××を殺す病   作:竜胆マサタカ

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 ガルド一味がサリテ村の跡地にやってきたのは、ヒスイが女神の祭壇を探し当てた数日後の出来事だった。

 

 当初の彼等の目論見は、いわゆる火事場泥棒。

 今までの(ねぐら)が国軍による襲撃を受けてしまい、ほとんど着のみ着のまま辺境まで逃げ去る羽目になってしまったため、その立て直しの第一歩を兼ねた小銭拾い。

 

 だがしかし、焼け焦げた廃村の中に珍しい髪色の少女──ヒスイの姿を見とめ、()()がつくと踏み、即座に目的を変更。

 捕まえて売り捌くため、夜を待ち、実行に移すも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()シュウホウの妨害を受け、先程の一幕に至る。

 

 …………。

 しかしながら、シュウホウは()()を誤った。

 

 上官殺しを犯した脱走兵ガルドは、語るに及ばず重罪人である。

 他にも数々の悪行を重ねており、首に()けられた賞金は相当な額。

 

 ──にもかかわらず、手配から約三年間、国軍の手を逃れ続けている。

 

 すなわち、短気で短絡的だが、決して馬鹿ではない。

 獲物を逃がさぬよう、退路となり得るルートに罠を張っておくくらいの周到さは、持ち合わせていた。

 

 

 

 

 

「づ、ぁ……ッ!」

「きゃあっ!?」

 

 咄嗟、己をヒスイの下敷きとする形で体勢を捻り、受け身をとるシュウホウ。

 なんとか頭などの急所は守るも、したたかに背中を打ち付け、息を詰まらせた。

 

 加えて、鋭い痛みを訴える足。

 咳き込みながら視線を落とし、ギョッと目を見開く。

 

「けほっ、けほっ……これ、は……!?」

 

 足首に深々と食い込んだトラバサミ。

 対人用らしく、熊罠(ベアトラップ)と比べたら随分と()()()だったが、危険な代物であることに変わりはなかった。

 

 無論、村の人間が生活区域内に斯様(かよう)な罠を設置するハズもない。

 となれば必然、犯人は絞られる。

 

「くそっ……!」

 

 シュウホウの知る()()において、ガルド一味は労せずしてヒスイを捕らえている。

 独りで村人全員の墓を掘り、肉体的にも精神的にもボロボロだった彼女の抵抗は、ほぼ意味を成さなかったのだ。

 

 したがって罠が仕掛けてあったことは、彼の()()に存在しなかった情報となる。

 

「ッッ……!?」

 

 自分の知識に対する過信、過失……と評するのは、(いささ)かばかり酷だろう。

 夜で視界も悪かった。いかに森での活動に慣れた狩人とは言え、日中と比べれば確実に索敵能力は落ちる。

 

 ともあれ、まんまと()められた。

 シュウホウは忌々しげに舌打ちしつつも、即座に立ち上がろうと地面に手をつき──うまく力が入らないことに気付く。

 

「ぅ、あ……?」

 

 急激に痛みが薄れていく。

 しかし併せて、身体の感覚も、意識も、どんどん鈍くなる。

 

「痺れ、毒か……!」

 

 理由を察し、歯噛みする。

 そんな頃合、よろよろと身を起こしたヒスイが、シュウホウの状況を見て取った。

 

「ッ、シュウホウさん!? ああ、大変……待ってて、すぐ外しますから!!」

 

 トラバサミをこじ開けようとするヒスイだが、怒号と足音はすぐそこまで迫っていた。

 

 とてもではないけれど、動けなくなった自分を支えて逃げ切るなど不可能。

 そう判断を下したシュウホウは、 瞬く間に呂律(ろれつ)の回らなくなった舌を必死に動かし、彼女へと告げる。

 

「に……げ、ろ──」

 

 そこが限界だった。

 頭まで薬が回った彼は、糸が切れた人形のように、気を失った。

 

 

 

 

 

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