××を殺す病   作:竜胆マサタカ

28 / 28
27

 

 

 

 

 

 ガルドという男は、自分が圧倒的優位な立場にある中、相手が提示した条件を聞き入れるほど殊勝な人間ではない。

 仮にそういう人間だったなら、そもそも最初から罪など犯していないだろう。

 

「馬鹿が」

 

 (つるぎ)を弾かれた衝撃で、たたらを踏むヒスイ。

 あっという間に彼女を押さえ付けたガルドが、鼻で笑った。

 

「俺と交渉しようだなんて、十年(はえ)ぇんだよ」

 

 片手で両腕を吊り上げられ、ヒスイの爪先が宙に浮く。

 彼女は抵抗を(こころ)みるも、体格差があり過ぎて、ほとんど無意味だった。

 

「律儀に条件なんざ守らなくたってなぁ、小娘一匹を()()にさせる方法くらい、いくらでもある」

「ひっ……!?」

 

 ガルドの手が、ヒスイの胸元を無遠慮に這い回った。

 嫌悪感と忌避感に身をよじらせるも、宙吊り状態ではロクに逃げられず、されるがままとなってしまう。

 

「あんまり肉付きが良くねぇな。ま、田舎娘なんざ、こんなもんか」

「やめ、てっ……離し──ぅっ!!」

「うるせえ」

 

 視界が揺れるほどの力で頬を張られ、声を詰まらせるヒスイ。

 涙こそ出なかったが、収まったハズの恐怖心が、またも喉元まで迫り上がってくる。

 

(かしら)。こっちの男はどうしますか?」

「手足ヘシ折ってから適当に痛め付けとけ。そいつが起きたら、目の前でこの嬢ちゃんをたっぷり可愛がってやる」

 

 大人しくなったヒスイの服を引き裂き、胸を揉みしだきながら、どうでも良さそうにガルドが告げる。

 けれど、改めてシュウホウの姿を尻目に捉えると、気が変わったとばかりに制止の声をかけた。

 

「いや、待て。よくよく見りゃ、そいつも随分と珍しい風体(ふうてい)だな」

 

 灰色の髪、褐色の肌。

 容姿や体つきも上々。

 

「そっちを売り捌くとするか。いい金になりそうだ」

「ッ!? 駄目ぇ! やめて!!」

 

 ガルドの呟きを耳に留め、息を吹き返したように再び抵抗を強めるヒスイ。

 

 ばたばたと暴れる脚が、彼を何度も蹴り付ける。

 もっとも、やはり効果は無い。

 

 それどころか、ただガルドの不興を買ってしまうばかりだった。

 

「……だぁから、よお……うる、せぇっ!」

「ぁがッッ……!?」

 

 無防備な腹へと打ち込まれる、(いわお)を思わせる拳。

 ヒスイは痛みと衝撃で息すら止まり、しかし尚も反抗の色を(たた)えた瞳で、ガルドを睨み付けた。

 

「……や……め……!!」

「チッ……面倒くせぇ。いっそ(けん)を切っちまうか」

 

 売り物にはならなくなるが、しばらくは遊べる。

 手下どもも女を欲しがってたし、ちょうどいい。

 

 そんな思惑と合わせて、腰に差したナイフを抜くガルド。

 そして、刃先をヒスイに突き付けると同時──()()()()()()が起きた。

 

 

 

 

 

 不自然なほど長い滞空時間を()て落ちてきた、女神の(つるぎ)

 その(やいば)が、ナイフを握ったガルドの腕を、自重と落下の勢いだけで、するりと斬り落としたのだ。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

担いだ神輿が重すぎる!(作者:ノコギリヘッド)(オリジナルファンタジー/コメディ)

 周囲が人外だらけての中生き残る為に、軽そうな魔王候補を神輿として担いだ筈が、気付いたら手に負えなくなり詰んだ参謀な男が知恵と勇気と下心で、愉快な仲間達からの矢印を切り抜けようとする話です。▼ 尚、大小様々な矢印を追加で多方面から受けるものとする。▼ 


総合評価:153/評価:8.67/連載:10話/更新日時:2026年08月24日(月) 07:00 小説情報

高慢美女な大商人が呪いで世界中から忘れられても、俺だけが覚えている――というフリ(作者:ぜいご)(オリジナルファンタジー/恋愛)

 若くして王国最大の商会を統べる女帝アリーシャ。彼女は王立学園時代の同級生で、いまは俺の雇い主で、在学中からずっと犬猿の仲だった人物らしい。▼ そんなアリーシャは何者かの策略で呪いをかけられ――ある日、全世界の人の記憶から消え失せた。けど俺は、世界でただ一人彼女を覚えているフリをする。▼ 彼女に一目惚れしたのはもちろんだけど、嘘ついてたことバレたら、あいつ絶…


総合評価:46/評価:-.--/連載:1話/更新日時:2026年08月24日(月) 00:43 小説情報

うすほそな幼なじみを口説き落とすRTA(作者:アホ面オムライス)(オリジナル現代/恋愛)

五歳の春、黒瀬湊は砂場の隅で膝を抱える少女を見て「放っておいたら死ぬ」と直感した。以来十二年、彼は彼女を幸せにするための「最短ルート」を走り続ける。これは善意100%のRTAが、いつしか彼女を誰よりも重く育てていく物語。▼高評価だけ忘れずにポチッとよろしくお願いします!!▼※カクヨム・なろうでも公開中▼https://kakuyomu.jp/works/29…


総合評価:943/評価:7.87/完結:10話/更新日時:2026年07月16日(木) 22:01 小説情報

悪の組織のライバルキャラ転生〜「お前を倒すのは俺だ」と言いたいだけの男、鬱展開をぶっ壊して愛される〜(作者:む〜べ〜)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

※なお周りは主人公扱いしてくる模様。▼ゲームで主人公に敗北して組織のボスに始末される推しの不遇悪役ライバルに転生したので、原作知識で破滅エンドを回避して「理想のライバル」に成り上がる!▼……はずがうっかり死ぬはずだったヒロインを助けて激重感情を向けられたり、勘違いで組織を潰す「英雄」に祭り上げられたり、本編開始前から原作を破壊しまくってしまう。▼これはライバ…


総合評価:1038/評価:8.33/連載:27話/更新日時:2026年08月24日(月) 12:14 小説情報

ED傭兵、清純幼淫魔を誑かす 〜行き倒れ淫魔を哀れに思い、ED治療も兼ねて拾ったが――勃たんし、それを硬派で誠実と勘違いされるし〜(作者:ぞうきん)(オリジナルファンタジー/恋愛)

 過去の出来事から不能になったオッサン傭兵クレバーは、ある日淫魔の少女を拾う。あわよくばED治せないかななんて軽い気持ちで考えていたが、彼は淫魔という生物のことを全く分かっていなかった。淫魔は幼かろうがなんだろうが、好いた男のためならば――――人外の執着心を以って、あらゆる手段でその精を搾り尽くさんとするのだ。


総合評価:1670/評価:7.96/連載:10話/更新日時:2026年08月09日(日) 17:59 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>