ぽたぽたと、シュウホウの足元に血の雫が
前腕部に深々と突き立った、十数本の牙。
そのまま肉を
併せて自分の方から、左腕を更に
「ふうぅ……!!」
肉食獣の牙に噛みつかれた場合、外側に引っ張ってしまうと、傷口が更に広がる。
したがって内側へと押し込んだ方が、結果的には軽傷で済む場合が多い。
あらゆる生物の急所──喉の奥に腕を突っ込まれ、反射的に顎の力を緩める
そこで生じた
「くそっ、たれがァ!!」
因果応報。
神経が集中していて痛みを感じやすい
徒手の人間でも、有効なダメージを与えられる部位のひとつ。
甲高い悲鳴を上げた
刹那、彼は渾身の力で体当たりを繰り出した。
浅井戸だが、それでも深さは十メートル近い。
乾いた暗がりを、真っ逆さま。
あっという間に
「はぁ……はぁ……」
息を切らせ、井戸を覗き込むシュウホウ。
首がおかしな方向に曲がった
「っ……」
次いで服の裾を裂き、噛まれた傷口の止血を始める。
不幸中の幸いと言うべきか、さほど出血は多くない。
けれど傷そのものは深く、一部は骨まで達している。
十数本もの牙を突き立てられた、痛々しい痕跡。
それを呆然と見つめる最中、ようやくヒスイは我に返った。
「……あ……あ、あっ……」
うまく声が出せない。
シュウホウの傍に駆け寄ろうにも、立ち上がれない。
恐怖と絶望に浸かり、言うことを聞いてくれない身体。
ただただ、もどかしげに手を伸ばす。
「しゅ……ほ……さっ」
狩猟で怪我は慣れたものらしく、片手しか使えない中、器用に応急処置を終えるシュウホウ。
包帯代わりの布地を肩口で結んだのち、彼はヒスイを見た。
「…………」
じっと向けられる、静かな金色の瞳。
シュウホウを見返すヒスイの視界が、少しずつ滲んでいく。
じわりと胸の奥に広がる、地獄にも等しく変貌した故郷に自分独りで置き去られたのではなかったのだという安堵。
「っ……ぅ……」
目頭が熱を帯びる。
喉の奥から、嗚咽が込み上げる。
やがてシュウホウは、へたり込んだままのヒスイへと歩み寄った。
彼女の前で片膝をつき、その肩に、そっと手を添える。
そこが限界だった。
声を上げて、ヒスイは泣いた。