。俺は犹守湊だよろしく頼むよ瑞鳳。しかし、実にいい」
「はい?」
瑞鳳がきょとんと首を傾げる。まさか
「君のポニーテールはその一房だけで結っているがしかしその一房で君という人柄が手に取るようにわかる。一見適当にゆっているようにも見えるが一房だけを結うという行為は君の優しさや心使いを表して、尚且つ君の容姿と合わさり可愛らしさと凛々しさを奇跡的なバランスで両立させるという実に芸術というレベルの」
「いい加減にしなさい!」
一瞬で司令官の背後に回り込み、胴をクラッチして勢いよく持ち上げ後方に反り返るように倒れる。
「おおっとむらくもさんがまずはばっくどろっぷをきめるでアリマス」
「さらにそこからふたたびばっくどろっぷをかけにいってるでアリマス」
頭を地面へ叩きつけ、その叩きつけた勢いを殺さずそのまま更に倒立をする要領で体を司令官の前へと行き、更に持ち上げで再び反り返るように倒れこみ、そして倒れこんで叩きつけたその勢いで飛び上がる。
「おおっとむらくもさんがとびあがったでアリマス~これはどうなるのでしょうかかいせつのようせいさん~」
「これはおそらくつぎのきめわざにはいっているとおもうのでアリマス~」
飛び上がったその位置からの自由落下に任せ、そして司令官の頭を地面に
叩きつける。
「ハイパーボム!」
司令官の頭は地面に突き刺さり、そのまま重力に逆らわず体が倒れこんだ。
「さすがのしれいかんさんもしんだでアリマスか?」
「いや、わかりませんよかいせつのようせいさん。工廠長はどうおもいますか?」
「ボクに振るのかい?恐らく3ゲージ分くらいダメージじゃないかな」
「じみにわかりにくいでどころかいみがわからないでアリマスな」
流石にやりすぎたか…そんな思いが私に湧き上がる。
そこで司令官を徐に引き抜き持ち上げる工廠長。
「大丈夫、気は失ってるがどこもけがをしていない」
あれを喰らっても気を失うだけとか、どれだけ頑丈なのようちの司令官は。スキルだって“先見の公”と“鷹の目”だけのはずなのに。
「あ、忘れてたわ。いい、瑞鳳。うちの司令官はここだとまだマシな部類に入るけど無類のポニーテール好きなのよ。だからもし暴走したらこんなふうに強烈な技を食らわせてもいいからね」
きっと呆れているであろう瑞鳳にそれを言ったのだが当の瑞鳳はくすくすと笑っていた。
「なんだか、ここで楽しくやっていけそうな気がします。改めてよろしくお願いします!」
そして花のような笑顔を私に見せるのだった。
この子将来大物になるんじゃないかしら。
今日の鎮守府は笑いに溢れている。
艦娘。
それは深海棲艦に対抗する有効な術であり、在りし日の艦船の魂を受け継ぎ戦う戦船であり、海軍の切り札。それが艦娘という存在である。
だがしかし、彼女たちにも意思があり、感情があり、譲れないものがある。彼女らは決して兵器ではない。彼女たちは我々と共に戦ってくれる部下であり、仲間であり、家族なのだ。
今回は自分の思うが儘、頑張って書いたら長くなってしまいました(汗)
次回をお楽しみにしていてください