──『
十六歳の誕生日を迎えた日、何者かに故郷と家族を滅ぼされた、一人の少女。
復讐を誓った彼女の道行きを描いた、個人制作ビジュアルノベルゲームの
制作者みずからの手による美麗なキャラクターイラストや一枚絵。
ワンコインで買い求められる低価格。
ノーボイスゆえにパソコンやゲーム機を圧迫しない低容量。
やたら出来が良いオリジナルのバックミュージック。
三時間もあればエンディングを迎えられる手頃なボリューム。
そうした諸々から目につきやすく、気軽に手を出しやすかったため、一部で話題を呼んだ怪作。
成人版と全年齢版の二種類に分けてリリースされており、発売から半年経過時点での累計売上本数は、およそ五万本。
インディー開発、しかも無名のクリエイターが手掛けたノベルゲームとしては、かなりの成功と呼べる数字。
もっとも肝心の内容は、どちらかと言えば否定寄りな意見が多い。
各販売サイトでのレビュー評価も、やや荒れている。
──とはいえ、そうなるのも無理からぬ話。
徹頭徹尾、とにもかくにも胸糞の悪いストーリー展開。
ひとかけらの救いさえも無い、悪意以外の何も感じられない、澱んだシナリオ。
確かに、一定の層に需要はあるだろう。
文章自体は読みやすく、作中世界における固有名詞などの説明も、すんなりと頭に入る。
完成度自体は、十分に高い。
だがしかし、間違っても万人受けするようなゲームではなかった。
売れた理由、話題となった理由も、実のところ様々な偶然に追い風を受けた影響が大きい。
とどのつまり、半ば、たまたま。
体験版で読める、主人公が己の故郷で過ごす日常を、やたらと丁寧に描写した最序盤。
その平穏な雰囲気に騙され、連鎖的に製品版を買ったユーザーも少なくない。
そして、そうした中の大半は、話が進むほど増す陰惨な空気に耐えかね、脱落する次第。
ある種の、当然の帰結。
各章を終えると獲得するトロフィーの取得率から逆算して、エンディングまで読み進めたユーザーは、全体の三割にも満たない。
数字だけ見れば、世に言う高難度の鬼畜ゲーとも並べる割合だろう。
──自分の居る世界が『
彼は、知っていたのだ。
もしも、この世界がゲームと同じように進んだならば、どうなってしまうのかを。
…………。
画面に表示される文章を読み進めることが主体のビジュアルノベルゲームである『
ストーリーは完全な一本道で、物語の最後に待ち受けるエンディングも、たったひとつ。
語るに及ばず、最低最悪なバッドエンド。
この