今日も鎮守府は○○○です   作:アリアン

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遅れてしまった御詫びになると信じて閑話を投稿します。

時期ものです


閑章 今日の鎮守府は聖夜である

12月25日。

 

その前夜はキリスト教のイエス・キリストの誕生日であり、世の中が賑やかになり、その前夜はクリスマス・イヴと呼ばれカップルたちが寄り添い過ごす日である。

 

そして、子供達がサンタさんにプレゼントを貰えると信じて眠りにつく日でもある。…敬虔な信者が聞けば、絶対怒るだろうけどな!

 

「ねえねえ司令官!いい子にしてたらサンタさんからプレゼントが貰えるって聞いたけど本当なの?」

 

目をキラキラさせながら暁が俺の机から乗り出して聞いてくる。

 

「もちろん。だけどサンタさんは本当にいい子にしかプレゼントを渡してくれないんだ」

 

そう答えながら俺は帽子の上から暁の頭を撫でる。

 

「もう、子供扱いしていでよ!暁は立派なレディなんだからね」

 

少しむくれながらも撫でられるのを拒絶しない辺りまだまだ子供っぽいな。

しかしやはり駆逐艦は素晴らしい。暁はその小さな体躯なからもかつて戦艦だった凛々しさを残しつつも愛らしさを両立している。そしてその髪もきめ細やかで帽子の上からでもわかるほど艶やかだ。この位置からでは見えないがスカートから覗く健康的な太ももも目を惹きつけんばかりに美しくまた駆逐艦らしい芸術的なラインを取り、スクリューの如く力強い足で元気に走り回る子供ような雰囲気を醸し出しつつ、然しながらそれでいて機能美に溢れている。

 

しかし暁の魅力はそこではない。暁の魅力は一人前のレディとして扱ってというある種の背伸びしていることだ。彼女は立派であろうとするからこそ背伸びをして立派であろうとしている。その心こそが暁の一番の魅力なのだ。

 

「司令官。サンタさんからプレゼントを貰うにはいい子にしてる以外に何かルールはあるのかい?」

 

響は響でいい子にしてる以外に何かルールがないかを確認してくる。暁の付き添いだと言っていたのに響もサンタさんには興味深々なようだ。

 

「あぁ、もちろんある!それは煙突のある暖炉と、それとクリスマスツリーを綺麗に飾り付けして寝る前に近くに靴下を掛けておくんだ!」

 

響はなるほどと言った雰囲気で納得しているようだ。

 

やはり響も素晴らしい。暁とはまた違ったクールな雰囲気に加えてその髪もまた雰囲気に合った色をしているから、かつて彼女が如何に美しい艦だったかを物語っている。実にgoodだ。

 

「暖炉はあるから、ならこれから直ぐにクリスマスツリーと靴下の準備をしないといけないわね!」

 

雷はダメ提督製造機など不名誉な通り名を貰ってはいるが彼女は何事にも失敗を起こさないように最善の注意を払っているからこそここまで気配りが出来るのだ。それはつまりかつて艦だった頃に些細な失敗で艦が危険に陥ったことがあるということではないかと俺は思う。だがそんなことなどどうでもいい。この些細なことに気がつく観察眼や細かい気遣いこそが駆逐艦雷独自の魅力を形作っているのだ。

 

「なら、電は靴下を純暇するのです。工廠の妖精さんたちや明石さんに頼んだらなんとかしてくれると思うのです!」

 

電は雰囲気通りで優しい子だ。敵であろうと助けたという功績もあるだろうが、それを踏まえたとしても電は優しい。しかしその優しさだけでなく間違ったことはきちんと間違っていると伝え、間違った行動を止め助けようとする何処までも一途な優しさこそが彼女の可憐さを醸し出しているのだろう。

 

「今晩の為にも俺は今日の仕事を終わらせないとな!天龍、悪いが皆の面倒を頼む。龍田は仕事を手伝ってくれ」

 

「またオレが面倒を見るのかよ。しょうがねえなぁ、皆工廠に行くぞ」

 

はーいといいながら天龍について行く暁たち。流石天龍は面倒見がいい。

 

「じゃあ提督。お仕事を頑張りましょうね〜。まずはこれだけをお昼までにすませましょうか〜」

 

そう言いながら我が秘書艦龍田は普段の2倍以上の書類をドンと置く。

 

「こ、これだけの仕事をお昼までに、だと…!?」

 

マジかよ!?今日は流石に普段以上にハードじゃありませんかね龍田さん!?

 

「頑張りましょうね〜」

 

にこやかに笑いながら俺の隣で仕事をこなしていく龍田。

 

「あ、はい」

 

コイツを秘書艦にしたのは間違いだっただろうかと思いながら目の前の仕事に手をつけ始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今、サンタ衣装を身を包み予め準備していた。

 

今日の仕事をさっさと終わらせて準備することを計画していたがどうやら昨日の鬼のような仕事量は今日の分までの仕事だったらしく始めようとしたら龍田が「今日は仕事は昨日終わらせたじゃない〜」と教えられた時はやられたと思ったものだがあいつも俺のことを思って仕事を終わらせてたのだ。有難いことだ。だから俺はサンタの衣装まで準備することができた。総司令に準備出来なかった付け髭とつけまつ毛を貰えたことも幸運だ。

 

「準備完了。さあ、あとは屋根に煙突から登って入るだけだ」

 

俺は屋根に登るべく梯子に手を伸ばしーー-

 

「ちぃ!もう1人いやがったか!」

 

そこに天龍が駆け込んで来たではないか。

 

あいつ慌ててどうしたんだ?

 

「不審者が町の方にも現れたからコッチにも警戒するよう連絡が来た途端に来やがって…ここで捕まえてやるから大人しくしろ!」

 

「いやいや俺は不審者じゃなくてお前の提督の桜庭だからな?怪しい奴でも不審者でもないんだぞ?」

 

サンタ衣装に身を包んで付け髭つけまつ毛つけただけで不審者とか酷すぎる。

 

「嘘つくんじゃねえ!オレの提督はコソコソ屋根に登って煙突から入ろうとせず正面玄関から正々堂々入るわ!」

 

「なんか別の意味で信頼されてた!?」

 

「後今は暖炉は薪を焚いてるから入ったら一酸化中毒で死ぬぞ」

 

…それもそうか。確かに俺の能力なら問題ないかもしれないが念には念を入れて正面玄関から堂々と入るか。流石

に駆逐艦の皆を悲しませてしまったら元も子もない。

 

「そうか…忠告ありがとう天龍。子供達のイメージを壊すのは嫌だったんだが正面玄関から入るよ」

 

「不審者入れると思ってんのか!」

 

そう言いながら天龍は殴り掛かってくる。

 

装備を取りに行く事もせず真っ直ぐここまで来たということはそれだけでは第六駆逐隊が心配だったのだろう。普

段とは違い本気で俺を捕らえようとしているのが分かるが、捕まってやるわけには行かない。

 

「はっはっは!そんな攻撃には当たらんよ!」

 

「ちょろちょろ避けやがって!」

 

天龍の拳を余裕を持って避けて行くが実際の話俺にもあまり余裕はない。このままここで足止めを受ければ不審者と思われている俺に湊や豊島が差し向けられる。あの2人を同時に相手にしていたら俺の命なんか幾らあっても足りるわけがない。

 

「不本意ながら悪いがここで足止めを食う訳にはいかない!ここは引かせてもらう!」

 

全身の力で大きく後ろに飛び距離を取って後ろに走り出す。

 

「テメェ待ちやがれ!くそっ!こちら天龍、不審者が逃亡した!」

 

天龍が何処へ逃げたか報告をしている。ある程度距離を取ったらもう一度別の場所から向かわねば…。

 

「なんでこんなことになっいってぇぇぇぇぇぇ!?」

 

今足になんか当たったぞ!?てかこの正確無比な攻撃はまさか!

 

「象でも1発で痺れる麻酔弾を食らっても効果がない!?身体強化持ちか!桜庭みたいなやつで面倒だな」

 

大型狙撃銃を構え、遠くから俺を狙い撃った湊がいた。

 

「俺はその桜庭だっての!」

 

「嘘を吐くな!桜庭は変態であってもお前みたいな変な格好をしたりはしない!!」

 

「その信頼が今は憎いぞ!」

 

ほんと嫌な信頼だよチクショウめ!

 

「あれでダメだったなら象でもギリギリコロリする分量で…」

 

「最大耐久量で撃つとか殺す気か!?」

 

急いで距離を取らないとまずい!湊の狙撃は必ず当たる。あいつは未来が見えるから逃げるには射程外に逃げるしかない!!

 

湊が後ろから撃ってくるのがわかる。プレゼント袋で防げばいいがそれだとあの子達へのプレゼントが傷ついてし

まう…てか3発位今あたった!?

まだ射程外にまだ行ってないのか…ああ、なんだか花畑の先にある川から死んだ爺ちゃんが手振って……

 

「眠るどころか永眠するところだった!今のマジでコロリしかけたぞおい!」

 

後ろで湊がくそっあと2秒見ておけばよかったとか言ってるが気にしてられるか!

 

「こうなったら叢雲頼む!」

 

「高速射出蹴り!」

 

横からまるでカタパルトで撃ちだして繰り出したような鋭い蹴りが飛んでくる。

これは…!駆逐艦が繰り出した蹴り……!

 

正直痛い。痛いがこれは…!

 

「俺にとっては寧ろご褒美…!」

 

身体に力がみなぎってきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

 

「ちょ!?なんかさっきよりも元気になってるんだけど!?」

 

なんだか後ろで物凄くドン引きされている気もしなくはないがそんな些細なことなど気にすることはない!この調子で湊から大きく距離を取らないと今度こそコロリされそうだからな!

 

恐らく警備が少ないのは港…そこから迂回してまた戻ってくれば―――

 

曲がろうとした時、俺のありとあらゆる本能が警告を発した。

 

――今避けなければ死ぬと――

 

「あぶねえ!?」

 

全力で後ろに飛んだ直後、さっきまで居た場所に刀が振り下ろされた。

 

慌てて刀の持ち主を見るために顔を向ければそこに居たのは豊島であった。

だが、それ以上に驚いたのはその刀の放つ禍々しいと通り越したもの。その正体に俺は心当たりが一つしかなかった。

 

「呪刀!?いや、それよりもっと濃い怨念…まさか呪怨刀か!?」

 

呪刀がより多くの怨念を吸い取り、更に力を付けた第一種危険武装。一振りすれば神話級武装にも届くと言われるが、その代償は大きい。

使いこなせなければただ持っているだけで持ち主の寿命を恐ろしい速度で削っていくと言われる呪われた装備。それが呪怨刀。

 

「てかなんでそんな物騒なものを振り回してんだ!」

 

普通考えてこんな騒動で持ち出してくるものじゃないだろう!?

 

「すぐに持ち出せるのがこれだけしかなかったから持ち出しただけだ」

 

「どんだけその物騒なものを身近に置いてんだ!?」

 

恐ろしくて堪らないぞ!?ていうか!

 

「そもそもにおいて聖夜にその物騒なものを持ち出すなよ!」

 

場違いにもほどがありすぎる!!

 

「何を言っている。この刀も今日ばかりは祝福してくれている…はずだ」

 

「その間はなんだよ!?」

 

まあ持ち主もこういってることだし、刀も祝っているのd―――

 

『めぇェエリィいいクルゥシメェまあアァァス…』

 

「祝ってねえ!?呪ってるぞ!力いっぱい呪詛ってるぞ!!」

 

寧ろ刀から呪詛聞こえるレベルってどんだけ怨念食ったんだあの刀は!?

 

「大人しく聖夜に沈め!」

 

「どこかの黒いサンタさんみたいなこと言ってんじゃねえよ!!」

 

全力で後ろに走る!

 

「なんだって今日はこんな目に合うんだよ!?皆からは妙な信頼で疑われるしさあ!!」

 

もういっそ外しちまうかこの髭とまつ毛!

 

そうと決めたら建物の角を曲がって髭とまつ毛を外す。

 

「結構暑かったな…この髭…」

 

総司令に貰ったものだがまあ気にするまい。

 

「む。桜庭か。ここに不審者が来たと思うんだが知らないか?」

 

さっきまで追いかけてきた豊島が追いついてきた。

 

「いや、それ俺なんだけど」

 

「何を言っている。似ても似つかないじゃないか」

 

豊島が何を言っているか分からないと言った表情で俺を見てくる。

 

「ほら、証拠のさっきまで付けてた付け髭と付けまつ毛。見覚えあるだろ?」

 

「何の変哲もない付け髭と付けまつ毛じゃないか。付けたって不審者と似ても似つかないぞ」

 

「へ?」

 

なにこれ。マジで分かってない?

 

「不審者を見つけたら連絡しろよ。俺は別の場所に向かう」

 

そういいながら立ち去っていく豊島。

 

「…この付け髭と付けまつ毛…一体何なんだ…」

 

総司令に貰ったものだが、物が分からな過ぎて俺は付けずに駆逐艦たちの元へ行くのだった。

 

結果として散々な目にあったが、無事プレゼントを送ることができた俺はあまりの疲れですぐに寝てしまった。

 

「提督、お疲れ様でした」

 

意識が落ちる直前、そんな龍田の言葉が聞こえたような気がした。

 

今日の鎮守府は聖夜である。

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